話が二転三転して何度も書き直したら捻りが入って当初の想定に戻ってくるとかもう。
お待たせして申し訳ない。
修正履歴
File No.13 にて気狐の尻尾の数についての言及を追加。
File No.19-1 にてコンの経立姿について言及を追加。
File No.24 にてルミナ神が桜の事をタケルから聞いていた事に修正。
いずれも2・3行ほどの追加なので、今回も後書きにて一行で説明します。
追記。
File No.05-1 にて霊狐の尻尾の数についての説明をFile No.13 に合わせて修正。
キツネツキとして水牛人の女性にマヨイガ妖怪を贈ってからしばらくたったある日の事。
何やらコンに呼ばれたので稲荷神社の方に向かう。
普通の用事であれば離れていても精神感応で伝えればいいため、何らかの重要な話の可能性が高い。
それも場所が場所だけに御稲荷様関連か。
時間の指定もあったので、それまでに
現在ではかなり簡略化されていて、
今回はただならぬ状況な気がして、マヨイガを流れる川にて
マヨイガ自体の気候は良いとはいえ、流石に川の水は冷たかった。
あと、服装の指定があったので常装に着替える。
常装は小祭や恒例式などで着用される服で、神社を参拝する際に目にする神職が着ているのがこれだ。
これは三級及び四級の身分の神職が身に着ける色だ。
前にも言ったが、俺が禰宜職についているのはマヨイガ稲荷神社が特殊過ぎる神社であるための特例処置であって、俺自身は神職の資格を持っていない。
いずれ資格を取りたいと思って勉強中ではあるが。
稲荷神社までやってくると、
鳥居の前で一礼し、コンの前まで歩みを進める。
いったいどんな用事なのやら。
服装が服装なだけに
「
神社に透き通るような声が広がる。
まるでお稲荷様を前にしたような緊張感があった。
「マヨイガに在りて
目の前にいるのはコンだというのに、まるで
「その
は? 今、何と。
その衝撃的な言葉に困惑している俺をよそに、
「
その短冊に書かれた名を読み上げ、俺の方に差し出す。
「ありがたく、
いや、これは断れないって。
最初にコンは
つまり辞退すると
もちろん明確にそれを受け入れられない理由があるのなら別だが、俺にはそんなものないんだよ。
未熟ゆえに荷が重いというのは、打診された場合ならともかくこの状況だとねぇ。
短冊を受け取る。
そこには今しがた拝した
「今後の働きにも期待しています。では下がってもよいですよ」
「はっ」
この場を離れる許可を得たので、一礼して鳥居まで戻る。
そして鳥居をくぐってから社の方に向き直って再び一礼。
すると顔を上げたときには、そこにコンの姿は無かった。
『お疲れ様じゃ。急に呼び出して悪かったのぅ』
いや、普通に霊狐形態で横にいた。
何だったんだいったい。
『なに、少々驚かせようと思ったというのもあるが、確実にお主に受けてもらう為じゃな。先に話したら遠慮するじゃろ』
それは、まぁ。
異世界ではキツネツキという神名で一応信仰されているらしい俺だが、それ自体は御稲荷様とは関係が無い。
というのも、異世界側では独立した一個の神として認識されているからだ。
縁自体はあれど信仰として考えると完全に切り離されている。
つまり俺が
そもそも俺、現世では神じゃないぞ。
『それは
約束……このタイミングという事は
となると消去法で稲荷神社を有するマヨイガ、その意思としかない。
ならばどういう意図がある?
『別に気にせんでも良いぞ。おそらく夜には答えられるじゃろうからな』
つまり夜までに何かあると。
『まぁのう。じゃが、これだけは言っておこう。儂はお主の守護狐じゃ。その役目をもって、お主の守護を最優先とする』
それはコンが
『しかし
コンの
俺の守護という部分の解釈がけっこういい加減だったりするが。
つまり、だ。
理由を答えられないのは約束の為だが、神名を授けた事自体は
普通であれば
大変名誉な事ではあるんだが、別に神名を拝しても現状特に意味は無いのよね。
現世では位階も信仰も無いからその神名に力はなく、異世界ではキツネツキという神名が既にあるからだ。
一応、これで
あと、一つ聞いていい?
