恐らく王宮サイドでは谷口を視点として書くことになるだろうと思います
夜遅く、俺は八重樫に呼ばれ王宮を歩いていた。
白崎じゃなくて俺を呼ぶってことはかなり余裕がないんだろう。
というより女性の部屋に男子が行くってことに気づいてないしな。
引き受けた俺も悪いけど女子の部屋に二人っきりって結構まずいんじゃと少し不安になる。
まぁ、でも断れる状況じゃなかったしなぁ。
さっきの状態から不安で押しつぶされそうな。
八重樫もいつもはしっかりしているんだけど、こういう時はやっぱり女子ってことを再認識させられる。
そうもやもやしながら歩いていると八重樫の部屋に着く。
ノックをした後しばらく待つと扉が開くのだが
「へ?」
俺はキョトンとしてしまう。いや見とれてしまうと答えた方がいいか
薄い桃色のネクジェに白いカーディガンを着込んだ格好になっていた。
あまりにも似合っているのと普段からのギャップ差が激しいのでかなり新鮮だった。
「あら?どうしたのかしら?」
「い、いや。服似合っているなって思ってな。」
「えっ?」
「……なんでもない。と、とりあえず中に入れてくれないか?見つかるとちょっとやばいし」
すると首を傾げる八重樫。どういうことなのか考えてそして「あっ!」と小さく声に出した。
「え、あっ。その。そういうことじゃなくて。」
「分かっているから。つーかそういう判断ができないくらいに不安なんだろ。まぁその不安な奴に現状を話すのは気がひけるのだけど」
「……現状?」
「あぁ。とりあえずありゆる可能性を何パターンか共有しておいた方がいいだろ?特に天之河のことについては俺はよく分からないからな。なんでみんなを巻き込んでまで戦争に参加させようってしたんだろうか?」
色々考えたいことがあるしできれば天之河の行動原理を握っておきたい。
とりあえず部屋に入り近くのソファーに座る
「……やっぱり反対なの?」
「当たり前だろ?従うって戦争に参加するってことじゃない。やばそうだったら断ればいいし、とりあえずあの教皇がうまくあいつを動かしていたからな」
「動かす?」
「あぁ。というよりも演じるのがうまかった。とさら魔人族の冷酷非情さ、残酷さを強調するように話していたからな。ぶっちゃけ戦争しているって理解しておけばそれは当たり前の行為にしかすぎない。つーか元々戦争のきっかけってなんだっていうのも考えられる一つだ。」
そうやって少しおかしいと思っていたことを何箇所はピックアップし話していく。
するとしばらく話していると八重樫がキョトンとしていることに気づく
「ん?どうした?」
「よく気づいたって思ったのよ。私そんな余裕なかったから」
「ん〜トラブルやピンチには慣れているからかなぁ。締め切り近かった時なんかはこんな風に慌てていたからな」
結果余程のことがない限りはこんな風にあまり動じなくなったんだけど。
「って本当の目的忘れていた。八重樫大丈夫か?」
「えっ?」
「不安なんだろ?今後のこととか、戦争のこととか」
白崎には弱さを見せたくなかったんだろう。だからこそ俺が気づいたことにより俺に頼ってきた。
「えぇ。ごめんなさい。迷惑だったかしら」
「いや。つーか元々お前は溜め込みすぎ。周りの範囲を広く見れるのはいいけど、それを何でも自分で抱えようとするなよ。少しくらい今みたいに甘えろ。これから先もっと辛いことが起こることは確実だからな。いつか潰れるぞお前」
「……」
「つーか。一度俺はそれで潰れかけたからな」
「えっ?」
「……中学生の時な、一時期スランプっていうか、自分が読んでも面白くないって思う時期があって、一時期学校すら行かずにずっと悩んでいた時期があるんだよ。実際そのころに出した作品は全く反響がひどかった。中学三年のころは受験も重なって踏んだり蹴ったりでさらに親父たちの世話だってあったしな。正直この学校も第二希望だったんだよ。でもいつのまにか勉強でもスランプにハマっていってな」
それは本当に辛かったことばっかりだった
「……まぁ、結局高校入ってもしばらくはそんな感じでさ。元々楽しんでやっていたから売れていたわけであって、売れる作品を書こうとして、面白いものが書けるわけないんだよ。んで、思いっきり悩んで、眠たくてもストレスからか眠れなくて、思いっきり黒い隈ができてなぁ。そのせいか入学式からずっと怖がられていてなぁ。ハジメは中学時代から仲よかったけどそのほかは全く。ゾンビとかグールって呼ばれていたしなぁ。それに会社から小説のことは対外に漏らしたらアウトだし。だから相談ができなくて。かなり苦しかったな」
