東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて 作:F.Y
霊夢たちは空を飛んで西の洞窟を目指した。飛べば魔物に襲われないと踏んでいたが、ガルーダやタホドラキーといった、飛行型のモンスターが襲撃してきたため、その都度、霊夢と魔理沙は圧縮した霊力や魔力を、ブロントさんは生半可なナイトでは真似できないホーリーを放ち、退けなければならなかった。
霊夢は荒野の西の端に洞窟があるのを見つけ、そこに着地する。
「むう・・・・・」
「ここね。勘だけど」
「なぁ。本当に大丈夫なのか?入ってみて、この洞窟じゃなかったら取り返しが付かなくなるんじゃないのか?」
魔理沙が若干、不安そうな表情で霊夢を見る。
「ま、大丈夫だと思うわ。私の勘って、どういう訳か知らないけど、一度も外れた事が無いの」
「エリ夢のフレが『はやくきてー、はやくきてー』と泣きが鬼なっている時に考えていても無駄という意見。まあ、一般論でね?」
「ブロントさん、人の名前くらい間違えないで貰えますか?」
「さて、霊夢の仲間もそうだけど、こういう洞窟ってのは結構お宝が眠っていたりするからな。トレジャーハンターの血が騒ぐぜ」
3人が洞窟に入った直後、魔物がわらわらと湧いてきた。スライムベスにドロル、腐った死体だ。
「うへぇ、酷い臭いだな、あいつ。本当に腐っているのか?鼻が曲がりそうだ」
「あまり近づきたくないわね。ほら、ブロントさん、メイン盾なら前に出て下さいよ。ほら、はやく、はやく」
「畜生。お前らは馬鹿だ・・・・・」
「生半可なナイトでは真似できないホーリ!」
腐った死体が白い光に包まれて爆発する。その後ろでは霊夢が大幣をスライムべス目掛けて何度も振り下ろしていた。
ブロントさんがドルイドに奥歯を揺らすようなパンチを食らわせ、追撃のハイスラで真っ二つに切り裂く。その様子を見ていたタホドラキーは、本能的に長寿タイプだったらしく、キィ、と短く鳴いてから洞窟の奥へと逃げ出した。
一方の魔理沙は、泥人形の群れに八掛炉から錬成した炎を浴びせた。超高温に晒された泥の身体がボロボロに崩れた。
「一丁上がりってところだな。それにしても霊夢、お前、随分と簡単に敵の攻撃を避けるな」
「まあね。何と言うか、わかるのよ。あいつらがどういう攻撃を仕掛けてくるか、まあ、勘ってやつかしら?」
「なんだよそれは・・・・・」魔理沙が霊夢に不審人物でも見るようなまなざしを向ける。
「まあ、生まれ持った才能ってことかしら?それよりも、早く洞窟の奥まで行きましょう」
この洞窟は石畳やレンガの壁といった人工物が目立つ。誰がどういう目的で作ったのかはわからないが、ある程度人の手が加わっているのがわかる。
「しっかしまあ、この洞窟、どう考えても人の手が加わっているな。こういうのはお宝な眠っているのが定番だからな」
「なるほどね。悪いけど、それは後回しにしてもらうわよ」
「うむ。エリ夢のフレをカカッと救出するのがメインミッチョンだからな」
「しっかし、魔物に誘拐された、とか言ってたな。この洞窟の中だとすると、奥の方か?」
「多分、そうね。急ぎましょ、ブロントさん」
「おおー、やっぱりそうだ。お宝がここにもあるぜ」
魔理沙は宝箱を開けて、中のものを拾い上げた。中身は何かの種のようだ。
「おいィ、そんなのが役に立つんdisかね?」
「ああ、こいつは魔力の種。文字通り、攻撃魔法の威力を上げる種だぜ!」
魔理沙はその種をひょいと口に入れ、ボリボリ噛り始めた。
「ブロントさん、これ」
「む?」
霊夢が見せたのは、紫がかかった液体が入った小さな瓶だ。
「魔法の小瓶よ。中のものを飲めば、魔力が少しだけ回復するわ。貴重品だけど、いざとなったらケチケチしないで。魔力が尽きて魔物の餌になったら本末転倒だわ」
「うむ。助かるぞ、霊夢」
「おい、お客さんみたいだぜ」
魔理沙が視線を向けた先には、軟体動物みたいなモンスが4体いた。ドロルだ。
「この程度のモンスを倒す程度、お安い御用なんだが?」
ブロントさんが剣を振るうと、後にはズタズタになった雑魚がいた。
「ちょっと待って」
ブロントさんたちが洞窟の最深部と思しき場所に辿り着いた時、霊夢が呼び止めた。目の前には重そうな両開きの鉄の扉がある。
「多分、ここね。ちょっと覗いてみましょう」
霊夢がそっと扉を少しだけ開けた。すると、向こうから重々しい声が聞こえてきた。
「おい、お前ら!なんでこんな弱そうなのを連れてきやがった!ターゲットは別の奴だと言っただろうが!」
デブついた青いドラゴンが、羽の生えた黒い薄っぺらい奴に向かって怒鳴っているようだ。そこは檻が一つあり、そこには小柄な茶髪の少女が監禁されているようだ。