『なんじゃ?』
『黙字じゃから読まんぞ』
黙字というのは簡単に言えば発音されない文字の事。
屋敷に戻ると、今度は客間に行くように言われた。
次は普段着……というか
この服に袖を通すのも久しぶりだな。
奇麗に洗濯して保管したので傷んではいない。
何故この服でないといけないのかは……何となく予想できる。
おそらく
お客さんが来ている訳でもなく、俺が現世の人間である事を証明する必要がある相手はいないので儀式的な理由だとは思うが。
そしてコンの態度も併せて考えると、呼び出したのはマヨイガの意思だろう。
しかし、
キツネツキ関係ならコン経由で十分だと思うが。
客間に着き、作法に則って入ろうとして一声かけると、中から聞き覚えの無い声が帰って来た。
この声の主がマヨイガの意思だろうか。
もしかしてマヨイガの意思には特定の
マヨイガ妖怪の集合意識と聞いていたからてっきりマヨイガ全体で一つの形を成す妖怪だと思っていたが。
とはいえマヨイガ妖怪の中には喋れるものもいなくはないし、代わりに喋ってもらっている可能性もあるか。
入室の許可は出たので作法通りに襖を開けると、そこには見知らぬ誰かがいた。
見た目には
男のようにも見え、女のようにも見える。
年若いようにも見えて、歳を重ねているようにも見える。
そこにいるようにも見えて、そこにはいないようにも見える。
そんな存在がそこにはいた。
そして俺はそんな相手に促されるまま、座卓の前に座る。
「やぁ、初めまして。とはいってもお互いよく知っている相手なんだけどね。もう理解していると思うけど、
あ、やっぱりかと思いながら挨拶を返す。
状況的に考えるなら間違いなとは思っていたが。
「わざわざ来てもらってすまない。だけど
「いえ、お気になされず」
この程度なら手間でも何でもない。
「そう言ってもらえると助かるよ。さて早速本題と行きたい所だけど、その前に一つ勘違いを訂正しておこうか。君には
え? それはどういう意味だろうか。
「普通の人間のような姿に見えます。中性的な容姿で年上っぽいような年下っぽいようないまいち確証が持てない感じですね」
後は何をしているかって──
「そして今は座卓を挟んで普通に正座しているように──あっ!」
──そうか、そういう事か!
「どうやら気づいたようだね。理解が早くて助かるよ」
どうりでよく分からない相手だと思ったはずだ。
俺はマヨイガの意思の事を、マヨイガを統率する妖怪だと思っていた。
マヨイガ妖怪たちの集合意識という
そう思っていたからこそ見誤った。
「マヨイガの意思……いや、マヨイガとは妖怪ではなく──
「ご名答」
広義で言えば妖怪変化や化け物などを含む場合もあるが、その本来の意味はあり得ないような不思議な事柄。
怪奇現象そのものを指す。
性質自体は妖怪に近しいが、怪異と妖怪の決定的な違いは意思の有無。
現象である怪異そのものに意思はない。
例え意思があるように見えても、それはあくまでそう見えるだけだ。
ではこの目の前にいる相手は意思を持たないのかと問われれば、答えは否だ。
この相手はマヨイガの代弁者。
マヨイガ妖怪の代表として現れた誰かだ。
その姿は俺の無意識が生み出したマヨイガという現象の擬人化という言い方が近いだろう。
マヨイガとは現象でありマヨイガの意思という妖怪は存在しないが、マヨイガを構成する幾多の妖怪の集合意識が一体の妖怪を代弁者として、そこにマヨイガの意思を表す。
簡単に例えて言うならマヨイガとは国のようなものだ。
国という現象そのものに意思はない。
しかし、そこに住まう国民の意思によって生まれる総体としての意思。
それが国の意思であり、マヨイガにとってのマヨイガの意思である。
そしてその時々において
まぁ、分かりにくければマヨイガの意思とはマヨイガ妖怪の代表がなる役職であり、判別しやすいように見た目は統一されるけど中身は毎回違うからそういう妖怪がいる訳じゃないよって思っておけばいい。
なお、無数の妖怪の集合意識が形を得て一つの妖怪となるパターンも普通にある。
というか、そっちの方が怪異パターンよりもメジャーだし、今の今までマヨイガもそうだと思ってたぞ。
有名どころだと『がしゃどくろ』だろうか。
無数の埋葬されなかった死者たちの
それぞれの骸や魂にも固有の念自体はあるが、それをがしゃどくろという大きな意思が統率するという形だ。
