俺と天狐の異世界四方山見聞録   作:黒い翠鳥

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File No.26-2 マヨイガの意思の断片(肆)

(おつかれさん。上手く行ったようじゃの)

 

天狐か。

おかげさまで、というべきかな。

 

(どうじゃった? その()()で直接話してみた感想は)

 

此方達(こなたら)の多くが魅入った理由がわかったよ。

 

なるほど、あれは魅入ってしまう。

あの子は、家君(いえぎみ)()()()()()()()()()()()

物理的な話じゃなく、精神的な話だ。

 

人間の魂様(こんよう)によって在り方を変える妖怪は、当然の事ながらその認識によって性質が変わる。

未知への恐怖は妖怪を肥大化させる。

経験による知識から妖怪(わからないもの)を避けようとする。

程度の差はあれどそれは人間が生きていくうえで必要で、誰もが持つ性質だ。

 

故に、妖怪から目を逸らす。

名をつけ、想像し、理解した気になる。

それは生き残る為に必要な行為だ。

 

家君(いえぎみ)だって恐怖がない訳じゃない。

避けるべきものを知らない訳じゃない。

恐怖も知識も持ったうえで妖怪と同じ目線で妖怪を見る。

 

妖怪の本質に触れることが出来る逢魔人(オウマガビト)にそんな事をされれば、興味を向けない(魅入らない)妖怪なんていない。

 

(別に全ての妖怪に対してそうする訳では無いがのう。必要とあれば意図的に目を逸らす事くらいはするぞ)

 

それは当然だろう。

どうしても人間と相容れない妖怪というのは存在するのだから。

 

それでも、わからないものを避けようとする(妖怪から目を背ける)のと、理解したうえで避ける(あえて目を逸らす)のは違うのだ。

 

とはいえ、よくもまぁ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と感心するよ。

朱に交われば赤くなる。

ここまで妖怪に深く触れ続けていれば、知らず知らずのうちに妖怪変化となり果てていてもおかしく無いのに。

 

もしかして、君が防いでいたりするのかい?

 

うんにゃ(いいや)、あ奴が自分で混ざらぬようにしとるだけじゃよ。どうやら無意識にやっておるようじゃが)

 

無意識に?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()を懐に入れる事で自身の再定義をしておる。具体的には儂とミコトと……今日より百重(おぬし)もじゃな)

 

人間としての家君(いえぎみ)……

 

(そうじゃ。大抵の妖怪は魅入る前は人間の一人としてしか見んし、魅入ったら魅入ったで陽宮尊としか見んからな。自分で言うのもあれじゃが、両方の在り方を見れる妖怪は実は希少なんじゃよ。お主が人間としての『マヨイガの主』をタケルに求めたことで、()()()()()()使()()()()()()じゃろ)

 

あれ、そういう事だったの?

単純に仲の良さの問題かと。

 

(それも間違ってはおらんがな。懐に入れてもいいと思う程仲が深まったという事じゃし。そもそも意識して言葉使いを変える基準を決めている訳ではないからのぅ。本人的には何となくこちらの言葉使いの方がいいかなと思った程度じゃろ)

 

そっか。

家君(いえぎみ)此方達(こなたら)を必要としてくれたのか。

 

ただでさえ異世界と現世の両方で神名を持つ人間という得難い相手なのに、()()()とは正に運命的だ。

 

(……タケルの(つがい)はミコトじゃぞ。(めかけ)なら別に構わぬが)

 

いや、別にそういうのじゃないから。

 

(ならよいがな)

 

 

(話の本筋からは外れるんじゃが念のため誤解ないように言っておくと、儂もミコトもタケルが妖怪変化となるならそれはそれでと思っとるからの。人間であると見る事と、人間であって欲しいと望むことはまた別の話しという事じゃ)

 

あ、そうなんだ。

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