東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて   作:F.Y

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脱出、そして出航

 魔理沙とブロントさんはいつの間にか刀を持った庭師とクナイを持った忍者に囲まれていた。その様子を町人たちが遠巻きに見ている。

 

「んー?ブロント、誰かと思えば、そいつは白玉楼から盗みを働いて牢屋にぶち込まれていた奴じゃないか。やはりお前らグルだったか」

 

「くそっ、こいつらどこで私たちのことを見つけやがったんだ?」

 

 庭師連中がじりじりと包囲網を詰め、ブロントさんたちを追い詰めていく。

 

「観念しろブロント。お前との鬼ごっこも・・・・・ん?」

 

 突然、庭師と忍者に向かって真っ白な光や氷の刃が飛んできた。庭師連中はそれの直撃を受けて凍傷や裂傷を負って倒れる。だが忍者は素早く汚い空蝉を張り、その攻撃を回避した。

 

「くそっ!どこから・・・・・」

 

「ちょっと、私の仲間に何するのよ!」

 

「シャンハーイ!」

 

 野次馬の中からアリスと霊夢が現れた。アリスと霊夢は再び術式を連続して放って忍者と庭師を攻撃する。汚い忍者は空蝉でそれを回避したが、庭師連中は攻撃の術式の直撃を受けてバタバタ倒れた。

 

「ブロントさん、魔理沙さん、こっちです」

 

 ブロントさんの後ろにある階段から小鈴が現れ、手招きした。ブロントさんと魔理沙は小鈴に先導され、群衆に紛れて逃走を図る。その間、霊夢とアリスが庭師連中に攻撃を仕掛け続けながら後退する。

 

「くそっ、逃がすな!」

 

 忍者は右手からどす黒いエネルギー体をブロントさんたちに向けて放つ。

 

「やばい!」

 

 魔理沙はブロントさんの背中を押した。ブロントさんが前にややつんのめると同時に魔理沙に忍者が放ったエネルギー体が直撃する。

 

「魔理沙!」

 

 ブロントさんが足を止め、倒れ込んだ魔理沙を助け起こそうとしたが、魔理沙はその手を払いのけた。

 

「いいから行んだ、ブロントさん!小鈴!頼んだぞ!」

 

 小鈴はブロントさんの手を引いてその場から立ち去る。霊夢とアリスは一瞬だけ立ち止まったが、このまま魔理沙を助けるのは難しいと判断して一時退散することにした。庭師連中は魔理沙を拘束して町の奥の方へと連れ去って行った。

 

 

 

 辺りはすっかり暗くなってしまっていた。魔理沙は町の奥で拘束され、庭師連中がそこら中をうろついている。

 

「何よあいつ、頭に来るわね!」

 

「シャンハーイ!」

 

「ブロントさんは、白玉楼の人たちから悪魔の子と濡れ衣を着せられて、追われているんです。アリスさんにはもう少し早く話すつもりでしたが・・・・・・」小鈴が申し訳なさそうな顔をしてアリスに言う。

 

「それよりも、早いところ助けないと魔理沙の寿命がまずいことになる」

 

「ブロントさん、落ち着いてちょうだい。そうね。こっちから助けに行くにしても、手面突破は無理ね。何とか横や後ろに回り込むしか無いけど、私たちが飛んだら、それこそあいつらにバレてしまうわ」

 

「ねえ、あれとかどうかしら?」

 

 霊夢が指示したのは、海上に突き出た桟橋に停泊してあった遊覧用の小さなボートだ。この町の観光名所で、普段ならばそれは観光客を乗せて町の周囲を周遊する目的で使われる。

 

「うってつけね。ブロントさん、それを使って、桟橋の奥まで進みましょう」アリスの提案に、ブロントさんはあっさりと応えた。

 

「うむ。実際、俺はボートを漕ぐスキルも高い。自慢じゃないが、イシの村のクック船長とも言われていたんだが?」

 

「うーん?ブロントさんの故郷に海ってありましたっけ?」霊夢は首をかしげたが、この状況でそれ以上突っ込むのは無意味と思ったのか、それ以上の突っ込みはしなかった。

 

 

 

 一方で、汚い忍者はブロントさんたちは人質を助けるために正面から突っ込んでくるだろう、という自分の目論見が見事に外れてしまい、かなり苛立っていた。

 