だからこそ限界だった。結局何度も体調を崩したり、成績が格段に落ちたり日常生活にも支障を得ていた。
「ハジメの母さんから助言くれたんだよ。楽しいことは楽しみなさいって。他人の評価も忘れて自分の思い通りの作品を作ればきっと後悔しない作品を作れるからってな。元々は俺の両親が俺が困っていることに気づいていたんだけど仕事の話は絶対にしないような家風を持っていたからな。だからちょっと強引に俺をハジメの母さんのところに連れ出してくれて。まぁ何をいいたいのか一人で解決しない方がいいんだよ。たまには他人に頼らないと自分を押し殺すことになってしまう。頼られることが当たり前だと思ってしまうのが既にダメなんだよ」
実際八重樫の悪いところを挙げるなら恐らく人を頼ろうとしないことだろう。人を頼られることに慣れすぎている。それがいつのまにか自分を縛っているように見えたのだ
昔の俺のように、それが当たり前のことであると思い込んでいるのだ。
「面白くない話だったかもしれない。でもさすがに今の状況でお前が弱さを見せる人はいないだろ?たまにはお前も白崎みたいに時には素直に誰かに甘えてもいいのじゃないのか?お前。白崎や谷口、天之河や坂上でも誰でもいいんだよ」
すると八重樫は少し困ったような、不安げな様子を見せる。
「……でも、どうすればいいの?」
「……素直に話を聞いてほしいとか遊びにいきたいとか色々あるだろ?例えば白崎と異世界にきたんだから街の様子を見て回ってもいいんじゃねーの?」
「へ?」
「だって異世界だから地球にはないことだって色々あると思うぞ。戦争をするために呼ばれたのは分かるけど、さすがに毎日のように訓練ってことはないだろうしな。まぁ俺もこっち側の童話とか色々見てみる予定だし、食べ物や調味料も少し気になるしなぁ。一人でいると少し不安になるしハジメとか誘ってもよさそう。まぁ、制限は結構かかると思うけどそれでも色々世界を見るっていうのは面白いものだぞ。八重樫の場合、一人でいるっていうのが一番辛いことなんじゃないのか?昔なにがあったのか俺は知らないけど対人関係で何かあったんじゃないかって思ってな。それにやけに白崎にべったりだったからどちらかといえば八重樫が白崎に甘えていると思っていたんだけど?」
八重樫が一瞬動揺しているので実際当たっているんだろうな。俺はとことん似た者同士だと苦笑いしてしまう。
俺も同じなのだ。ハジメを引っ張っているように見えて、ハジメの優しさに甘えてしまっているのだ。だから分かってしまう。
八重樫が今何を思っているのかが
「まぁ、幼馴染に気を使っている八重樫にさすがに今更どうこういうのは分からないしな。俺でよければ愚痴くらいなら付き合うしな。だからもっと人を頼れよ。つーか俺も白崎もちゃんとお前が弱いってことを知っても離れることはない。辛いってことは吐き出してしまえ。苦しいことがあればちゃんと相談しろ。相談したことは白崎やハジメにも言わないし隠したいことなら隠しておいてやるから」
と言った時だった。八重樫が急に立ち上がると俺の方に近づいてくる。
少しキョトンとしていたので回避も何もできなかった。
ぎゅっと柔らかくシャンプーのいい香りが鼻腔をくすぐり抱きついてかれているんだとわかってしまう。
「えっ?は?ちょ」
「……怖い。」
するとポツリと呟く八重樫
その一言に俺は口を閉ざす。
「怖い。なんでこんなことになったの。どうして私たちが戦争に出なくちゃならないのよ!」
流れ出した言葉は止まることがなくそしてどんどん流れていく。
それでいい。
人間は弱い生き物である。
誰かに嫌われるから、
誰かに好かれたいから、
人は仮面を着けたがる。
涙が溢れ、弱さを吐き、そして仮面を外す。
ダンジョンだけではなく元の世界、地球でのことも、
剣なんて持ちたくなかったこと。
可愛い服やアクセサリーが欲しかったなどと自分の本心を言葉にする。
そして本心を吐き出してしまえば、こいつは現状を理解する。
大丈夫
俺は少し迷いながら八重樫の頭を軽く撫でる。
少し反応をしたがそれでも振り払うことはしなかった。
今はこの少女を甘えさせてあげようと、俺はずっと聞き手に回り、優しく頭を撫で続けた。