東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて 作:F.Y
ブロントさんたちは一度、彼岸の集落に戻った。夜が更けてしまっていたので、この日は一旦、宿屋で休み、翌日に出発することになった。ところが。
ブロントさんが例の如く寝坊してしまったため、朝のうちに出発するつもりが、昼になってアリスの船はようやく動き出した。
彼岸の集落に入港する船、逆に出港する船が行き交う。多くの海鳥がアリスの船に並走するように飛び、まるでこれからの旅路を祝福しているかのようだ。
「思った以上に立派な船じゃない。アリス、あんたって何者なの・・・・・」
天子は甲板の上で大きく伸びをして、後ろで舵を取るアリスを見て言う。
「まあ、旅をしながら人形劇をするだけで、船を買うだけのお金は稼ぐことはできたしね。それに、船があった方が、色々と便利だったりするから」
「だけど、魔物には気を付けないと。最近は海の魔物も凶暴化して、定期船はちっとも出ていないという話よ」霊夢は周囲を警戒している。
「と、言ってるそばからお客さんだ!来るぞ!」
いつの間にか船体の外側を這い登ってきたのか、ガニラスやしびれくらげ、マーマンが甲板に姿を見せる。
「おいィ、汚いモンスがぽごじゃかわいてきているんだが!?」
「ちょっと!暴れ過ぎて船を壊さないでよ!」後ろで操舵するアリスが大声で言う。
「そんな余裕あるか!」
魔理沙は八卦炉を構え、マーマンの群れに向けた。八卦炉からは凄まじい炎が噴き出し、マーマンを焼く。ブロントさんは突進してきたガニラスを盾で防ぎ、お返しとばかりにギロチンのハイスラを放つ。
霊夢は近くにいたマーマンにパンチやキックをお見舞いし、小鈴が放ったスペルがしびれくらげを強烈な冷気で凍り付かせた。
「衣久!私たちもやるわよ!とりゃあああああああ!」
天子は剣を上段に構え、ガニラスに斬りかかった。天子が持つ緋想の剣は、所持者の気質を集め、エネルギー体の刃を作り出す。
ガニラスは真っ二つに切断され、ただの甲羅の残骸となった。天子はそいつの近くにいたうずしおキングを切り裂き、ヘルバイパーを葬る。
戦いは始まったかと思ったら、あっという間に終わった。ブロントさんたちは、手分けして魔物の死骸を海に放り込む。
「うーん、前はここまで魔物が狂暴化はしていなかったのに。どうしてここまで魔物が出てくるのかしら」
操舵しているアリスは少し困惑気味だ。
「さて、聞いた話だと、沈んだ海賊船の財宝の中にオーブがあったとかいう話だったな」
魔理沙は海図を広げ、コンパスを手のひらに載せて周囲を見回す。北の方には海岸線が見え、東の方で途切れているようだ。
「うむ。まずはオーブを見つけないといけないという話だった感」
「でも、沈んだ海賊船なんて、どうやって探せばよいのでしょうか。手掛かりになる話も聞いたことはありませんし、そもそも、海の底にあるのなら、私たちが簡単に手に入れられるようなものでは無いと思いますが」
衣久の言うことは、完全な正論だった。海底に沈んでいるのならば、普通に考えて探し出すのは不可能だ。無論、水中で呼吸ができたり、オーブを探し出してくるまでの間、海中で息を止めていられれば良いのだが、そんなことは人間に魔法使い、天人、エルヴァーンにはまず、不可能なことだ。
「問題はそこよね・・・・・・あ、アリス。ちょっと面舵とった方がいいわよ。何となくだけど」
「え?霊夢、何?」
アリスがそう言った時、船体に衝撃が走り、船は動かなくなった。干潮になって、海から姿を現した浅瀬に乗り上げてしまったのだ。
「おいィ!?」
「きゃあ!」
「うわっ!」
アリスの船は、白い砂の上にあった。周囲には幾つか岩場がある浅瀬になっている。どうやら、満潮の時間になるまで、ここで待つしかないようだ。
「おいィ・・・・・これを仕掛けたの、絶対忍者だろ。汚いなさすが忍者きたない。これで俺は忍者が嫌いになった。あまりにもヒキョウすぐるでしょう」
「いや、これと忍者は関係無いだろ・・・・・・」
ブロントさんと魔理沙の掛け合いは、すっかりおなじみになっていた。
「せっかくだし、この辺りを調べてみましょ。何となくだけど」
霊夢の勘が外れたことは無い。霊夢がそんなことを言うということは、この辺りには"何か"があるはずだ。満潮の時間になるまで、この辺りを探索するのも悪くは無い。
「うむ。色々な場所を探すのが冒険者の醍醐味と、俺に剣術を教えてくれた先生が言っていたからな。と、いうことで一気に行くぜ!」
ブロントさん一行は砂浜の上に降り立った。海の魔物が襲って来ないとも限らないので、武器や防具は身に着けたままでいた。
「おいィ・・・・・ここに降り立ってみたものの、船を動かす方法は無いというあるさま。俺たちはここで骨になる・・・・」
「お宝がある気配も無いからなぁ。さて、どうしたものか」魔理沙は周囲をキョロキョロと見回しながら言う。
