前の投稿と間が空いてしまい、申し訳ないです。
今回は九校戦最終回です。
新人戦最終日、第一高校は新チームでモノリスコードに出場することになった。CADの調整は全て達也が担当し、前日に作戦も練った。
ポジションは達也が前線、幹比古は古式魔法特有の隠密性や威力を生かしてフォワードとディフェンスの両方を、崇秀は主に加重系統の魔法で相手の動きを止め、モノリスを守るディフェンスにつくことになった。
そうして一回戦、第八高校との試合はそれぞれ役割を果たし、敵全員を戦闘不能にして勝利した。
二回戦目は市街地ステージ、達也の喚起魔法と幹比古の精霊魔法でモノリスの位置を把握し、達也が敵のディフェンスと交戦中に感覚共有している幹比古がモノリスのコードを入力し、試合は終わった。崇秀は敵の一人を戦闘不能な状態にした。
そうして準決勝の第九高校との試合の前に三高の試合を見ていた。
三高は一条だけが動き、後の二人はモノリス付近で待機していた。だが、一条は領域干渉により敵の魔法を無効化し、進む。後の二人はなにもせずに待機し、一条単独で決勝へと進んだ。
一高の準決勝は渓谷ステージ、ここは幹比古の独壇場となった。幹比古は霧を扱い、敵の視界は悪くし、味方の視界は良くなるように調整していた。そうして一戦も交えずに一高は決勝へと進んだ。
こうして次はいよいよ決勝戦、第一高校 対 第三高校の試合がもうすぐ始まるとこだった。ステージは草原ステージ、一条たち三高のチームは優勝したも同然と思っていた。
崇秀たち一高は作戦を考えていた。将輝の相手は達也が一人ですることになり、他の二人は幹比古と崇秀で戦うようにしていた。
また、吉祥寺の使う『不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)』の対策として、幹比古は魔法陣を組み込まれたグローブをつけることになった。
それと、崇秀と達也の二人だけでも話をした。決勝での崇秀のCADはベクトル操作術式だけを組み込んだ特化型のチョーカー状のCADに調整した。
「これはいつものやつとは違って、演算能力の補助機能は付いていない。反射膜を全身にまとったりと言った派手な真似は不可能だろう。」
「そんなことはしねぇよ。まあバレない程度にやるさ。」
そういって崇秀は達也からCADを受け取った。
そうして決勝戦は始まった。合図と同時に砲撃が行われた。
達也と将輝が拳銃型のCADで互いに攻撃し合う。観客はその様子に注目していた。将輝の放つ空気弾に達也は術式解体で対応する。その光景は驚くべきものだった。
その間に吉祥寺がこちらに詰めてくる。これには崇秀は対応せずに、幹比古だけで交戦していた。
幹比古は古式魔法の『幻術』などを使い、吉祥寺とやり合っていた。グローブの補助機能により、いつも以上の力を出していた。『地鳴り』
『地割れ』なんかも使い、吉祥寺を追い詰めようとしていた時だ。
幹比古の前に空気弾が放たれる。将輝によるものだった。幹比古はそれで体勢を崩し、その隙に吉祥寺がCADを走らせる。加重系統の魔法を放たれ、そこに増幅魔法も加えられる。幹比古は動けない状態になった。
だが、将輝がこちらに応戦した時、達也は間合いを詰めていた。達也は将輝へと近づく。将輝はそれに油断し、十六発ほどの空気弾を達也に向けて放とうとしていた。
(しまった、これだとルール違反だ...)
達也はこれに術式解体で対応するも、間に合わない。残りの二発を直接受けた。達也は大きな怪我を負ったと誰もが思ったその時だった。
達也はすぐに立ち上がり、将輝の耳元で指を鳴らす。耳を塞ぎたくなるほどの音が全体に響く。その瞬間、将輝は地面に倒れた。
崇秀は
(あれが、自己修復術式...)
