東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて 作:F.Y
萃香は自分が捕まっている部屋の様子を見回した。萃香自身は蜘蛛の糸のようなものでがんじがらめにされ、洞窟の天井に吊り下げられている。他にも、武闘大会に出場した人間や妖怪が、自分と同じようにこの部屋に捕まっている。
普通なら、こんな糸など自慢の怪力で簡単に引きちぎることができるのだが、どうやらこの糸には、捉えた相手の妖力や魔力を吸収する機能があるのか、全身に全く力が入らない。
「うう・・・・・油断した。まさか、寝込みを襲われるだなんて」
下を見ると、真っ黒なローブを着た何者かが、この蜘蛛の巣の真ん中で何かをしている。それが何なのかは、萃香には窺い知る術がない。
「ちょっと、これどうなってるのよ!誰か何とかしなさいよ!」
誰かが叫ぶ声が聞こえてきた。その人物は、ちょうど、萃香の真下の辺りに捉えられているようだ。萃香がその人物の方に視線を向けると、その天人も萃香に気づいた。
「あ、あんた!武闘大会に出ていた鬼じゃない!あんたの怪力なら、この糸くらい引きちぎれるでしょ!」
「い・・・・いや、あたしもそうしたいのはやまやまなんだけど、この糸に力を吸い取られているみたいで、全く力がはいらないんだ・・・・・」
「なによそれ!ちっとも役に立たないじゃない!あー、もー、旧地獄街道の奴らは何をしてるのよ!武術大会に出ている人が次々いなくなっているなら、捜索隊くらい出すべきでしょ!あー、もー、はやくきてー、はやくきてー」
そんなことを言っていると、突然、部屋の扉が開いた。
ブロントさんたちは洞窟の最深部の部屋に突入した。部屋の壁には蜘蛛の巣が張り巡らされ、武闘大会に出場していた選手たちが捕らえられている。
「な・・・・何よこれ・・・・」
霊夢が部屋の様子を見て呆然となる。
「これは酷い。すぐに助けてやらないと」
魔理沙は箒に乗り、部屋の中を飛び回りながら、八卦炉からレーザーを放って糸を焼き切る。
「おい、貴様ら、何を余計なことをしている」
部屋の向こうから真っ黒なローブを着た人物が歩いてきた。
「おいィ、おもえが誘拐犯なんdisかね?誘拐とか直接的に言って犯罪でしょう?天狗ポリスに捕まってムショで9年は臭いメシを食うハメになる!はやくあやまっテ!」
「こいつは面白い人間だな。貴様のちからも吸い取ってやろうではないか・・・・・・ん?」
魔理沙が箒に乗って降りてきた。萃香と天子も一緒だ。
「ふう、助かったよ」
「この私を助けるだなんて、あんたいい目をしているじゃない?それで、そこの大きいのは誰なのよ・・・・・」
「む・・・・・?」
ブロントさんが天子たちの方を見る。
「あ、ブロントさん、助けに来てくれたんだ!でも、見ての通り、他にも捕まっているのが沢山いて、あたし一人じゃどうにもなりそうに無くて・・・・?」
「ブロント?ブロントだと?貴様、まさか・・・・」
だが、その場にいるブロントさんのPTメンたちはブロントさんの名前に反応した誘拐犯を無視した。
「うむ。やはり忍者よりナイトの方が頼りにされていた!キングベヒんもスとの戦いで、おれは集合時間に遅れてしまったんだが、ちょうどわきはじめたみたいでなんとか耐えているみたいだった。おれはジュノにいたので急いだ。ところがアワレにも忍者がくずれそうになっているっぽいのがLS会話で叫んでいた。どうやら忍者がたよりないらしく「はやくきて~はやくきて~」と泣き叫んでいる芋と天子のために、俺はとんずらを使って普通ならまだ付かない時間できょうきょ参戦すると」
「もうついたのか!」と魔理沙。
「はやい!」霊夢が続ける。
