インフィニット・ストラトス 漆黒の獣   作:田舎野郎♂

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第31話 襲撃

「……凄まじい気迫だな」

 

目の前で開始した鈴と織斑の試合。

 

観客席で見ているにも関わらず、まるで自分がその殺気を向けられていると錯覚してしまう程に鈴の気迫は凄まじいものだった。

 

他の奴らも、初めは歓声を送っていたのだが鈴の気迫に飲まれたのか、観客席は異様な静けさに包まれている。

 

「鈴さん、かなり本気ですわね」

 

「あぁ、だが攻撃は至って冷静だ。 あれはかなり手強いだろうな」

 

そう、鈴は口調や気迫こそ荒々しいものだが、攻撃や立ち回りは的確に織斑を追い込んでいる。

 

「……流石、代表候補生と言った所か」

 

「しかし、武装があの近接ブレードだけという事は無い筈ですわ」

 

それはそうだろう。

 

鈴のあの機体、その肩に携えている巨大な翼の様な武装が飾りの訳が無い。

 

そして、その予想は的中した。

 

鈴の猛攻に耐えかねた織斑が一度距離を取った瞬間、鈴が肩の翼を織斑に対して構えた。

 

その瞬間、突然織斑が何かに吹っ飛ばされた。

 

「な、何ですのあれは!?」

 

「……砲弾が、見えなかった?」

 

……恐らくだが、今のは砲弾じゃない……目に見えないとなると、圧縮した空気か何かか?

 

『流石で御座います、主様』

 

黒狼?

 

『主様の仰った通り、あれは空間自体を圧縮し、衝撃を砲弾として撃ち出す事の出来る特殊兵装で御座います。 更には次射装填の必要が無く、エネルギーの続く限り撃ち続ける事が可能です』

 

……成る程、牙狼砲の砲弾が空気に変わった物、という事だな?

 

砲弾が見えない分、鈴の視線の動きや砲塔の角度から予測するしか無い訳か。

 

 

「悠斗さん? 悠斗さん!」

 

「っと……すまない、どうした?」

 

「急に黙り込んでしまったので心配しましたわ……大丈夫ですの?」

 

「あぁ、大丈夫だ、少し考え事をしていただけさ」

 

いけないな、黒狼の声は俺にしか聞こえない。

 

それにISの声を聞けるのは恐らく俺だけ……そうだな?

 

『左様に御座います、奥様は勿論、この学園に私の声を聞く事が出来る方はおりません』

 

つまり、セシリアに説明した所で無言で医務室に連れて行かれるのがオチだろう。

 

いらん心配を掛ける訳にはいかない、黙っていた方が良いな。

 

そう結論付けた、その時だった。

 

 

『そうでしょうか? 奥様であれば心配無いかと思いますが……主様と心身共に結ばれ、繋がった方でもありますし、理解して下さるかと』

 

 

「なっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

黒狼の言葉に思わず声が漏れ、隣のセシリアも突然の事に驚いて肩をびくりと震わせた。

 

「ゆ、悠斗さん!? どうしたんですの!? 本当に大丈夫ですか!?」

 

「……すまない、本当に……本当に何でも無いんだ」

 

黒狼、お前、ふざけるなよ……。

 

『も、申し訳ありません主様……!』

 

油断していた、黒狼は俺の専用機なのだから何時如何なる時も俺と同じ光景を見ている事になる。

 

……つまり"あの夜"の光景も、黒狼は目の当たりにしていたという事だ。

 

俺とした事が……。

 

「……すまない、少し席を外す」

 

「悠斗さん、私も御一緒しましょうか!?」

 

「いや、本当に大丈夫だ……少し外の空気を吸いに行くだけだ……」

 

そう言って、俺は席を立ち早足で歩き出した。

 

このままだと不味い、少し頭を落ち着かせよう。

 

 

 

 

 

 

 

「…………はぁ」

 

場所はアリーナから出て直ぐの所にあるベンチ、そこに座って俺は大きく息を吐き出した。

 

何もしていない筈なのに、身体が疲労で重く感じてしまう。

 

『あ、あの、主様……本当に、申し訳ありません……』

 

……いや、お前は何も悪く無い。

 

少し考えればわかる事、俺の考えが足りなかっただけだ。

 

さっきは、怒ってしまって悪かったな。

 

『し、しかし……』

 

良いと言っているだろ。

 

黒狼、お前は俺の専用機、つまりは俺にとっての相棒だ。

 

相棒を許さないなんて、出来る筈が無いだろ?

