インフィニット・ストラトス 漆黒の獣   作:田舎野郎♂

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またまた間が空いての投稿になってしまいまして申し訳無いです……その、某ウマの女の子育成ゲームのイベントが……。




第71話 芽生える感情

目を覚まし初めに視界に入ったのは見知らぬ白い天井、そして鼻を突いたのは軍にいた時にもよく嗅いだ事のある匂い……これはそう、消毒液の匂いだ。

 

「……ここ、は?」

 

「目が覚めたか?」

 

口から思わず出た言葉に返事が返って来た。

 

視線を声の方へと向けると、そこには椅子に座り私を見る教官の姿があった。

 

「っ!? きょ、教官!? 何故ここに……ぐっ!?」

 

慌てて起き上がろうとしたその瞬間、身体中を凄まじい激痛が走り呻き声が漏れる。

 

「やめておけ、いくらお前の体内にナノマシンがあるから常人より怪我が治るのが早いとは言えまだ身体にダメージは残っている。 ここは学園の医務室だから何も心配する必要も無い、大人しくしておけ」

 

「医務室……私は、一体何を……」

 

「何があったのか、覚えていないか?」

 

何が……確か、学年別トーナメントで五十嵐悠斗と対峙し、完膚無きまでに叩きのめされて……それから……。

 

そこで浮かんだのは、あの無機質な機械音声だった。

 

「っ……! VTシステム……」

 

「そうだ、お前の機体に何故かあらゆる国家で禁止されている筈のVTシステムが搭載されていた。 全身に残っている筈の痛みはその使用によるものも含まれるだろう……まぁ、腕の骨折は違うが」

 

そう言われてから腕にギブスが巻かれている事に気付く。

 

そうだ、五十嵐悠斗のあの一撃、ISの絶対防御があるにも関わらずそれを破る程の威力の一撃で腕を折られたのだった。

 

……今思えば、よく腕の一本で済んだものだな。

 

「ラウラ、VTシステムが搭載されている事は知っていたのか?」

 

「……知りませんでした。 今まで幾度と無く機体のメンテナンスを行って来ましたが」

 

「……やはり搭乗者にも知らされていなかったか」

 

「……教官、この度は、誠に申し訳ありませんでした」

 

身体を動かす事は出来ない為に言葉だけだが、教官へと謝罪した。

 

「搭載されている事を知らなかったとは言え起動させてしまったのは私の責任、私の不手際と実力不足が招いたもの……処分は、如何様にも受けます」

 

そう告げたが、教官は何も答えなかった。

 

暫しの沈黙が流れるが、私はただ教官の答えを待つ。

 

「……馬鹿物が」

 

しかし、返って来たのは微塵も怒気の含まれていない、優しい声音。

 

そして、教官はそっと私の頭へと手を伸ばすとそのまま……頭を、撫でて来た。

 

「今回のVTシステムの暴走、悪いのはお前では無く機体に搭載した誰かだろうが。 その事に関してお前に処分を下したりはしない……怪我を負ったが、生きていてくれて良かった」

 

突然の事に思わず驚いてしまったが、何故かその温もりに覚えがあった。

 

……何だ? 何故、私はこの温もりを知っている? 今まで、誰かに頭を撫でられた事など一度も……。

 

 

『俺は別に強く無い』

 

 

そこで浮かんで来たのは何故か五十嵐悠斗だった。

 

何故、そこで奴を思い出す? いや、待て……私は何かを忘れて……。

 

 

『その言葉、忘れるなよ』

 

 

……あぁ、そうか。

 

曖昧だった記憶が、漸く鮮明に蘇った。

 

あの謎の不思議な白い空間、あの場所で私は確かに奴と会った。

 

私と同じ遺伝子強化試験体の妹がいるという事を明かされ、こんな私の事を救う為に手を差し伸べてくれた。

 

そしてあの時、私の頭に触れた手から伝わる温もり……たった今、教官に頭を撫でられたものと同じだった。

 

優しく、触れている場所だけで無く心が温かくなる様な感覚。

 

それまでの戦闘での荒く、冷酷で、凶暴的な雰囲気は一切無かった。

 

あれが、あの優しさが奴の……五十嵐悠斗という男の本当の姿だったのかもしれない。

 

そして今、私の頭に置かれた教官の手から伝わる温もりもまた教官が教官たる証、教官の強さの根源なのだろうか。

 

