結構長くなってしまいました。
入学編 I
入学式の朝、崇秀は自分の部屋にある鏡の前で昨日渡された制服を着た自分を眺めていた。制服のブレザーの左胸には花弁の刺繍があった。
崇秀の容姿は、特別整っていると言うわけではない。身長は170cm程と現代の平均的な成人男性の身長と比べると、少し低く目つきが少し怖いこと以外は普通だ。
だが、普通の人とは少し違う点がある。崇秀は想子量が他の魔法師とは規格外であり、CADを使わなくても微弱ながら崇秀だけが使えるベクトル操作による反射の効果が常に働いているため、紫外線などのちょっとした外的のものは、自然と反射していた。そのため、普段は外からの刺激は受けないことにより、体が色素を必要としなくなり、次第に肌や髪の色が白色になっていった。いわゆるアルビノというのに近い見た目をしている。そのためか、制服はあまり様になっていなかった。
だが、そんなことは思っても仕方のないことなので、崇秀は兵舎を後にし、最寄り駅から個型列車に乗って、今日から崇秀が通うことになる国立魔法大学付属第一高校のある東京の八王子まで向かっていた。
駅から徒歩で高校まで一人で向かっていたが、その道中ではちょくちょく視線を向けられた。やはり現代では目立つような容姿をしているためだろう。
校内の敷地に入り、崇秀は達也のとこへ向かった。達也が待っているベンチまで行くと、どうやら他の人と話しているようだった。崇秀は誰と話しているかも気になっていたので構わず達也の方へ向かい、声をかけた。
「おはよう、達也」
その声に達也と達也と話していた女子生徒が反応する。
「崇秀か。おはよう」
達也はそう言って返事をし、それから崇秀は次に話していた女子生徒の方に目を向け、
「この人は?」
「ああ、この方は七草真由美先輩。ここの生徒会長だ。」
達也はそう説明し、真由美はそれに続き
「初めまして、七草真由美です。七草と書いて、さえぐさです。司波くんの言っていた通り、ここの生徒会長を務めております。よろしくね。ところで貴方は、司波くんのお知り合い?」
「はい、自分は早乙女崇秀と言います。達也とは、入学前からの友人です。」
そう言って俺は軽く頭を下げた。その時に真由美の手首にCADがあるのが見えた。
(生徒会だからか、それに七草といえば、達也の言っていた数字付き(ナンバーズ)の。)
「まあ、あなたがあの早乙女くんね。確か、入試の実技の成績が一位の。まさか実技の一位の子が、筆記一位の子と知り合いだったとはね...」
この言い方は決して達也のことを馬鹿にしているわけではない、あまりの偶然に驚いている様子だ。
そうこうしているうちに、入学式の時間が近くなり、真由美は式のリハーサルへ、二人は式の会場の席へと向かった。
会場に向かう途中に、俺たちをジロジロ見ながらコソコソと話す様子を見せている人が何人かいた。多分一科生が二科生といるからだろうか。
ブルームの子がなんでウィードなんかと...?
もしかして、脅されたりしてるんじゃない?
