インフィニット・ストラトス 漆黒の獣   作:田舎野郎♂

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第62話 和解と黙認

廊下を進み、職員室へと向かう。

 

あの後、医務室へと向かいまだ残っていた織斑に対して深く謝罪した。

 

セシリアの事で怒り心頭だったとは言えども、友人であり同じくセシリアの事で怒ってくれていた織斑に本当に申し訳無い事を言ってしまった。

 

織斑は頭を深く下げる俺に慌てて顔を上げる様に伝え、今回の事は仕方の無い事だからと許してくれた。

 

しかしそれでは納得出来ずに何度も謝罪する俺に対して、それならば自分もセシリアの為にボーデヴィッヒを叩きのめすのに協力させて欲しいと言って来た……協力と言っても、各々ペアは違うのだが。

 

いや、それでこそ織斑か。

 

深く考えてはいない様だが、友人の為に真っ直ぐ突き進むのは実にあいつらしい。

 

そして黒狼にも深く謝罪した。

 

止めようとしてくれていたのにも関わらず聞く耳すら持たないなど相棒に対して最低な事だからだ。

 

謝罪に対して黒狼は気にしない様にと言ってくれた、本当に俺には勿体無いぐらいに出来た奴だ。

 

 

それから医務室から既に出て行ったという織斑千冬を探して俺は廊下を進んでいた。

 

織斑曰く何やら仕事で連絡を貰っていたとの事、恐らくは職員室へと戻っている筈。

 

……あいつにも、謝罪するべきだ。

 

たまに口にしていた自分は一介の教師という言葉、例えあいつがモンド・グロッソで戦績を残す程の実力を持っていたとしても、この学園で教師として所属している以上は上の決定に従う他無い。

 

それならば怒りを向けるべきはあいつ個人では無く、今回のクソみたいな処分を決めた上の連中やそれぞれの国の政府に対してだ。

 

 

 

「お願いです教官!」

 

 

 

廊下の曲がり角で、突然そんな声が聞こえて来た。

 

その声に、冷静になった筈の頭に再度血が登り掛ける。

 

感情を何とか押し留めつつ、様子を伺えば何故か自室に謹慎中の筈のボーデヴィッヒが織斑千冬に詰め寄っていた。

 

「……ラウラ、お前には自室への謹慎処分を下した筈だが何故ここにいる?」

 

「罰則を無視し外出した事に関しては申し訳ありません、しかし教官にどうしても考え直して頂きたいのです!」

 

「わからんな、何を考え直すと言うんだ?」

 

「教官にこの場所は相応しくありません! 再びドイツで、我が軍で、我々の教官としてご指導下さい!」

 

「……何度も伝えた筈だろう? 私はもうお前の教官では無い、私はこのIS学園の職員であり、1組の担任でもある一介の教師に過ぎん」

 

「そんな事ありません! この学園の連中はISを兵器としてでは無くただ自分を着飾るものと勘違いしてます! 教官はこの様な生温い場所で燻っていて良い方ではありません!」

 

「……生温い、か」

 

「当然です! どいつもこいつもISの事を何もわかっていない! ISはあらゆる兵器よりも優れた性能を持つ兵器、それなのにこの学園の奴らは理解していません!」

 

兵器、だと?

 

何もわかっていないのは、お前の方だろうが。

 

ISは元々束が空へと、宇宙へと行く夢を実現させる為に開発した物だ。

 

我慢していた感情が再び荒れ狂い始める。

 

「あのイギリスの代表候補生もそうです! 実力があるにも関わらずこの生温い場所に染まり腑抜けている! 候補生とは何れ自国の代表を担う事になるのに!」

 

……セシリアを、腑抜けているだと?

