俺と天狐の異世界四方山見聞録   作:黒い翠鳥

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File No.05-1 『焼き餅は狐色』

「嘘なのだ!!」

 

突然庭の方から聞こえた声。

そちらを見ると、黄金色の髪をした少女が涙目でこちらを見ていた。

 

若い、というよりむしろ幼い。

見た目の年齢を言えば辛うじて10は超えているかというところだ。

さらに言えば()()()()()()()()なのだ。

おそらくだが異世界人ではない。

 

「タケルの(つがい)はボクなのだ!! 取ったら許さないのだ!!」

 

え? え? え?

何の話!?

 

少女の怒気と共にピンと立った耳と()()()()()()()が現れる。

その姿は正に──

 

「九尾の狐」

 

「そうなのだ! ボクには尻尾が九本ある! 狐は尻尾の数が多いほど凄いのだ! だからそっちの尻尾が四本しかない狐よりボクの方がタケルに相応しいのだぁ!!」

 

なんか必死に訴えかけているが、顔は涙目である。

それは大事なものを奪われまいと勇気を振り絞る幼子のようだ。

 

実際、狐妖怪は尻尾の数が多いほど凄いというのは事実である。

そしてその最大数は九本。

そういう意味ではこの少女は狐妖怪の最高位にいると言ってもいいだろう。

ただ、まぁ──

 

「落ち着けぃ」

 

「へぶん!?」

 

コンのチョップが少女に炸裂した。

瞬時に人に変化して放たれたそれは綺麗に少女の額にクリーンヒット。

少女は頭を抱えて(うずくま)っている。

 

先の話はあくまで()()()()()()()の話だ。

コンのような霊狐はどちらかというと神獣に分類される。

一応霊狐も妖怪としての特徴を持っているのだが、一般的に狐妖怪と言えば野狐の事を指す。

野狐とは神性を持たない狐の総称であり、実は普通の狐も含まれていたりするがその辺は一先(ひとま)ず置いておくとしよう。

 

そして霊狐は九尾に至った野狐が修行や信仰等により、肉体を失い神性を得た存在だ。

ぶっちゃけ霊狐というだけで九尾より凄いのだが、霊狐は狐本来の(かたち)へ還る気狐や()()()()()()()()()()()空狐などのように、尻尾の数は割とまちまちだ。

そして霊狐の最上位である天狐は凄くなれば凄くなるほど尻尾の数が減っていく。

天狐の尾の最小数は四本であり、コンは四尾の天狐。

野狐の九尾など相手にならないほど高位の狐なのだ。

 

ちなみに、『白面金毛九尾の狐・玉藻御前』を前記の話に当てはめてはいけない。

彼女は九尾の狐の例外中の例外。規格外中の規格外なのだから。

 

「どこから聞いていたかは知らぬが、儂の(つがい)はタケルの過去世じゃったと言うだけの話。タケルに(つがい)はおらぬ」

 

まぁ、彼女いないからね。

 

「そもそも、其方(そなた)がタケルの(つがい)とはどういう事じゃ? 事と次第によっては応援するのもやぶさかではないぞ」

 

コン!? いや俺も気になってはいたが、心当たりがない。

 

「……したのだ」

 

「なんじゃ?」

 

()()()()()()!! タケルがボクをお嫁さんにするって!!」

 

 

 

はい!?

 

 

 

 

 

「第一回『タケルの嫁になりたいかぁ!!』」

 

「なのだぁ!!」

 

え? え?

いきなり話が飛んだんだけど!?

そしてノリがいいな、お前ら。

 

「やることは簡単。お題に沿って自らの魅力を主張し、タケルに嫁に来て欲しいと思わせれば勝ちじゃ」

 

「らくしょーなのだ!」

 

「頼もしいのぅ。では最初のお題は『夕餉(ゆうげ)(晩御飯)』じゃ。男の胃袋を掴むのは大事じゃぞ」

 

「任せるのだ。美味しいものの見分け方は知っているのだ」

 

「食材や道具はマヨイガのものを自由に使ってよい。では始め!」

 

「なのだー」

 

元気よく飛び出していく狐娘。

それを見送ったコンはふぅと息を吐き体を伸ばす。

 

