東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて 作:F.Y
ブロントさんたちは衣久の案内で、旧地獄街道から南西にそれなりに歩いた先にあるユグノアに向かった。途中、野良妖怪がぞろぞろと襲って来たものの、5人のPTメンに衣久と天子が助っ人として一緒に戦ってくれるお陰で、それほど苦戦はせずに済んでいる。やがて荒れ地は終わり、青々とした草木が生い茂る草原に出た。そして、西には、とても人間や妖怪が辿り着けないような巨大な断崖絶壁の高台があり、そこには、下界から見てもその大きさがはっきりとわかるほど巨大な木が立っている。
命の大樹。世界にあるありとあらゆる生命を司る、この世界の中心とも言える存在。ブロントさん一行の現在のところの最終的な目的地だ。以前出会った天狗のブンヤによれば、その命の大樹に闇を払う『暴食の魔剣』があるという。
やがて、草原の丘の上に建物の跡らしきものが見えてきた。ブロントさんには、それは500年だとか1000年前に建てられた城の遺跡であるようにも見えた。
「ブロントさん、あそこです。あの大きな砦の跡です」
衣久がその建物の跡を指さす。
「砦ったて、壊れているじゃないか。本当にアレが砦だったのか?」
魔理沙は、どう見ても風化して瓦礫の山と化したものを見て言った。
「ええ。かつては、この地域で最強の騎士団が治めてした、れっきとした砦でした」
「最強の騎士団・・・・・・ですか」小鈴は心当たりがない、といった様子だ。
「そうです。しかし、16年前、あのような出来事があったばかりに・・・・・」
一行は破壊された砦に辿り着いた。そこには、割れた壺や食器が散乱し、壊れた家具も数多く転がっている。さらに目を引くのは、錆びついた鎧や兜、剣を持つ白骨化した数々の屍たちだ。
「酷い・・・・一体何があったのかしら・・・・」
アリスは、周囲に散らばる家財道具や屍を見て言う。
「ここは・・・・かつてこの地域で最強と名を馳せていた騎士団がいました。その名は『喧嘩チームDRAK』。聞いただけでは風変りな名前ですが、それとは裏腹に、彼ら彼女らの強さは、魔物にすら恐れられるものでした。東に盗賊に襲われている村があれば助けに行き、西に暴れている魔物がいれば退治に向かう。そんな人々でした。そんな騎士団を率いていたのが一組の夫婦。ダルケンさんとリータさんでした。聞いた話によれば、戦いに臨んでは真っ黒な鎧兜を身に着けるダルケンさんは闇の黒鉄の騎士、彼とは対照的に、眩く輝く白と金色の鎧兜を身に纏うリータさんは光の黄金の騎士、という異名を持っていたそうです」
衣久は歩き続けながら、話を続ける。
「しかし、そんな二人に子供が生まれた時、突如として魔物の集団が、DRAKの砦に襲いかかりました。ダルケンさんは仲間たちと共に戦い、自分の息子とリータさんを逃がしました。ところが、ダルケンさんとリータさんは命を落とし、DRAKの仲間たちもまた、魔物の圧倒的な戦力にかなわず、次々と斃れていったそうです」
暫くして、衣久は話の続きを始めた。
「こんな状況であったにもかかわらず、生まれたばかりのその子供は16年もの間、魔物の脅威に晒される事無く育ち、今、ようやく、この生まれ故郷に戻ってきたのです」
衣久は振り返ってブロントさんを見た。
「まさか・・・・・」魔理沙もブロントさんに顔を向ける。
「そう。ここが、白夜の騎士の真の生まれ故郷。DRAKの砦ことユグノアです。お帰りなさい、ブロントさん」
この場にいるブロントさんの仲間たち、全員が衝撃を受けた。ここがブロントさんの生まれ故郷。魔物に破壊された、主無き大きな砦。だが、疑問が一つ。それは魔理沙が口にした。
「でも、ブロントさんが育った村とここじゃ、かなりの距離があるはずだぜ。どうやってブロントさんはそこまでたどり着いたんだ?」
「それは・・・・・実は、生まれたばかりのブロントさんを抱えて逃げたのは、その場にいた総領娘様なのです」
