インフィニット・ストラトス 漆黒の獣   作:田舎野郎♂

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第30話 開戦

あの出来事から一週間、鈴にとって、俺達にとって、そして学園中の奴らにとって待ち望んでいたクラス対抗戦の日を迎えた。

 

結局あの後もアリーナの予約を取る事は出来ないと言われた為に、俺の境遇を利用して織斑千冬に機体性能の確認を理由にして鈴と共にアリーナを一回だけ使う事は出来た。

 

その一日で鈴に何とかアリーナを使わせる事は出来たのだが、不正がバレない様に見張りとして立っていた為に鈴には一人で特訓をして貰った。

 

本当ならば俺かセシリアが練習相手となって試合が出来れば良かったのだが、鈴にはアリーナが使えるだけで構わないと言われている。

 

アリーナを使えない日も試合に関しての戦術を三人で話し合い、今日に備えて準備は万全と言える。

 

 

 

「いよいよね……!」

 

闘志を剥き出しにしてアリーナを睨み付ける鈴。

 

「鈴、頑張れよ」

 

「言われなくても! でも、本当にありがとね、二人には感謝してるわ」

 

「礼を言うなら勝ってからだ、勝って、あいつに全力でぶつけて来い」

 

「当然!」

 

そう言って拳を突き出して来る鈴、こういうのは余りやらないんだが、たまには良いだろうか。

 

突き出された拳に、激励の意味を込めて自らの拳をぶつける。

 

「鈴さん、頑張って下さいね」

 

「勿論よ! セシリアもありがとね!」

 

セシリアにも拳を突き出し、セシリアは恥ずかしそうにしながらも自らの拳をぶつけた。

 

「じゃあ行って来るわ! 私の勇姿、その目に焼き付けておいてよね!」

 

そう言って手を振りながらアリーナへと駆けて行った鈴、その後ろ姿を見送ってから俺達も観客席へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「五十嵐君! オルコットさん! ここだよー!」

 

試合はまだ始まらないにも関わらず既に満席に近い観客席、空いている席を探していると既に聞き慣れた声が。

 

視線を向ければ案の定相川が鏡と布仏と共に座っていた。

 

「悪いな相川」

 

「良いの良いの! 座って!」

 

セシリアと並んで座り、アリーナに設置されている巨大なパネルへと視線を向ける。

 

そこには学年、クラス別のトーナメント表が細かく映し出されており、その中から鈴の名前を探す。

 

「ゆ、悠斗さん、あれ……」

 

「……はぁ、運が良いのか悪いのか」

 

そこに映し出されていた文字、鈴の一回戦の対戦相手の名前は……。

 

 

織斑一夏

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

鈴視点

 

 

 

「……好都合じゃない」

 

アリーナに隣接する控室にて、パネルに映し出された私の対戦相手を見て、私は口角が勝手につり上がるのを感じた。

 

一夏、私の幼馴染みで、想い人で、好きな奴。

 

そして今は絶対に倒さなければならない相手。

 

あの言葉を、私にとって禁句であるあの言葉を口にした事を絶対に後悔させて、尚且つ……その……想いを伝えるんだから。

 

「行くわよ! 甲龍(シェンロン)!」

 

ISを展開、身体を装甲が包んで行く。

 

赤と黒を主体とし、他の機体に比べるとゴツい見た目。

 

私の専用機、私の身体の一部……絶対に負けない、この甲龍と一緒なら!

 

アリーナへと、私は飛び立った。

 

 

 

アリーナへと出た私を、凄まじい歓声が出迎える。

 

満員の観客席、その中から私はハイパーセンサーで真剣な表情で私を見つめる悠斗とセシリアの姿を見付けた。

 

恥ずかしいから面と向かっては言えないけど、二人は私にとって心から信頼出来るかけがえの無い親友と呼べる存在だ。

 

二人のお陰で私は自分の気持ちに正直になろうと決める事が出来たから、泣いてしまった私の事を慰めてくれて、協力してくれると言ってくれたから。

 

 

……でも、さりげなく見えない所で手を握っているのは許せない、しかもしっかりと恋人繋ぎで。

 

何度も言ったじゃない、人の前でイチャイチャするなって、私が惨めになるだけだからって。

 

今日までの一週間、アリーナでの特訓終わりにも外に出たら抱き合ってたし、対策を練る為の話し合いの最中もちょっと油断すると見つめ合ってるし。

 

その度に抗議しても悠斗は無視、セシリアには何やかんや宥められる……だってセシリアの抱擁って、何か安心するんだもん、同い年の筈なのに何か母性が凄いんだもん。

 

あれ? 何か、私結構酷い扱い受けてない? 結局言いくるめられてるけどストレス溜まってない?

 

 

……ま、まぁ、この際それは置いておくわ。

 

それ以上に、私に協力してくれているのは事実だし、どうせ何を言っても無駄だし。

 

それに、本音を言えばそんな二人が、素直にお互いに相手の事を好きだと言い合える関係が羨ましい。

 

私にはまだ全然わからないけど、私もあんな風になれたら良いな。

 

でもその前に、やらないといけないわね。

 

向こうのピットから現れた白い機体、その瞬間私の時よりも数倍は大きな歓声がアリーナに響き渡った。

 

……来たわね、一夏。

 

一夏はそのまま私の前までやって来て、互いに向き合う。

 

「……鈴」

 

何やら申し訳無さそうな表情をしている一夏。

 

多分だけど、あの時悠斗は一夏に何か言っている筈、でもだからと言って、気持ちを揺らがせる訳にはいかない。

 

そうよ、こういう時こそ、こういう時だからこそ、私らしくあるべきだ。

 

今まで通りに、一夏へと接するべきだ。

 

「……一夏、試合の前に一応聞いておくけど、謝る気はある?」

 

「い、いや、確かに俺も悪かったけど、あれは鈴だって……」

 

「……成る程、自分だけが悪い訳じゃ無いって言いたいのね?」

 

「そ、そうじゃ無くて……その、お互い悪かった所はあるだろ?」

 

その言葉を聞いて、私の中の意志が確固たるものに変わった。

 

淡い期待を持っていたけど、やっぱり駄目だったみたいね。

 

なら、この試合に勝つだけよ。

 

「……わかった、良~くわかったわよ」

 

後方へと下がり、開始地点へと着いた。

 

機体状況良好、武装、各部異常無し……いつでも、行けるわ。

 

「宣言通り、あんたをぎったぎたに、徹底的に叩きのめすわ、覚悟しなさい」

 

「っ……! あぁもう! 何でお前はそんなに頑固なんだよ!?」

 

「頑固? へぇ、そういう事言うんだ?」

 

「だってそうだろ!? 人の話を聞かないし!」

 

「聞きたくなると思う? 私にあんな事を言っておきながら、確かに私も熱くなっちゃった所はあったけど、女子に対して身体的コンプレックスを指摘するなんて」

 

「そ、それは……」

 

言い淀んだ一夏、そんな事は関係無しに試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

それと同時に武装を展開、両手に展開されたのは二振りの巨大な青竜刀、名を双天牙月。

 

それを構えて前傾姿勢を取る。

 

「無駄話は終わりよ……覚悟しなさい」

 

一夏が近接ブレードを展開して構えるけど関係無い、スラスターに熱が込められて行き、僅かに視界が霞む。

 

「……行くわよ」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で、一気に一夏に肉薄した。

 

 

「死に晒せえええええええええっ!!」

 

「おわああああああああっ!?」

 

全身全霊を掛けて、一夏目掛けて双天牙月を振り下ろした。

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