「さて、分かったことを整理するとしようか」

 

おう。俺には何が何だかさっぱりなんだが。

 

「まず、あやつの言っておった約束についてじゃが、タケルの過去を見る限り多分これじゃなというものがあったぞ」

 

マジか。完全に覚えが無いのだが。

 

「無理もない。当時のタケルはまだ五歳じゃったしのぅ。あ、満年齢でじゃぞ」

 

五歳とか小学校入学前じゃん。

絶対結婚の意味も分かってないよ。

 

「相手が妖怪というのも理解してなかったじゃろうしな。じゃが、約束は約束じゃ。少なくとも()()()()()()()()()()()()()

 

何してんだ当時の俺! と言ったところでどうにもならんよな。

妖怪と約束するという意味はよく知っている。

なにせ具体例が目の前にいるのだから。

 

「約束が成立してしまった以上、タケルが取れる選択肢は少ない。勧められぬものを含めても四つじゃな」

 

一つ目は約束を守って結婚する事。

 

別に絶対に結婚したくないという訳ではない。

可愛い子だったし、そんな子から好意を向けられるのは素直に嬉しい。

容姿の幼さが気にはなったが、コン曰く妖怪としては成熟しているとのこと。

つまり見た目が幼いだけの大人の女性と言えるわけで、それなら別に構わない。

 

俺がすぐにこの選択肢を選べなかったのはあの子の事を何も知らないから。

ある種の恐怖心と言ってもいい。

まぁ、これは俺が歩み寄れば時間が解決してくれる問題ではある。

 

二つ目はあの子を殺すこと。

 

いや、選択肢に入れておいてなんだが、完全に論外だろ。

あんな言動しておいて実は超凶悪な妖怪でしたとかでもない限り取れる選択肢ではない。

あくまで『妖怪との約束は当人が死んだら無効』というルールを逆手に取る方法があるというだけの話だ。

 

三つめは俺が死ぬこと。

 

話としては二つ目と同じだ。

俺が死んだとしても約束は無効となる。

もちろん論外も論外である。

少なくとも結果と代償が釣り合っていない。

 

四つ目は約束が勘違いだったとあの子に認識させる事だ。

 

なお、(しら)を切ったり「そのつもりは無かった」とかは即アウト。

あくまで「こういう勘違いをしている」と説明して、相手が納得すれば約束自体が無かったことになる。

納得しなかったら? 選択肢が二つ目と三つ目しかなくなる。

妖怪との約束を否定する事は、それほどリスクがあるのだ。

 

そうなると選択肢は実質一つしか残っていないわけだが、実はここで取れる道が二つある。

すぐ結婚するか、後から結婚するかだ。

 

要するに約束は果たすけどもうちょっと待って、というのだ。

当然これには理由がいる。

相手を納得させて約束に追加事項を加えるのだ。

 

もちろん約束を果たす気が無いと思われては駄目。

無難なのは年齢を盾にすることだが、妖怪的には数え年で十五・六もあれば十分結婚出来る年齢らしいので相手が納得してくれるかは微妙なところ。

 

「別に良いのではないか? 聞いていなかった許嫁(いいなずけ)がおったと思えば」

 

嫌じゃないのよ、うん。

いきなりの事で心の整理が追い付いていないだけで。

あと、あの子の正体が分からないのも決めきれない原因だ。

 

狩谷(かりや)の九尾、だっけ?」

 

「そう名乗っておったの。ただ、そのような妖怪など聞いたことが無い」

 

狩谷というのが地名かはたまた人名か。

谷で狩りをして暮らしていたから狩谷という可能性もある。

はっきり言って候補が多くて絞り込めない。

 

「『宿命通』でも見通せぬからおそらく付喪神とか器物関係の妖怪とは思うんじゃが」

 

コンの言う通り、あの子には『宿命通』が通じなかった。

 

これは別にあの子が防いでいるとかではなく、器物に魂が宿ったタイプの妖怪の過去は非常に見づらいという『宿命通』の仕様上の問題だという。

前世という過去が無いため、過去を見る取っ掛かりが無いのだそうだ。

理屈は説明されても分からなかったが、見えないのでは仕方ない。

 