「なんだって!?」
「うん。ブロントさんのお母さんに言われて、一生懸命魔物から逃げたんだけど、川に落ちた時にブロントさんを手放しちゃって。そのあと私は衣玖に拾われたんだけど、ブロントさんがどうしても見つからなくて・・・」
「そうか。おもえが16年前にメイン盾をやっていなかったら、俺は裏世界でひっそり幕を閉じていたのは確定的に明らか。>天子感謝」
「それほどでも無いわよ」
「だけどなぁ、ブロントさんが産まれた直後に大軍で襲撃してきたとなると、魔物は気紛れでユグノアを攻撃してきた、という訳では無さそうだな。明らかに自分たちにとって邪魔になる存在。白夜の騎士、つまりブロントさんを狙って攻撃してきた、ということになる。そして、その大軍を率いていた、魔物の親玉みたいなのがいるはずだ」魔理沙の結論はもっともだった。
「そうね。そうなると、命の大樹を目指すことには変わらないけど、私たちは最後はそいつと戦うことになるのは当然ね」と、霊夢。
「ええ、その通りです。そして、私には、その者が誰なのか、名前を知っています」
「何だって!?」魔理沙は驚愕して衣玖を見る。
「おいィ・・・・・・どうして高INTっぽいキャラは、そういう肝心な時に勿体ぶるんdisかね。そいつが誰なのか早く教えるべき!死にたく無ければそうすべき!」
「落ち着いてください。いいですか、ブロントさんを狙った者の名前、それは魔王ウルノーガと言います」
「ウルノーガ・・・・・?聞いたこと無い名前ね。そいつが魔物の親玉みたいな奴、ということね」と霊夢。
「ええ、その通りです。しかし、私と総領娘様も、旅をしていて、ようやくその名前にたどり着くことができた、という程度です。そして、過去にウルノーガは、ある大国の家臣に取り憑き、誰からも気づかれること無く、内部から国を崩壊させた、とも言われています。ウルノーガについて、私たちが知り得たことは、この程度です」
「なるほど」と、先程まで黙って話を聞いていたアリスがようやく会話に加わる。
「名前すら広く知られていないとなると、魔王はかなり慎重に行動しているようね。決して目立つような真似はせず、かと言って何もしない訳では無い。私たち、人間や妖怪が作った社会に気づかれることなく入り込み、じっくりと工作を続けて機会を待ち続け、そして、時が熟すタイミングを待って、内側から人間や妖怪の社会を壊す」
「ええ。それが、魔王ウルノーガの最も厄介なところです」
「なによー、陰湿すぎじゃない。魔王が世界を滅ぼすために自分から動いているのに、私たちは、その魔王がどこにいるのか、全くわからないってことでしょ」
霊夢はまるで文句を垂れるような口ぶりだ。
「ならば、俺たちは世界中を旅して命の大樹を目指しながら、どこかにいる魔王を見つけてバラバラに引き裂く。これをやらなきゃならないのだな」
「そうです。私たちの旅の最終的な目的はそうなります。魔王を倒さねば、この世界自体が破壊され、人間も妖怪も絶滅してしまうでしょう。しかし、先程からあなたたちは、随分と命の大樹へ向かうことへこだわっているようですね。そこに何があるのですか?」
これについてはアリスが説明した。
「実は、命の大樹には、かつて仲間たちと共に邪神を封印した白夜の騎士が使ったとされる『暴食の魔剣』というものがあるとされているの。魔王を倒すには、それが必要だと私たちは考えているの」
「遥か大昔、邪神を封印した白夜の騎士と仲間の戦士たち。その話は私たちも聞き及んでいます。そして、白夜の騎士が使っていたとされる剣がそんなところに収められていたとは。どこにあるのか、場所は存じ上げませんが、剣以外にも、白夜の騎士が使ったとされる武具は、剣だけでは無い、という話は聞いたことがあります」
「な、何だよそれ、初耳だぞ!」魔理沙が素っ頓狂な声を上げる。
