こうして、地上に残った一高生と逃げ遅れた市民の救出ようのヘリの発着スペースを守る作戦が決行された。
深雪たち一年生五人のグループと二年生組の四人近接に優れている3年の摩利とエリカの兄である寿和の六人のグループとの二つのグループで対立戦車の足止めをすることになった。
家からヘリを呼んでいる真由美と雫、それに光学系統の魔法を得意とするほのか、情報伝達を行う鈴音は発着スペースへと残ることになった。
崇秀はまず、逃げている最中に怪我を負った市民の応急処置へと当たった。
怪我や何らかの痛みを負っている市民の手首に一人ずつ触れていく。
手首の脈から一人一人の血液の流れなど体中を流れるあらゆるベクトルを感知する。外からではわからない内側の怪我なんかはそれで確認し、軽い怪我は止血を施し、骨折などの重傷は最近取得した治癒魔法で処置した。
「瓦礫かなんかで足の指をぶつけて骨にヒビが入っている。とりあえず、治癒魔法で仮止めするんで、安全な場所へ出たら病院で診てもらうように。」
ベクトルで正確な位置を感知し、すぐに治癒魔法で処置を施す。
「タカ君、治癒魔法も使えるのね。」
一通り処置を終えたところで、真由美が声をかけてきた。
「ええ、ベクトル操作は汎用性が高いですから。痛みつけるためでなく、救うためにも使えたらなと。でも、CADを介さず使っているので少し不安定で、効果もそこまでなんですけどね。まあ軍にはもっと優れた治癒魔法を使う魔法師もいますから使うことはあんまりないですし、俺はまだ骨のヒビを一時的に治すのが限界です。」
「ふーん。なら将来は医師志望...?」
「どうでしょうか。俺には俺の責務があります。例え誰であろうと俺の邪魔をする者は痛みつけることも、場合によっては殺すことがこれからもあるでしょう。全てが終わったら、医師になるのも悪くないですね。」
崇秀が少しだけ険しそうな表情をしたが、すぐに元の様子に戻る。
「では俺はそこの高いビルの屋上から周辺を見渡します。何かあったらこれで連絡します。そちらも何か異常があったら呼んでください。」
と小型の通信機を真由美に渡し、駅付近にある一番高いビルの屋上へと飛ぶように足で一蹴りした。
「みんな思ってた以上にやってるなぁ...何も起こらなければ救出は成功しそうできるか。」
ビルの屋上から双眼鏡で確認しながら独り言を呟く。
周辺を見渡していると、
「お、ようやくヘリもき始めたか。」
すぐに通信機器を取り出し、
「救出用であろうヘリが一機、こちらに来てます。乗り込む準備をお願いします。」
「北山さんの家のものね。すぐに誘導するわ。」
真由美や雫が中心となり、脱出の準備に取り掛かっていった。
ヘリが地上にいる発着スペース付近の人たちからも見えるような位置に来た時、空に異変が起きた。
いち早く気づいた崇秀はすぐに真由美に連絡する。
「まずいことに、空から化成体と思われる大量の虫みたいなのがヘリの方へと向かってます。今から対処はしますが、雫にも協力してもらおうと思うので、少し変わっていただけますか。」
「ええ、分かったわ。」
真由美が雫に通信機器を渡す。
「崇秀君?」
「雫か。あれの対処に少し手伝って欲しいんだが。」
「分かった。私は何をすれば?」
「化成体がこの付近に来た瞬間、空中で風を使って大きめの旋風を発生させる。もちろんヘリは影響を受けないようにはする。それで、竜巻で巻き込んだ後に、雫のフォノンメーザーをそこに撃ち込む。横浜は風は吹いてはいるが、海風だからな。水分が多少混じっている。フォノンメーザーで発生する高熱を水分を取り除くほどの温度にする代わりに、広範囲に渡るようにする。そうして、余計な水分を除き、残った物質を擦り合わせ、その時に発生する摩擦熱を使い、火災旋風のようなものを作り出す。そして、化成体を焼き尽くす。って感じだ。」
「ま、要は俺に向かってフォノンメーザーを撃ち込む。それだけだ。旋風の中からは連絡できない、だからある程度化成体が巻き込まれた瞬間
に撃ってくれ。」.
