東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて 作:F.Y
翌日。ブロントさん一行は闘技場の受け付け前にいた。これより、武闘会に参加する闘士たちの組み合わせ抽選が始まるというのだ。
それにしても、予想外に参加者が多い。妖怪に人間、鬼・・・・・。参加者は受け付けに到着すると同時に整理番号を貰い、そのまま抽選会場に向かう。そして、箱を持った身なりの良い男が現れた。いよいよ抽選開始だ。
「お待たせしました。これより、仮面武闘会参加者の組み合わせ抽選会を開始します。知っての通り、この組み合わせで決定したペアは優勝するか途中で敗退するまで変更することはできません。では、まずは・・・・・」
男は右手を箱に入れ、その中身を取り出した。
「まずは6番、6番の方です。前にどうぞ」
「あ、私、私!」
前に出てきたのは、青く長い髪をなびかせた小柄な少女だった。桃の飾り物が付いた黒い帽子に白いブラウス、そして空色のスカートを着ている。
「6番の方ですね。この方とペアになるのは・・・・・・」
再び男は抽選箱の中に手を入れる。
「7番、7番の方。前にどうぞ」
どうやら、少女と組みになったのは偶然にも彼女の付き添いの人物のようだ。短く切った紫色の髪と、黒の長いスカート、そして目を引く緋色のシャツが特徴的だ。
「やれやれ。偶然組みになったのはいいですけど、総領娘様はなんという無茶なことを・・・・・」
「だから言ったでしょ、衣玖。とっとと優勝してお宝を頂くわよ」
続いて2番目のペアを決める抽選が始まった。
「さて、続いては・・・・・4番、4番の方です」
「私だね」
その声に誰もが注目した。前回の武闘会のチャンピオン、鬼の伊吹萃香という名前の少女だ。小柄ながら、鬼という種族の名の通り、凄まじい怪力を持っている。
「さて、この方とペアになるのは・・・・・・9番です、9番の方です」
「俺なんだが」
ブロントさんは、整理券受け取りの列に並ぶとき、『俺は謙虚だから9番目でいい』と言って、わざわざ3人ほどの人間や妖怪に列の前を譲ったのだ。
「おっ、これは強そうな人と組みになったなー。私は伊吹萃香。見ての通り、鬼だよ」
「ほむ。俺の名はブロント。謙虚だからさん付けでいい」
やがて、武闘会に参加する人妖のコンビ、そしてトーナメント表も決まった。後は、武闘会当日を待つだけとなった。
ブロントさんと組みになった鬼、伊吹萃香の話によると、武闘大会は1日で全ての試合を消化することは無く、数日に渡って試合が行われるらしい。勝ち上がりのトーナメント制で、1度でも負けたらそこで敗退となる。
今回の参加者は全部で32組。まず、1日目で第1回戦の前半の8回の試合が行われ、2日目に後半8試合が行われる。
3日目は、最初の2日間で勝ち上がった16組による試合があり、4日目は休息日で、5日目に準々決勝、6日目に準決勝と決勝が行われる、という日程となっている。
「私たちは2日目の組みに当たったから、最初の試合はちょっと先だね。その前に、他の人の試合を見て、この武闘大会がどういうものなのか確認しておくといいよ」
「ああ、確かにその通りだな。ブロントさん、どうせだったら明日の最初の試合を見物して、どういうものか見てみようぜ」
魔理沙の提案にその場にいる全員が同意した。
翌日、ブロントさん一行は武闘大会の試合の見物をすることにした。コロシアムの観客席には人間、妖怪、妖精といった様々な観客が集まり、熱気に包まれていた。
コロシアムの中心に荒くれ者と妖怪のコンビが現れた。反対側の扉が開き、この二人の対戦相手がやって来る。
「皆さん、お待たせしました!旧地獄街道、毎年恒例の武闘大会が始まりました!今年も豪華なお宝を賭け、多くの闘士たちが血沸き肉躍る戦いを繰り広げてくれることでしょう!それでは、早速最初の試合を始めましょう!」
