インフィニット・ストラトス 漆黒の獣   作:田舎野郎♂

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第48話 波乱の幕開け

「はーい! 皆さん席に着いて下さいねー!」

 

教室にて、チャイムと同時に山田と織斑千冬が入って来た。

 

そのまま山田が教卓へと上がり全員を見渡す。

 

「えっと、既に聞いている方もいるみたいですが、今日は転校生が来ています! しかも二人も!」

 

大きな手振りで指を二本立てて宣言する山田……何故そんなにテンションが高いんだこいつは。

 

同じ考えなのか傍に控えている織斑千冬も呆れた表情で溜め息を吐いている。

 

「では早速自己紹介して貰いましょう! 二人共入って来て下さーい!」

 

その言葉と共に開かれる扉、そして入って来たのは"金"と"銀"

 

教室が静寂に包まれる。

 

それもその筈か、二人の内の一人、金髪の転校生。

 

中性的な顔立ちに温和そうな笑顔、アメジスト色の瞳、そしてスカートでは無くスラックス姿の制服。

 

「シャルル・デュノアです、宜しくお願いします」

 

顔立ちだけで無く声もまたアルト調で両性的なもの、未だに静寂に包まれている教室だったが、我に返った他の奴らのざわつきが広がって行く。

 

「えっ、あの……お、男……?」

 

「はい、僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国からこの学園に編入する事になりました」

 

その言葉に、一瞬にして教室の空気が変わった……これは不味いな。

 

素早く耳を塞いだその直後、誇大表現等では無く教室が女共の悲鳴で揺れた。

 

 

『きゃあああああああああああっ!!??』

 

 

間に合ったか、相変わらず煩い。

 

耳を塞いでいるのにも関わらずそう感じるとは、一体どれだけの声量なんだ。

 

『100デシベルです、列車が通った時と同じくらいかと』

 

……いや、別にその情報はいらないんだが。

 

『……そ、そうですか』

 

黒狼の答えをばっさりと切り捨てると何やら残念そうに沈んだ声音となる。

 

何か、悪いな黒狼……いや、今はそんな事は良い。

 

視線を周りへと向ければ織斑は耳を塞ぐのが間に合わずに悲鳴を聞いたのか苦悶の表情で悶えており、セシリアは耳を塞ぎながら困った様に俺の方へと苦笑しながら視線を向けて来ていた。

 

 

「男子! 三人目の男子!」

「守ってあげたくなる系の!」

「しかもまた美形!」

「天真爛漫な織斑君とクール紳士の五十嵐君に次いで、王子様系なんて……!」

「1組で、いや、地球に生まれて良かったー!」

 

 

思い思いに叫び続ける女共、好き勝手に騒ぐな煩わしい。

 

「こらお前達! 自己紹介はまだ終わっていないぞ! 静かにせんか!」

 

織斑千冬の一喝、それだけで再び教室が静寂に包まれる。

 

そう、今回の転校生はシャルル・デュノアと名乗ったこいつだけでは無く二人いる……それに、どちらかと言えば男だと言ったこいつよりも、その隣で身動ぎ一つせずに直立不動で立つもう一人の方が気になっていた。

 

そいつもまたスカートでは無く、まるで軍服の様なデザインの制服で身を包み片目は眼帯で隠されている。

 

長く流れる様な銀髪に透き通る様な白い肌、片側から覗く赤く鋭い瞳。

 

その姿が、雰囲気は違えども……クロに酷く酷似している。

 

「えっと……ボーデヴィッヒさん?」

 

山田が呼び掛けるが、そいつは何も反応を示さない。

 

その姿を見て織斑千冬は溜め息を一つ溢しながら口を開いた。

 

「……ラウラ、自己紹介をしろ」

 

「はい、教官」

 

織斑千冬に敬礼をしつつそんな事を言う転校生、服装からして何と無くわかってはいたがこの雰囲気は完全に軍人のそれだ。

 

だが、あいつの事を教官……?

