東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて   作:F.Y

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最初の試合

 翌日。ブロントさんは、アリスと霊夢に引っ張られ、なんとか時間通りに闘技場にいた。とは言え、顔を洗って朝食を食べたら、この大男は案外シャキッとしている。

 

 闘技場の門の前で萃香と合流し、大会受付に向かう。ブロントさんと萃香は、この日の第2試合からの参加だ。二人は参加者控え室で待機となり、魔理沙たちは観客席から二人の戦いぶりを眺めることになった。

 

 

 

 魔理沙たちが観客席に座った時、丁度、第1試合が始まるところだった。参加者は、青く長い髪をなびかせ、空色のスカートと桃の飾りの付いた黒い帽子が特徴的な小柄な少女。彼女のパートナーは、緋色の服と黒いスカート、黒い帽子の、青髪の少女よりは幾分年上といった感じの少女だった。

 やがて、二人の対戦相手が現れた。短いメイスを持つバニーガールと扇を持つ踊り子といった風貌の女性だ。

 

「さあ、皆さんお待たせしました!いやー、今日は第1試合から華やかですね!美しき4人の女性の戦い!まずは飛び入り参加のお転婆娘とそのパートナー、比那名居天子、永江衣玖!対するは、旧地獄街道のカジノ人気ナンバー1のバニーガール、フローレンスとこちらはバーの踊り子人気ナンバー1、カトリーヌです!」

 

 観客はヒートアップし、歓声と拍手、口笛に大興奮の様子だ。

 

「さあ、第1試合の勝利はどちらの手に!?それでは、試合開始!」

 

 最初に動いたのはカトリーヌの方だ。両手に鉄製の扇を1つずつ持ち、舞うように天子に近づいて切り付けようとした。だが、天子はさらりとその攻撃を避け、不思議な形をした剣で切り付ける。

 カトリーヌの方も負けていなかった。すんでのところで扇を使って斬撃を受け止め、踊るような動きで一旦天子から離れる。一方、フローレンスは目を閉じ、意識を集中させて手から高熱の閃光を放った。

 

「おい、あいつ、魔法を使えるのかよ!?」

 

 観客席の魔理沙が驚いて目を丸くした。それも、純粋な魔法使いであるアリスや厳しい修行で常人よりもずっと強い魔力を得ている魔理沙とも引けを取らないレベルだ。フローレンスは更に冷気を放って天子と衣玖を攻撃し続ける。常人ならば、もうダウンしてしまっていてもおかしくは無い。だが。

 

「何よこいつ。こんなことまでやるの?」

 

「総領娘様、平気ですか?」

 

 衣玖は天子と自分に治癒の術式を使いながら話しかける。

 

「ふん、この程度、どうってことないわ。さて、このお返しはたっぷりとさせてもらうわよ」

 

 天子は自分の手に持っている剣を地面に突き立てた。すると、カトリーヌとフローレンスの足元の地面が隆起し、二人を転倒させる。

 天子が使った術式の効果はこれだけに留まらなかった。更に地割れが発生し、対戦相手の二人はこれに足を取られてほとんど身動きが取れない状態になる。

 

「さあ、衣玖、出番よ!」

 

 衣玖は両足を少し開くと右手の人差し指を上に向け、左手を腰に当てて集中した。すると、何の前触れも無く雷が落ちてきた。カトリーヌとフローレンスは雷の直撃を受け、後ろに向かって大きく吹き飛ぶ。

 

 ところが、それで勝負はつかなかった。フローレンスの方は倒れて起き上がれなかったが、カトリーヌは立ち上がり、鉄の扇を振り回して天子に斬りかかった。天子は手に持った剣でそれを防ぐが、頬に短い切り傷が付いた。

 天子はそれに構うことなく剣を振り回し、カトリーヌと斬り合う姿勢となった。お互いに手にした武器を振り回し、腕や肩から血を流しながら争いが続く。観客席から、まるで雷鳴のような歓声と拍手、足踏みする音が鳴り続ける。その雷鳴のような音に、小鈴が思わず耳を塞ぐくらいだった。

 

 衣玖が天子に手をかざし、術式を放つと彼女の相棒の体の傷が瞬く間に塞がった。傷が癒えた天子はエネルギー体の剣を振るい、カトリーヌに斬りかかる。カトリーヌは押されてどんどん後退していき、最後には壁際近くまで追いつめられる。

 

「さあ、観念しなさい!」

 