 

『っ……! あ、主様……!』

 

黒狼が何やら感激に満ちた声をあげる。

 

今回の事は仕方ないと思うしか無いだろう、これから先も黒狼は俺と共にいるのだ、セシリアとの事も遅いか早いかの違いだろうしな。

 

『こ、これから先も……共に……!』

 

黒狼、少しうるさいぞ。

 

だが、それは俺の本心だからな、何かあって俺がISに乗れなくなったら別だがそれまでは頼むぞ。

 

『勿論で御座います! 私黒狼、いつまでも主様と共に!』

 

あぁ、頼む……さて、ある程度頭が冷えた。

 

そろそろ戻らないとな、下手するともう決着が着いているかもしれない。

 

ベンチから立ち上がり、アリーナへと向かって歩き出した。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

『主様、束様から通信が入りました』

 

ん? 束から?

 

急にどうしたんだ? まさかまた学園に来るつもりか?

 

……まぁ良いか、繋いでくれ。

 

『ゆう君!』

 

「束、どうかしたのか?」

 

『良かった……! ゆう君、今すぐそこから離れて!』

 

「……は?」

 

待て、いきなり何を言っているんだ?

 

「落ち着け、何があったのか説明してくれないと訳がわからないぞ?」

 

『っ……! 私の研究していたデータが盗まれたの! そのデータは……無人のIS!』

 

「無人の……ISだと?」

 

『盗んだ奴らの居所を探してたら、データを元にして既に無人機を開発してた! そしてその無人機にかなりの武装を積み込んで向かわせた先はIS学園なの!』

 

待て、それはつまり……!

 

『お願いゆう君! 今すぐ逃げて!』

 

「っ……!」

 

直ぐ様通信を切り、束の言葉を無視して俺はアリーナへと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

アリーナへと戻ると、先程までの光景とは打って変わっていた。

 

激しくうるさいぐらいに響き渡る警告音、悲鳴をあげながら逃げ惑う生徒、至る所で起きる爆発。

 

それはまさに、阿鼻叫喚と言える光景だった。

 

「っ……! 畜生が……!」

 

俺は先程までいた席へと駆け出そうとしたが、アリーナの防護壁によって行く手を阻まれた。

 

クソが……!

 

「黒狼!」

 

黒狼を纏い、直ぐ様黒鉄を展開した。

 

牙狼砲で吹き飛ばす事も考えたが、この騒ぎで他の奴らが防護壁に殺到している可能性も有り得る。

 

黒鉄を構えてそのまま一閃、防護壁を切り刻んだ。

 

 

『主様! ロックされています!』

 

「っ!? ちぃっ!!」

 

スラスターを用いて身体を横に思い切り反らせば、今まで立っていた場所を高出力のレーザーが切り刻まれた防護壁ごと放たれて来た。

 

直ぐ目の前を掠めて行くレーザー、その威力が普通じゃない。

 

恐らくISの搭乗者保護システムがあったとしても、怪我程度で済むものじゃ無い筈だ。

 

放たれた方向へと視線を向ければ見た事の無い黒い機体が佇んでいた。

 

あれが、束の言う無人機か……!

 

『主様! 次射が来ます!』

 

なら、その前に……っ!?

 

視線の先、レーザーの射線上に逃げて来たのであろう数人の女が飛び出して来た。

 

しかし、無人機は構えたレーザーを降ろしはしない。

 

待て……こいつらは武装していない、只の生徒だぞ……?

 

『主様!』

 

「っ……あああああっ!!」

 

スラスターから爆発的な出力が放たれる。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)により一気に最高速度に到達しつつ、レーザーを構える無人機へと肉薄する。

 

「らぁっ!!」

 

そのまま、顔面目掛けて全力の蹴りを叩き込んだ。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)の勢いそのままに繰り出した蹴りにより、無人機はそのまま壁を粉砕しながら吹き飛んだ。

 

「い、五十嵐君!?」

 

「ここは危険だ! さっさと外に逃げろ!」

 

「う、うん! ありがとう!」

 

礼を言いつつ女達が外へと逃げて行くのを見届けてから、粉砕された壁の向こうへと視線を向ける。

 

まだ奴はくたばっていない、だが今は奴よりも逃げ遅れている生徒の避難が先だ。

 

『主様、恐らく無人機を送り込んだ者によってアリーナがハッキングを受けており、各部の防護壁が閉じられております』

 

面倒だな……だが、四の五の言ってられないか。

 

黒狼、防護壁の場所を案内出来るか?

 

『勿論可能で御座います』

 

よし、なら行くぞ。

 

壁の向こうにいるであろう無人機が反応を示さない事を確認してから、俺は黒狼の案内に従って防護壁へと向かうのだった。

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