「くそっ、おい、お前ら!人質の見張りはいいから、とっととブロントどもを見つけてこい!」

 

 その忍者の命令に従い、庭師連中が町のあちこちに散らばっていく。それが忍者にとって致命的な結果をもたらすことになった。

 

 

 

 ブロントさんたちは、ボートに乗り、停泊している大きな船の陰から様子を窺っていた。やがて、庭師連中が町中に散らばり、自分たちを探しに行き、魔理沙を拘束しているのが忍者一人になるのを確認する。

 

「ブロントさん、今よ。突入して魔理沙を助けるわよ」

 

 霊夢の合図で、4人は一斉に魔理沙に駆け寄り、拘束を解いた。

 

「ふー、助かった。終わったかと思ったぜ」

 

「おいィ、おもえは大丈夫なんdisかね?」

 

「ああ。それにしても・・・・・」

 

「ちっ、お前ら、いつの間にっ!」

 

 汚い忍者がクナイを持ち、こちらを見ていた。

 

「人質を使っておびき寄せようとは、その浅はかさ愚かしい。汚いな、流石忍者きたない」

 

「汚いは誉め言葉だ。だが、ここがお前らの墓場だ。ここで鬼ごっこも終わらせてやるぜ、ブロント」

 

 汚い忍者はクナイを持って飛び掛かってきた。ブロントさんはそれを盾で防ぎ、剣を振るう。だが、忍者は軽々とバク宙を決め、それを避ける。忍者はクナイでブロントさんを切りつける。

 

「ちいっ」

 

 忍者は再びブロントさんを攻撃しようとしたが、体に霊夢の飛び蹴りを食らってよろめく。だが、忍者は即座にクナイを振るい、攻撃を仕掛ける。だが、霊夢はすんでのところでクナイの刃先を躱し、忍者に連続で拳を叩きこむ。忍者は両腕でその攻撃を防ぎ、両手に持つ鋭い刃物を振るうが、霊夢は華麗なバックステッポでそれを避ける。

 

「おら、こっちだ!」

 

 魔理沙が八卦炉から氷の刃を飛ばす。忍者がそれに切り付けられ、腕に切り傷を負う。後ろから剣を持った上海人形が忍者に斬りかかり、小鈴が術式で巻き起こしたつむじ風で忍者は更に切り付けられた。

 

「くそっ!」

 

 忍者は地面を蹴って舞い上がり、クナイを構えて霊夢に向かって落下した。霊夢は宙に浮くと、そのまま忍者と取っ組み合いをしながら硬い石畳に落ちていく。その間、霊夢は忍者の上の位置にいることを忘れなかった。

 忍者は背中から石畳に叩きつけられ、肺から空気を絞り出される。霊夢は追い打ちのように敵に何度も拳を叩きこむ。

 

「ふん。だが、そうはいかん!」

 

 忍者はバック転を繰り返して霊夢から距離を取り、集中し始めた。

 

「忍者が一人、忍者が二人、ファイナル分身!」

 

 忍者は空蝉の術を使い、分身を作り出した。ブロントさんは剣を振るって攻撃するが、どれが本物の忍者なのか全くわからない。

 

「はっはっはっ、お前らにこの空蝉を破ることはできん!」

 

「それはどうかしらね?」

 

 霊夢は分身した忍者のうち一人に近づき、拳と蹴りを連続して叩き込んだ。どうやら本物の忍者だったらしく、忍者は「ぐああ」、と声を上げて後退し、膝をつく。その隙をブロントさんは見逃さない。

 

「メガトンパンチ!」

 

 忍者の胴体にブロントさんの拳が叩き込まれ、汚い忍者は後ろに後退する。飛んできた上海人形が回転しながら忍者を切り付けた。

 

「ふんっ!小賢しい!」

 

 忍者はクナイを振るって攻撃を仕掛けるが、ブロントさんが盾でブロック。剣を振り回して忍者に切り傷を負わせる。

 ブロントさんが忍者の胴に拳をぶち込んで後退させる。だが、いつの間にか周囲に庭師が現れ、ブロントさんたちを包囲していた。

 

「くそっ、囲まれちまったぞ!ブロントさん、どうするんだ!?」

 

「ううん、私に任せて」

 

 アリスが上海人形を操り、ドックの方へと向かわせる。

 

「ふん。人形か。だが、もう無意味だ、観念するんだな」

 