「ええ。取り敢えず、私が知っていることを掻い摘んで話しましょう。白夜の騎士が使っていたのは、暴食の魔剣以外にも、特殊な鎧、兜、盾を持っていたとされています。そして、これが肝心な話だと私は考えているのですが、白夜の騎士が持っていた、3つの防具は聖なる光の力を持っていたにも関わらず、白夜の騎士が持つ剣だけは、どういう訳か禍々しい闇の力を宿していた、と」
「ちょっと待って。そんなの矛盾しているじゃない!光と闇、両方の力を持つって、そんなの普通じゃ考えられないわ!普通なら・・・・・」とアリス。
「ええ。アリスさん、と言いましたね。確かに、常識として考えた場合、その通りです。光と闇、両方の属性の力を持ち合わせるなど、人間や妖怪での常識では不可能です。普通は、どちらか強い方しか持つことはできません。そして、弱い方の力は当然ながら、強い方の力に負け、消え去って行きます」
「だとしたら、白夜の騎士というのは相当特殊な人間、ということになりますね。どうやら、私たちの常識が全く通じない人間なのでしょう」小鈴はブロントさんを見て言う。
「さて、命の大樹を目指すのはいいけれど、この虹色の枝が鍵になっているというのはわかっているが・・・・・・・ん?」
魔理沙が虹色の枝を取り出して翳して見た。すると、何と虹色の枝はかなり強力な光を放ち始めた。
「うわっ、何だ!?」
「ちょ・・・・これ、何よ!」
天子が持っている黄色い宝玉が、まるで虹色の枝に共鳴するかのように輝き出す。
「おいィ・・・・・何だか常識では考えられないようなえごい光パワーみたいなのがあふれ出ているんだが!?」
虹色の枝が更なる強烈な光を放ち、ブロントさんたちにあるイメージを見せた。それは、命の大樹と祭壇のような場所。そして、赤、青、緑、黄、紫、銀の6つの宝玉が宙に浮かび、輝きながら回転する。やがて、祭壇から命の大樹に向かって、光でできた橋のようなものが架かったところで、イメージは途切れた。
「おいィ・・・・今のは一体何なんdisかね?事前の説明さえあれば心の準備もできたんですわ?お?」
「ひょっとして、命の大樹へ行くには、虹色の枝の他に、さっきの宝石みたいなのが必要だってことかしら?」と霊夢。
「待てよ、さっきの宝石ってまさか・・・・・」
魔理沙が自分の鞄に手を突っ込み、ガサゴソと何かを探す。そして、取り出したものは、先程のイメージで見た、赤い宝石そのものだった。その宝石もまた、強烈な光を放っている。
「ビンゴみたいだな」
「これで目的は決まったわね。残りの宝石を探し出して、命の大樹へ向かう」と霊夢。
「でも、命の大樹に向かうにしても、残りのオーブを見つけないといけないな。残りは4つか。でも、どこへ向かえばいいんだ?」
「それなら、一つだけ私にアテがあります。でも、これは、またあくまでも噂話なのですが、海賊が持っていた宝の中に、よくわからない宝石があった。しかしながら、その宝石を積んだ海賊船は北の海で嵐に巻き込まれて沈んだ、という話です」衣久が言う。
「うーん、でも、命の大樹、虹色の枝、そして色とりどりの宝石。この話もあながち単なる作り話とは言い切れないかもしれないわね」とアリス。
「それで、どうするの?その北の海に向かってみる?私としては、そうね。何かしら手掛かりになるものがあるんじゃないかと思うわ」霊夢は北の海へ向かうことに賛成のようだ。
「どちらかと言えば俺もそれに大賛成だな。と、いう訳で次は北の海に向かうぞ」
「よし来た。じゃあ、一旦、私の船に乗るために港に戻るとするか」
「こうなった以上、私たちもあなたたちの旅にとって部外者では無くなってしまったようですね。総領娘様は・・・・・・」
「当然、あたしも衣久も、ブロントさんたちに付き合わさせてもらうわよ!」
「よし来た!、じゃあ、早速だが、旧地獄街道の向こうの船着き場に行こう!瞬間移動の術式を使うから、集まってくれ!」
「Hai!」
物語の流れ的に不自然になりそうな原作の一部場面は、意図的にカットするようにしています。