 

「しかし、その前の他の生徒に対する暴力行為に関しては別に処罰を設けるがな」

 

「……当然です、如何なる処罰でも受けます」

 

そう、当然だ。

 

教官が処分を下さないのはあくまでもVTシステムに関してのみ、その前に起こした私の暴力行為は私の意思でやった事だ……どんな罰でも、受け入れる。

 

「そうか……まぁ、学園側からの処分は既に出ているからその処罰の内容に関して私が出せるのは反省文の提出と今後暫くの間の教室や学園内の掃除ぐらいか、今回の相手である生徒同士の個人的な問題は私よりも相応しい奴に任せる」

 

教官のその自虐的な言葉に思わず驚き疑問を抱いたその時、医務室の扉が突然開かれる。

 

視線を向けるとそこに立っていたのは。

 

「……五十嵐、悠斗」

 

「目が覚めたんだな」

 

それだけ言うとそのまま私が横になるベッドへと歩み寄って来る。

 

今の私には何も出来ないが、直ぐ傍までやって来た五十嵐悠斗に思わず顔が強張ってしまう。

 

しかし、そんな私に反して五十嵐悠斗は近くに置いてあった椅子へとただ座っただけだった。

 

「安心しろ、流石に怪我人に対して手を上げたりはしない、そもそも俺個人のお前に対する恨みはもう無いからな」

 

「あ、えっ……?」

 

あの空間で感じた柔らかい雰囲気に、思わず戸惑いを隠す事が出来ず言葉にならない声が漏れる。

 

「腕、悪かったな」

 

「そ、そんな……!? 私はお前に殺されても文句を言えない事をしてしまったんだぞ! それなのに腕の一本で済んでいる上に、助けて貰って……」

 

そうだ、あの時助けて貰っていなければ私の命は無かった。

 

自己満足に過ぎないだろうが私の命でせめてもの罪滅ぼしにと死ぬ事を望んだが、目の前の五十嵐悠斗の言葉に生きる事への執着を持ってしまいそのまま助けられた。

 

「何故、私を助けてくれたんだ……?」

 

「お前が変わる意志を、変わりたい意志を持っていたからな、それにまだセシリアと一夏にきちんと謝って貰っていない。 それが済むまで死なせる訳が無いだろ?」

 

「謝る……その、二人は……?」

 

「セシリアには待って貰う様に言ってある、一夏にも後でそう伝えるつもりだ。 怪我も治っていないのに負担を掛けるつもりは無いからな」

 

負担だなんて……私にそんな遠慮などいらない、今回私がやった事は決して許されないものだ。

 

そう、決して許される筈は無いのだ……それなのに、次いで出た五十嵐悠斗の言葉に私は思わず呆然としてしまった。

 

「だからセシリアと一夏、それから危うく巻き込み掛けた他の生徒に誠心誠意謝罪しろ」

 

…………は?

 

「……ま、待て、そんな、それだけ、なのか? もっと他にあるだろう!? 確かに腕は折られたが、それだけで許される筈が……!」

 

「あの時、あの場所でお前は本心を答えただろ? 確かにお前のした事は許されない事だがお前はまだ変われる……それに、お前は似ているんだよ」

 

「似て、いる……?」

 

一体、何が似ていると言うのだろうか……?

 

「家族や友人、誰かの温もりを知らないが故に誰も信じられない、知る事を、歩み寄る事を恐れている……俺も、そしてお前と同じ境遇で生まれた俺の妹もそうだった」

 

その言葉に、あの空間で五十嵐悠斗が口にしていた言葉を思い出し、傍に立つ教官は何か事情を知っているのか厳しい目を向けている。

 

そうだ、何故家族がいない?

 

その妹ならまだわかる、私と同じ遺伝子強化試験体であれば実験により生み出された所謂試験管ベイビーという存在だから。

 

だが、それならば目の前に立つ五十嵐悠斗は?