観客たちはますますヒートアップし、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。そして、コロシアムの階段から2人の闘士がやってきた。
「栄えある第一試合を飾るのは、ワットンとブルスターのコンビ、対するはブルンバとロークリーのコンビです!」
ワットンは旅の戦士といった風貌。重たい鎧兜を身に着け、片手剣と大楯を持っている。ブルスターは大きな体の荒くれ者といった姿で、持っている武器は長い柄のハルバートだ。
対戦相手のブルンバは妖怪のようで、豚のような顔と筋骨隆々の体つき。武器は持っていないが、その巨体から繰り出される突きや蹴りはかなりの威力のようだ。ロークリーは細身で黒装束に身を包み、大きなクナイを両手に一つずつ持っている。
4人とも、主催者から配られた白地に赤いラインが複数入った仮面を顔の上半分に身に着けている。これが、この武闘大会のルールだ。
「それでは、試合開始!」
レフェリーが合図すると即座に戦いが始まった。まずはブルンバが飛び上がり、ワットンに飛び掛かる。ワットンはかなり戦い慣れしているらしく、華麗なバックステッポで攻撃を回避し、お返しとばかりにブルンバを剣で切り付けた。
一方で、ブルスターはハルバートを大きく振り回しながらロークリーに斬りかかったが、ロークリーはバク転を繰り返しながら攻撃を躱し、空蝉を使って分身する。
ブルスターは周囲をキョロキョロ見回し、どれが本物のロークリーなのか見極めようとした。だが、どれも同じ姿で、どれが本物なのか全くわかっていない様子だった。
「汚いなさすが忍者きたない」観客席でその様子を見ていたブロントさんがボソリとそう言い放った。
ブルスターがキョロキョロしているあいだ、ロークリーは素早く相手に忍び寄り、後ろからパンチとキックを連続して放つ。だが、ブルスターにはそれはそこまで大きなダメージを与えられなかった。ブルスターはお返しとばかりにハルバートの柄でロークリーの頭を強打した。ロークリーは脳震盪を起こしたのか、フラフラと後退したのち、背中からバタリと倒れ込む。
ブルンバは何度もワットンに対して突きや蹴りを放つが、重く、頑丈な鎧と盾で守りを固めたワットンには通用しない。ワットンはブルンバに片手剣で切り付け、大きな切り傷を付けた。ブルンバの左腕と脇腹に刻まれた傷からは赤い血が滝のように流れ始めた。
「そこまで!」
レフェリーが手を上げて、戦いを中止させる。即座に薬や包帯などを持った男たちが敗者の方に駆け寄る。
「勝負あり!ブルスター、ワットン組が次の試合に進みます!」
コロシアムが割れんばかりの歓声と拍手、それから興奮と熱気に包まれる。そんな中、黒いコートと頭巾を被った人物がその様子を冷静に眺めていた。そして、踵を返すと闘技場の観客席から颯爽と立ち去って行った。
夕刻。この日の試合は全て終わり、次の試合に進む組みが半分決まった。明日はいよいよブロントさんと萃香が試合に臨む日だ。
「さーって、明日はいよいよ私たちの番だね。ブロントさん、しっかりご飯を食べてからしっかり寝て備えないとね!」
萃香は右腕を振り回し、指の骨をぽきぽき鳴らす。町を行く人々は、すっかり武闘大会の話で持ちきりで、多くの人々が酒場へと流れていく。
「うむ。明日の試合はナイトに任せるんだが?」
「それじゃ、私は家に帰るから。あ、朝になったら宿まで迎えに行くから。じゃあねー」
萃香はそう言い残し、ブロントさん一行と別れた。街行く人々は闘技大会の結果を知らせる号外を配る新聞売りに群がり、コロシアムの前に掲げられた明日の試合を知らせる貼り紙に群がる。
「さて、私らは宿に行くか。明日に備えてゆっくり休まないといけないだろ?」魔理沙が大きく伸びをする。
「む、そうだな」
「ブロントさん、虹色の枝がかかっているんだから、明日は寝坊しちゃダメよ」アリスが念を押す。
「む・・・・・善処はするぞ。まあ、一般論でね?」