いくらブロントさんが馬鹿力の持ち主と言っても、座礁した船を押すというのは不可能なものだ。ここはじっと待つ他無さそうだ。
「せっかくだし、食べ物を探そうぜ。蟹とか魚とか」
魔理沙は船から釣り竿を持ち出し、きょろきょろと何かを探し、やがて水の中に手を突っ込む。彼女がつまんだのはゴカイという、海に住むミミズの仲間のようなものだ。それを釣り針に刺して、魔理沙は釣り糸を海面に垂らした。
「うーん、この辺りは浅瀬があるとは書かれていないんだけど・・・・・・海図が古いのかしら。そうでなければ、昼間は干潮になって、夜になったら満潮になるのかも。そうだとしたら、夕方が過ぎるまで待たないといけないわね」
アリスは両手で広げた海図と睨めっこしていた。確かに、海図にはこの辺りには浅瀬や干潟があるとの表記は無い。
船を使って意気揚々と新大陸へと向かうつもりだったブロントさん一行は、思わぬところで足止めを食らってしまった。
「静かですね。魔物の気配は無いようですが・・・・・」
小鈴は波打ち際を一人で歩いていた。時折、小さなカニがトコトコと横歩きで砂浜を走る。
「小鈴ちゃん、気を付けてよ。ここに魔物がいないとも限らないんだから」
「うむ。だが、安心すろ。メイン盾がここにいるからな」
いつの間にかブロントさんと霊夢が小鈴の後ろを歩いていた。確かに、戦闘能力という面から見たら、小鈴が一番弱いだろう。
小鈴は少し大きな岩に立ち、海面を眺める。ここの海の水はかなり澄んでいて、まるで鏡のように小鈴の顔を映す。
だが、小鈴は海面に映るのが、全くの他人の顔だということに気づいた。いや、海面に映っているのではない。海中にいる女性の顔だ。その女性は、海面から頭を出した。
「あら、あなたは・・・・・違うのね」
「えっ!?」
いきなり海中から頭を出した女性に小鈴は面食らった。ブロントさんと霊夢も同じ反応だ。
「おいィ・・・・・おもえはもしかして、こんなところまで泳いで来たんdisかね・・・・・」
「ちょっと!ここは魔物だらけで危険よ!いくら泳ぎや戦いに自信があるからって、一人じゃ・・・・・・・」
「あら。あなたたちこそ、こんなところで何をしているのかしら」
「船が座礁して、動けなくなったのよ。満潮の時間が来るまで、こうしているわけ」霊夢が言い返す。
「船が座礁?あら。それなら、日が暮れるまで満潮にはならないわ。もっとも、私なら今すぐ何とかできるかもね」
「こんなところで一人でいるとなると、あんた、妖怪なの?」霊夢が件の女性に食ってかかる。
「妖怪?あら、あなたたち人間から見たら、私はそういうのかも知れないわね」
「おいィ、一体どういうこ・・・・・・」
その女性は海の中から飛び跳ね、岩の上に座った。その女性は、上半身は人間そのものだが、下半身は鱗に覆われその先端には鰭があった。
「おいィ・・・・、ちょとsYレならんしょこれは・・・・・・」
「に・・・・人魚!?」
ブロントさんと霊夢、小鈴は驚きの余り言葉を失った。まさか、人魚というものが実在しているだなんて思ってもいなかったからだ。
「あら?どうしたのかしら?そんな顔をして。それに、何かお困りのようね」
当の人魚は、座礁しているアリスの船を見て言う。
「ええ。船が座礁して、ここから動けなくなったの。満潮になるまではどれだけかかるかしら?」
「あら。そうだと、真夜中近くになるまで待たないとダメね。もっとも、私の力を使えば、助けられるかもね」
「人魚の力って、確か・・・・・」霊夢は腕組みをして、右手で顎を触る。
「ええ。歌声で海水を操る力。もっとも、あなたたち人間からしてみたら、船を沈める力、と思っているみたいだけど」
「そうじゃないのか?」と魔理沙。
「海の潮の流れを操る能力、よ。そうね、一つ、あなたたちに頼まれごとをしてもいいかしら?」
「良いぞ」とブロントさん。
「ここから西に行った先の漁村で、人探しをして欲しいの。名前はキナイ、という人なんだけど」
「よし、じゃあ私らに任せときな。ここから西だな」
魔理沙は自分の胸を拳で叩いて言う。
「それじゃ、みんな、船に乗ってくれるかしら?」
人魚の美しい歌声とともに、ゆっくりと海面が上昇した。そのおかげで、座礁していたアリスの船が再び外海に向けて動き出す。
「さて、ここから西だったな。地図によれば、確かに西の大陸の岬に小さな漁村があるみたいだな」
魔理沙は海図とコンパスを見て、目的地の漁村の位置を確認した。太陽の位置を見る限り、まだ正午にもなっていないようだ。
「それじゃ、俺たちはそこを目指せばよいのだな」
「だな。それに、漁村なら、船着き場があるだろうから、この船を置ける場所もあるだろうな。アリス―、目的の場所、わかるかー?」
「問題無いわ。それよりも、あんたたちは海の魔物に警戒していなさい」
「わかったぜ。じゃ、目的の漁村に着いたら、早速、人探しだな」
「随分乗り気ね、魔理沙」
天子にとって、普段、物臭な魔理沙が人魚の依頼を引き受けたのが意外だったようだ。
「こう見えて、結構義理堅いんだぜ。私は」