東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて   作:F.Y

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彼岸の集落

「おら!メガトンパンチ!」

 

 ブロントさんがウィングスネークに拳を叩き込み、霊夢がダックスビルに回し蹴りをくらわす。マドハンドの群れを魔理沙が放った炎が焼き払い、剣を持った上海人形が回転しながらスライムつむりを斬り払う。

 命蓮寺の砂漠地帯とは一変、このダーハラ湿原は蒸し暑く、湿気っており、別の意味で不快な環境である。アリスは命蓮寺に辿り着くまで一人でここを抜けてきたのだが、何の事は無い。空を飛んで、地面をうろつく魔物を避けてきたのだ。

 

「見て下さい、ブロントさん!」

 

「おいィ!?モンスが汚い空蝉を使うとかsYレならんしょ?こいつ絶対忍者だろ」

 

 マドハンドが手招きをするような動きをすると、地面から更に5体のマドハンドが生えてきた。形勢が不利だと判断し、仲間を呼んだのだ。

 

「こいつは忍者じゃないで、マドハンドよ!」

 

 アリスの合図で上海人形が剣を持ってマドハンドに斬りかかる。だが、1体1体攻撃していては焼け石に水で、次々と仲間を呼ばれ、気づけば10体ほどにも増えていた。

 

「じゃあ、これならどうだ?食らえっ!」

 

 魔理沙の八掛炉から無数の火の玉が飛び出し、着弾して爆発する。マドハンドの表面が炎で炙られ、乾燥してボロボロと崩れ始める。霊夢が飛び上がり、くるくると回転しながら残ったマドハンドに蹴りを入れてとどめを刺した。

 

 

 

 周囲は開けているが湿地帯故、そこら中に鬱蒼と樹木が生い茂り、それほど視界が良いとは言えない。地面はぬかるんでおり、場所によっては木で組まれた大きな橋もかけられている。人の手が加わっているということは、ここを通る旅人も少なくないのだろう。とは言うものの、ここの魔物は手強く、そこそこ戦いに慣れた人間でなければ通るのは厳しいだろう。

 

 青ばち騎兵がからかうように飛び回り、ブロントさんに向かって針を飛ばして攻撃してきた。おまけにダックスビルにスライムつむり、とらおとこまで攻撃してくる。

 

「黒焦げになりやがれ!」

 

 魔理沙が八掛炉からレーザーを放って攻撃する。表皮を焼かれたダックスビルが悲鳴を上げて沼の中に逃げ込み、翼を焼かれた暗闇ハービーが墜落する。取り敢えず、襲い掛かってきた魔物を片づけることはできた。

 

「おいィ。ちょっとばかりモンスが粘着し過ぎではにぃか」 

 

「確かに、ここまで魔物が湧き出てくるのは、ちょっと前までは考えられなかったわね。あなたたちに同行してもらえなかったらこの先はどう考えても突破できなかったわ」

 

「それにしても・・・・アリス、お前、どうして自分の船なんて手に入れたんだ?」

 

「まあ、なんと言うか、なり行きってものよ」

 

「なり行きなんかで手に入るものじゃないだろ・・・・・」

 

「まあ、そんなのをいちいち気にしていたらすぐに禿げるぞ。まあ、一般論でね?」

 

「失敬な!私は禿げてないぞ!」魔理沙が言い返す。

 

「二人とも、バカなこと言ってないで。ほら、また敵よ」

 

 霊夢の視線の先には、ひぐらしそうやデーモントード、スライムつむりといった魔物がいる。そいつらは、一斉にブロントさん一向に向かってきた。

 

「またモンスがぽごじゃか沸いてきたか」

 

「ぽごじゃかって表現初めて聞いた。どこの言葉なんですか?」霊夢が言う。

 

「どこだっていいだろ!言語学者なのかよ?」

 

「バカなこと言っていないで、とっとと片づけるぞ」

 

 

 

 そんなこんなで、湿地帯を超え、森林と草原という長い道のりを魔物を退けつつ歩いてきたブロントさん一行は平原に到達した。小高い丘の上に立つと、視線の先に水平線が見えてきた。海だ。

 

「さて、アリス。お前の船ってのはどこにあるんだ?」

 