ちなみにがしゃどくろ自体は
分類としては意図的に作られた妖怪──創作妖怪──にあたり、
創作活動によって
そんな妖怪もそれなりに多いのだ。
現象が先に在って
元々は創作妖怪だったけど、伝えられていくうちにそれが忘れ去られて普通の妖怪になった奴だって結構いるので、区別する意味はあんまりないんだけどな。
さて、話を戻すがマヨイガの意思が俺に自身の容姿を聞いたのはそれに気づかせるため──というのもあるが、現象であるが故に妖怪としての個の形を持たないからだろう。
ここにいるマヨイガの意思の姿は俺の無意識によって産まれたイメージをいずれかのマヨイガ妖怪が着こんでいるようなものに過ぎない。
簡潔に言えば俺がマヨイガの意思の姿をそうだと思い込んでいるからそう見えているという表現が近いか。
俺以外が見れば別の姿をしているだろうし、たとえ霊視を持っていたとしても見えない場合すらあるだろう。
人によって見え方が違い、似る事はあっても一つとして同じ姿は無い。
俺にしたってマヨイガに対するイメージが変われば、違う姿に見えるようになるだろう。
そしてこれはマヨイガの意思……いや、マヨイガ妖怪自身にも言えることなのだ。
相手に自分がどう見えているのか具体的には分からない。
もっとも、コンくらいになると読心で間接的にどう見えているかを認識することが出来るが。
……という事はマヨイガの意思は読心は出来ないのか?
「直接は読めないよ」
読めてるじゃないですか。
「何となく言いたい事や思っている事が分かるだけさ。勘が鋭いと言った方が近いかな」
さいですか。
まぁそもそも妖怪はその生態上、感情の機微を読み取る事に優れている場合が多いし、これくらいなら分かっても不思議じゃないか。
「さて、認識合わせも済んだところで本題に入ろうか。タケル君、君にとってマヨイガはどう見える? ああ、現象や妖怪としてどう見えるかじゃない。もっと単純に、見た目の話しさ」
マヨイガの見た目?
「そうですね……歴史ある古い時代の名家って感じですかね」
荘厳な日本屋敷に歴史を感じさせる道具の数々。
野山に囲まれ、自然と調和した
四季によって移ろう素晴らしい庭園。
どれも見事だと思うが。
「そう、そうなんだ。
まぁ否定はできない。
「人の世では次々便利なものが出てきているじゃないか。それなのに
「マヨイガ妖怪も現代の道具以上の便利さだとおもいますけど」
物理法則無視が強すぎる。
「それでもより便利にってのは思ってしまうんだよ。
「昔は……ああ、そういう意味ですか」
「そう。伝承が人から人へ、親から子へ
その辺は他の妖怪も同じだ。
途中で話が増えたり変わったりして人々の認識が変化していった妖怪もたくさんいる。
「だけどそれももう難しい。色々と要因はあるけれど、重要なのは今まで
有名なものだと民俗学者
元は一地方の
ちなみにこの著書にも『マヨヒガ』と呼ばれる『隠れ里』の話があるが、コン曰くここの『
『
「それによってこの妖怪はこういうものだと、
ここのマヨイガと他の隠れ里に直接な関係性は無いが、同じ『
伝承の伝わる範囲が限られていた時代なら別だが、全国的に広まるとどうしても
特に今の時代はインターネットの発達により遥か遠くの情報も容易に手に入るようになった上、電子データとして残り続けてしまう。
「もちろん、これによっていずれは忘れられ消えていくだけだった妖怪たちが人々の記憶に残り、今もなおその存在を繋いでいるという功績は否定できるものじゃない。
その場合は俺もコンと出会えなかった訳だしな。
「生き残るという意味では、その恩恵に乗っかって、そうあるのがいいんだろう。だけど、そこから外れる事でいずれ消えてしまうかもしれなくても、
言いたいことは分かるがそれが俺に何の関係が──
「そこでだよ。タケル君、
──まじかぁ!
「いや、流石に無理ですよ。協力する分には構いませんが、いくら何でも
「別に主従関係を結ぼうって訳じゃないさ。そうだね、言ってみれば同盟を組もうという話さ」
それよりまず話が繋がっていないと思うのだが。
なぜ怪異としての変化の話から俺との同盟の話になるのやら。
「本音を言えば君が
「恩恵というと、キツネツキの信仰関係で?」
「それもある。けど、一番の恩恵は
俺の影響を?
