プロミネディスの神域。
そこに集ったのは五柱の貴高神。
太陽神 ─ プロミネディス。
地母神 ─ ネティア。
海神 ─ セルクル。
冥府神 ─ ゴーグス。
そして
全ての貴高神が集まり、異界であるマヨイガについての評議が行われていた。
対して将来的な脅威に対して懸念を見せるのが
マヨイガからもたらされたサツマ芋によって、病や不作で落ち込んでいたミルラトの民の活力が戻り始めている。
それを一番肌で感じているだろう
元々マヨイガは海にはあまり手を出してなく、精々が眷属による食料や資源の補給程度の干渉。
故に
冥府に関しては
だからこそ、
なんせ
一柱くらいは対立する神が居なければ議論は偏り、致命的な見落としをする危険がある。
あらゆる可能性を考慮するべし。
その為に
そんな愚にもつかないような内容のやり取りから、ふとしたきっかけで最良のアイデアが生まれる事も少なくない。
関わりが無いからこそ自分がその役目をするべきと、
議論を尽くす為に否定するが、結論が決まればそれに異を唱える事はない。
そんな議論の中で他の貴高神の問いに答えながら、
「それで、話とはなんじゃ?」
念のため部屋を変え、コンさんと向かい合う。
あまり深層心理を読み解くのは得意ではないですけれど、
少なくとも隠し立てをするつもりはないという事は分かる。
「貴方の通り名についてですわ。……過去のね」
「あー、あれじゃな。
意味は『狂気を呼ぶ神狐』。
かつて神であったコンさんは、そう呼ばれ恐れられていた。
これは
タケルさんやコンさんを理解するために、
その中でコンさんが元神である事を知った。
そして彼女が『
しかし、逆に言えば
彼女がそう呼ばれていた理由は分からなかった。
ミルラト神族において最も過去視に長けているという自負はありますが、流石にコンさんほどの力を持つ相手ではこれが限界。
化生としての力が強ければ強いほど干渉に対する抵抗力も高くなる。
もっとも、それはコンさん側からしても同じことですが。
分からないのであれば聞くしかない。
流石に再び神へと至った以上、あのような通り名を持つ理由を知らないままにしておく訳にはいきませんわ。
幸い本人に聞くのであれば、そしてそれで本人の口から出た言葉を他者に伝えるのであれば、過去視を制限する神々の協定には違反しない。
「まぁ、あれは正直やりすぎたとは思うとる。そのせいでこんな物騒な通り名がついてしもうたし」
「何をしたんですの?」
それを聞くとコンさんは視線を逸らした。
同時に少しだけ力の揺らぎを感じる。
どうやら過去視への抵抗を意図的に弱めたようですわね。
あくまで一部分、その件に関するところだけでしょうが。
覗いてみなさいという事ですか。
…………うわっ、えぐっ。
「コンさん?」
ミルラト神族も割と容赦のない神罰を下す者もいますが、ここまでではありませんよ。
正直、
「いや、
そこは否定しませんが。
話としては単純明快。
大罪を犯した咎人に裁きを与えよとの命令を受けたコンさんが、忠実に仕事をこなしたというだけ。
裁きの内容もコンさんに一任されていて、それを咎められるものではない。
そして咎人にも
ただ単純に、そんな
主神にそろそろ
何をやったかは、口を閉じさせていただきますわ。
「神となってからの初仕事でそんな事をやったせいか、儂はそういうの担当という印象がついてしまっての。その後も同僚から
「弁解とかはされなかったんですの?」
「特にはせんかったの。これはこれで役立つ事もあった故な」
なるほど、以前プロミネディスが懸念したのも分かりましたわ。
これは確かにコンさんに怒れる神としての側面を出させてはいけませんわね。
もしコンさんの怒りを買ったとしても、タケルさんであればそのストッパーとなれる。
例えどれだけ
では万一それが失われたら?