 

こいつは私やその妹とは違う筈なのに……。

 

「だが、束はこんな俺達の事を家族だと言ってくれて、ずっと傍にいてくれた。 そしてこの学園に来てセシリアと、一夏と鈴、相川に鏡、布仏とシャルロット、大切な存在と友人に出会う事が出来た……こんな俺も変わる事が出来たんだ、お前も必ず変われる」

 

「……私にも、そんな存在が、出来るだろうか?」

 

「お前の行動次第になるだろうが、必ず出来る」

 

「……そうか……必ず、か」

 

何故だろうか、以前までの私であればそんな上辺だけとも言える言葉を聞いたところで信用なんて出来なかった。

 

決して変わらないだろうと、そんな存在が出来る筈は無いだろうと、諦めていた筈だった。

 

しかし、不思議な事にその言葉は胸にストンと入り込んだのだ。

 

「俺から言いたかったのはそれだけだ……お前も病み上がりだから長居するのも悪いからな、俺はもう行くぞ」

 

その理由を考え込んでいると、五十嵐悠斗はそう言って出て行こうとする。

 

「……あっ、ま、待ってくれ! その……あ、ありがとう……」

 

「礼はいらない、それに俺に出来るのはここまでだからな、ここから先はお前次第だ……まぁ、何かあれば助言くらいは出来ると思うが」

 

「そうか……わかった、その時は、宜しく頼む」

 

「あぁ」

 

それだけ答えると、五十嵐悠斗は一度も振り返る事無く医務室から出て行ってしまった。

 

その後ろ姿が扉により見えなくなってから、ふと私は気付いた。

 

教官以外の誰かに、他人に、素直に礼の言葉を言った事など今まであっただろうか?

 

その時、視線を感じて傍にいる教官の顔を見れば驚きつつも何処か嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

その表情の理由は、今の私にはまだわからなかった。

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

 

 

「あっ、いた! 五十嵐君!」

 

医務室を出て寮へと戻る道中での事、突然後ろから俺を呼ぶ声が響いて来た。

 

振り返ると何やら山田が此方へと駆け足でやって来る。

 

「……何か用か?」

 

「はい! 先程漸く、時間の指定と一先ずは今日だけですけど男子の大浴場の使用許可が出ましたよ!」

 

「……大浴場?」

 

あぁ、そういえば寮に住む事になった際に話に出て、確か一夏がとんでも無い事を口にしていたな。

 

……別に俺は湯船に浸かりたいといった所謂日本人らしい欲求は特に無いんだが。

 

「あ、いたいた! 悠斗!」

 

返答に迷っていると今度は反対側、寮の方から俺を呼ぶ声が。

 

振り返れば声の主、一夏が何やら嬉しそうな表情を浮かべながら駆け寄って来る。

 

「あ、山田先生も一緒って事は悠斗も聞いたか? 大浴場だぜ大浴場! やっぱり日本人なら湯船に浸からないとな!」

 

一夏はそういう考えなのか……いや、恐らく俺が少数派なのだろう。

 

「男同士、二人で裸の付き合いと行こうぜ!」

 

何故か満面の笑みでそう伝えて来る一夏、別に深い意味は無いんだろうがそういう事をこの学園で大声で言わないで欲しい。

 

現に何やら一夏の後を追っていたのであろう集団がその言葉を聞いて騒いでいる。

 

……また碌でも無い事を言い触らされそうだ。

 

「……はぁ」

 

「ん? どうかしたのか?」

 

まるで気にしていない様子の一夏……いや、気にしていないのでは無く気付いていないのだろう。

 

それに、恐らくは。

 

「一夏、耳を貸せ」

 

そう伝えれば一夏は首を傾げつつも顔を寄せて来る。

 

その行動で更に騒ぐ声が大きくなるがこの際無視だ、そんな事よりも問題がある。

 

「山田は男子の使用許可と言ったな?」

 

「あ、あぁ、そうだけど?」

 

「お前、何か忘れていないか?」

 

「忘れてる事? 別に男子が大浴場を使えるってだけで何も……あっ」

 

「……はぁ、気付いたか? シャルロットが性別を偽っている事を」

 

そう、この学園で男子と言えば実際は俺と一夏だけだが、シャルロットは性別を偽って男子生徒として編入しておりまだその事実を学園側に伝えていない。

 

その状況で大浴場の使用許可を出されても困る。

 

「あ、あの……? 二人共どうかしましたか?」

 

「……いや、何でも無い」

 

山田からの呼び掛けにとりあえずそう言って誤魔化す。

 

「そうですか? では20時から利用出来るので、その前までは変わらず女子が利用しているので時間に気を付けて下さいね。 それからデュノア君にもちゃんと伝えて下さい」

 

そう言うと山田は去って行き、俺と一夏だけがその場に残される。

 

