インフィニット・ストラトス 漆黒の獣   作:田舎野郎♂

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第21話 転校生、襲来

「おはようございます、悠斗さん」

 

「おはよう、セシリア」

 

朝の部屋の前、迎えに来たセシリアと挨拶を交わして食堂へと向かう。

 

流石に同じクラスの奴らに付き合っている事を公言したからと言ってもあの時の様に腕を組んだりはしないが、直ぐ隣を並んで歩くセシリアを見て自然と笑みが溢れそうになる。

 

「悠斗さん? どうしましたの?」

 

ずっと見ていると、視線に気付いたセシリアが首を傾げて尋ねて来る。

 

「ん? いや、今日も綺麗だと思っただけだ」

 

「えっ!? あ、ぅ……もう、悠斗さんたら……」

 

顔を赤らめながらも、セシリアは俺の方へと少し距離を詰める。

 

その距離のまま、俺達は食堂へと辿り着いた。

 

 

 

「き、来た……!」

「ほ、本当に付き合ってるの……?」

「だってあの距離感見なよ!」

「それに二人の表情見ればわかるじゃん!」

「羨ましい……!」

「でも、あの甘い空気を堪能していたい……」

『わかる……!』

 

 

 

何やら食堂に入ると、昨日までとは違う視線が俺とセシリアに集まる。

 

疑問に思いつつも食券を買い、食事を受け取ってから空いている席を探していると相川達が此方に手を振っていた。

 

席へと向かい、相川達と挨拶を交わしてから席へと着くと同時に相川が口を開いた。

 

「五十嵐君とオルコットさん、元からだったけど一気に学園中に名前が知れ渡ったんじゃない?」

 

「……は?」

「えっ?」

 

その言葉の意味がわからず、セシリアと揃って疑問の声を上げてしまう。

 

「……何の事だ?」

 

「あれ? 知らないの?」

 

「知らないって、何をですの?」

 

「これだよ~?」

 

布仏が何処から取り出したのかわからないが、一枚の紙を取り出して俺達に手渡して来る。

 

二人揃って渡された紙を見ると、どうやら校内新聞の様だった。

 

そして一際大きな文字で書かれた題材を見て、思わず俺は顔をしかめ、セシリアは顔を真っ赤にして固まった。

 

 

【衝撃! 男性操縦者と代表候補生、驚きの一年生カップル誕生! 試合に隠された男女の恋の鬩ぎ合いの真相とは!?】

 

 

……何だ、これは?

 

「ほら、昨日のパーティーに来た新聞部の先輩がいたでしょ? あの人が今朝学園中に配ってたよ?」

 

「……あの女」

 

あの時、去り際に言っていた言葉は、そういう事だったのか。

 

「でも五十嵐君的には丁度良かったんじゃない? 昨日みたいに学園中の女子に詰め寄られる事が無くて」

 

「それとこれとは別だろうが、それに俺はこういう晒し者みたいのが嫌いなんだよ」

 

「まぁまぁ落ち着いてよゆうゆう~」

 

布仏が宥めて来るが、内側から沸々と怒りが込み上げて来る。

 

何が新聞部だ、やってる事がまるでイエロージャーナリズムだろうが。

 

つうか普通こういうのは本人達に許可を取るのが筋なんじゃないのか?

 

勝手に人の名前を出しやがって……あぁクソが、考え始めたらムカついて来た。

 

「い、五十嵐君……!」

「お、落ち着いて……!?」

 

相川と鏡が顔を引き吊らせながら慌てて俺を宥めようとしているのを見るに、今の俺はかなり不機嫌な顔をしているんだろうな。

 

「悠斗さん、落ち着いて下さい」

 

隣から、セシリアが手を握って来た。

 

そのままセシリアの顔を見ると、不思議と込み上げていた怒りが収まって行く。

 

「皆さん怯えていますわ、私も思う所はありますが落ち着いて下さいまし」

 

セシリアの言葉通り、目の前に座る三人の表情は怯えていた。

 

「……すまない、ついカッとなった」

 

そう言うと、三人は途端に安堵の表情となり大きく息を吐いていた。

 

三人には、申し訳ない事をしたな。

 

「よ、良かった、五十嵐君の怒った顔初めて見たけど凄い迫力……」

「う、うん、凄く恐かった……」

「下手すると織斑先生より恐かったよ~」

 

……そんなにか? いや、あいつと違って直ぐに手を上げたりはしないが。

 

「セシリアも、悪かったな」

 

「いえ、私も思う所はありますので……」

 

そう言ったセシリアの表情も不機嫌そうなものになっている。

 

不思議なもので、さっきまでは自分が苛ついていたのに自分以外が苛ついているのを見ると冷静になるものだ。

 

「……まぁ、相川の言った通り、余計な手間が省けたと捉えるしか無いだろうな」

 

「むぅ……」

 

さっきは俺が宥められたから、次は俺の番だな。

 

頬を膨らませるセシリアの頭を優しく撫でてやると、段々と表情が柔らかいものになって行きやがて満面の笑みへと変わった。

 

 

 

「ほ、ほらやっぱり!」

「羨ましい……」

「二人のあの幸せそうな顔……!」

「あんな表情初めて見た……」

 

 

 

回りからの視線を集める事になったが、今となってはもう気にならない。

 

「あぁうん、二人共朝からご馳走さま……あ、そうだった。 話は変わるけど朝に面白そうな話を聞いたの」

 

「面白そうな話……?」

 

「うん、何でも2組に中国から転校生が来るんだって」

 

転校生? 今の時期に珍しいな……だが2組なら俺達には関係無い筈だが。

 

……いや、待てよ?