 

「はぁ……ラウラ、私はもうお前の教官では無い、ここでの立場は一介の教師でお前は生徒だ」

 

「はっ! 了解しました!」

 

……恐らくだが、わかっていないだろうな。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

その一言で終わらせ、教室に静寂が流れる。

 

……確か、俺もこんな感じだった様な気がするな。

 

「……えっ? あの、終わりですか?」

 

「そうだが?」

 

山田の問い掛けにそれだけ答えると、何故か俺の方に向かって歩み寄って来た。

 

そのまま俺の前に立つと、俺をじっと見つめて来る。

 

「……何だ?」

 

「お前が、織斑一夏か?」

 

「……俺じゃない、織斑はそっちだ」

 

「そうか」

 

それだけ言って視線を織斑へと向け、そのまま歩いて行く転校生、ボーデヴィッヒ。

 

……あの目付きは、不味いな。

 

 

「お前が織斑一夏だな?」

 

「えっ? あぁ、そうだけど?」

 

次の瞬間、振りかぶられる手。

 

その手はそのまま織斑の頬へと振り下ろされる……事は無く、途中で止まる。

 

「……何をする?」

 

振り下ろされる前に、ボーデヴィッヒの後ろに立ってその手を掴んで止めた。

 

ボーデヴィッヒは苛立ちを隠す事無く俺を睨み付けて来る、更には手を振りほどこうとするが掴む力を強めて放さない様にする。

 

「それはこっちの台詞だ、何を考えている?」

 

「お前には関係無い、邪魔をするならお前も容赦しない」

 

「俺は別に構わないが、今はHRの真っ最中だ。 それにお前にどんな事情があるのか知らないし興味も無いが、織斑は俺の友人でもあるから見過ごす訳にはいかないんだよ」

 

「ちっ……仲良し小良しか、下らん」

 

「何とでも言え、だが今言った通り今はHRの最中だ、やるなら後にしろ」

 

そのまま睨み合いが続いたが、やがてボーデヴィッヒは鼻を鳴らすと振りほどこうとしていた力を弱めた。

 

それを確認してから手を放す。

 

「……興が削がれた」

 

それだけ言うと、再度織斑を睨んでから無言のまま空いている自分の席へと向かうボーデヴィッヒ。

 

その姿を見送ってから俺も自分の席へと戻る。

 

 

「さ、流石クール紳士……」

「今の一瞬でまた女子のハートを撃ち抜いた……」

「格好良い……」

「織斑君の危機を颯爽と救うその姿……」

「尊い……ただただ尊い……!」

「日本に生まれて良かった……うぅっ……!」

 

 

好き放題言っている女共の言葉は無視しつつ席に座って溜め息を溢す。

 

あいつは何を考えているんだ? 織斑に対するあの敵意……何かあるのは間違い無いんだろうが……。

 

「……はっ!? んんっ! で、では自己紹介が終わった所でHRを再開します!」

 

漸く我に返ってそう口にする山田、全く教師として役に立っていないんだが。

 

 

そのまま特に何も無くHRが終わった。

 

 

今日は一限目からISの搭乗訓練、女は教室でそのまま着替えるが、俺達男は離れた場所にある更衣室で着替えなければいけない。

 

織斑がデュノアを引き連れ此方に向かって来た為に立ち上がる。

 

「五十嵐」

 

立ち上がると同時に織斑千冬に呼び止められる。

 

「……何だ?」

 

「同じ男子として織斑と二人でデュノアの面倒を見てやれ」

 

「……わかった」

 

「頼んだぞ……織斑、お前もな」

 

「あ、は、はい!」

 

わかったとは答えたが面倒臭いな、デュノアの面倒は織斑に任せよう。

 

「悠斗さん!」

 

話が終わり、織斑千冬が教室から出て行った所でセシリアが駆け寄って来た。

 

その表情には不安の色が見られる。

 

「あの、大丈夫でしたの?」

 

「ボーデヴィッヒの事か? 心配無い、大丈夫だ」

 

「それなら、良いのですが……」

 

俺の答えにそれでも不安を隠せない様子のセシリア、安心させる為にその頭を優しく撫でてやる。

 

周りからの視線を集めるが知った事では無い、セシリアの方が大事だ。

 

「心配してくれてありがとう、だが俺なら大丈夫だ」

 

「……はい」

 

「そんな顔をしないでくれ、いつもの笑顔の方が魅力的だ」

 

「……ふふっ、悠斗さんは本当に狡いお人」

 

やっと笑みを浮かべてくれたセシリア、やはり笑顔の方が似合っている。

 

「……また後でな」

 