「……はぁ、一先ずシャルロットの所に行って事情を説明するぞ」

 

「お、おう」

 

 

それから寮へと戻り、部屋にいたシャルロットへと事情を説明した。

 

 

「大浴場……あ、そっか、今までは女子だけだったんだね?」

 

「そういう事だ」

 

「なら二人で入って来てよ、僕は部屋で待ってるから」

 

……その手があったな、何故思い浮かばなかったんだ俺は。

 

「適当に体調が悪いとか言っておけば疑われる事も無いだろうし、僕はちょっとだけ用事があったから」

 

「……そうか、悪いなシャルロット」

 

「全然大丈夫だから、せっかくの機会だろうし日本は温泉大国でお風呂が好きなんだよね? 僕に構わずお兄ちゃんと一夏の二人で楽しんで来てよ」

 

俺は別にそこまで好きでは無いが……まぁ、シャルロットのせっかくの厚意だ、断る訳にもいかないな。

 

「わかった、ならすまないが行って来る」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

シャルロットに見送られ、タオル等を用意してから一夏と共に大浴場へと向かった。

 

 

 

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ”〜生き返る〜」

 

「年寄り臭いぞ一夏」

 

「いや風呂に入ったら絶対にこうなるって……やっぱり風呂は良いな〜」

 

まるで大衆浴場とも思える程に広く立派な浴場、その縁に背を預けながら二人で並んで湯船に浸かり一夏は頭にタオルを乗せて完全にリラックスしていた。

 

俺は前からシャワーだけで済ませていたが、確かにこうして湯船に浸かるのも悪くは無いかもしれないな。

 

「……それで? 何か話でもあったのか?」

 

「……ははっ、バレてた?」

 

「いや、確信は無かった。 単に風呂に入れる事に浮かれていただけだと思っていたが、シャルロットの事情を知っていて同室なのにも関わらず俺と二人でとお前は言っただろ? なら何か話したい事があったんじゃないかと思ってな」

 

「……そっか」

 

それまでの気の抜けた雰囲気が変わり、真剣な表情で俺を見てくる。

 

「その、さ……最初に会った時の悠斗って、正直近寄り辛かったよな?」

 

「……そうだな」

 

「でもオルコットさんに相川さん達、鈴、シャル、それから俺に、何て言うか心を開いてくれて、今では友達だよな?」

 

「セシリアは大切な恋人で、一夏や皆の事は親友だと思ってるが……何が言いたいんだ?」

 

「……箒の、事なんだけどさ」

 

その名前を聞き、視線を一夏へと向ければ一夏は真剣な表情を崩す事無く俺を見つめていた。

 

「前に食堂で悠斗が出て行った後、オルコットさんの話を聞いて何と無く事情はわかったし箒にもきちんと話を聞いた。 悠斗にとって束さんは大切な家族で、その束さんの事を悪く言われたんだろ? それにクラス別トーナメントの時の事もあるから、悠斗が箒の事を良く思っていない事はわかってる……だけど、箒と仲直り出来ないか?」

 

「……お前にとっては、幼馴染みだったな」

 

「あぁ、同じ小学校で箒の親父さんが開いていた剣道に千冬姉と一緒に通ってて……小学生の時、箒は苛められてたんだよ。 女子なのに男子より剣道が強かったってだけで、それでいつも泣いててさ……放っておけなくて、助けてやりたくて、箒が転校するまでずっと一緒だったんだ」

 

……鈴の時もそうだったが、一夏は昔から正義感が強かったんだな。

 

「……その、さ、情に訴えるとかそんなつもりは無いんだけど……俺、親ってのがよくわからないんだよ」

 

「……どういう事だ?」

 

「俺は全然覚えて無いんだけど、まだ小さい時に俺と千冬姉を置いて両親が出て行ったらしいんだ。 だから物心ついた時には千冬姉と二人で暮らしてて、だから親って言うのがどういう存在なのかってよくわからないんだ。 でも、普通の人にとっては大切な存在なんだろ? だから箒も、理由はわかっていても親と離れ離れになったのが辛かったんだと思う……でも、束さんは箒にとってお姉さんで、俺も千冬姉がいるから同じ気持ちだけど何だかんだ言ったって大切な家族なんだ。 だから、箒が悠斗に言った事も本心からじゃ無くて親と離れ離れになった事が辛くて当たっちまっただけだと思うんだよ……だから、もう一回箒ときちんと話し合う事は出来ないか?」

