『シールドエネルギー0! 勝者、セシリア・オルコット!!』
「「えぇっ!?」」
目の前で繰り広げられた試合の結末に、控室にいた俺と織斑千冬の口から同時に大きな溜め息が漏れた。
あの後、二試合目はセシリアと織斑の試合となった。
俺は元々セシリアとの試合はしたかったが、クラス代表になんかなる気は更々無かった為に棄権する旨を伝えている。
初めこそ猛抗議してきた織斑だったが、元より先に名前を挙げられていたのは織斑だったのだから俺は知らん。
全力で無視を決め込んでいると、渋々と織斑は諦めて引き下がった。
そして迎えた試合だったのだが、結果から言えばセシリアの勝利だった。
連戦による疲労や、俺が破壊したせいでユニットの数が少なかった事が関係してはいたが、意外にも織斑はセシリア相手に善戦していた。
しかし最後の一撃、
だがその勝利方法が、織斑の機体性能の把握不足による自滅に近いもの。
……やはり、馬鹿だったな。
「……はぁ」
再度溜め息を溢し、俺はアリーナに背を向ける。
「待て五十嵐、本当にお前は織斑と試合をしないのか?」
「興味無いな、元々代表になるつもりも無い……それに、あんな馬鹿な負け方をした奴と試合をするなんて真っ平御免だ」
「それは……まぁ、わからなくは無いが」
「もう良いか?」
「はぁ、わかった、行って良いぞ」
その言葉を聞いて俺は控室を後にした。
廊下へと出たその足で、そのまま"向こう"へと向かって歩き出した。
「あ、悠斗さん!」
ノックをしてから反対側の控室に入ると、セシリアが笑顔で出迎えてくれた。
そんなセシリアに来る途中で買った飲み物を渡しつつ先程の試合について話をする。
「とりあえずおめでとう、で良いのか?」
「……納得出来る試合だと思いましたか?」
「……いや、無理だな」
ベンチに並んで座り、疲れきった表情でそう愚痴るセシリアに労りの気持ちを込めて頭を撫でてやる。
「ん……もう悠斗さんたら、こんな風に甘やかされてしまったら私直ぐに駄目になってしまいそうですわ」
「嫌か?」
「そんな筈がありませんわ、寧ろもっとして欲しいぐらいですもの」
そう言って撫でられている頭をそのまま俺の肩へと預けて来るセシリア。
俺もそうだが、セシリアも大概だと思うけどな。
「それより悠斗さんは試合をしないんですの?」
「あぁ、元々代表になるつもりは無かったからな、それにさっきあんな間抜けな負け方をした奴と試合なんかしたく無い」
「ふふっ、悠斗さんらしいですわね」
俺らしい、のか……?
「俺はやらないから、あいつに勝ったセシリアが代表になるんだろう?」
そう尋ねるとセシリアは一度目を伏せ、肩に乗せていた頭を離すと俺に頭を下げて来た。
「セシリア……?」
「……その事ですけど、私クラス代表を辞退しようと思っておりますの」
その言葉は、正直意外だと思った。
間違い無くクラスで一番実力があるのはセシリアの筈だが。
「私はイギリスの代表候補生として、ずっとISに携わって来ましたの。 それなのに今日のこの結果、己の実力不足を痛感しましたわ」
「そんな事は……」
「悠斗さんに負けて、先程の試合もあんな素人に追い詰められる事があって、そんな私がクラス代表だなんてなる資格はありませんわ」
「いや待て、俺との試合は機体の性能があったからで、さっきの試合も連戦による疲労や武装の問題もあった筈だろ?」
「それは只の言い訳にしかなりませんわ、それに代表候補生となって本国から専用機を受け取るという事が、データ収集以外にどの様な理由を持っているのか、悠斗さんならお分かりになりますでしょう?」
「……他国に対するIS開発の技術力、軍事力の牽制……といった所か?」
「そうです、それなのに連戦で疲労していた、新型の性能が高くて負けた、そんな事言える筈がありませんわ……言っておきますが、悠斗さんは機体の性能だけで無くご自身の実力があるという事をお忘れにならないで下さいまし」
随分と、俺を買ってくれているんだな。
「それに確かに先程あんな負け方をした彼ですが、素人でありながら筋は悪く無いのも事実……馬鹿で勉強不足で基本や基礎理論すら覚えていない馬鹿ですが」
……馬鹿と二回言ったな、事実だが。
「ですから私は辞退して彼にクラス代表を譲ろうと思いましたの……せっかく悠斗さんが試合をして下さったのに、本当に申し訳ありません」
「……いや、謝る必要は無い。 セシリアが考えて出した結論なら俺から言う事は何も無い、支持するさ」
「悠斗さん……ありがとうございます……」
そう言って、再度セシリアは俺の肩へと頭を預けて来る。
「ですが、疲れたのは事実ですので、もう少しこのままでいても宜しいでしょうか?」
不安そうに上目遣いでそう告げて来るセシリア、その突然の不意打ちに思わず息を飲んでしまったが何とか顔には出さずに頷いた。
「……あぁ、試合はもう終わったんだからゆっくり休んでくれ」
「ふふっ、ありがとうございます……」
そう言って目を閉じるセシリア。
その美しい顔を見ながら、時間の許す限りそのままの状態でセシリアの頭を撫で続けるのだった。