 

一歩、踏み出したその時だった。

 

 

 

「頭に乗るなよ小娘が」

 

 

 

視線の先で、ボーデヴィッヒが胸ぐらを掴まれて壁へと打ち付けられた。

 

初めて聞く織斑千冬のドスの効いた低く鋭い声、纏う空気。

 

離れているにも関わらずその最早殺気に近いものに空気が張り詰めているのを感じる。

 

「ひっ……!?」

 

「代表候補生ごときになった程度で選ばれた人間気取りとは、思い上がるのも大概にしろ」

 

「き、教官……!?」

 

「お前がオルコットと、そしてアリーナを使用する生徒に対してやった事は教育でも矯正でも何でも無い、ただの暴力行為……いいや、あそこまでやれば殺人未遂としか言えないものだ。 代表候補生であり軍人でもあるお前ならば生身の人間にISの武装を向ければどうなるのかわかっている筈、それにオルコットに対してもあそこまでダメージを負わせる必要が何処にあった? 私自身話を聞いただけだが、オルコットが間に合わなければその生徒が、そして五十嵐が間に合わなければオルコットは命に関わっていたんだ。 本来ならば直ぐ様IS委員会とドイツ政府に報告をしてお前の代表候補生という地位と専用機を剥奪し、傷害罪として退学処分にして貰おうと思っていた」

 

「そ、んな……ち、違う……私は……」

 

「お前が否定しようが何を言おうがそれは変わらない事実だ。 だが何やらドイツ政府……いや、その一部が頑なにお前の処分を望まなかった事、イギリス政府が自国の代表候補生がドイツの第三世代機に負けたという事を公にしたく無かった事、双方の訴えがあったから学園側は仕方無く今回の自室への謹慎処分という軽い処罰しか下さなかっただけだ。 決してお前が選ばれた人間だから、お前が特別だからでは無い、自制心も代表候補生としてのプライドも誇りも無い己の実力を勘違いしているガキが自惚れるな」

 

織斑千冬の言葉にボーデヴィッヒは言葉を失くし、顔を青くしながら目を見開いて震えている。

 

「お前の自室への謹慎処分は二週間のつもりだったが、それだと学年別トーナメントに出る事は出来ない……それだと、お前も納得しないだろう?」

 

その言葉は、俺に向けられていた。

 

視線を織斑千冬から俺へと向け、ボーデヴィッヒの顔が更に青くなる。

 

「い、五十嵐、悠斗……」

 

「……あぁ、そうだな。 学園側は生徒同士、しかも専用機持ち同士の私闘は認めないんだろ? なら今度の学年別トーナメントでそいつとやり合うしか無いだろうが」

 

「そうか……そういう事だラウラ、ペアを組んでいないのなら私が勝手に組ませる、異論は認めんぞ。 わかったなら今すぐ部屋に戻れ、まだ外出を許可していないのにこれ以上は私も目を瞑れん」

 

「っ……!」

 

一度俺を見てから、まるでその場から逃げる様にしてボーデヴィッヒは走り去って行った。

 

残されたのは、俺と織斑千冬だけだ。

 

視線を廊下の奥へと消えたボーデヴィッヒから織斑千冬へと移せば、先程までの態度が嘘の様に戸惑いを隠せない様子で視線をあちこちにさ迷わせている。

 

「……いつから、聞いていたんだ?」

 

「お前にドイツに戻って欲しいと訴えていた時からだな」

 

「ほとんど最初からか……流石だな、全く気配を感じなかった」

 

「……そうか?」

 

別段、意識していた訳では無かったんだけどな。

 

いや、そんな事はどうでも良い、聞きたい事が出来た。

 

「一つ聞きたい、イギリス政府の言い分はまだわかるとして、ドイツ政府の一部があいつの処分を望まなかったというのはどういう事だ?」

 

「……私も全て聞いた訳では無い、だがその一部の奴らが処分を頑なに拒んだらしい。 ドイツ政府として動かして来たからにはそれなりに影響力のある者達だと思うが」

 

……きな臭いな、いくら自国の代表候補生だとしてもこんな問題を起こせば普通は何かしらの処分を下す筈だ。

 

それ程まであいつや機体の能力が優れていると言うのならわかるが、正直戦ってみてそこまでしてやる様な必要性を感じなかった。

 

何か他に、理由があるのか?