温厚な神程その怒りは恐ろしいとはよくいいますが、それは温厚な神ですら怒る行いをしたからに他ならない。
タケルさんが止めない、もしくは止められない状況になった時、コンさんは決して容赦しない。
タケルさんから異世界の祟り神の鎮め方は聞きました。
行為そのものはそれほど大きな違いはありませんが、重要なのは何に重きを置くか。
贖罪の供物を重視する
お互いの文化の違いが、致命的なすれ違いを起こしかねない。
特にそれが神々であった場合、誠意を見せるという精神的に重きを置く行為ができる者がどれだけいるやら。
火に薪をくべるだけになる気しかしませんわよ。
そして更に頭が痛くなるのが、コンさんが何をしでかすか分からない事。
異世界の神であるが故に、こちらの常識が通用しない。
どうしても対応は後手に回ってしまう。
異界の中ならともかく、ミルラト神話圏で事を起こせば
例え異界の中からおこなったとしても、それを辿って逆侵攻をかけることが出来る。
いくらコンさんでも、神としての力は
タケルさんを考慮に入れなければという前置きはつきますが、コンさんを討滅する事は不可能ではない。
ですが、その過程でどれほどの犠牲が出るか。
正直怒りを買った輩を
コンさんが怒ってタケルさんが止めないとか、よっぽどの事をしでかしているでしょうから「責任を取れ」と言ってそうしても他からは納得が得られるでしょうし。
更に言えばもし今回過去視で見た行いをするのなら、コンさんを討滅したところで止まらないんですわよね。
むしろ憎悪や怨恨によってより強くなる事も考えられる。
それは古き神々を滅ぼした怪物の猛毒のように、
以前プロミネディスが言っていた『善性の強い今のままでいてくれた方がいい。多少、善の在り方が僕達とは違っていてもね』という言葉は正にその通りだと実感しましたわよ。
ついでに言えば怨霊を祀って守護神にしてしまうような人間たちに信仰される神と正面から事を構えたくないというのもある。
それはつまりその神もそちら側の存在という事ですもの。
厄神だろうが悪神だろうが、果ては邪神まで信仰して味方につけてしまうとか、タケルさんの所の人間はいったいどんな信仰してるんですのと言いたくなる。
いえ、一応タケルさんに聞いていますから理解はしています。
そんな相手と正面から敵対とか、何をされるか分かったものではないですわよ。
「
「承知した。が、マヨイガで狼藉を働いたり、タケルに害を成すとなれば話は別じゃぞ」
「構いませんわ。タケルさんの身を優先するのは当然の事ですし、
五柱の貴高神の話し合いは佳境に入り、大方の意見は出尽くした。
最終的には要警戒ではあるものの積極的な干渉は必要ない。
むしろ他の神々が余計な事をしないように注意しておく必要がある。
それに伴い、
後はそれを誰にするか決めるだけだ。
流石に貴高神を使者にするのは対外的によろしくない。
プライベートで遊びに行った時に、ついでに少し仕事の話をしているだけ。
そういう事になっている。
だからと言って神格の低い神では駄目。
それだと相手を
タケルさん達は気にしないでしょうが、これも対外的に見てよろしくない。
では伝令神であるクラトンならどうか。
神格的にも悪くなく、能力的にも問題は無い。
しかしこれも駄目。
理由はマヨイガ────というよりタケルさん。
神すらも変容させる彼の前に、神々にとって重要な役目を持つクラトンを出すのははばかられる。
下手に影響を受けても困るし、取り込まれでもしたら目も当てられない。
ある程度の神格があって、タケルさんの影響を受けにくい、もしくは既に影響を受けた後で変質の予測が容易な神。
出来れば
となると、一柱しかいませんわよね。
「それでは、サツマ芋の神 フェルドナに
こうしてフェルドナは知らないところで新たな称号を得る事になったのだった。
「まぁ、計画通りなのですけどね」
だいたいルミナ神のせい。
でも恩恵もそれ以上に大きいので文句も言いづらい。
追記:cyan675様、名無しの通りすがり様、誤字報告ありがとうございます。