「こっちだ! 行け!」
防護壁を黒鉄で切り開き、集まっていた奴らに叫ぶ。
「あ、ありがとう!」
「皆! こっちだよ!」
開かれた扉から続々と外へ逃げて行く奴らを横目で見つつ次の場所へ。
これで三ヵ所目だが、あと防護壁は幾つある?
『残り四ヵ所で御座います。 アリーナ内のカメラを確認しました所、防護壁にいる生徒の人数は何処も同じぐらいの人数かと』
……不味いな、今はまだ無人機が来ないから良いが、いつまた襲撃してくるかわからない。
それに俺が接触したのは一機だが、恐らくは他にもいる筈だ。
『はい、襲撃して来たのは三機です。 一機はまだ先程の主様の攻撃により身動きが取れていない様ですが、他の二機は現在アリーナ内にいる様です』
……待て、アリーナ内だと? つまり、鈴と織斑の所にいるのか?
『いえ、今はまだ無差別に観客席へと攻撃を繰り返している様です。 幸いにも生徒は防護壁へと殺到していますので無人機による怪我人は出ていないかと』
そうか、なら次の場所に急ぐぞ。
『畏まりました』
「い、五十嵐君!」
次の防護壁へと辿り着くと、殺到している奴らの中から相川が俺の姿を見て駆け寄って来る。
その後ろには鏡と布仏の姿もあった。
「相川、無事か?」
「う、うん、一体何が起きているの!?」
「……未確認機の襲撃を受けている様だ、この防護壁もハッキングを受けて開けられなくなっているらしい」
無人機である事は、一先ず相川達には伏せておく。
無人のISというのは前例が無い、今ここにいる奴らに下手に教えると更なる混乱を招く筈だ。
「それよりセシリアはどうした? 一緒じゃないのか?」
「オ、オルコットさんは他の生徒の避難を誘導しに行くって、ここに来る前に別れたの」
「……そうか」
セシリアなら大丈夫だと思うが、心配だ……。
しかし今は目の前のこいつらを何とかしないといけない。
「……防護壁を開ける、全員そこから離れろ」
俺の言葉に、その場に集まっていた奴らが道を開ける。
防護壁の前に立ち、黒鉄を構えてそのまま壁を切り刻んだ。
「焦らなくて良いが、早く外に出るんだ」
「あ、ありがとう! でも五十嵐君は!?」
「……俺は他の防護壁の所に行く、セシリアもまだ避難させる為にいる筈だからな」
「わ、わかった……」
『主様! 来ます!』
「っ……クソが!」
集まっていた奴らの頭上を飛び越え、通路の奥へと視線を向けると先程の無人機が猛スピードで此方へ向かって来ていた。
「急げ! 俺が時間を稼ぐ!」
「う、うん! 気を付けて!」
相川達が他の奴らを誘導して続々と避難を済ませる。
「黒爪……!」
黒鉄を収納し、黒爪を展開させる。
此方へ突っ込んで来る無人機に向かって、俺も
交差する瞬間能力を解放、無人機の正面から急速転回で側面へと回りそのまま回し蹴りを喰らわせる。
「お、らぁっ!」
無人機はそのまま壁へと叩き付けられる。
更に追撃、奴へと掴み掛かり避難している奴らに危険が及ばない様、この場から離れさせる為に一気に急上昇して天井を破壊しながらアリーナの観客席へと転がり出た。
そのまま観客席を薙ぎ倒しながら奴を投げ飛ばしたが、先程と違って直ぐに俺に向き直って来る。
更にはその腕には近接ブレードを展開していた。
……上等だ。
黒爪を構え一瞬の静寂、そして次の瞬間互いに動いた。
ハイパーセンサーで極限まで反射が速くなっているが、奴の攻撃を捌ききる事は出来ても決定打に欠ける。
だが、こうして打ち合っていて奴と俺には決定的な違いがある事がわかった。
黒爪をそのまま横凪で振るう。
奴は身体を落とし回避すると、そのまま近接ブレードを構えて俺に振るおうと構えた……所で、そのまま奴の顔面目掛けて全力の膝蹴りを繰り出す。
体勢を崩した奴へと、追撃の回し蹴りを喰らわせて吹き飛ばした。
「悠斗さん!!」
そのまま警戒を解かずに薙ぎ倒した客席に埋もれている奴を睨み付けていると、上空からブルー・ティアーズを纏ったセシリアがやって来た。
「セシリア! 無事か!?」
「私は大丈夫ですわ! それよりあの機体は!?」
「さっき束から通信が来た、奴は束の開発したデータを盗みそれを元にして作られた無人機らしい」
「無人機!?」
「セシリア、他の無人機とは接触したのか?」
「い、いえ、迎撃よりも他の方の避難を優先していましたのでまだ……しかし、どうやら他に二機いたのですが、アリーナのシールドを抜けて中に入った様ですわ」
シールドを抜けただと? それはつまり……鈴と織斑が……!?