一応、時間を掛ければ不可能ではないそうだが、よほど運か能力が無ければ十日や二十日で出来るようなものでは無いらしい。

ちなみに前世を持つ()()()()()()()()()()相手なら問題なく通じるらしいが。

 

「今、縁を辿(たど)って確認しておるからもう少し待て」

 

それしかないか。

そんなやり取りをしていると、どたどたと足音が聞こえてきた。

 

あの子が帰ってきたようだが、妙に早い。

マヨイガの台所を使ってもここまで早くなるとは思えないのだが、何か分からない事でもあったんだろうか。

 

「ご飯の用意が出来たのだ!」

 

現れた狩谷の九尾が持ってきたのは籠一杯に入った生野菜。

一応洗ってはいるようだが、素材の良さを生かしすぎである。

 

「一番おいしいの持ってきたのだ。食べるのだ!」

 

そう言ってニンジンを一本差し出してくる。

純粋なキラキラした目でこちらを見ている事から、これが嫌がらせの類で無いことは分かる。

だが、流石に晩御飯がこれというのはちょっと……

 

「なぁ、料理って知ってる?」

 

「? 聞いた事はある気はするのだ。でも何かはしらないのだ」

 

……マジか。

 

「教えてあげるから台所に行こうな」

 

「? 分かったのだ」

 

別に女性は料理ができなくてはと思っている訳ではないが、流石にあれは無い。

 

 

 

 

 

夕食を作ってみんなで食べ、ゆったりとお風呂タイムである。

あ~、癒されるな。

 

「第二回『タケルの嫁になりたいかぁ!!』」

 

「なのだぁ!!」

 

何事!?

 

見れば湯着を着たコンとすっぽんぽんな狩谷の九尾がそこにいた。

いつの間に入ってきた!?

 

大事なところを全く隠さず堂々としている辺り、羞恥心というより恥ずかしい事という認識自体が無いのだろう。

体形が体形なので子供の裸とみれば、うん、欲情はしなくて済みそうだ。

 

「今回のお題は『背中流し』。一人では難しい事も二人なら簡単じゃ」

 

言っている事は間違っていないが、いまいち釈然(しゃくぜん)としないのは何でだ?

 

「タケル、背中を綺麗にするからこっちに座るのだ」

 

実は湯舟に入る前に一通り体は洗っているのだが……せっかくだしお願いしようか。

 

湯舟を出て指定された場所に座る。

元々一人で入っていたので隠すものは何も無かったが、狩谷の九尾の羞恥心が無さ過ぎて隠す気も起きん。

コンの方は今さらだ。

 

「それじゃ、始めるのだ」

 

狩谷の九尾が何かを手に取り──

 

「待て待て待て待て待て!」

 

コンに止められた。

一体どうした。

 

「それで何をする気じゃ!」

 

狩谷の九尾の方を見ると、その手には亀の子たわしが。

それで何をする気だ!

 

「うみゅ? 何か間違えたのだ?」

 

その後コンが丁重に教えることで無事背中を流してもらうことが出来た。

気持ちよかったけど、コン、尻尾洗いなんてマニアックな事教えないの。

それを疑いもせずに素直に実行する狩谷の九尾の純粋さにちょっと不安を覚えたのだった。

 

 

 

 

 

日も落ち、辺りもすっかり夜の(とばり)が下りたころ。

そろそろ寝るかと布団を敷いた。

 

ちなみに狩谷の九尾の寝床は別室にコンが用意している。

マヨイガに来て俺もすっかり早寝早起きが身についてきたな。

照明の関係で夜遅くまで起きている理由が無くなったともいえるが。

 

「第三回『タケルの嫁になりたいかぁ!!』」

 

「なのだぁ!!」

 

またかよ!

今度は何だ。

 

「お題は『夜の営み』じゃ。床上手は夫婦円満の秘訣じゃぞ」

 

おい、ちょっと待て。

 

「それなら何度も覗いたことがあるから分かるのだ」

 

そういう知識はあるのか……覗いた?