「ここから東に行ったところの港町に置いてあるわよ。まあ、そんなシケたような大きさの船じゃないから安心していいわ」

 

「ええと、あれを道なりに真っすぐですね」

 

「む。それじゃ、あっちに向かうぞ。ZUNは急げとも言うからな」

 

 

 

 ブロントさん一行はアリスが持つ船が停泊している、彼岸の集落という港町にたどり着いた。この街は今までブロントさんが訪れた町の中でも、白玉楼に次ぐくらいに賑わいを見せている。

 

「うわー、この町もかなり大きな町ですね。それに、何かお祭りでもあるのでしょうか」

 

 小鈴が見る先にあるのは、町の中心部に設置されつつあるステージだった。

 

「特に聞いてはいないわね。それよりも、ダラダラしている時間が惜しいでしょ。早いところ出港して、虹色の枝を盗んだ奴を見つけなきゃいけないんでしょ?」

 

 アリスが言うことはもっともだ。だが、そのついでに武器やアイテムの調達も兼ねて、少しばかり情報収集もしてみることにした。

 

 

 

 魔理沙とブロントさん、霊夢は食糧を買っている間、怪しい男が虹色に輝く木の枝を町の問屋にしつこく売り付けていた、という情報を得た。その問屋から話を聞くと、そいつは既に船で別の大陸へ向かったらしい。

 先に船が停泊しているドックにいるアリスと小鈴と合流しようとしたが、二人はドックの目の前にいる若い男に中に入るのを止められていた。

 

「すみません。明日になるまで、ドックは全部封鎖して、船は出さないように町長から言われているんです。今日はこの町で年に一度のコンテストが開催されるので、ここにいる人間もみんなそれの手伝いにかり出されているんです」

 

「はあ?私の船なのに、何であんたなんかが勝手にどうこうするの?何考えているのよ」

 

「シャンハーイ!」

 

「おいイ?俺たちは早いところ、この大陸から出発したいんだが?ZUNは急げという言葉を知らないのかよ?」

 

 ブロントさんがアリスの背後から、その男に話しかける。

 

「コンテスト、とか言っていたな。何なんだ、それは?」と魔理沙。

 

「はい。年に一度、この町と、近隣の村や里から、屈強な男たちが集まり、その力と肉体美を競うコンテストなんです」

 

 男は魔理沙にチラシを差し出した。

 

「全く、くっだらねぇな。私たちはそんなのに関わっている余裕なんて無いんだぜ」

 

「そう言えば、そちらのあなた、かなり筋骨隆々のようですね。顔も整っていますし、よろしければ・・・・」

 

「【せっかくだけど遠慮します】」

 

「そ、そんなこと言わずに参加してみてくださいよ。あなたならば、優勝できなくても、恐らくは2位や3位くらいなら・・・・」

 

「9位でいい」

 

「謙虚だなー」と、魔理沙。

 

「憧れちゃうなー」霊夢が続く。

 

 だが、男は食い下がった。

 

「今回はちょっと人が揃っていないんですよ。あと2、3人の参加者が・・・・・」

 

「どちらかと言えば大反対」

 

「そ、そんなぁ」

 

「ああ、もうあんたじゃ埒があかないな。この町のお偉いさんに直接話を付けてやる」

 

 魔理沙のその言葉で、一行は一旦、ドックを後にした。

 

 

 

 ブロントさんたちがこの町の町長を探して町の中を歩いていると、その後ろから小さいな影が住宅の角から観察しながら付いてきていた。そいつは素早く走り出すと、霊夢が持つ大幣を掠め取ろうとしたが。

 

「おっと、人のものを盗もうだなんて、感心しないわね」

 

 霊夢は素早く大幣を掲げ、茶髪の少年の手から遠ざける。小さな盗人は勢い余って、その場で顔面から派手に地面に突っ伏した。

 

「痛たたた、おい、ちょっとくらい借りたっていいだろ!」

 

 額と頬に擦り傷ができた少年が霊夢の方を見る。歳は10才くらいに見えた。

 

 その少年が現れた場所と同じ場所から、もう一人、赤毛の少年が現れた。その少年は何か言いたげな様子で、身振り手振りでブロントさんたちに訴えようとしているが、何か様子がおかしい。