 

考え込んでしまっていたが、ふと当初の目的を思い出した。

 

未だに俺と目を合わせようとしない織斑千冬に向かって、姿勢を正してから深く頭を下げた。

 

「……すまなかった」

 

「っ!? い、五十嵐!?」

 

突然の事に驚いているが、構わずに言葉を連ねる。

 

「お前も今回の処分に対して納得していないとわかっていたのに、セシリアの事で感情的になってしまってあんな事を言ってしまった……だから、すまなかった」

 

「ま、待て五十嵐! 今回は上の決めた事に何も出来なかった私が悪い、それに……私も、つい感情的になって手をあげてしまった」

 

「それは当然だ、何も知らずに舐めた口を叩いた俺に問題があったんだからな」

 

「そんな事は無い! オルコットがあんな目にあったんだ! お前が感情的になるのは仕方の無い事だろう!?」

 

「……それでも、お前に対しての発言は許されるものじゃ無い」

 

「っ……お前も、頑固な奴だな」

 

何やら、雰囲気が変わった様に思えた。

 

「一先ず、頭を上げてくれ」

 

言われた通り頭を上げると、織斑千冬は先程までの戸惑っていた表情から一変して真面目な表情で俺を見ていた。

 

「謝罪は受け入れる、だが私の謝罪も受け入れて欲しい」

 

「お前の?」

 

「ブリュンヒルデと呼ばれながら、普段は散々偉そうに言っておきながら、私は何も出来なかった。 ボーデヴィッヒへの処罰も結局は上が決めた事に従う事しか出来なかった、全て私の力が無かったからだ」

 

その言葉を何も言わずに黙って聞く。

 

「あまつさえ生徒であるお前に言われた事に逆上して手をあげてしまうなど、教師としてあるまじき行為をしてしまった……本当に、すまなかった」

 

「……わかった、お前の謝罪は受け入れる。 そもそも、その為にお前を探しに来たんだからな、これで受け入れなかったら鈴に怒られる」

 

「鳳に……そうか、あいつは言葉通り、お前を説得出来たのか」

 

「あいつは俺にとって……親友、と呼べる奴だ。 鈴に言われていなければ俺はとんでも無い過ちを犯してしまっていた、二度とセシリアと共にいられなかった可能性もあったかもしれない。 それを、あいつは必死に訴えて気付かせてくれた」

 

「ふっ……強いな、鳳は」

 

「……あぁ、それには大いに同意する」

 

他人の、誰かの為にあそこまでやれるのは鈴の人間性からだろう。

 

織斑同様に、鈴はとても強い奴だ。

 

「さっき伝えた通り、今度の学年別トーナメントでボーデヴィッヒにこの借りを返す。 許すつもりは微塵も無いがもう殺そうとは思っていない、だが完膚無きまでに叩き潰しはするからな」

 

「……あまり、やり過ぎるなよ?」

 

「骨の一本か二本は覚悟して貰うつもりだが?」

 

「お前、それは……流石に……」

 

「これでかなり譲歩しているんだよ、本気で叩き潰すなら問答無用で殺す……だが、それだと鈴を裏切る事になる上に下手をすればセシリアと一緒にいる事が出来なくなる」

 

「……はぁ、私は今何も聞いていない、仮にトーナメントで何かあったとしてもそれはあくまでも今回の様な事故、新型の機体性能が予想を上回っていただけ……これで良いか?」

 

「あぁ、それで良い」

 

話のわかる奴で助かる。

 

「全く……だが、鳳の訴えは聞き入れたとなると、一年の間で言われている事は案外間違いじゃ無いのかもしれないな」

 

「……あ?」

 

「いや、お前が鳳の兄の様だと言う話だ」

 

……相川の影響がこんな所まで出ていやがるのか。

 

何故俺があいつの兄なんだ、俺にとっての妹はクロだけなんだが。

 

「……あいつはどちらかと言えばお前にとっての妹だろ、いずれそうなるんだからな」

 

「……ん? それは、どういう意味だ?」

 

「……さぁな」

 

織斑千冬に背を向け、俺はセシリアと鈴の待つ医務室へと戻る為に歩き出した。

 

 

さて、黙認して貰ったからには学年別トーナメントで奴を叩き潰す事に集中するだけだな。

 

その為にも、頼むぞ黒狼。

 

『勿論でございます、今回あのドイツの代表候補生が奥様に仕出かした事には私も主様同様思う所はありますので……この身、如何様にもお使い下さいませ』

 

あぁ、あの屑に誰に手をあげたのか、誰を怒らせたのかをわからせてやる。

 