 

「でも、あれって夫婦(めおと)になった人がするものだって聞いたのだ。ボクとタケルはもう(つがい)になっているのだ?」

 

「いや、まだじゃな。じゃが、夫婦でなくとも出来ることはある。特に狐妖怪には吸精という名目もあるのじゃから」

 

そうだな、その名目で思いっきり搾り取ってくるもんな、コン。

 

狐妖怪は基本的に性別問わず陰に属するため、自身で持っている陽の気が少ない。

なので陽の気が強い男から精力と共に頂いてしまおうという訳である。

狐妖怪が男をたぶらかす理由はだいたいこれだ。

霊狐にまでなると大気中の陽気を取り込めるようになるので必要はなくなるが。

 

「それでは説明も終わった事じゃし、いざ吸精じゃ」

 

「なのだぁ!」

 

ちょっと待て!

げ、体が動かん。これはコンの金縛り!?

しかも喋れない!?

まだ心の準備が!

 

ちょっと待てぇ!!!

 

 

 

 

 

「おはようタケル。朝なのだ」

 

布団ごと体をゆすられて意識が浮上する。

もう朝か。

 

寝ぼけ眼で起こしてくれた相手を見る。

あれ? コンじゃ無い?

あぁ、九尾ちゃんか。

 

「おはよう、九尾ちゃん」

 

布団から出て挨拶をする。

 

狩谷の九尾という呼び方はいまいち呼びづらく、かといって名前を付ける訳にもいかない。

なのでいくつかの候補と共に本人に選んでもらったところ、可愛いという理由でこの呼び名になった。

 

「もう少ししたら朝ごはんが出来るのだ。だから着替えたら居間に来て欲しいのだ」

 

昨日は野菜をそのまま持ってきた娘ではあるが、これはガチで料理というか人間の食事に関する知識が何も無かったかららしい。

現在はコンに料理を習っているところだそうだ。

 

「わかった」

 

俺が答えると九尾ちゃんは嬉しそうに台所の方に歩いて行った。

 

結局、昨日の夜の営みとやらは添い寝で終わった。

コン曰くまずはお互いに慣れるところかららしいのだが、それならそうと先に言え。

確かに添い寝でも陽の気を取り込めなくもない。効率を度外視すればだが。

 

「タケルよ、ちょっと良いか?」

 

寝間着を着替えようとした直後、コンが部屋に入ってきた。

九尾ちゃんが部屋を出てすぐ、入れ替わりになるかたちで。

ちなみに今日のコンは30歳くらいの見た目に変化している。

 

「居間に行ってからじゃダメか?」

 

「狩谷の九尾の居らぬところが良い」

 

了解、と言いながら着替えようとするのを一旦やめる。

着替え終わったら居間に行くといったから、着替える前に聞かないといけないからな。

 

「あ奴の正体が判明したので伝えておこうと思ってな」

 

それは朗報。何だったの?

 

「狩野の九尾の正体は『屏風覗き』じゃよ」

 

『屏風覗き』? 確か夜中に屏風の裏から覗き込んでくる妖怪だったか。

覗いてくるだけで害はないそうだが。

 

「うむ。どこぞの家の寝室に飾られていた屏風じゃったらしい」

 

あぁ、それで夜の営みの知識はあったのか。

覗いてたって言ってたし。

 

ただ、それなら何で九尾の狐なのだろうか。

所説あるが屏風覗きは屏風の付喪神だそうだし、『宿命通』で見通せないらしい事からほぼ確定だろう。

それなら狐の姿である必要はなく、そもそも九尾を名乗る理由もないのだが。

 

「それなんじゃが、屏風覗きには外側から覗き込むものと屏風に描かれていた絵が抜け出すものがあっての」

 

なるほど、その屏風には九尾の狐が(えが)かれていたと。

 

「正解じゃ。狩谷という署名もあった故、狩谷という絵師の描いた九尾の狐じゃから『狩谷の九尾』で間違いないじゃろう」

 

絵師の名前だったのか。

 

「ただ、一つ気になる点があってのぅ」

 

気になる点?

どこかおかしいところがあったか?