 

「もしかしてこの子・・・・・」

 

 霊夢が赤毛の少年の喉の辺りに軽く触れ、意識を集中させる。

 

「何かの術式で喉?いや、違うわ。声帯を麻痺させられている。この子、そのせいで、声を出せなくなっているわ」

 

「おいおい、何だそりゃ?随分と酷いことをする奴がいるな。霊夢、お前の治療術で何とかできそうか?」魔理沙が言う。

 

「これは・・・・・ちょっと一筋縄にはいかないかも。それに、病気や怪我という訳じゃないから、私の治療術だけで何とかできる、ってレベルじゃ無いわね。でも、何か触媒になるものを使って術式を強化できれば、元通りに声を出せるようにできるかもしれない」

 

「触媒になるもの、ですか。満月草じゃダメそうですか?」小鈴が提案する。

 

「ちょっとやってみようかしら」

 

 霊夢は満月草を磨り潰して少年に飲ませ、術式を使ってみた。だが、元通りに声を出すことはできない。

 

「どうするんだ、霊夢。これじゃお手上げじゃないか」

 

「ちょとsYレならんしょこれは・・・・?エリ夢の治癒術が効かないのはずるい」

 

「うーん、どこかにもう少し強力な薬の原料みたいなものがあれば治癒術を増幅する触媒に使うことはできるんだけど」

 

「薬の原料ね。差し当たって、道具屋で探してみる?」アリスが提案する。

 

「それじゃ、カカッと薬を探してみるぞ。声を出せなくなった子供を放置するナイトはいないという意見」

 

 

 

 それからというもの、ブロントさんたちは道具屋を見て回り、特に薬の材料になりそうなものを探したが、どれも霊夢の治癒術を増幅する効果がありそうなものでは無かった。

 

「困ったな。流石のトレジャーハンターの私でも、治癒術を増幅するアイテムなんて聞いたことが無いぞ」魔理沙が頭を抱えている。

 

「術式を増幅するのは、どんなものでも良いわけじゃ無いんです。例えば、魔理沙さんが攻撃魔法の威力の増幅には毒キノコが効果的なように、術式によって増幅にできる触媒は変わるのです。霊夢さんの治癒術ならば、例えば薬草とか、薬の原料として使うものが必要なんです」

 

「しかし、生半可な回復力のアイテムではダメと言う顔になる。普通の薬草とは違う超パワーの回復アイテムが必要なのは確定的に明らか」

 

「困ったわね。とはいえ、こっちから手を貸した以上、あの子を放置するのはね」と、霊夢。

 

 一同が円陣を作るように立って考え事をしていたのは、寺院の扉の前だった。そこへ、街中を散策していた僧侶がやって来た。

 

「すみません、皆さん。ここを通してもらえませんか?」

 

「おっと、悪いな。そうだ、坊さん。ちょっと聞きたいんだが、この辺りに強力な薬の原料になりそうなものがあるかどうか知らないか?」魔理沙が脇にさっと飛びのいてから、その年配の僧侶に話しかける。

 

「薬の原料ですか。それならば、ここから西に向かった先の洞窟に、極めて純度の高い綺麗な水が手に入ります。どういう訳か、その水は薬草の効果を増幅する効果がありまして、以前は、その水に薬草を漬けて、様々な病症に効く薬を作っていましたが、今ではかなり狂暴な魔物が住み着くようになってしまって、そう簡単に取りに行けるような場所ではなくなりました」

 

「そうか、ありがとな、坊さん」

 

「いえいえ、何かの助けになれば、それで構いませんよ」

 

 そう言って僧侶は寺の中に入って行った。

 

「おい、聞いたな?」と魔理沙。

 

「うむ。それじゃ、カカッと西の洞窟に向かって、薬の原料を取りに行くぞ」

 

「この時間だし、上手くやれば夕方前には戻って来れるわね」霊夢が空を見上げて言う。

 

「それじゃ、早速、出発と行くか。それに洞窟だと、他にお宝もどっさり眠っているだろうしな!トレジャーハンターの腕が鳴るぜ!」

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