「む・・・・・?」
「いたわ、ブロントさん」
「そいつが、拉致換金されたレイモのフレなんですかね?」
「ちょっと、ブロントさん。勝手に小鈴ちゃんを人身売買してもらえないでくれますか?」
「さて、どうする?正面から突っ込んで奴らをぶっ飛ばすか?」
「こっそり近づけるような状況では無いわね」
「そうと決まったら、カカッっと救出するべきなのは確定的に明らか。一気に行くぜ」
ブロントさんは扉を開け、中に突入した。その中にいるデブついたドラゴンがぐるり体を回し、ブロントさんたちの方を見る。
「な、何だ、お前らは?」
「俺は汚いモンスに拉致換金されて、はやくきてー、はやくきてーと泣いている小鈴の・・・・」
「おい!モンスターどもが!人の物を死ぬまで借りるのはともかく、人を誘拐するのは犯罪だからな!」魔理沙が威勢よく啖呵を切った。
「な、なんだかわからんが、やっちまえ!」
「へいっ!」
デブったドラゴンの合図で薄っぺらい影のような魔物が襲い掛かった。だが、魔理沙は箒に乗って飛びあがってそいつの攻撃を避け、無数の氷の塊を浴びせる。霊夢が空中に飛び上がって両手を広げて意識を集中させた。その手から幾つもの白い光が飛び出し、敵の足元に着弾して爆発する。
「俺にも一撃を入れさせろ!行くぜ!」
ブロントさんがその巨体に似合わない速度で敵の親玉に肉迫し、切り付けた。鱗で覆われていない白い腹に大きな切り傷が刻まれる。
デブったドラゴンは大きく空気を吸い込み、冷気と氷を含んだ息を吐き出した。ブロントさんは咄嗟に盾を繰り出したが、左腕が凍りつき、凍傷を負う。
「くそっ!」
霊夢が右手をブロントさんに翳し、意識を集中させた。白い光がブロントさんを包み、怪我を治す。
「助かったぞ、霊夢!」
ブロントさんは再び剣を振るい、敵に斬りかかる。デブったドラゴンに再び切り傷が付けられ、血がどくどくと流れ出した。ドラゴンは怒りの声を上げ、冷気を含んだ吐息を再び吐き出した。だが、魔理沙が八掛炉から錬成した火炎がそれを相殺した。影のような魔物が一斉にブロントさんに向かったが、バラバラに切り刻まれて息絶えた。
「ふん。子分は大した事なかったな。次はお前だ!」
魔理沙はドラゴンに八掛炉を向け、レーザーを食らわせた。硬い鱗が焼き切られ、ボロボロと剥がれ落ちる。敵は魔理沙に狙いを定めたが、腹に思いっきりブロントさんの拳が直撃し、その勢いに押されてよろよろと後ろに下がる。
「ブロントさん!下がって!」
「む、バックステッポ!」
ブロントさんが後ろに飛びのいた直後、霊夢が弾幕を放った。それはドラゴンの傷口を直撃して炸裂し、肉片と血を床に飛び散らせた。それがとどめとなり、敵はどさりと倒れて、そのまま動かなくなった。
「一丁上がり、だな。さて、すぐに出してやるからな」
魔理沙はポケットから金属でできた細い棒のようなものを2つ取り出し、檻の鍵穴に突っ込んで何度か回すと、あっさりと開錠することができた。
「ほらよ。もう大丈夫だぜ」
「あ・・・・・ありがとうございます」
「小鈴ちゃん、怪我は無い?」
「はい。大丈夫です、霊夢さん。もしかして、この人が・・・・・?」
「そう。この人はブロントさん。私たちが探していた"白夜の騎士"よ」
「おい、霊夢。何でお前、ブロントさんが"白夜の騎士"だって知っているんだ?」
「そうね。話せば長くなるけど・・・・・まずは村に戻りましょう。そうしたら教えてあげるわ」
「あっ!霊夢さん!実は、私の他に捕まってる人がいるんです。この奥の部屋に連れていかれたのですが・・・・・」
「まあ、いいわ。ついでに助けてあげましょう」
ブロントさんたちは小鈴に案内され、更に奥の部屋に向かった。そこには4つの牢屋があり、そのうちの一つに少女が一人、監禁されていた。
「あやややや。あなたたちは・・・・・?」
「ん?あんた、もしかして天狗のブン屋か?」
魔理沙が牢屋の中にいる少女を見て言った。
「おや、私のことをご存知で。この世界をまたにかける新聞記者、射命丸文といいます。ホムラの里で『命の大樹』について取材していたら、いきなり魔物に襲われて無理やり連れ去られ、こんなことになってしまいまして」
その単語を耳にした霊夢の目が鋭くなるのを、件の少女、文は見逃さなかった。
「おや、そちらの巫女さんは、どうやら"命の大樹"に興味があるようですな。一体、どういうことでしょうか?」
「そうね。まずは、洞窟の外に出て、ホムラの里に行きましょう。それじゃ、小鈴ちゃん、お願いできるかしら?」
「はい。任せて下さい」
小鈴が意識を集中させると、ブロントさんら5人の身体が黄色い光に包まれ、その場から一瞬にして消えた。