 

「正体は特定したんじゃが、その屏風は現世にあるんじゃよ。今現在もな」

 

ん? それが何か……あ、そうか。

九尾ちゃんの正体が現世にある屏風の付喪神なのなら、九尾ちゃんがここにいるのはおかしい。

 

今、マヨイガは異世界にあるのだ。

本体から抜け出るタイプの付喪神は、その移動距離に限界がある。

普通であれば庭を含めた家の中程度。

妖力の強いタイプでもせいぜいが同じ町内くらいが限界だ。

とても異世界まで来ることはできない。

 

「一応、本体から離れている間に神隠しにあったのであれば異世界にいる事は説明できるのじゃが……」

 

はっきり言ってそれは人間が突然宇宙空間に飛ばされたに等しい。

移動距離に限界があるのは、本体から離れすぎると妖怪が存在する為に必要な要素が供給できなくなるからだ。

もし九尾ちゃんが神隠しに遭ったのなら、まともに生き(存在し)ている事すら難しい。

 

コンもそれは分かっているから言葉を濁したのだろう。

無稽だと。

 

「じゃから、儂はあ奴を信用しきれぬ。あぁ、勘違いせぬように言っておくが、天狐としての儂は狩谷の九尾を好意的に思っておるぞ」

 

コンは一旦ここで言葉を区切った。

コンが九尾ちゃんを好意的に思っているのは本当だろう。

でなければあんなに九尾ちゃんを俺に(けしか)けることはしないだろうから。

 

「じゃが、タケルの守護狐の儂としてはまだ信用できぬのだ。いくらあ奴が善性であろうとも、その不明瞭な点がタケルを害さぬ保証はない。こういうものは得てして本人の意思とは関係なく起きる物じゃからな」

 

だから、ずっと九尾ちゃんを見張っていたのだろう。

昨日から俺とコンが一部屋でも離れる時、コンは必ず九尾ちゃんの側にいた。

さっき九尾ちゃんが起こしに来た時も、入れ替わるようにコンが現れた。

何があっても動ける位置で、目を光らせていたのだろう。

 

これは九尾ちゃんが何者なのか真に判明するまで終わらない。

コンが俺に憑いた守護狐だから。

 

()()()()()()()()()()()()()から、コンの意思とは関係なく、俺を害する危険を見過ごせない。

危険があるのかどうかも分からないものを、放置する事はできない。

例え何らかの危険があったとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()、コンも安心して九尾ちゃんを信用することが出来るのだが。

 

それに……

 

「もしかしたらじゃが、何らかの方法で現世と繋がったままの可能性もある。現世に戻るための鍵になるやもしれんしのぅ」

 

そうなんだよね。

その可能性もあるからどっちにしろ理由を突き止めないといけないんだよね。

しかも本人には秘密のまま。

 

九尾ちゃんがその理由を自覚していれば別に問題は無いのだが、無自覚だった場合が不味い。

例え今存在している事実があろうとも、自分の存在を否定する事実を突き付けられたときにそれを否定できなければ、妖怪は存在を維持できずに消滅する。

それは流石に嫌だ。

念のため『我思う、故に我あり』とでも刷り込んでおこうか。

 

「探りを入れるのは儂に任せておれ。タケルは昨日と同じように狩谷の九尾と接すればよい。天狐の儂としては、タケルの嫁として悪くない相手じゃと思うておるからな」

 

あくまで九尾ちゃんの不明瞭なところが信用できないだけで、九尾ちゃん自体は気に入っていると告げるコン。

 

「さて、これで話は仕舞じゃ。時間を取らせて悪かったのう。早う着替えて朝餉にしようぞ」

 

そうだね。

中間報告は受けたが、ぶっちゃけそれに関して俺が出来る事は無いんだよな。

だからまぁ、その辺気にせず今まで通りでいるとしよう。

俺も結構、九尾ちゃんの事を気に入っているのだから。

 

 

 

 

 

その日は何度か「タケルの嫁になりたいかぁ!!」「なのだぁ!!」の声が響いたが、概ね平和に過ぎていくのだった。

 




『焼き餅は狐色』
女性の適度なやきもちは可愛いが、度が過ぎると嫌われやすい。餅を狐色に焼くように、程々に焼くのが良いという意味。

特にそんなシーンはありませんでしたが、ぷくーと膨れた九尾ちゃんは可愛いです。
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