「さっきも言ったろ。
「そうか。そうすれば、マヨイガ妖怪は
「そういうこと。なるべく居ついて欲しいとは言ったけど、そういう意味では
それで現世の服で来るように言われたのね。
「もちろん現世の人間なら誰でもいい訳じゃない。少なくとも
あれはそういう意図だったのか。
こうして呼ばれたという事は合格だったんだろうけど。
「これからも時折誰かを呼ぶことになる。それが
「異世界に来てから居座らせてもらってる訳ですし、そのくらいはしますよ」
「ありがとう。だけど今のままじゃ駄目なんだ。それだとあくまで君は
変わらないというか、実際違わないんよな。
ちょっと特殊なせいで何度も足を運べているってだけで。
「それじゃあ変われないんだ。人の住まぬ異界という姿は変わらない。たとえ異世界で
住まうのが神であるが故に、その在り方は人の世と同じたりえないと。
「それだと、俺が『隠れ里の主』になったところでマヨイガは変わらないって事になりませんか?」
結局対外的には人間は住んでいないのだし。
「そうでもないのさ。人の世とは異なるが故にその形を明確には描けない。そうなると
そうするとマヨイガは現世の現代人である俺の影響を受けられるという訳か。
その為には俺がマヨイガに泊まらせてもらっているのではなく、最低でも対等な関係で居住する必要があると。
「だからさ、君が
……ああ、そうか。
そういう事か。
マヨイガにとっての主とは統率者でも、ましてや支配者でもない。
自身の在り方を体現させてくれる人間の事なのか。
「事情は分かりました。では一つだけ……
「
君がいい。
俺でいいのではなく俺がいい。
どうやら俺はまた妖怪に魅入られていたようだ。
「
「むしろ
正直俺でなくても構わないのであれば、条件に合うのが俺だったという事なら断るつもりだった。
協力すると言ったことに嘘は無いが、
だが、マヨイガが俺を選んだというのなら、俺だから憑いてくるというのなら。
「…………わかった。あくまで相棒として。それで良ければマヨイガの主の役目、引き受ける」
「!! よかった。いやぁ、実は断られたらどうしようかと思ってたんだ」
「場合によっては降りる事もあるからな。それは忘れないでくれよ」
流石に死ぬまで主としているとは約束できない。
今のところ道を違える理由は無いが、将来どうなっているかなんてわからないものだから。
「それにしても
「なんか、相棒としてマヨイガの意思と話すなこっちかなと思ってな」
個々のマヨイガ妖怪と話すときはたぶん今まで通りだと思うけど。
心情的に。
「そうそう。さっそくだけど……っと、その前に
「呼びやすいなら別にいいぞ」
ちなみに
「じゃぁさっそく。
「何だ?」
「
おうっ!?
いや、考えてみれば確かに必要か。
「マヨイガって他にもあるからね。
その影響から逃れたいって話だったしね。
同じようなものの中から一つを特別にするには、名前を付けるというのが一番手っ取り早くて確実な方法だ。
名を付けるという行為による俺への影響ももちろんあるが、流石に
名という形を与える事で、おかしな方向へ変化する事も抑制できるしな。
「名づけるのは構わないけど、少し時間を貰っていい?」
縁起とかもあるからコンと相談したい。
妖怪や怪異にとって名前の影響力って凄く大きいし。
「駄目」
「駄目かぁ」
「
思ったままにか。
とは言っても俺にとってマヨイガはここだけだからマヨイガである事は否定できないし。
となると、これかな。
「だったら──
──とかどうだろうか」
百重とは数多くのものが重なり合っている事を言い、
御殿は広義に立派な屋敷を意味し、転じて見事な異界である事を表す。
「なるほど、気に入ったよ。
では今後ともよろしく、
せっかく名前が決まったからという事で、マヨイガの意思の事は今後
あくまで名前を呼ぶ場合の話しなので、怪異としてのマヨイガの意思を指す場合は今まで通りマヨイガの意思と表現するだろうが。
名前を呼ぶことでそのうちマヨイガ妖怪の集合体という怪異から一個の妖怪になるかも知れない。
それからいくつか意見を交わし合い、今後の方針を確認したところでお開きとなった。
以後俺は
まぁ、それ以外は今までとほとんど変わらないのだが。
ちなみに今回の
さっきも言ったように、マヨイガの意思は個別の妖怪ではなくマヨイガ妖怪の誰かがその役割を担っているだけだ。
今回はコンの式神という事でわりと俺に近しく、感情を察する事に長けているなでしこさんが選ばれたらしい。
もちろん、俺が今の今まで話していた
これすごい説明し辛いぞ。
正確な表現じゃないけど。
それから。
俺が神名を得たのと隠れ里の主となった事をミコトやヤシロさんに報告し、ちょっとしたお祝いなんかをしてもらった。
「
なんかさっきよりも女性っぽくなってない?