 

「クラス対抗戦に関係あるのか?」

 

「まだわからないけどね」

 

近々行われるクラス対抗戦、1組の代表は織斑だが他のクラスはまだ不明だ。

 

男でISを動かした俺や織斑は別だが、このIS学園への入学は生半可な難易度では無い、それなのにその中国からの転校生は編入出来たという事はクラス代表になってもおかしく無い実力を持っているのかもしれない。

 

……まぁ、やるのは織斑だからな、俺は関係無いか。

 

「中国からの転校生……この私の存在を危ぶんでの編入かしら?」

 

口元に手を当てながら、真剣な表情で呟くセシリア。

 

だがその頭には未だに撫でている俺の手があるのだが。

 

「オルコットさん、キメ顔してる所悪いけど、頭を撫でられながら言っても締まらないよ?」

 

案の定、相川に突っ込まれていた。

 

「でももしかしたら誰かの知り合いだったりして?」

 

「ちゅ、中国の人と知り合いなんて中々無いんじゃ……?」

 

「そうだよ~そんなグローバルな交友関係ある筈無いよ~」

 

そりゃそうだろ、元々日本に住んでたならおかしくは無いだろうが、日本人でそんな特殊な交友関係ある筈が……。

 

 

 

 

 

 

「久しぶりね一夏!!」

 

……あった。

 

いつもより少し遅くなりながらも教室へとやって来ると、何やら教室の入口で騒いでいる女がいた。

 

「鈴……お前、鈴なのか……!?」

 

織斑も知っているのか、目の前に立つ女に呼び掛けている。

 

まぁ、久しぶりの再開で嬉しいのはわかるが……入口に立たれると、邪魔だ。

 

「おい」

 

「もう何よ!? せっかく感動の……再会……えっ?」

 

声を掛けると女は勢い良く振り向き、ゆっくりと俺を見上げて来た。

 

つうか小さいなこいつ、俺の腰ぐらいしか無いんじゃないか?

 

「入口に立つと邪魔だ、退け」

 

「は、はいぃっ!?」

 

そう伝えると直ぐ横にずれて道を空けるチビ、その前を通って教室へと入った。

 

後ろからセシリアと相川達が続けて入って来るが、何故かチビに一言ずつ謝罪している……何故だ?

 

その後、チャイムが鳴ったにも関わらず残って織斑と騒いでいたが、後ろからやって来た織斑千冬に二人揃って頭を出席簿で殴られていた。

 

 

 

 

 

 

「悠斗! 今日こそは一緒に飯食おうぜ!」

 

「あ?」

 

何事も無く午前の授業が終わった昼休み、セシリアの元へと行こうとした矢先に織斑が俺の席へとやって来た。

 

「結局色々あって一緒に食えて無かっただろ? 一緒に食おうぜ!」

 

「……面倒なんだが」

 

「そう言わずにさ! ちゃんとオルコットさんも誘うから行こうぜ!」

 

大体こいつと一緒にいると何かしらの面倒事に巻き込まれる危険性が高い、出来れば断りたいんだがな。

 

答えを渋っていると、セシリアが俺の元へとやって来た。

 

「悠斗さん、どうかなさいましたか?」

 

「あ、オルコットさん丁度良い所に、今日の昼一緒にどうかな?」

 

「私は悠斗さんが一緒でしたら構いませんけど……?」

 

その答えが内心嬉しいと思いつつも、織斑へと視線を向ける。

 

「ちなみに三人だけか?」

 

「いや、俺はいつも箒と一緒に食ってるから箒も……」

 

「断る」

 

「「えっ?」」

 

二人の驚いた声、それに構わずに俺は立ち上がり移動を開始した。

 

「ゆ、悠斗さん!? あの、失礼しますわ!」

 

後ろでセシリアが織斑に謝罪してから慌てて俺の後ろを追い掛けてくる。

 

「悠斗さん、一体どうされたのですか……?」

 

「……悪いセシリア、歩きながら話す」

 

「わ、わかりましたわ……」

 

セシリアと共に、廊下を進んで行く。

 

「篠ノ之とは、顔すら合わせたく無い」

 

ある程度進んだ所で俺がそう言うと、セシリアは意外そうな顔で首を傾げる。

 

「……何があったんですの?」

 

「……姓でわかると思うが、あいつは束の妹だ」

 

「あ、本当に妹だったのですね?」

 

「……あぁ」

 

 

それから以前の篠ノ之との会話の詳細を話すと、セシリアの表情が変わって行った。

 

 

「その様な、事が……」

 

「……セシリアに言った様に、血の繋がりが無くても俺にとって束は恩人であり家族だ。 それに束が家族の前から姿を消したのは両親とあいつを危険に晒さない為、それを知らずに被害者面で束を恨んでいるあいつが許せない」

 

「悠斗さん……」

 

そっと、セシリアが俺の手を握って来た。

 

「確かに悠斗さんの仰る事はわかりますわ、ですが束さんにとって彼女は血の繋がった唯一の妹です。 それなのにいつまでも擦れ違ったままなのはいけませんわ」

 

「……だが」

 

「直ぐには無理でも、いつかは和解しないと駄目ですわ。 その時は私もご一緒しますから、悠斗さんも彼女に歩み寄ってみましょう?」

 

「……善処する」

 

「ありがとうございます……では、今日は二人で行きましょう?」

 

「……あぁ、すまない」

 

「良いんですのよ」

 

和解、か。

 

確かにセシリアの言う通り篠ノ之は束にとって唯一の妹、俺とは違って血の繋がりがある肉親だ。

 

束の事を考えれば、あいつに対する考えを変えなければならない。

 

……考えても直ぐには出ない、今は余計な事を考えるのはやめよう。

 

セシリアの手を握ったまま、俺達は食堂へと向かうのだった。

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