そんな確固たる意思を宿し、俺は歩みを進めるのだった。




此方で失礼しまして、主人公のプロフィールと機体スペックをば。


【五十嵐悠斗】
身長:180㎝
体重:81㎏

黒の短髪に同色の瞳、目付きが鋭い上に高身長で毎日欠かさず行っているトレーニングにより鍛え上げられた筋肉質な身体から発せられる威圧感は凄まじく、初対面の者からは基本的に恐がられる傾向がある。
物心ついた時から両親はおらずずっと奴隷の様な扱いや暴力を受けていたがIS学園に入学する三年前に束と出会い、そのまま助け出され一緒に暮らしていた。
その生い立ちから他人に対して冷たい態度を取る事が多いが、基本的に何事にも真摯に真っ直ぐで曲がった事が嫌いな性格、気を許した相手や心を開いた相手には友人として優しく振る舞ったり時折冗談を交える事や、言葉の端々で無意識に出る優しさ、そして無人機襲撃の際にも他の生徒の避難を優先した事で学園の生徒(主に一年生)からはクール紳士と呼ばれているとかいないとか。
血の繋がりは無いが自分を救ってくれて共に暮らしていた束と、同じく家族のいない独り身で束が保護したクロエの事を家族同然に大切に思っている。
セシリアに一目惚れし、付き合う前から特別に思っていたが付き合い始めてからは他の誰よりも、己の命よりもセシリアを優先する程に大切で愛する存在になった。
普段は他人や目上の者に対しての態度は良く無いが、セシリアに言われる際は大人しく言う事を聞いており、尻に敷かれているかの様な様子が見られるが、実際は何よりも大切なセシリアには逆らう気が無いだけで本人も無意識である……どちらかと言えばセシリアの方が悠斗に対してたまには強い物言いや高圧的に接して欲しいと思っている事が本人にとっての悩みでもある。
毎日の様にセシリアと共に砂糖を大量生産する勢いでイチャイチャする姿が学園内での日常風景になりつつあり、唯一のツッコミ役である鈴が日々奮闘しているが効果は薄い模様。

IS適性は黒狼の場合のみ『S』



【黒狼】

武装

《刀剣・黒鉄(くろがね)
刀身から柄までが黒一色の日本刀、一見普通の近接ブレードであるが相手を攻撃した際に与えたダメージを取り込み威力の底上げをする事が出来る。

《牙狼砲》
肩に展開される大口径のカノン砲、黒狼に搭載されている唯一の遠距離武装で、装填が全自動の為に次射までの時間のロスはほとんど無く連射も可能。

黒爪(こくそう)四足(しそく)
黒狼の専用武器、両手両足に展開される大振りの鉤爪。
空間にある微弱な電磁場を足場として急速転回が可能、その軌道は個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)とほぼ同じものだが搭乗者へのG(重力加速度)による負担が大きい。
また黒鉄と同じ様に相手へと与えたダメージを取り込み威力を底上げ出来る。


主人公である悠斗の専用機、全身を漆黒の装甲で覆われており獣を彷彿させるフォルムをしている。
束自らが一から設計し作り上げたオリジナルの第三世代機で、元々開発を途中でやめていた468個目のISコアを使用しており、コアには自我があり悠斗に仕えたいと束にISネットワークを利用して意思表示をした事で黒狼として悠斗の専用機となった。
精神世界と呼ぶ所謂夢の中では黒の長髪に漆黒の着物、目を見張る程の美貌という姿で悠斗の前に現れたが実は姿に決まりは無く自由自在に変えられる。
自らを従者と考え悠斗の事を『主様』と呼び、仕えるべき人物として認めている。
機体のスペックとしては第三世代機と言いつつ性能や武装だけを見れば実質第四世代機に近いもので、束が悠斗の為にと色々と張り切り過ぎた結果とんでもない機体に仕上がってしまった。
実は束は悠斗がここまで使いこなせるとは思っていなかったが、搭乗した当初から悠斗と黒狼の相性の良さに誰よりも喜んでおり毎日の様に搭乗データを見て一人狂喜乱舞している姿が度々クロエにより目撃されている。
人間の様に会話が出来るがあくまでもISである為に感覚が少しずれており、時折悠斗を困らせる時がある。


こんな感じでしょうか。
如何せん作者のこういった知識と文才が皆無ですので、他に何かあればお申し付け下さいませ。
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