もともとは別視点の予定はなかったけど、ふと思いついたので書いてみた温泉回。
昨日も更新してるのでお見逃しなく。
突然の貴高神のお
立場的にも状況的にも断れない実質的な命令だったけど、その内容は破格だった。
もちろん私が直接
お
とはいえクラトン様も十分高位の神なので緊張するのだけど。
その役目の対価は
言い換えれば新たな神格だ。
この神格自体は異界へ赴いた私自身に宿っていたものだけど、重要なのはそれを
これによりその神格が大幅に引き上げられている。
この話が広まれば
もしかしたら新たな権能を得る事も可能かもしれない。
サツマ芋の神としての神格に
そうなればフォレアが産まれたときのような災厄が再び訪れたとき、キツネツキくんと出会った時のような病がまた蔓延ったとき、私自身の力で祓う事が出来るかもしれない。
その時にまだキツネツキくん達が居るとは限らないのだから。
ふと空を見上げる。
既に日も落ちた空には、無数の星が輝いていた。
これが本物ではなく
知らずに訪れればきっと違和感すら覚えないだろう。
「百年か……短いなぁ……」
無意識にそんな言葉が漏れた。
キツネツキくん達は事故で異なる世界からやって来てしまった
彼らと交流を深めていった折に、それを知る機会があった。
いつになるかは本人たちにも定かではないらしいけど、帰還の目途が立てば彼らは異世界に帰ってしまう。
その予測は長くても百年。
彼らが帰った後、その穴を埋めるように信仰によって新たな異界神が顕現するだろう。
それはタケルくんを模した異界神になるだろう。
側には狐獣人の伴侶の姿もあるだろう。
人のように立つミシロキツネの神使もいるだろう。
故に、彼らが帰っても
私が新たな異界を訪れれば、新たな異界神は彼らと同じように私を迎え入れてくれるだろう。
それはきっと限りなく彼らに似ていて、全くの
奇跡のような出会いがあった。
知らずのうちに魅入っていた。
キツネツキくんが
口をつけると柑橘系の爽やかな味付けをされた
見た目より多く入っているようだけど、これも
コップを
キツネツキくんがこの異界に私の祠を作ろうかと言った時、私はそれを拒否した。
少なくともその提案は、私に損の無いものだった筈だ。
何かあった時、すぐに連絡の取れる手段があるというのはとても有益だった筈だ。
だけど私は拒否した。
理由は自分で分かっている。
私が
なんで?
なんでだろう。
何故かは分からないけど、そう思ったのだ。
キツネツキくんに会える機会を減らしたくないと、そう思ったのだ。
彼との仲は良い方だとは思うけど、何故そう思ったのだろう。
キツネツキくんの事は好きだけど、それは愛ではなく、ましてや恋でもない。
さりとて友情という訳でもないだろう。
彼の事は
ならば
ううん、色々と尊敬しているところもあるけれど、これもなんか違う気がする。
しばらく考えてはみたけれど、結局どういう感情なのか自分でもわからなかった。
もし彼が居なくなったらと──いずれ確実に訪れるその時を──思うと、心のもやもやが大きくなる。
その時に成ったら、私は彼を引き留めようとするだろう。
それでも彼が帰る事を選んだのなら、私は少しの寂しさを胸に笑顔で送り出す。
今までありがとう。
きっとそう言って送り出せる。
だから魅入ってはいても執着はしていないのだ。
軽く頬を叩く。
考えていても仕方のない事だと、気持ちを切り替える。
これがどんな感情か分からないけど、私にできるのは共に過ごせる今を存分に謳歌する事だ。
いずれ彼らが帰る日が来るまで。
いつか再び巡り合えるように、深く深く縁を紡ぐのだ。
うん、なんか私らしくなかった。
あと、間食やお土産にお菓子をくれるし。
これの感情はきっと美味しいもの目当て────という事にしておこう。
お湯の中で腕を伸ばす。
解放感のある露天の温泉は、泳げそうなほどの広さがある。
温度も丁度よくて、心が洗われるようだ。
ここしばらく忙しかったゆえに溜まった疲れが溶け出していく。
いいなぁ。
お湯を沸かすにもお金がかかるから浴場もないし。
ウチも近くに温泉が湧いたりしないかなぁ。
神格が上がって信仰される地域が増えたから、実入りも増えて
この調子でいけばそのうち温泉神に頼んで温泉の泉源を引っ張ってきてもらえるだけの財が貯まるかも。
ラクル村にも恩恵はあるし、偶にはそんな贅沢をしてもいいよね。
あ、そういえば蒸し風呂もあるって言ってたっけ。
あとで入ってみよう。
あぁ~~~~~、生き返るわ。
今度はフォレアも連れてきて……いえ、作法の勉強で来る予定があるのだから日程を調整すれば……
あ、でも一度
頑張ったご褒美という形で入れてもらえるように頼めば……それだと普段が頼みづらくなる。
うん、普通に使わせてもらえるように頼んで普通に一緒に来よう。
あの子は水捌けが悪い所を嫌うからなぁ。
というか、そもそも娯楽に興味を示さない。
日がな一日大地の栄養と太陽の恵みを取り込むことに勤しんでいる。
増えろ増えろ、サツマ芋増えろ。
増えて大地に満ち溢れよ──みたいな本能で生きてのよね。
それだとサツマ芋を食べる私たちの事はどう思っているのかと聞いたことがある。
やっぱり疎ましく思っているのだろうかと思ったら、返答はまさかの「もっと食べろ。できればサツマ芋を主食に!」だった。
いや、スァートは喋れる訳じゃないし明確な理性がある訳でもないんだけど、何となく何が言いたいのかは理解することが出来る。
どうやらスァートの中では「人間がサツマ芋を食べる。するとサツマ芋を育てるようになる。結果サツマ芋が増える」という理論があるようだ。
ある意味これも一つの共生という事なんだろうか。
とりあえずスァートにはいつも通り神域の畑で日向ぼっこしていてもらおう。
あと、コンくんがなんか凄い事になってたなぁ。
神格を得た……というか元々持っていた神格を取り戻したとは聞いていたけど。
神威とかなんかこう、うん、凄かった。
そんな風に語彙がなくなる程に圧倒された。
でも、
いや、
正直あそこまでとは思ってなかった。
ルミナ様と対等に接しているのも分かるわ。
そんな相手を以前からの惰性とはいえ『くん付け』で呼んでいる事実は考えない事にした。
何と無しに
これやってもいいのかな。
念のため
そのまま
そのままチロチロと舌を伸ばしてコップの中の
あぁー美味しぃ。
ゆったりと浮かぶ
暖かな湯が全身にぬくもりを与えてくれる。
体が自然にくねくねと動く。
まだ私の入浴は終わらない。
はぁ、気持ちいい。
それはお気に入りの動物カフェに行きたいと思う心情に近しい。