そんなことを言ってるのが聞こえた。だが二人は気にせずやがて会場に着いた。だが、会場の席の分け方には驚かされた。
前半分は一科生、後半分は二科生となっていたのだった。そのため俺たちは仕方なく、会場内で別れ、それぞれ席に着いた。
さすがに差別化されすぎなのではと思ってしまった。そもそも崇秀があまりそういったことは気にしない性格であり、この制度にもあまり納得がいかないようだった。達也のように、入試の成績が芳しくないだけで、二科生であっても、優れた生徒がいるのを知っているため、その思いは他よりも特に強かった。
一科生か二科生かは、制服を見れば一目でわかる。ブレザーに花弁の刺繍があるかどうかだ。花弁が付いているのは一科生。そのため『ブルーム』なんて呼ばれ方もする。付いていないのは二科生。花が咲かない雑草ということから『ウィード』なんて呼ばれ方をする。
そんなことを崇秀は席に着きながら考えていた。
そうしていると式が始まり、新入生総代による答辞が読まれるところだ。今年の新入生総代は司波深雪。入試の総合成績のトップが毎年新入生総代となり、答辞を読み上げる。そんな新入生総代の深雪は達也の妹だ。
式が終わり、新入生たちはIDカードを発行するため窓口へ向かった。
IDカードの発行も終え、崇秀は帰ろうとしていたが、偶然深雪の姿を見かけたので、声をかけた。
「深雪!」
俺はそう呼ぶと、深雪は周りを囲う人混みの中から姿を見せた。
「あ、崇秀くん。久しぶりですね。」
そういって崇秀の近くに駆け寄ってきた。どうやら人混みから抜け出したかったのだろう。
「今日はもう帰るのか?」
「はい、私は既にカードの発行を終えているのでこれから兄の元へ向かうところです。」
「そうか。なら俺も一緒しても良いか?」
「もちろんです。それに、誰か着いてくれている方が私も助かります。」
(そうだろうな)
と崇秀は思っていた。これは嫌味とかではなく、紛れもない事実だ。深雪は男女問わず誰もが見惚れてしまうほどの美貌。それに成績も優秀となれば、仲良くしたい人も沢山いるのは分かる。
そのせいか、崇秀は達也たちの元に向かうまで、変に視線を集めてしまった。
彼氏?
なんて声も聞こえれば、目つきのせいでか
あの子、答辞を読んでた子だよね?隣に怖そうな人がいるけど大丈夫なのかな?
なんて声も聞こえた。だが、崇秀はそんなことは聞かないことにしていた。
そして達也たちのとこへ行くと、深雪は真っ先に駆け寄った。達也のとこにはどうやら同じクラスの子がいるようだった。
「お兄様、お待たせしました。」
深雪はそう言うと達也は「早かったね」と返事し、崇秀の方にも
「深雪と一緒に、すまないな。」と言った。
「気にしなくて良い。」と少しかっこつけたような返事をした。
そして、俺たちの後ろには別の人も来ていた。
「こんにちは。司波くん。それに、早乙女くんまで。」
そう声をかけられたので崇秀たちは軽く頭を下げた。
だが、深雪はどうやら達也の隣にいる二人が気になっているようで、
「ところでお兄様、早速その方たちとデートですか?」
なんてことを聞き、崇秀はその後のやりとりを呆れたように見ていた。
崇秀と深雪が達也の隣にいる美月とエリカと挨拶したところで、達也は通行の邪魔になるかもしれないと、生徒会の方々に話を戻した。
「深雪、生徒会からの用は済んだのか?」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「今日はご挨拶に来ただけですから。深雪さんっと呼んで良いかしら?」
「あっ、はい。」
「では、詳しいお話はまた、日を改めてゆっくりと」とやりとりし、講堂を出てこうとしたが、隣にいた男子生徒が呼び止め、
「会長、それでは予定が。」
「いえ、別に予定が入っていたならそちらを優先するべきですよ。」
と言い、真由美は深雪と達也、それに崇秀の方に微笑みを向け、
「それでは深雪さん。今日はこれで。司波くんにそれから崇秀くんも、
いずれまた、ゆっくりと。」そう言って真由美は講堂を立ち去っていった。隣にいた男子生徒は、達也の方を睨んで舌打ちし、その後に着いていった。
崇秀たちはその後、近くのケーキ屋により軽い会話をし、その日は解散した。
入学二日目、今日から早速通常の時間で行われる。崇秀は今日も一人で登校している。土浦からだとまあまあ距離はあるため、達也たちに会うこともない。