「きた!盾きた!」小鈴がそう言うと、
「メイン盾きた!」アリスが引き継ぎ、
「コレデカツル!」上海が言い、
「と、大歓迎状態だった」最後にブロントさんが〆る。
「待て、ここでこいつらを解放されてしまっては困るな」
誘拐犯と思しき黒衣の人物がブロントさんたちに近づく。やがて、そいつの背中から、節のあるでかい脚が1、2、3、全部で8本伸びてくる。
「は?こいつ、魔物か?」
魔理沙は誘拐犯の正体を目を丸くして見上げた。8本の脚はとてつもなく長く、節の一つがブロントさんの背丈ほどもある。
「おいィ、虫がでかいのはずるい。こいつ絶対忍者だろ・・・・・」
「いや、忍者は関係無いだろ、それよりも来るぞ!」
バカでかい蜘蛛は腹部を大きく膨らませたかと思うと、生えている無数の棘を上に飛ばす。そして、棘は落下しながら破裂し、ブロントさんたちの頭上に無数の鋭い破片を降らせる。
「うおっ!」
「きゃあ!」
棘の破片は金属のように鋭く、ブロントさんのPTメンたちに切り傷を負わせる。
「くそっ、こいつは不味いぞ」
魔理沙は八卦炉から火の玉を幾つか放った。それはモンスの足元に着弾し、この巨大な蜘蛛を少しだけ後退させた。その隙に霊夢と小鈴がPTメンに治療の術式をかける。傷が癒えたブロントさんは剣を振りかざし、敵に肉迫しようとしたが。
「うおっ、異常な超常現象・・・・・・・」
巨大な蜘蛛は目をカッと見開いてブロントさんを睨みつけると、ブロントさんは体をフラフラさせ、出鱈目に歩き始めた。目の焦点が合っていない。
「おいィ~、体がいう事を聞かないんだが?汚いな流石忍者きたない」
「くっ、厄介な奴ね!魔理沙、こうなったらあれを使いましょ!私があいつの足元に結界を張ったら、炎の魔法をそれにぶちかまして!」
「おう!」
霊夢は意識を集中させ、蜘蛛の魔物の足元に結界を張った。その直後、魔理沙が八掛炉から炎の帯を放つ。その炎の魔法は、瞬く間に結界に吸収されていった。
「ふん!この程度の小細工でどうにかなるとでも思ったか?はあっ!」
蜘蛛が口から糸を吐き出した。魔理沙、霊夢、アリス、衣玖は飛び上がって避けたが、混乱していたブロントさんと、混乱を解除する術式に集中していた小鈴が糸に絡め取られる。
「きゃあ!」
「うおっ!」
「ヤバい!ブロントさん!小鈴!」
魔理沙が蜘蛛の上を飛び、八掛炉から氷の刃を飛ばした。だが、蜘蛛は再生した刺を背中から空中に放ち、魔理沙を狙い撃つ。
「がっ!」
刺は花火のように弾け、ナイフのように鋭い無数の破片を空中に飛び散らす。それを浴びて負傷した魔理沙は地面に墜落した。
「くっ・・・・・畜生・・・・・・・」
巨大な蜘蛛は魔理沙に狙いを定めた。結界の妖力によって脚を動かすことはできないが、糸を飛ばすことはできる。蜘蛛は魔理沙に糸を絡め、口で手繰り寄せて補食しようとする。
だが、突如として蜘蛛の足元から灼熱のマグマが吹き上がった。超高温のそれは、蜘蛛の8本の脚のうち3本を瞬時に炭化させた。
「ぐおぉぉぉぉぉ!こ、これは・・・・・・・!」
「上手くいったぜ!霊夢!」
「てぁぁぁぁぁぁ!」
霊夢は飛び回りつつ、霊力によって精製した弾幕を蜘蛛に浴びせる。畳み掛けるようにアリスが真空の刃を放ち、衣玖が雷を飛ばして攻撃する。
「がっ、がぁぁぁぁぁ!」
蜘蛛は地面に崩れ、虫の息寸前のような状態だ。だが、残った脚を動かし、最期の足掻きを見せようとする。
「無駄だ!」
魔理沙は蜘蛛のすぐ目の前に降り立ち、八掛炉をその巨大で醜い魔物の顔に突きつけ、魔力を集中させた。
やがて、八掛炉から放たれた強烈な光が巨大な魔物を包み、蜘蛛が全身を炎上させて地面に倒れる。炎が消えたあとには、巨大な炭の塊だけが残されていた。