どうやら俺が最初の会った
しかも隠れ里の主である俺が
いや、変化早すぎだろ!
俺のマヨイガの意思の説明は何だったんだよ。
似る事はあっても一つとして同じ姿は無いとか言っちゃったぞおい。
ちなみに
マヨイガ妖怪の集合意識なので、俺の
更に時間が過ぎてその日の夜。
ヤシロさんは寝床に戻り、ミコトはお風呂中で時間が空いたのでコンに昼の事を聞いてみる。
「結局のところ、神名を貰えるほどの俺の
『ああ、その話じゃな。
それは知ってる。
簡単に言うとここ百重御殿の稲荷神社は、稲荷神の領域の一番外側にある稲荷神社の一つなのだそうだ。
つまりこの稲荷神社のある場所までが稲荷神の影響がある範囲という事になる。
でも別に俺は稲荷神社に何かした覚えはないぞ。
禰宜としての役目をこなしているくらいだ。
『それが何の因果か異世界まで来てしもうた。本来であれば神使もおらず人も訪れぬ稲荷神社は無きも同然になっておったじゃろう』
俺たちがいなければそうなってただろうな。
そうなった場合、普通は人々の信仰が戻るまで神使が繋ぎとめておくらしいが、残念ながらコンの後任の
『この
禰宜としての役目をこなす事で信仰を絶やさなかったと。
でもそれはコンが居る事でも達成できる訳だし、神名を授かるほどの貢献とは思えないが。
『ここまでが建前じゃ』
あ、はい。
『重要なのはお主が異世界で信仰される
それがどういう……
『片方だけなら問題なかったんじゃがな。百重御殿が名実ともに異界神の神座になる事で、異界神への信仰によって百重御殿そのものが稲荷神の領域から切り離される恐れがあるんじゃよ。そうなると結局
マジか。
異世界には稲荷神の信仰が無いから、
『今までであればマヨイガと
「俺が百重御殿の主になると、それも出来なくなると」
『そうじゃな。どうやら
なんか結構増えてるらしいね。
別にそんなに恩恵を与えた覚えもないんだが。
『じゃが、お主が
なるほど。
事情は分かったが、これ現世に戻ったら返上した方がいいのかな。
現世に戻れば流石にお稲荷様の信仰の方が
そしたらもう神名を持つ必要はなくなる訳だし。
『別にそのまま持っておればよい。異世界ではちゃんと信仰されておる訳じゃし、現世での信仰はなくとも詐称にはならんよ』
「そんなもんか」
『そんなものじゃよ』
「ついでに聞くけど、俺の神名の
狐は
おそらく狐憑き、御稲荷様の神使である
稲荷神に連なるものとして神使である狐の字を賜ったのだろう。
『
いや、もしかしたらとは思ったけどさ。
俺が百重御殿の主になる事前提の名前かよ。
『おぬしなら断らんじゃろうと思ったからのぅ。実際引き受けたじゃろ』
そうだけども。
『それで最後に
結構考えてくれたんだな。
だったら俺も、その神名に恥じないように頑張るとしようか。
そんな事を考えた夜であった。
『持ち物は主に似る』
持ち物には持ち主の好みや性格が出るので、持ち物を知れば持ち主の人柄を知ることが出来るという意味。
前書きにて記載の修正点、一行意訳。
・気狐は個体差はあるものの尻尾が一本に戻る事が多く、天狐になるまで増えたり増えなかったりするので強さと尻尾の数が一致しない。
・ミコトの経立姿は二足歩行になった狐だが、狐を人間のカタチに当てはめたのがコンの経立姿。
・劇で桜の演出してたの忘れてた。
明日に1300字程度の短いおまけとして『マヨイガの意思の断片(肆)』を投稿したら一区切り。