「……何だって?」
着替え終えてから、いつもの面子と昼食を取っている時に向かいに座る相川から告げられた言葉に俺は思わず聞き返してしまった。
「だから、織斑君のクラス代表就任パーティー! 今晩やるから五十嵐君にも参加して欲しいの!」
「織斑の為のパーティーなら俺が参加する必要は無いんじゃないのか?」
「そんな事言わずにさ! せっかく開くんだから五十嵐君も来てよ!」
正直、面倒以外のなにものでも無いんだが。
「ねぇお願い! ね!?」
「……面倒だ」
「もう~! オルコットさんからも言ってあげてよ~!」
「えっ? あ、その、せっかく皆さんが企画したパーティーですし、悠斗さんも参加しませんか? 私もご一緒に参加しますから」
「……わかった」
「ちょ!? 私の誘いは断ってたのに!?」
「煩いぞ、行くなら文句は無いだろ?」
「そ、そうだけどさ……」
何やら納得のいっていない様子の相川、何なんだ参加しろと煩かった癖に参加すると言った途端。
しかし面倒だが、セシリアに言われれば断る事は出来ないな。
「……あ、あの」
突然、それまで黙って聞いていた鏡が控え目に口を開いた。
「えっと、五十嵐君とオルコットさん、前から仲は良かったけど、試合の後から名前で呼びあってるし、何だかもっと親密になった様に見えるんですけど……」
「あ、それは確かに気になってた!」
「ゆうゆうにセシリー、そこの所どうなの~?」
鏡の言葉に相川と布仏まで俺達に視線を向けてくる。
あぁ……煩わしいな……。
横目でセシリアを見れば頬を赤らめながら俯いてしまっているが、やがて意を決したかの様に顔を上げる。
「あ、あの! 私と悠斗さんは、その……試合の後に……」
そこまで言って、恥ずかしさから固まってしまった。
……これは、男である俺から言うべき事だな。
「……セシリアに、試合の後に俺が告白した」
「「「……えっ?」」」
目を点にして動きを止める三人。
「セシリアも答えてくれて、その日から付き合っている。 それが答えだが、何か文句はあるか?」
「「「えええええええっ!?」」」
食堂に、三人の驚きの声が木霊した。
食堂にいた全員が何事かと俺達を見てくる……ここだと場所が悪いな。
「……食い終わってるなら場所を変えるぞ、ここだと他の奴らの目がある」
そう促し、俺達は一度食堂から出るのだった。
やって来たのは教室、クラスの大半の奴らが時間まで食堂にいる為俺達以外の姿は無い。
「さて、何処まで話してたか……」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って!」
「何だ?」
「え、あの、二人が付き合ってるって、本当に!?」
「あぁ、本当だが?」
「嘘とか冗談で言ってたりしないよね!?」
「嘘は言って無い、それに俺はそういう嘘は嫌いだ」
俺の言葉に呆然と固まる三人、セシリアは隣で顔を赤らめて俯いてしまっている。
「あ、えっと……」
固まっていた相川が、漸く口を開く。
「本当に、付き合ってるんだ……?」
「何度も言ってるが?」
「あ、いや……」
「……私は、お似合いだと思います」
鏡がぽつりと言葉を漏らした。
全員の視線が集まり、戸惑った様子を見せたが、やがてゆっくりと話し始めた。
「えっと、オルコットさんは私達と同い年なのに国の代表候補生で、五十嵐君は男子なのにISに乗る事が出来て専用機も持ってて、試合もさっきの授業でも初心者とは思えないぐらい凄くて、二人共美男美女で……だから、お似合いだと思いました」
……むず痒い、こうして面と向かって褒められた事なんて無かった身としては。
「えっと、上手く言えないけど……おめでとう」
その言葉に、思わずセシリアと顔を見合わせる。
まさかクラスの奴にこうして祝福されるとは思っていなかった。
「鏡さん……ありがとうございます」
「そ、そんな! 御礼なんて……!」
「……そうだな、ありがとう鏡」
「い、五十嵐君まで!?」
セシリアと俺からの礼の言葉に、鏡は恥ずかしそうに目の前で両手を振っている。
こうして他人の事を素直に祝福出来る事を恥ずかしがる必要は無いと思うんだがな。
「あ、私からも! まさか本当に付き合ってるとは思って無かったけど、おめでとう二人共!」
「ゆうゆうとセシリー、前に夫婦漫才なんて言っちゃったけど本当に付き合ったんだね~」
相川と布仏からも祝福の言葉を言われ、二人に対しても礼を言う。
その時に、セシリアが以前も言っていた布仏の言葉に首を傾げていた為に意味を教えてやると、途端に顔を真っ赤にさせてしまった。
「そ、そんな……私と悠斗さんが、夫婦……」
「もうオルコットさんたら、本音の言葉を鵜呑みにしちゃ駄目だよ?」
「……そうだな、きちんと段階を踏んで、俺一人の力でセシリアの事を養える様になってからだ。 だからもう少しだけ待っていて欲しい」
「ひゃい!?」
セシリアが凄まじい声と共に固まってしまった。
「ちょ!? 五十嵐君!?」
何だ? 違うのか?
夫婦というのはそういうものだと思っていたんだが。
「あ、これは駄目なやつだ」
「い、五十嵐君ってたまに天然だよね?」
「え~? 私は真っ直ぐで良いと思うけどな~?」
「……何の事だ?」
「「「ううん、何でも無い」」」
三人に揃って言われ再度首を傾げていると、隣からセシリアに手を掴まれた。
「どうした?」
「あの、えっと……ふ、不束者ですが、宜しくお願い致します!」
「オルコットさん!?」
「そ、それもまだ早いよね!?」
「あはは~セシリーも真っ直ぐで良いね~」
赤くなった顔で俺を見つめて来るセシリアと、何やら各々騒ぐ三人。
昼休みの教室で、他の奴らが戻って来るまで俺達はそんな会話を繰り広げていた。