インフィニット・ストラトス 漆黒の獣   作:田舎野郎♂

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第33話 襲撃Ⅲ

鈴視点

 

 

「な、何なんだ、こいつら……?」

 

隣に立つ一夏の呟きに、私は何も答える事は出来なかった。

 

目の前に立つ、一夏との試合の最中にアリーナの天井を破って降りてきた黒いIS、そいつらはいきなり回りの観客席へと攻撃を繰り返し始めた。

 

突然の事に、通信で外へと連絡を取ろうとしたけれども通信が何者かに阻害されているのか聞こえるのはノイズ音のみ。

 

そしてアリーナのシールドを抜けて、二機のISが私達の前へと降り立った。

 

いきなり試合に水を差された事への苛立ちはあったけど、そんな感情は直ぐに消える。

 

……こいつらは、不味い。

 

攻撃を見た限り、生半可な強さじゃないのが理解出来る。

 

「おい! いきなり何なんだよお前ら!」

 

「……一夏、やめた方が良いわ。 今は余り刺激しない方が良い」

 

黒いISに叫ぶ一夏を宥めつつ、あいつらを観察する。

 

「おい鈴、あいつらが何なのかわかるか?」

 

「……知らないわね、本国で色々なISの情報を見せられたけど、あんなISは見た事が無いわ」

 

本国のデータに無かった、つまり新たに開発された新型? そんは筈無い、だって今世界に存在するISコアは467個、その全ての性能を知っている訳では無いけど、こんな機体は見た事が無い。

 

一体こいつらは、何者……?

 

すると突然、機体のロックオンアラームがけたたましい警告音を鳴らした。

 

「「っ!?」」

 

何の予備動作も無しに黒いISから突然レーザーが放たれた。

 

一夏と同時に回避行動を取ったその瞬間、今まで私達が立っていた場所をレーザーが通り過ぎて行く。

 

しかも、その威力が不味い。

 

一撃でも当たれば、即座に落とされる……いや、落とされる所か下手をすれば命に関わる。

 

「くっ……! 一夏! あんたは下がりなさい!」

 

「はぁっ!?」

 

「こいつら普通じゃない! 今のレーザーを喰らえば落とされる所か死ぬわよ!?」

 

私の言葉に顔が強張る一夏。

 

それはそうでしょうね、専用機を持っているとは言っても一夏はまだ素人。

 

代表候補生として訓練を受けて来た私と違って命を懸けた戦闘を知っている訳じゃ無い。

 

……私だって、あくまで訓練だから命を落とすかもしれない戦闘は知らない、だけど代表候補生としてのプライドがある。

 

一夏を、危険に晒す訳にはいかない。

 

「素人のあんたがいても邪魔なだけよ! それに恐らく直ぐに教師陣が対処してくれる筈、それまで私が時間を稼ぐからあんたは下がってなさい!」

 

そう、私なら何とかなる、倒す事が出来なくても時間稼ぎ程度なら!

 

双天牙月を構えて黒いISに向き直る……その時、隣に白い機体が並んだ。

 

驚いて隣を見れば、一夏が鋭い視線を黒いISに向けながら近接ブレードを構えて立っていた。

 

「ちょっと!? 話聞いてたの!?」

 

「あぁ聞いてたよ!」

 

「なら直ぐ逃げなさいよ!」

 

「ふざけるな! 俺も戦う!」

 

「馬鹿な事言わないで! あんたを庇いながら戦うのは多分無理よ!?」

 

「庇う必要なんて無い! 俺が皆を、いや、お前を守る!」

 

「うぇっ!?」

 

こんな危険な状況なのに、思わず変な声をあげてしまった。

 

ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 何よそれ!? 私の事を守るとか……格好良い……じゃなくて!

 

「女を置いて逃げるなんて出来るか! 何を言われても俺は戦うからな!」

 

「む、無茶よ! 危険だし、もしかすると死ぬかもしれないのよ!?」

 

「危険だって言うのはわかってる! だけどこんな所で死ねるか! 俺はまだお前にきちんと謝って無いんだ! こいつらを倒して、鈴に謝って仲直りしないで死ねるかよ! 俺はお前と楽しく遊んで、馬鹿やって、まだ一緒にいたいんだよ!」

 

「はぅっ……!?」

 

また、変な声をあげてしまった。

 

何なの!? さっきから一夏が格好良い!?