「はい、お待ちしていますわ」

 

そう言ってから教室を後にすれば後ろから織斑とデュノアも直ぐに着いて来る。

 

そのまま廊下を少し進んだ所で織斑が口を開いた。

 

「悠斗、さっきはありがとな」

 

「礼はいらない、友人を助けるのは当然の事だろ?」

 

「お、おう……へへっ」

 

何やら嬉しそうに笑みを浮かべる織斑。

 

「何だ?」

 

「いや、悠斗にそう言って貰える様になったんだなぁって思ったら嬉しくてさ」

 

「……変だったか?」

 

「んな訳無いって! これからも宜しくな!」

 

そう言って肩を叩いて来る織斑、痛みは無いし織斑には申し訳無いが、少々鬱陶しいな。

 

「あ、あの……」

 

そんな会話をしていると後ろからデュノアが控え目に声を掛けて来る。

 

あぁ、そういえば一緒に来ていたんだったな。

 

「あ、ごめんな、俺は織斑一夏、気軽に一夏って呼んでくれよ!」

 

「……五十嵐悠斗だ、呼び方は任せる」

 

「えっと、さっき自己紹介したけど改めてシャルル・デュノアです。 これから宜しくね?」

 

「宜しくなシャルル!」

「……あぁ」

 

こうして間近に見ると本当に男かと疑ってしまいたくなるぐらいに中性的な顔立ちだな。

 

三人目の男性操縦者か……しかし本当に見れば見る程疑ってしまいたくなる、身体も男にしては細過ぎる気がするが、外人はこれが普通なのか?

 

「ところでさ……あ、悠斗って呼ばせて貰うね? 悠斗はさっきの娘、確かイギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんだよね? もしかして、付き合ってるの?」

 

「ん? そうだが?」

 

「わぁ……! そ、それってどっちから告白したの!?」

 

「俺からだが、何か問題でもあるのか?」

 

「も、問題なんて無いよ!? でも、良いなぁ……」

 

羨ましそうにそう呟くデュノア、何の事だろうか?

 

「やっぱりシャルルもそう思うか? 悠斗が羨ましいよな、あんな綺麗な人と付き合って毎日熱々なんだぜ?」

 

「……お前も鈴がいるだろうが」

 

「いっ!? り、鈴とは……! その……まだ、そういうのじゃ無くて……」

 

「えっ? 一夏も彼女いるの?」

 

「か、彼女じゃないって!」

 

「そうだな、"まだ"彼女じゃないんだったな」

 

「お、おい悠斗!」

 

「えっ!? 何々、僕その話気になるな!」

 

そんな会話を繰り広げながら廊下を進んでいた、その時だった。

 

 

「いた! 発見!」

「者共! 出合え出合えー!」

「きゃーっ!? あれが三人目の男子!?」

「美形! 可愛い感じの美形!」

「あぁ……ここが楽園(エデン)……」

 

 

何処から集まって来たのか、女共が俺達を取り囲む様にやって来た。

 

全く、暇な奴らが……。

 

「うわっ!? やべっ……!」

 

「えっ!? な、何これ!?」

 

「……はぁ」

 

邪魔以外の何物でも無い、これで授業に遅れて下らない事であいつに小言を言われるのは癪だ。

 

それに何よりさっさと着替えてセシリアの所に行きたい。

 

織斑とデュノアはビビって何も出来そうに無い……仕方無い、一歩前へと出て俺達の行く手を阻んでいる女共を睨み付けた。

 

その瞬間、女共は揃って口を閉じ背筋を伸ばして固まる。

 

「邪魔だ、退けろ」

 

『は、はいぃっ!!』

 

女共が壁際へと一斉に避け、目の前に道が開かれた。

 

「……はぁ、行くぞ」

 

「あ、あぁ……」

「う、うん……」

 

先陣を切って歩き出せば二人も直ぐ後ろを着いて来る。

 

女共は視線を向けて来るだけで何もして来ない。

 

「す、凄いね、悠斗の迫力……」

「だ、だろ? あの目付きで見られたら誰も逆らえねぇよ、マジでおっかねぇ……」

 

「……無駄口を叩いて無いでさっさと行くぞ」

 

全く、やはり面倒な事になるな。

 

そのまま三人で更衣室へと向かうのだった。

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