 忍者と庭師連中がじりじりと包囲網を狭めていき、ブロントさんたちをほぼ完全に追い詰める。

 

「・・・・・忍者さん!あれは!」

 

 庭師の一人が港の方を指さした。忍者がその方を見ると、なんと巨大な船が桟橋ギリギリまで一気に近づいてきた。それを操舵しているのは。

 

「シャンハーイ!」

 

「みんな、今よ!」

 

 アリスの声で霊夢と小鈴は飛び上がり、魔理沙はブロントさんを箒に乗せて飛ぶ。5人はあっという間に船に乗り込み、それを追いかける庭師連中の何人かが勢い余って海へ転落する。船は猛スピードで岸壁から遠ざかった。

 

「助かった。終わったかと思ったよ」

 

 アリスの船は非常に豪華な造りをしており、船の中心には大小の帆がそれぞれ1つずつ、船首の一部は金属で補強され、更に左右の舷には大砲が3門ずつ配置されている。

 これだけの造りの船となると、かなりのお金と労力がかかっているはずだ。それを持っているとは、アリスは一体、何者なのだろうか。

 

「ブロントォー!」

 

 桟橋に残された忍者の叫び声が聞こえてきたので、5人はその声がする方を振り返った。

 

「勝ったと思うなよォォォォォ!」

 

「もう勝負ついてるから」

 

「"さん"を付けろよ!デコ助ェェェェェェ!」

 

 ブロントさんと魔理沙が忍者に向かって言い返す。船はかなりのスピードで航行しており、彼岸の集落はあっという間に小さくなっていった。

 

 

 

 ブロントさんたちは、航海のついでにこれから先の指針を決めることにした。まずは、命蓮寺から盗まれたという虹色の枝を探さねばならない。そのためには、それを盗んだ賊を見つけることから始めるのだが、それについての情報はアリスと霊夢が得ていた。

 

「声が出なくなった子供に薬を渡した時に訊いたんだけど、怪しい人間が彼岸の集落にいた行商人に虹色に輝く木の枝を売りつけていたみたいなの。その商人はというと、一足先にここから遥か北東の大陸に向かったそうよ」

 

 霊夢が地図を広げ、自分たちがいた彼岸の集落、そして北東にある大陸を指し示した。

 

「北東、となると、あそこは旧地獄の街道だな。一度行ったことはあるが、そこそこ栄えているところだ」魔理沙が言う。

 

「それと、そこにはかつて武魂の砦という、かなり大きな国があったみたいなのですが、今は滅んで跡地になってしまっているらしいのです。ただ、それのことを偲んでか、大きな宿屋が近くに建てられ、旅人が集まってきているようですよ」小鈴が補足する。

 

「滅んだ大きな国だって?かなり昔の話みたいだな」と、魔理沙。

 

「いや、そうじゃないんです。その国が滅んだのは、ほんの20年程前らしくて」

 

 約20年前というと、ブロントさんが生まれる2、3年程前のことだ。

 

「なんだそりゃ?魔物に襲撃でもされたのか?」

 

「詳しいことはわからないのですが、多分、そうではないか、と言われているくらいですね。どういう訳か、その当時のことを知っている人間や妖怪は多くないのですよ」

 

「私もちょっと気になって調べたんだけどね。でも、理由はわからないけど、当時、何があったのかを記録したものが残ってないんじゃ、調べようが無いのよね」と、霊夢。

 

「む、それじゃ、武魂の砦は行かなくていいのか?」ブロントさんが霊夢を見て言う。

 

「そうね。多分、虹色の枝を持った奴は、その先の旧地獄街道へ行ったはずよ。金目の物を売れるような町は、あの大陸には旧地獄以外に無いはず。そして、旧地獄街道の南西には」

 

 霊夢がそこまで言ったところで、ブロントさんが僅かに反応した。

 

「ブロントさん・・・・?」霊夢が訝しげにブロントさんの方を見る。

 

「いや、何でもにぃ。僅かに何かそこに何かあると思ったが、確定的に明らかではにぃから、下手に言わない方が良いと思った(この辺の謙虚さが人気の秘訣)」

 

「そうですか。それじゃ、まず目指す先は、北東の大陸ね。アリス、頼むわよ!」

 

「ええ、任せて頂戴」

 

 アリスは霊夢にそう答えて、舵を切り、船首を北東の方向へ向けた。

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