崇秀は驚きながらもやり切ったんだと思い、前へ出る。
達也の攻撃で吉祥寺も止めていたため、幹比古はもう加重系統の魔法を受けてはいないが、戦える状態ではなかった。
「幹比古、後は俺がやる。お前の魔法は中々のものだった。」
そう言って幹比古よりも前へ向かう。
崇秀は吉祥寺の元へとだんだん近づく。それに対して吉祥寺は魔法を放つ。使ったのは不可視の弾丸だ。
「不可視の弾丸。対象のエイドスに直接圧力を加える魔法。だから情報
強化では防げない。
じゃあどうすれば良いか。圧力を加える作用点を視認させなければ良いだけだ。だからこんなふうに簡単に防げてしまうんだけどなぁ!」
崇秀はそう言って、足を地面に踏み込む。すると崇秀の前に自分と同じ高さの土の壁が出来上がる。
吉祥寺はこれに対して驚き、硬直してしまう。
「吉祥寺と言ったなぁ... 前に俺のことを煽っていたようだが今はどうだぁ?切り札が簡単に破られてしまった今の気持ちはよォ!?次はこっちの番だからちゃんと対応してくれよなァ!?」
崇秀は狂気に満ちていた。自分より下と思っていた奴に簡単に破られてしまった吉祥寺の姿を見て、おもしろがっていた。
崇秀はもう一度地面に足を踏み込む。その瞬間、地割れが発生し、それは吉祥寺の元へと向かう。地割れの威力もスピードも幹比古のとは全然違っていた。
吉祥寺はこれをなんとか避けようとする。だが、崇秀が起こして地割れはただのハッタリだ。砂埃で吉祥寺の視界が悪くなっている中、崇秀は吉祥寺のとこへと瞬時に向かう。吉祥寺のもとへと向かう途中、右手に空気弾を作りながら。
吉祥寺の前には崇秀が狂気に満ちた姿で現れる。崇秀は右手にある空気弾を吉祥寺の胸へと放つ。
それは見事に命中し、吉祥寺は衝撃で飛ばされ、地面に倒れ込んだ。
「この野郎!」
三高の最後の選手が崇秀に向かって土砂の津波を発生させる。
崇秀の元に土砂が襲い掛かったと誰もが思ったが土砂が去った後、崇秀がいた場所には誰もいなかった。
「おせーよ」
崇秀は三高の選手の後ろにおり、崇秀が地面に手をつけ、魔法を発動させると三高の選手のあたりの地面が上に上がり、その選手は弾き飛ばされ地面に倒れ込んだ。
そして、三高の選手全員は戦闘不能な状態になり、一高の優勝が決まった瞬間、会場では拍手や歓声の音で響き渡った。
控室に戻ると、真由美がよってきた。
「お疲れ様。さっきの試合は見事だったわ。でもタカくん、戦闘になると人が変わったみたいになるのね。」
「あれは、あの雑魚が前に煽ってきたので、相手しているうちに興奮してただけですよ。まあ、これが俺の本性なのかもしれませんね。」
崇秀はそう答えた。
だが、この試合が終わったと同時に、裏ではある事が進んでいた。
八月十一日、新人戦が終わり、今日は本戦のミラージバット全試合とモノリスコードの予選が行われる。
だが、ミラージバットで事件は起きた。試合中、一高の小早川先輩のCADが突然起動しなくなり、着地に失敗したのだ。審判が減速魔法でなんとか受け止めたので、大きな怪我にはならなかったが、先輩にはトラウマを植え付けることになっただろう。
「あいつらか...また動き始めたんだな。」
崇秀はそう思っていた。
事故の原因はすぐに分かった。運営委員がCADの検査の時に細工をしていた事を、達也に知らされた。
「運営委員にも工作員が... にしても、達也の前で、深雪の持ち物に細工をするとは、おもしろいな。」
崇秀は笑いながらそう言った。
ミラージバットの予選が終わり、崇秀の通信機にメッセージが来ていた。
(ジェネレーターか。)
そう言って観客席から立ち上がり、書かれていた位置に向かう。
無表情の男とすれ違った瞬間、その男は崇秀に襲い掛かかった。
だがその瞬間その男は会場の外へと飛ばされる。
男が意識を取り戻した時、既に地面へと落ちているところだった。
なんとか着地した時、その男の前に襲い掛かったはずの男がゆっくりと着地する。
「何もんだお前...まあ答える必要はないけどなぁ」
崇秀は男の元へと歩み寄る。男は崇秀にもう一度襲いかかるが、またもや殴りを入れようとしたときに吹き飛ばされる。