 天子が思いっきり剣を振るい、一撃を入れた。それを食らったカトリーヌは壁に背中から寄りかかって地面にへたり込む。

 

「そこまで!」

 

 レフェリーが戦いを中止させた。フォローレンス、カトリーヌ共に既に動けるような状態では無かった。

 

「勝負あり!本日の第1試合の勝者、比那名居天子、永江衣玖が準々決勝に進出です!」

 

 会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。当然ながら、この二人はブロントさんと対決する可能性が出てきた。

 

「うーん、あいつら、本当に只の人間かしら?」

 

霊夢は腕組みをし、首を傾げてそうぼやいた。

 

 

 

 いよいよブロントさんと萃華の番となった。対戦相手は、ガリソンという名の髭面の荒くれ者と、バーンズという名のチンピラらしい。

 

「それでは、第2試合に参りましょう!この旧地獄街道きっての暴れん坊、酒を飲んだら手が付けられないガリソンと、この武闘大会で一攫千金を狙うバーンズ!対するは、小さな百鬼夜行、伊吹萃華!そして、黄金の鉄の塊でできたナイト!ブロント!」

 

「さんを!」

 

「付けろよ!!」

 

「デコ助野郎!!!」

 

 アリス、霊夢、魔理沙がこの歓声の中でも、ブロントさんのLSメンらしい見事な連携できっちりとテンプレを決めた。

 

「それでは、試合開始!」

 

 ガリソンとバーンズは、最初から先にブロントさんを潰すと話しあって決めていたらしい。ヒキョウにも二人同時にブロントさんに向かって殴りかかってきた。

 だが、ブロントさんはこれまでの冒険で、9匹のモンスの猛攻から、4人のPTメンのメイン盾としてタゲを取ってきた実績があった。

 ブロントさんは鋼鉄製の巨大な盾を掲げ、二人の攻撃を「ほぅ」と受け流しつつ、華麗にバックステッポを決めた。

 ガリソンは足踏みして何とか立ち止まったが、バーンズは勢い余って地面にズサーとめり込み、プリケツを晒す。

 

 ガリソンとバーンズのタゲは完全にブロントさんに向いていた。勿論、その状況を萃華が利用しない訳が無い。不意だまのパンチを連続で二人の背後から決め、その隙にブロントさんが放つギロチンのハイスラがガリソンに直撃する。

 

 ガリソンはすっかり頭がHITしてしまい、モンスのような叫び声を上げつつ、キングベひんモス顔負けの勢いでブロントさんに突進してきた。しかし、今度は生半可なナイトには使えないホーリーを食らい、背中から勢いよく地面に叩きつけられる。

 

 ガリソンは再び起き上がり、バーンズと共にブロントさんを執拗に攻撃してくる。だが、それこそがブロントさんの狙いだった。ブロントさんは破壊力ばつ牛ンの斬撃をバーンズに決め、萃華はリアルではモンクタイプの鬼らしい連続のパンチとキックをガリソンに連続でぶちかます。

 

 ただ体格が良いだけの荒くれ者と、流石モンス相手に鍛えてきたナイトと鬼のコンビでは格が違い過ぎた。闇雲に殴りかかって来る相手に対して、ブロントさんはいとも簡単にその攻撃を受け止め、剣で切り付けて攻撃する。一方の萃香は、持ち歩いている瓢箪に入っている酒を一口飲むと、凄まじい勢いで対戦相手にメガトンパンチを食らわせてボコボコにする。萃香曰く、酒を飲むほど調子が良くなるらしい。ブロントさんも彼女から酒を勧められたが「せっかくなので遠慮します」といって拒否した。

 萃香の強烈なパンチを顎にまともに食らったバーンズが宙に飛び、背中から勢いよく地面に叩きつけられて遂に動きを止めた。

 

 一人残ったガリソンは、やぶれかぶれになって闇雲にブロントさん目掛けて突進してきた。だが、ブロントさんはガリソンの顔面に奥歯を揺らす威力のパンチを直撃させた。ガリソンはそのまま後ろに倒れ、ピクリとも動かなくなる。

 

「そこまで!勝負あり!伊吹萃香とブロントが準々決勝に進出です!」

 

 コロシアムで歓声、拍手、口笛、足踏みが混ざった轟音がとどろく。そのため、魔理沙の「さんを付けろよ、デコ助野郎!」という突っ込みは完全にかき消されてしまった。




キャーイクサーン

そして金髪の子は相変わらず舎弟になる。

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