東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて 作:F.Y
ブロントさん一行が命蓮寺に戻ってみると、街はどうやら活気付いている様子だった。話を聞いてみると、明日、ウマレースの大会が開催されることになったらしい。広場の掲示板にはオッズ表が貼り付けられ、どの騎手が乗る馬に掛けるのか、という話で人妖が盛り上がっている。
「凄い活気ですね。皆さん、さっきよりもかなり盛り上がっているみたいで・・・・・」
群れになった人々を見た小鈴は目を白黒させる。一方、魔理沙はかなりこの状況をかなり楽しんでいる様子だった。
「なあ、ブロントさん。せっかくだし、明日はそのウマレースとやらを見物してみないか?」
「うむ。そうしてみるぞ」
「それよりも、先に宝塔とやらをお寺の妖怪に返してあげましょう」と、霊夢。
「おっと、肝心な事を忘れていた感。じゃあ、早速こいつをみょん蓮寺の奴らに返しに行くぞ」
「ああ!皆さん、これですよ!」
寅丸星は、ブロントさんから渡された宝塔を手にすると、やや興奮気味にそれを袖の下にしまいこんだ。
「全く、ご主人様はこれで何回目だ?それを失くすのは」
星の直属の部下であるナズーリンは呆れ顔だ。
「それで、例の魔物はどうなったのかの?お主たちが退治したのかの?それにしても、あんな危険な依頼をよく引き受けてくれたのう」
ブロントさんに尋ねたのは、数百歳以上とも思える化け狸の妖怪で、名前を二ツ岩マミゾウといった。
「うむ。そいつなら、ナイトがバラバラに切り裂いたんだが?頼まれたクエを断るか、放棄するナイトLS→心が狭く顔にまで出てくる→いくえ不明。頼まれたクエを引き受けるナイトLS→魔物退治と落とし物探しのクエを両方達成して帰ってくる→心が豊かなので性格も良い→彼女ができる。ほれ、こんなもん」
「ふむ。聖の方は、明日のウマレースの準備で忙しいらしいからの。魔物退治が完了したことは儂が伝えておこう。お主たちは今日は宿でゆっくり休むと良かろう」
「そう。それじゃ、そうさせてもらうわ。それにしても、虹色の枝盗んだ奴を追わなきゃいけないのもあるけど、焦ってもしょうがないわね」霊夢が言う。
「それなら、今日はとっとと宿に行って休むぞ。睡眠時間は9時間でいい」
「ウマレースは明日だからのう。どうじゃ?お主たちも見物してみては?」
「元からそのつもりだぞ」
「さて、それじゃ宿に行くか」
翌日。町の中心にある競馬場の前には黒山の人だかりができていた。中には夜明け前から並んでいた人々もいたらしい。
30分程待っていると、鐘の音と共に競馬場の門が開いた。ざっと数えて1000人を軽く越える人々の流れを、僧兵たちは見事に捌いてみせた。そして、馬券を買うギャンブラーたちと単に見物をする人で、途中で別々の入場通路に枝分かれしていった。
「どうする?ブロントさん。馬券を買って一山当ててみるか?それとも単純に見物するか?」魔理沙が言う。
「ちょっとだけ楽しんでみない?そうね、一人200Gまでを限度にするのはどう?」
「それじゃ、ちょっとやってみるぞ」
ブロントさんたちは馬券を買う人々の列に並んだ。
馬券売場では、どの馬に掛けるかという人々の熱気で溢れていた。ブロントさん一行のように、少額でほんの少しだけ楽しもう、と思っている人間は少数派だ。皆、山のような紙幣を机に置き、馬券を受け取っていく。
「うわぁ、皆さんお金持ちですね。あんなお金、どこから出てくるんでしょう・・・・・」
小鈴は飛び交う札束に目を白黒させていた。
「ああやって、人間はダメになるのよ。そうね・・・・・」
霊夢はオッズ表を見上げ、ざっと目を通した。
「ブロントさん、2-8にしてみない?なんとなくだけど」
2番と8番は、前評判は良くも悪くもない、普通の感じだ。倍率は4.6倍といったところか。
「む?じゃあ、霊夢が言うならそうするぞ。ものは試しなんだが?それじゃまずは100Gだけ掛けるぞ」
今回、馬券を買ったのはブロントさん一人だ。4人が観客席に座ると、丁度、妙蓮寺の僧たちが高らかにファンファーレを鳴らしたところだった。会場のボルテージは一気に高まり、拍手と歓声が響き渡る。
「凄い熱気ですね。賭け事はしたことが無いですが、皆さんこんなに夢中になるものなのですか」