『五十嵐! オルコット! 聞こえるか!?』
突如入った通信、その声は織斑千冬のものだった。
『現在正体不明のISの襲撃を受けている! お前達今何処にいる!?』
「……お前の言う正体不明のISが目の前にいて既に接触した。 早く防護壁の受けているハッキングを解除しろ」
『……何故それを知っているのかは置いておくが、今教師陣が解除しようとしているが相手は中々の手練れでまだ時間が掛かる』
「……ちっ、役立たずが」
思わず悪態が口から漏れる。
防護壁が開けられないままという事は残りの三ヵ所にいる奴らがまだ取り残されている、流石にそいつらを既に破壊した場所まで移動させるのは時間が掛かる上にまたいつ無人機の襲撃を受けるかわからない現状では危険だ。
『今教師陣の討伐隊を向かわせる! お前達は他の生徒の避難を!』
「……その討伐隊とやらは、直ぐに寄越せるのか?」
『っ……いや、ISの格納庫もハッキングを受けていて、今解除中だ』
クソが……肝心な時に使えない奴らだな。
「……セシリア、防護壁を破壊する事は可能か?」
「え? あ、は、はい! ビットを使用して同時射撃を行えば可能ですわ!」
「わかった、ならセシリアに他の奴らの避難を誘導して貰いたい」
「ゆ、悠斗さんはどうするんですの!?」
「……あのガラクタの相手をする」
視線の先、客席の下に埋もれていた無人機が立ち上がるのが見えた。
あれが二機、鈴と織斑の所にいるのか。
「そんな……危険ですわ! 私も残って悠斗さんのサポートを!」
「そうなったら誰が生徒を避難させるんだ? 俺なら心配いらない、頼むからわかってくれ」
『ま、待て五十嵐! 勝手な事をするな!』
「他に方法は無いだろうが、それに相手は無人機、例え完全に破壊しても問題は無い」
『無人機だと!? どういう事か説明しろ!』
「ぎゃあぎゃあ喚くな、役立たずは黙ってろ」
そこで無理矢理通信を切り、傍に立つセシリアへと向き直る。
「頼むセシリア、他に頼れる奴はいないんだ」
「……約束して下さい、決して無理はなさらないと、無事でいると」
「……あぁ、約束する」
「……わかりましたわ、ですが避難を完了させたら必ず悠斗さんの元へ行きますわ、ですから私が来るまで決して無理はなさらないで下さい」
「あぁ、頼んだぞ」
迷う素振りを見せながらも、セシリアは一度顔を近付けて来るとそのまま触れるだけのキスをして避難誘導の為に向かった。
……さて、約束したからには無理は出来ないが、俺もやるか。
黒爪を構えながら、立ち上がって此方へ向かって来る無人機を見やる。
「行くぞ黒狼!」
『主様の仰せのままに』
時間は、余り掛けられない。