崇秀は男の方へと飛び、男に一発殴り込んだ。高校生の威力とは思えないほどのパンチを喰らった男は気絶した。
そして、藤林から渡されていた針を使い、完全に気絶させた。
「こちら早乙女。西側のジェネレーターは確保いたしました。」
「了解した。ご苦労だったな特尉。」
崇秀は、後から駆けつけた軍の関係者にこの場は任せることにした。
一方、風間はこの日、九島閣下と話をしていた。話題は崇秀のことになっていた。
「早乙女崇秀。第八の研究の実験体がまさか国防軍にいるとはねぇ...」
「あんなことをされてしまうと、十師族のことはあまりよく思わないのも必然ですよ。ですがそれは、こちらとしてもここにいてくれるとありがたいですが。」
「ほう。十師族を嫌うところは君に似ているな。」
「それは誤解だと前にも申し上げましたが... にしても彼の能力は偉大ですよ。魔法だけでなく、彼の演算能力はここで最大限に活用できますしね。攻撃だけでなく、防衛でも十文字家に劣らないものになると思いますよ。」
「なるほど...」
といった会話をしていた。
そうして九校戦最終日、十文字、服部、桐原の三人による一高のチームがモノリスコードを優勝し、総合優勝も一高が獲得し、終わった。
試合の緊張から解放された選手やエンジニア、それに関係者が集まる後夜祭の会場に崇秀も来ていた。だが、相変わらず彼の周りには人はいなかった。遠くからチラチラと見られることはあったが、崇秀が反射の効果を使っているように周りと一定の距離ができていた。
そうしていると、とある人物が崇秀の元へとやってきた。
「あら?タカくんは誰かと踊ったりしないの?」
「見て貰えば分かる通り、俺の周りには誰も来ませんよ。」
「そう...なら、お姉さんと良かったら踊らない?」
「...」
崇秀は驚きのあまり、言葉が出なかったが
「俺でよろしければ...喜んで。」
そう言って崇秀は手を差し出し、真由美の手を取った。
真由美の独特なステップに翻弄された崇秀は、試合後のように疲れ切っていた。
そして真由美の被害(?)を受けたものがもう一人、崇秀と同じように疲れていた。
「七草先輩、あれは俺らにはきついもんだ。」
崇秀は苦笑いのような表情を浮かべながら言った。
「ああ、あのステップはなかなかのものだ。」
達也も疲れ切ったようすだった。
「早乙女」
崇秀の元に克人がやってきた。
「疲れているようだな。」
「ええ、試合とはまた違った疲れがたまりますね。会頭は慣れていらしゃるようですが。」
「まあな。」
しかし本題はここからだった。
「早乙女、少し付き合え。」
と少し強引に呼びかけた。
会場の外の庭で軽く話すことになり、
「もうすぐ祝賀会が始まりますが、よろしいのですか?」
「心配ない。すぐに済む話だ。」
これを聞き、崇秀は大した事ではないと思っていたが、
「早乙女、お前は相当な実力を隠しているな。」
唐突にそう聞かれ、思わず警戒してしまった。
「なぜそのようなことを?」
「そうだな、もし何かとんでもない能力を隠しているならば、それが魔法師界の脅威になるかもしれないと思ってな。」
「俺は、会頭のファランクスのように、これといったものはないですよ。」
「そうか... 」
「だが、お前のサイオン保有量は相当なものだ。その遺伝子、十師族になって活用すべきだと思うが。」
「ありがたいお言葉ですが、俺は十師族には興味ないんで。むしろ、嫌いなくらいです。」
「そうなのか。お前が過去にそう思うようになった何かがあったのだろうが、そこまでは問わないことにしよう。」
「そうしてくださると、助かります。」
「話はこれだけだ。この後も楽しめよ。」
そういって克人は行ってしまった。
「十師族ね...俺はあいつともいずれやり合うのか。」
崇秀は少し明るい表情でそう呟き、会場へと戻っていった。
こうして、九校戦は幕を閉じた。
少し締まらない感じで終わってしまいましたが、九校戦はこれで終わりになります。
次は横浜騒乱編になります。
そういえばもうすぐ原作の方が終わってしまいますね。楽しみすぎて収納ボックスとタペストリーの方も予約してしまいました...(笑)