崇秀は自分の教室の1年A組に向かっていた。深雪とは同じA組であり、教室に入ると、深雪の周りには既に人だかりができていた。
崇秀の席は後ろから2列目、深雪の前。崇秀の「さおとめ」、深雪の「しば」で席の並びは五十音順だろう。
「おはよう、深雪」
崇秀はそう挨拶だけした。
「おはようございます、崇秀くん。」
深雪の返事に崇秀は小さく頷き、崇秀は自分の席で情報端末を操作していた。崇秀は魔法についてはまだまだ知らないことだらけだ。空き時間があれば、日本のものをはじめ、あらゆる国の魔法に関する文献などを読み漁っている。
崇秀に話しかけたいと思っている男子生徒も少なくなかった。だが、崇秀の見た目のせいか、近づき難いと思う生徒もいるようだ。崇秀も、自分に話しかけたいと思う生徒がいることを何となく察している。もちろんその訳もだ。どうせ深雪のことなんだろうと思い、自分からは話しかけるつもりはないようだ。
昼になり、崇秀は深雪と食堂に向かった。その周りには午前の見学の時にいた1Aの生徒もいた。
だが、深雪は達也たち1Eの姿を見つけ、そこに駆け寄って相席しようとしていた。崇秀はいつものことのように眺めていたが、周りにいる1Aの生徒、特に男子生徒は気にくわないようだった。崇秀と深雪の関係は、見学の時にただの前々からの知り合いだとだけいって置いたこともあって、恋人関係なんかではないことが知られたようだが、そのせいで余計に深雪のことを狙っている男子生徒たちには、今の状況は気にくわないようだった。
最初は1Aの生徒たちも、相手の邪魔しちゃ悪いなどとオブラートな表現をしていたが、やがてヒートアップしていき、一科と二科のけじめだのといった二科を馬鹿にするような発言になっていき、達也たち1Eのメンバーが席を空ける羽目になった。深雪は4人に目で謝り、崇秀も達也にアイコンタクトを送った。
崇秀は放課後、風紀委員本部に呼ばれていた。実は実技の成績が良いのがあって、教職員枠で早速今日から風紀委員として活動するよう言われた。今日は見学と言ったとこだろうが。
「失礼します。」
そう言って入ると、中には二人の女子生徒が待っていた。一人は何故か生徒会長、もう一人はとてもクールビューティな女子生徒がいた。
「やっほー、昨日ぶりね、タカくん。」
崇秀は心の中で
(タカくん...?)
と疑問に思っていたが、スルーしていた。
「何故七草先輩がここにいるんですか?」
「摩利から聞いてね、ちょうど暇だし、気になったから来て見たの。」
「今日は説明と見学だけと聞いているんですが...」と言ったが、真由美はそれに答えず、そこに摩利が入り、
「随分と真由美に気に入られているようだな、早乙女。まあ今日はお前の言う通り簡単な説明と巡回の付き添いだ。それで、私は渡辺摩利。ここの風紀委員長を務めている。よろしく。」
「紹介遅れました。自分は早乙女崇秀です。今日からよろしくお願いします。」
俺はそう挨拶をした。
「うむ。では早速、風紀委員の説明から入る。」
そう言って崇秀は風紀委員についての説明を受け、次に巡回の説明も受ける。
「風紀委員は、学内でのCADの携行を学校から許可されている。ただし、不正使用は即刻処罰対象だ。」
そう言われ俺は預けていた自分のCADを渡され、身に付ける。
「なかなか見ないCADね。」
崇秀は真由美にそう言われた。摩利の方も不思議そうな顔をしていた。まあそれもそうだ。ブレスレット型などが主流の今、俺は首につけるチョーカー形態のCADだ。多分日本どころか、世界的にも稀な型だと思う。
『まあ色々あって、こんな特殊な形態になったんです。でもこれが一番安定します。」
だがこれは触れられると色々まずいと崇秀は話を逸らした。
「それで、巡回はどうするんですか?」
俺はそう聞いたが、不思議そうにしていた摩利も少し返事が遅れた。
「ああ、今からここからこのルートで一周回る。」
そう言ったその時だった。摩利の端末に『校門近くで生徒同士のトラブル」との連絡が入った。摩利は真由美と崇秀に
「真由美、向かうぞ。早乙女も急だが一緒に来てもらう。」
そう言って三人は校門の方は向かった。
思って以上に早く書き終えてしまいました。
今、これを書くにあたって原作を読み返していますが、ついつい原作の方を読み進めてしまいます笑