東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて 作:F.Y
「おっ、見えてきたぜ!あれだな。アリスー!そのまま前進だ!」
魔理沙は箒に乗って船の上を飛びながら、遠くを偵察していた。そして、水平線の向こうに陸地と集落を確認したのだ。
時刻は、まだ昼になったばかり。風と波の動きが味方したのか、思ったより早く目的地に着いた。だが、全てが順風満帆ではなかった。当然ながら、途中で魔物が現れ、その度に戦って退けねばならなかったのだ。
「あの桟橋が空いているわね。あれを借りましょう」
アリスは巧みに舵を切り、すぐに出航する必要があるだろうと判断したのか、出船の状態で桟橋に船を横着けした。
「おや、あんたらどこから来たんだい?こんな魔物だらけの海を渡って」
ブロントさんに話しかけたのは、入港を遠くから眺めていた老婆だった。
「む、やはり忍者よりナイトの方が、モガモガ」
「ブロントさんは長くなるし、一般人には理解できないから黙ってて。私たちは彼岸の集落から旧地獄街道、DRAKの砦を経由してここまで来たの。ちょっと事情があって、ここで人探しをするために立ち寄った訳」
「おお、そうかい、そうかい。で、誰をお探しで?」
「キナイ、という名前の人なんだけど」
「キナイ、キナイねぇ。キナイなら、今は漁に出ているから、暫くは帰って来ないはずだけど、でもおかしなことになっているようなのがね」
「おかしなこと、ですか?」と小鈴。
「いやなに、この村は見ての通り漁村でね。男たちが定期的に漁に出て、魚やら貝、蟹に海老なんかを採ってきて、それが村の食糧になるのさ。で、一度、漁に出ると、数日から十数日は帰って来ないんだけど、もう20日が過ぎても、船団が帰って来ないのさ。今までこんなことは無かったんだけどね・・・・・」
「うーん、魔物にでも襲われたんじゃないの?でも、キナイを見つけないことには、どうにもならないわね」霊夢は腕組みをする。
「最近、海でクラーゴンという大きな魔物をよく見かけると漁師が言っていたから、心配だねぇ・・・・・・」
「クラーゴンだって?そいつはヤバい。下手すりゃ、でかい船でも簡単に沈められるからな」と魔理沙。
「だが、あいつらにも弱点はあるらしいのじゃ。なんでも、でかい音が苦手みたいで、どこかの国の軍艦?と言うのかの。その船が積んでいる大砲で脅かしたら、怯んで逃げて行ったという話も聞いたのう」
「大砲なら、私の船にも積んでいるわ。と、言うのも、あれを積んでいる理由がクラーゴンや大王烏賊を追い払うためなのよね。勿論、砲弾もあるから、直接狙い撃ちもできるんだけど」
「なら、あんたら、少し様子を見に行ってくれんかのう。漁をしている船団は、ここから東の海で漁をしているはずじゃ」
「確か、ここに来る前に船団を見かけましたね。魔物に襲われている様子は無かったのですが」
「どうする、ブロントさん?様子を見に行ってみるか?」
「そうだな。とにかく、キナイをいう人間を見つけない事には、俺たちのクエを達成できない感」
「なら、もう一度、さっきの漁船がいたところまで行ってみるのね。まあ、キナイを見つけないことにはどうにもならないし、仕方が無いけど、東の方へ行ってみましょう」
アリスの船は再び出港の準備を始めた。ここで、霊夢が、村の埠頭にいた老婆から大砲の弾を調達することを提案した。
「大砲の弾なら確かにあるけど、お前さんたち、何に使うんかえ・・・・・」
「ま、何となくですけど、必要になると思ったんですよ」
「しっかし、重いな。ブロントさんでも、一人でこの箱を持ち運ぶのは厳しいだろ」
「うう・・・・・、物凄く重い・・・・・」
ブロントさん、魔理沙、衣久、天子は手分けして重い大砲の弾がぎっしりと詰まった箱を船の中へと運び込んでいた。弾は人間の頭の二倍くらいの大きさがあり、丸い鉄製の球体の中には火薬がぎっしりと詰まっている。
「よいしょっと。おーい、霊夢。これだけあれば十分だろ?」
「多分ね。それじゃ、出航しましょうか」