「うん、分かった。」
「なるべく、合わせやすいところには行く。よろしく頼む。」
そういって崇秀はヘリより少し離れた上空に浮くようなかたちでいるようにした。
そして、横浜中の風が風を崇秀を中心にし、その周りをぐるぐると回るように吹き荒れている。
同時に、空中を飛んでいる化成体もブラックホールに吸い込まれるように崇秀の元へと流れる。
(そろそろ来るか)
駅周辺の空を埋め尽くすようにあった化成体が崇秀が発生させた旋風に巻き込まれたところで、そこに一直線の白い光線が撃ち込まれる。
一直線で向かった光線も竜巻の中心へ行くと屈折し、風の流れに従うように流れていく。
化成体で真っ黒だった旋風がやがて、炎の不完全燃焼により真っ赤になっていく。焼きつくされていく化成体はやがて、ここから消滅していった。
この光景には、敵も味方関係なく横浜やその周囲にいた全員が見ていただろう。日がだんだん落ちていく夕方の横浜をさらに赤く染めてようだった。
周囲の酸素を使いきった炎も消えていく。全て消えたところで集められた風は上空へと流れていった。
何もなかったかのように空が元に戻ると崇秀も発着スペースへと着地した。
「とりあえず、これでここからの脱出は無事にできるだろう。」
「あんなこともできるのね...」
「自分で言うのもあれですが、なんでもありですよ。それより、七草先輩の家のヘリも来たみたいですよ。」
上を見ると、2台のヘリが大きな音を出しながら空中に留まっていた。
「全員無事にヘリに乗れたのを確認するまでは、ここにいます。終わったら敵部隊の殲滅にあたります。」
「そう...なら誘導の方をお願いしますね。」
「ええ」
こうして、崇秀は市民の誘導にあたり発着スペースにいた一高生や市民は全員乗り込むことができた。
崇秀はビルの屋上からヘリが行くのを眺めていた。
途中、真由美がヘリの窓から舌を出して意地悪そうに笑いかけてきた。
崇秀は何も言わず、ただ微笑を浮かべながらその様子を見ていた。
直後、下でヘリの方にロケットランチャーを構えている工作員を見つける。発射準備ができ、いざ後は撃つだけとなったその時、白い影が前に現れ工作員は顔面に強い衝撃をくらった。
ギリギリの所で食い止めた崇秀はその後も周囲を見渡す。
不審な動きをしている者はいなかったが、さっきま地上の部隊の侵攻を食い止めていた寿和が何かを探しながらこちらの方へ来ていた。
(さっきのやつで俺に探りか何かしようとしているな...ここはさっさと引くか)
崇秀は近づいてくる人影に気づかないフリをして、侵攻されている場所へと向かっていった。
惜しくも話しかけることができなかった寿和は
「早乙女...
と疑問に思ったが、今は仕事に戻ることにした。
崇秀は海沿い付近にいる敵部隊の殲滅へと向かっていった。
魔法協会付近は克人、中華街付近は将輝などの十師族の一員が指揮を取っていると聞いたため、そのあたりからは少し離れた方向の殲滅へと当たったいた。
装甲車両3台に直立戦車が7台ほどと30人ほどの武装した工作員と小部隊の一つや二つは相手にできるほどの部隊の前に崇秀が一人で立ち塞ぐ。
直立戦車4台が一斉に重機関銃を崇秀に向かって連射するが、崇秀はその弾幕から傷一つつけられることなく現れる。
直後に1台の対立戦車がチェンソーで崇秀に襲いかかろうとする。
だが、崇秀の目の前へと突っ込んだ途端、ガタンと音を立てて停止する。
対立戦車の胴体の部分には大きな凹みができ、中に入っていた工作員も潰され、中で血を撒き散らし、元の姿が分からないくらいにまでなった。
だが、今度は2台の対立戦車から小型ミサイルと手榴弾が放たれるが、これももちろん崇秀には無意味な攻撃だった。
今度は崇秀が1台の対立戦車へと向かって行く。力が一点に集中した拳を一発入れるだけで、戦車は動けないほどにまで凹む。
もう1台には動けない対立戦車の部品をそのまま打ち込む。銃弾よりもずっと強い威力の鉄のかけらは胴体の部分を見事に貫通し、そのまま倒れてしまった。
間もなくして、残りの4台が崇秀を囲い込み、もう一度一斉に機関銃を撃つが、崇秀には1つも当たらなかった。
それどころか、傷を受けたのは機関銃を撃っていた4台の対立戦車の方だった。銃弾の全てを跳ね返され、いくつかの場所に何発も撃ち込まれ、何箇所かにポツポツと穴ができていた。
7台すべての対立戦車が動くことのできないガラクタになり、崇秀は後方にいた部隊を見つめる。
対魔法師用ライフルを持った工作員が崇秀へと銃口を向ける。
「うっ、撃てぇ!!!」
と誰が叫び、その合図と同時に崇秀へ銃弾を連発するが、煙から姿を見せたのは何もなかったかのように立っている崇秀だった。
「つまんねぇよ...つまんなぁ...」
最後に装甲車両の砲台から弾が放たれるが、その弾は崇秀の方にではなく、発射された砲台の銃口へと向かっていった。
そのせいで車両は中から爆発し、その周囲の工作員も巻き込んでいった。
残っていた部隊の一人の魔法師が呟く
「あれは...日本で開発されていると噂されていたあの個体じゃないのか...」
何か思い出したかのようにそう呟くと、すぐに「撤退だ!!!」叫び部隊は後を引いた。
偽装揚陸艦にいた侵攻軍の司令部は悲壮な空気に包まれていた。
「別働隊が全滅...それに沿岸付近の部隊も撤退...一体何が!?」
「報告から推測致しますに、別働隊の方は飛行魔法を使った空挺部隊により全滅」
「....」
「それと未確認の情報ではありますが」
「何だ?」
「別働隊の交信の中に
「摩醯首羅だと!?」
「別働隊には三年前の戦闘に参加した者もいました」
「...」
「それと、これも未確認の情報なのですが」
「次から次へと何だ!?」
「沿岸付近の部隊の相手をしたのはたった一人の高校生...白い髪に白い肌、あらゆる銃弾や爆弾を用いても全て彼の近くで無効化、それどころかその攻撃そのものを反射、自身の移動速度も魔法師ですら不可能なレベルというほどのスピード、もしかしてとのことですが、前々から日本の魔法研究所で開発されていると噂されていた個体、
「
火災旋風はとあセラのを参考にしました。
いつの間にかにかアニメ2期の方がもうすぐ終わってしまう...