 

「……話し合う、か」

 

「俺の事を親友って言ってくれただろ? それはすげぇ嬉しいし、俺も悠斗の事を親友だと思ってる。 だから、親友として俺の親友とも仲良くなって欲しい……勿論、俺も一緒に立ち合うから」

 

一夏にとっての親友、俺と出会うもっと前からの親友、それならば大切な存在である事は承知している。

 

あいつ、篠ノ之の事を未だに許す事は出来ていないが……。

 

「……それに、箒は悠斗に謝りたいって言ってたんだよ」

 

謝りたい? 何故だ? 以前あれだけ拒絶した事もそうだが、試合で問答無用で吹き飛ばした俺に謝りたいと思っているのか?

 

「俺が偉そうに言える立場じゃ無いけど、箒はあぁ見えて真っ直ぐな奴で嘘も嫌いで、悪いと思った事はきちんと謝れる奴だよ。 この前の、悠斗に対して言った事を後悔してた……だから、もう一度チャンスをくれないか?」

 

真っ直ぐ見つめて来るその瞳。

 

こんな俺を許し、友人だと言ってくれた強さと優しさを宿す瞳。

 

まだ篠ノ之に対し思う所はある……しかし一夏の言う様に奴は一夏にとって親友で幼馴染み、そして何より束にとって血の繋がった妹だ。

 

……なら、俺がするべきなのは。

 

「……わかった」

 

「……ありがとう、悠斗」

 

「礼なんていらない、俺はただ親友の頼みを聞くだけだ。 だが、話してみてどんな結果になるかは篠ノ之次第だからな」

 

「それでもだよ、悠斗にも箒にも今まで色んな事があったのにこんな考えは甘いかもしれないけど、俺は出会う事が出来た皆と仲良くしたいんだ」

 

「確かに甘いかもしれないな……だが、俺は嫌いじゃ無い、お前らしくて良いと思うぞ」

 

「っ……! 悠斗!」

 

「おいやめろ、くっついて来るな、抱き着こうとするな……おい!」

 

何故か俺に抱き着いて来ようとする一夏を力付くで抑え込む。

 

何故男同士で、しかも裸で抱き合わなければならないんだ、俺にそっちの趣味は微塵も無い。

 

そのまま何時ぞやと同じ様に顔面を鷲掴みにして黙らせ、落ち着きを取り戻した事を確認してから解放する。

 

話……そういえば、俺もあったな。

 

「一夏、お前の提案を受けるから俺の頼みも聞いてくれるか?」

 

「痛てててて……えっ? 頼み?」

 

「ボーデヴィッヒの事だ。 確かにあいつがやった事は許されない事だがあいつは変わろうとしている、セシリアと一夏にきちんと謝ろうという意思がある。 だからその謝罪を受け入れるかどうかは別として、話だけでも聞いてやってくれ」

 

「ボーデヴィッヒの……まさか悠斗がそんな事言うとは思わなかったよ、オルコットさんの事でかなりキレてたのに」

 

「……詳しくは俺の口からは言えないが、ボーデヴィッヒの出生は俺の妹と一緒なんだよ」

 

「えっ? 悠斗、妹がいたのか?」

 

「血の繋がりは無い、俺と同じ様に束が保護したんだが俺にとっては唯一の大切な妹だ……その妹と同じ境遇で、顔も似ているからかもな、放っておけなくなった」

 

「……そっか、なら聞かない訳にはいかないな」

 

「……ありがとう」

 

「お礼なんていらないって! さっき悠斗も言ったろ? 親友の頼みを聞くだけだってさ!」

 

満面の笑みを浮かべながらの一夏の言葉に、思わず何も言えなくなってしまったが直ぐに笑ってしまった。

 

本当にこいつは、良い奴だな。

 

「俺が話したかったのはそれだけだよ、後の事は今は一先ず置いといて、とりあえずは風呂を楽しもうぜ!」

 

「ふっ……あぁ、そうだな」

 

ここに来る前に一夏が男同士の裸の付き合いと言っていたが……成程、悪く無いのかもしれないな。

 

本人に言えばまた奇行に走りそうだから言わないが、これからも機会があれば風呂も良い。

 

そのまま、利用時間ギリギリまで二人で風呂を楽しんだのだった。

 

 

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