アリスの船は風に乗ってゆっくりと動き始めた。空は晴れ渡り、カモメの群れが鳴きながら北の方へと飛んで行く。波は極めて穏やかで、魔物が蔓延っているように見えない。
アリスは海図とコンパスを見ながら舵を動かし、東の海を目指した。潮風は心地よいくらいの強さで、これで魔物が海に棲んでいなければ、絶好の航海日和であるはずだ。
「ブロントさん、弾と火薬を今のうちに大砲に詰めておきましょう」
「む、そうだな」
アリスの船の両舷にはそれぞれ5門ずつ、大口径の大砲が備え付けれている。まず、霊夢が大砲の薬室に火薬を硬く敷き詰め、砲口からブロントさんが弾を入れる。そして、後ろの火皿に点火薬を入れれば、後は撃針と繋がっているロープを引くだけで大砲は発射される。
「アリス、もし、クラーゴンを見たら、正面から向き合うようにして、私が合図をしたら取り舵を取ってくれる?」
「合図したら取り舵ね。了解よ」
「ブロントさん、船の右側の大砲に弾と火薬を入れるわよ」
「了解なんだが」
「大砲を撃つのは誰がやるんだ?」
「そうね。魔理沙と私でやるわ。撃ったら、すぐに甲板に上がって加勢するわ」
「なら、前衛をやるのは俺の役目だな」
「ブロントさん、私を忘れないでよ!」
仲間が二人増えたことで、魔物に遭遇した時の戦い方を改めて考える必要が出てきた。今までは、ナイトであるブロントさんが一人で前衛を引き受け、旅芸人のアリスが中衛、魔法使いの魔理沙、巫女の霊夢、一般人の小鈴が後衛を担当する、というフォーメーションで戦ってきた。
だが、所謂魔法戦士である天子も前衛で戦うことができる。職業としては僧侶に近い衣玖は後衛を担当することになるだろう。
「いいですか、ブロントさん。クラーゴンが大砲で怯んでいる間に、一気に片を付けて下さい。そうじゃないと、みんな、海の藻屑ですよ」
霊夢は、大砲の大きな薬室に発射薬を詰めながら言った。薬室の後ろには、点火薬を入れるための小さな薬室があり、その後ろにはロープで繋がった火打石が2つある。この火打石がぶつかり、点火薬が入れられる小さな薬室に火花を撒くことで火薬が発火、大砲が発射される仕組みだ。
「ならば短期決戦でカカッと倒さないといけないんだな」
「そういうことです」
「でも、霊夢さん。クラーゴンが出て来ない可能性もあるんじゃないですか?」
確かに、衣玖の言うことは間違ってはいない。クラーゴンが棲息する海域へ行ったとさしても、必ず遭遇するとは限らない。
「うーん。それはそうなんだけど、何となく、クラーゴンに遭わずに海を渡るのは無理なような気がするのよ」
「霊夢さんがそう言うなら、クラーゴンとの戦いは避けて通れない、ということですね」と小鈴。
「ちょとsYレならんしょそれは・・・・・?」
「多分、そういうことになるわね」
「おーい、取り込み中悪いが、東の水平線の方に何か見えてきたぜ。多分、さっきの漁村で聞いた漁船じゃないのか?」
箒に乗って飛んでいた魔理沙が甲板に降りてきた。魔理沙は、船が進む少し先を飛びながら状況を偵察していたのだ。
「魔理沙、どの方向?」アリスが大声で呼びかけた。
「10時の方向だ。10度ほど取り舵気味に進んでくれ」
「変ね。あの漁船、停泊しているのに、網を海の中に下ろしていないみたい」
霊夢は双眼鏡で様子を確認した。確かにその漁船は停泊しているにも関わらず、投網や釣竿が甲板上にあるのが見える。おまけに、漁師たちは銛を持ち、周囲をキョロキョロ見回している。いや、警戒している、と言った方が正しいかもしれない。
ふと海面を見ると、散らばった木の板や破れた布が波に揺られて 漂っているのが確認できた。
「まずいわ、ブロントさん。クラーゴンにやられたかまもしれないわ」
「おいィ!?」
霊夢は右手を上げ、アリスに減速しつつ、面舵を切るように合図した。
「ブロントさん、あれ!」
天子が海面を指して叫んだ。海面から大きな泡がブクブクと立ち上ぼり、渦潮が巻き始めた。そして、大きな水柱が立ったかと思うと、アリスの船のマストよりもはるかに巨大な、吸盤が着いた"ゲソ"が現れた。
「ちょとsYレならんしょこれは・・・・・?」