小鈴が周囲を見回して、目を白黒させた。司会者とおぼしき男が何か言っていたが、歓声でかき消され、全く聞こえない。騎手たちが乗った馬は、スタート地点の白線の前に向かっている。おとなしく白線の前に立ち止まる馬いれば、なかなか言うことをきいてくれない馬もいる。
スタートとゴールを兼ねたラインの延長線上には櫓があり、その上には赤い旗を持つ男が立っている。やがて、全ての馬がスタート位置に収まった。
櫓の男が旗を振り上げると、馬が一斉にスタートした。ブロントさん一行を除く観客たちは、異様な熱気と共に歓声を上げる。馬たちは凄まじい勢いでコースを駆け抜け、前後に広がっていく。
馬の集団が最終コーナーに差し掛かるまであっという間だった。観客のボルテージは最高潮に達し、耳を聾するほどの叫び声が響き渡る。そして、1着になったのは2番の馬、2着になったのは8番の馬という結果に終わった。霊夢が勘で当てた通りの結果となった。
「おい、マジかよ・・・・・本当に当てやがった・・・・」
魔理沙が信じられないというような表情で霊夢を見た。倍率は3.1倍。100Gが310Gになった。このお金は即座に払い戻してもらうこともできるが、次のレースに持ち越して掛けることもできる。周りの観客たちの多くは立ち上がり、そそくさと馬券を買いに向かっているところだった。
「ブロントさん、どうする?次は7-1だと思うんだけど」
霊夢は何のことは無いといった様子でそう言った。どうやら、彼女にとっては分の悪い賭けというものは無いらしい。
「む・・・・?取り合えず、また100Gだけ賭けることにするぞ(ここは慎重に行くのが大人の醍醐味)」
「そう。7-1よ。忘れないようにね」
霊夢の予感は的中した。100Gが今度は230Gになった。そして、次のレースでは掛け金を200Gに上げてみると、それが480Gになり、次は200Gが310Gに、200Gが670Gになった。周囲の人間が当たった外れたで悲喜こもごもの様子を見せているのをよそに、ブロントさんたちは勝ち続け、所持金がどんどん増えていく。
この日、全てのレースが終わる頃には、ブロントさんたちはかなりの大金を手にしていた。観客席にはビリビリに破かれた馬券の破片が無数に散らばっている。
「さて、この後は早速虹色の枝を持ち去った奴を追うことにするか。しかし、そいつがどこへ行ったのかが問題だな。そいつを追うにしても手掛かりが全く無いというのが」魔理沙が閑散となった競馬場を見回して言う。
「そうね。でも、問題もあるわよ。さっき小耳に挟んだんだけど、どうやら魔物が狂暴化している影響で定期船が止まってしまっているらしいわよ。一番手っ取り早いのは、自分の船を手に入れることだけど、さすがにこのお金でポン、と買えるような値段じゃないわ」霊夢が言う。
「そうですね。次にどうするかが問題になってきますね。いずれにせよ、私たちは八方ふさがりの状態です」
「うむ。だが、取り敢えずはこの先にある町に進んで、それから考えることにするぞ。まずは新エリアを開拓するのが冒険者の醍醐味」
「とはいえ、その町の次が問題なのよ。その町は港町なんだけど、さっき言ったように定期船が完全に止まっていると言ったでしょ」
「む・・・・、だが、それでも先に進まないといけなのは確定的に明らか。そうではにぃのか、霊夢どん」
「誰が霊夢どんですか。それにしても・・・・あら?」
霊夢は自分たちに近づいてきている人影に気づいた。
「あなたたち、どうやらお困りの様子ね」
「シャンハーイ」
「あんたは確か・・・・・劇場で人形劇をやっていた魔法使いだったな」魔理沙が言う。
「ええ。この先にある港町に行きたいんだけど、魔物が狂暴化していて私一人ではどうしてもたどり着けそうにないのよ」
「むう。それなら、俺たちが同行するぞ」
「助かるわ。そうね、お礼くらいするわよ。私の船であなたたちを西の大陸まで連れて行くくらいはするわよ」
「おい・・・・今・・・・」魔理沙が目を真ん丸にしてその人形使い、アリスを見た。
「ええ。私の船、よ。その港町に船を置いていて、それで海を渡りたいんだけど、魔物が狂暴化していて私一人ではどうにもできないのよ。そこで、私の船であなたたちを西の大陸に連れて行く代わり、あなたたちに魔物を倒してもらおう、っていうこと」
「うむ。良いぞ」
「それじゃ、これでトレードオフね。さて、出発しましょう」