 

顔がこれでもかと言う程に熱い、多分今私の顔は真っ赤になってしまっている筈だ。

 

だってしょうがないじゃない、好きな奴にそんな事を言われたら……私……。

 

「……ん? 鈴?」

 

何も言わない私を不審に思ったのか、一夏が私の方へと視線を向けて来る。

 

今視線を合わせたら不味い、私は急ぎ視線を前へと向けた。

 

「あ、謝る前にやられるんじゃ無いわよ!?」

 

「当たり前だ!」

 

二人で武器を構えながら黒いISと対峙する。

 

そんな私達に黒いISは手にした砲塔、恐らくはさっきレーザーを放ったものを構える。

 

スラスターに熱が込められて行く。

 

互いに睨み合いが続き、いざ攻撃を繰り出そうとしたその時だった。

 

『!?』

 

突然、黒いISが私達から慌てて視線を外して戦闘体制を取った。

 

一体、何が……?

 

その瞬間、ハイパーセンサーに反応。

 

反応があった方に視線を向けると、もう一機いたのであろう黒いISが、新たに出現した黒いISに巨大な鉤爪を突き立てられながらアリーナのシールドを破って飛び込んで来た。

 

「悠斗!?」

 

「えっ!?」

 

一夏が呼んだ名前、あの機体が、悠斗なの……?

 

飛び込んで来た勢いそのままに、私達の間へと砂埃を上げながら着地した。

 

その横顔は既に見慣れた、もう一人の男性操縦者であり、私の親友と呼べる人物……悠斗だった。

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

……間に合ったか。

 

戦闘中、シールド越しに鈴と織斑へとあのレーザーを向ける無人機の姿が見えた為、最大出力で無人機を破壊しながら無人機ごとシールドを破った。

 

行けるかわからなかったが、案外破れるものだな。

 

「鈴、織斑、無事か?」

 

「あ、あぁ、大丈夫……じゃなくて! 悠斗、お前それ!」

 

「あ?」

 

織斑の視線を追って行けば、今俺がまさに破壊した無人機へと突き刺さる黒爪。

 

……あぁ、そうか。

 

「こいつらは無人機だ」

 

「「無人機!?」」

 

「これが証拠だ」

 

そう言って黒爪で無人機の首へと切りつければ、切られて落ちた頭部と首の断面には細い無数のケーブルが現れる。

 

「嘘……無人のISなんて、聞いた事無いわよ……」

 

「現に目の前にある、それが証拠だろ?」

 

そう答えてから、俺達にレーザーを向ける残り二機の無人機へと向き直る。

 

「今アリーナ全体がハッキングを受けて防護壁が閉じられている。 四ヵ所は開けて、残りの防護壁と生徒の避難はセシリアに任せているが、無能の教師共はISの格納庫を開けられずに出撃出来ないらしい」

 

「ハッキング!? じゃ、じゃあどうするんだ!?」

 

「そんなもの決まっている……こいつらを、潰す」

 

黒爪を構え、奴らに向ける。

 

『繋がった……! 五十嵐! 勝手な事をするな!』

 

再度、通信越しに織斑千冬の声が響いた。

 

二人にも通信が入っているのか、二人は驚いた表情で背筋を伸ばしている。

 

「……なら黙ってこいつらの好きにさせるのか? 役立たずが口を出すな」

 

『何だと!?』

 

「恐らくだがこいつらの狙いは専用機持ち……いや、織斑と俺を狙って来た筈だ。 それに、こいつらはあいつのデータを元にして作られた機体、身内の不始末は身内がつけるべきだろうが」

 

『何を言っている!? 待て! 五十嵐!』

 

ぎゃあぎゃあとうるさい、そんなに騒がれると集中も出来ないだろうが。

 

「悠斗!」

 

隣に立つ機体、視線を向ければ鈴が青竜刀を構えながら立っていた。

 

「あんた一人に任せる気は更々無いわよ!」

 

「……行けるのか?」

 

「当然よ! 代表候補生舐めんじゃ無いわよ!」

 

鈴のその言葉、今はかなり心強いな。

 

「悠斗! 鈴! 俺も戦うぞ!」

 

「……お前は」

「一夏は、ちょっと……」

 

「何でだよ!?」

 

騒ぐ織斑だが、正直これくらいの扱いをした方が変に緊張させる事も無いだろう。

 

現に強張っていた織斑の表情はいつもの顔に戻っている。

 

鈴の戦力はありがたいが、織斑を戦闘に参加させるのなら緊張でガチガチになっていられると困るからな。

 

『鳳! 織斑! お前達まで……あぁもう! 教師陣が行くまでだ! それまで持ちこたえろ!』

 

持ちこたえろだ? そんなつもりは無い。

 

誰が盗んだのかはわからないが、こいつらは束の夢をまた貶した。

 

兵器として作り、無関係の学園の奴らを危険に晒した。

 

そんなこいつらに遠慮なんて必要無い……問答無用で、潰すだけだ。

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