「ふー、一丁上がり!どうだ、私の活躍は!」
と、魔理沙はドヤ顔でPTメンの方を振り返ったが・・・・・。
「見てない」と天子。
「何かあったの?」アリスが続き、
「俺のログには何も無いな」衣玖に蜘蛛の巣から助け出され、治癒の術式を受けるブロントさんが締めた。
「おい、そりゃ無いぜ、ブロントさん」
「それよりも魔理沙、早いところこんなところからは脱出しましょ」
アリスが洞窟の周りを見回して言う。向こうからは、野良妖怪の不気味な叫び声が聞こえて来る。どうやら、こっちに近づいてきているようだ。
「『確かにな』と感心が鬼なる。流石、アリスの索敵能力はプラスAといったところか」
「わかったぜ。それじゃ、みんな、私の周りに集まってくれ」
魔理沙は魔法陣を描き、その中に入るように仲間たちに指示した。そして、魔理沙は集中し、魔力を高める。
「それっ!」
魔理沙が溜めた魔力を解放すると、一瞬にしてブロントさんたちの姿が洞窟から消えた。
ブロントさんたちは、いつの間にか旧地獄街道の市街地に立っていた。魔理沙が使ったのは、一瞬にして洞窟などから脱出するための術式だ。
「ふう、こんなもんだな。私にかかれば、この程度お茶の子さいさいってことだ」
「あら、便利じゃない。衣久もこういう術式を使えればいいのにね」
さっきまで魔物に捕まっていたとは思えないほど、天子はけろっとした様子だ。
「しかし、武術大会はどうなるんだ?私らが誘拐されている間には、試合をやっているはずだったのに」
萃香はそっちの方が心配になっているようだ。
「萃香さん、それならば、後程、私たちと一緒に大会の運営者に訊いてみましょう。私も当事者ですし」
「だけど、本来なら、とっくのとうに武術大会は終わっているはず・・・・・あれ?」
ブロントさんたちの方に、一人の男が走ってくるのが見えた。武術大会の主催者である、街の役人だ。
「み・・・・・・皆さん、何処へ行ってらしたのですか!?4人ともやって来ないものですから、仕方なく武術大会の決勝は中止となりましたよ」
「はぁ・・・・・それじゃ、賞品の虹色の枝は手に入らないって訳ね。これじゃ、参加した意味が無くなったわよ」と、霊夢。
「いえ、それで、私は皆さんが戻って来られたら、これをお渡ししようと思っていまして・・・・」
役人が霊夢たちに差し出したのは、虹色の枝ともう一つの賞品、黄色に輝く丸くて大きな宝玉だ。役人は、宝玉をブロントさんに、虹色の枝を天子に差し出して、押し付けるようにして持たせる。
「と、とにかく、それが優勝と準優勝の賞品です。決勝戦で戦う者同士でしたら、もうお渡ししてしまっても構わないと、我々は判断しました。それでは!」
役人はとんずらを使い、普通では間に合わないような距離をきょうきょ役場に向かって去って行った。
「で、どうするの?その宝石は?私たちが探していたのは、そっちの虹色の枝の方だったんだけど?」
霊夢は天子が持っている虹色の枝の方を見る。
「ちょ、ちょっと!これは私たちが手に入れたものよ!」
「いえ、少しお待ちを。皆さん、急なのですが、少し私から話があるのです。特に、そちらのブロントさんに。そして、ここでは無く、ここから先に行った、ユグノア、という所でお話したいのです」
「む、良いぞ」
「それじゃ、私は部外者みたいだし、休みたいから家に帰ね。じゃあねー」
萃香は駆け足で雑踏の中へと消えていった。
「どうやらかなり大事な話みたいね。それじゃ、ユグノアへ行きましょ、ブロントさん」
霊夢がそう言うからには、衣久も出鱈目なことを言っている訳では無さそうだ。
「うむ、良いぞ」
「それでは、皆さん、まずはこの町から出ましょう。ユグノアまでは私と総領娘様が案内します」