東方鉄聖竜~ブロントクエスト11 時すでに時間切れになった過去を求めて   作:F.Y

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ブン屋の話

 ブロントさんたちは一旦ホムラの里に戻り、宿屋に併設されている食堂の席に着いた。洞窟を探索している間に日が沈み始めていて、里に戻る頃にはすっかり辺りは暗くなり、フクロウの鳴き声が聞こえ始めていた。

 

 魔理沙が宿屋の主人に夕食を注文し、それを待っている途中、件のブン屋である射命丸文から話を聞くことにしたのだ。

 

「まず、命の大樹ですが、皆さんはそれについてどこまで知っているのですか?」

 

「そうね。この世界の全ての生命を司り、死んだ人間や妖怪、動物、全ての魂が帰って、そこで再生の時を待つ場所。まあ、ちょっとしたおとぎ話みたいなものだと思っているんだけど」

 

 霊夢が文に知っていて当然、とも言いたげな様子で話した。

 

「確かに、昔からの言い伝えではそう言われています。まあ、我々からしてみたら常識のようなものですが。しかし、そこには、かつて大昔の勇者が使った、闇を払う武器が収められている、という話は聞いたことはありませんか?」

 

「闇を払う武器・・・・・?そんなの、この私でも初耳だぜ」

 

 魔理沙が天狗のブン屋を訝し気な表情で見て言った。

 

「それで、どんな武器なの?その闇を払う武器、っていうのは」霊夢が質問する。

 

「詳しくはわかりません。しかし、言い伝えが幾つか残っています。その武器は常人には扱えず、剣に選ばれなかった者が手にした途端、その者の魂は欠片も残さず食らい尽くされ、命を落とす、と。しかし、剣に選ばれし者が手にした場合、その者に仇なす全ての者を食らい尽くす、暴食の魔剣だと。そして、その暴食の魔剣は、遥か昔、勇者がその手に持って、かつて世界を滅ぼそうとした邪神と戦った、とされています。暴食の魔剣は、その名に違わず邪神の魂と魔力を食らい尽くし、封印するまで弱らせた、と言われているらしいです」

 

「暴食の魔剣だと?何だそりゃ、いろんなお宝の噂を聞いたが、そんなの初耳だぜ。それに、邪神と勇者だなんて、そんなの、よくありふれたおとぎ話じゃないか」

 

「ええ、普通、こういう話を聞いてもそう思われても当然です。そして、誰でも命の大樹に辿り着けるわけではありません。それには、まず、"虹色の枝"という物が必要なようです」

 

「虹色の枝?」

 

「はい。それが、ここから南、命蓮寺という場所にあるらしいです」

 

「命蓮寺か。聞いたことが無い場所だな」魔理沙が右手を顎に当てて言う。

 

「ええと、ここから西の方へ山を越えて行ったところです。そこからは不毛な砂漠が広がっていて、かなり旅慣れた人でもあまり近寄らないらしいです。おまけに、砂漠の野良妖怪はかなり危険な奴ばかりらしく、命蓮寺に辿り着く前に命を落とす者も少なくないだとか。個人的には、行くにはあまり勧められない場所ですね」

 

「だとしても、行く他無いわね。私たちは何としてもその虹色の枝が必要なのよ」

 

「かなり危険ですよ。私なら敢えて砂漠に行くような真似はしないですね」

 

「そこは問題無いと思うわ。しっかり準備さえしていればね」

 

「そうですか。それでは、私はこれで」

 

 文は宿屋から出て、そのまま飛んで行ってしまった。

 

「さて、どうする?早いところ命蓮寺に向かうか?」魔理沙が他の3人の仲間を見回して言う。

 

「今日は疲れたから、明日にしない?」

 

「確かに、もう日が暮れてしまいましたね。夜は魔物も狂暴になりますし、私も疲れました」

 

 遠くから、犬が吠える声や烏の群れが飛びながら鳴いているのが聞こえる。そして、それに混ざって魔物の不気味な叫びが流れてきた。

 

「『確かにな』という意見」

 

「それに、命蓮寺ってあの天狗が言うには、ここからだいぶ遠いんだろ?」

 

 魔理沙が地図を広げて眺める。そうこうしていると、宿屋の主人が湯気を上げる皿いっぱいの料理を次々と運んできた。食欲をそそる匂いに、ブロントさんの胃袋の中の虫が盛大に鳴き始める。

 

「むう・・・・・」

 

「まあ、考えていても仕方がないわ。先にごはんを食べちゃいましょ。ブロントさん、それ、切ってくれますか?」

 

「うむ、良いぞ」

 

 ブロントさんはナイフを手に取り、湯気を上げるローストビーフを分厚く切って仲間たちの皿に置いていく。

 

「さ、今日は腹ごしらえしてゆっくり休もうぜ。もう私は疲れたからな」

 

 魔理沙はパンを掴み、齧りついた。焼きたての香ばしい小麦の香りが口いっぱいに広がる。

 

「それで。その命蓮寺とかいうところにあるっていう虹色の枝だけど、そいつはどんな代物なんだ?」

 

「虹色の枝っていうのは、命の大樹の枝の一つと言われていて、それを持っている人を命の大樹まで導くと言われているんです。つまり、命の大樹というのはそう簡単に普通の人が近づけるような場所じゃないんです」

 

「なるほどな。だけど、そんな大切なものを何でその命蓮寺とかいう連中が持っているんだ?」

 

「知らないわよ、そんなの。とにかく、それを手に入れない事には何も始まらないってことよ」

 

「それじゃ、ここで一泊して夜が明けたら出発しようぜ。何も、魔物が狂暴化する夜中に移動することはないからな」

 

「それじゃ、そうしましょ」

 

 

 

 翌朝。ブロントさんたちは食糧や薬草、毒消し草、聖水などを買い込み、ホムラの里の入り口に立っていた。

 

「さて、命蓮寺までは、ここから南に行ったところだったな。流石に飛んで行っても厳しいか」

 

「結構な距離よ。飛ぶにしても、霊力が持たないわね。それよりも、飛べない人がいるしね・・・・・」

 

 霊夢はブロントさんを横目で見ながら言う。

 

「おいィ、巫女が空を飛ぶのはずるい」

 

「確かに、エルヴァーンやヒュム、ミスラといった種族には生まれつき飛行能力が無いんですよね。何でなのかはどんなに調べても全く見つからなかったのですが」

 

「巫女の霊夢や魔法使いの私はともかく、本当に只の人間の小鈴まで空を飛べるっていうのに、ブロントさんときたらなぁ」

 

「これは生まれつきや種族の問題であって、俺とは無関係。この会話は早くも終了ですね」

 

「まあ、怒らないでくれよ、ブロントさん。さて、途中に女神像があれば良いんだけどな。ここから先は長くなりそうだし」

 

 

 

 里の外に出ると、案の定、魔物がわらわらと湧いてきた。ブロントさんが剣を振り回して斬りつけ、魔理沙が火の玉を飛ばして攻撃する。霊夢は霊力で錬成した弾幕を、そして小鈴は小さな竜巻を敵にぶつける。

 やはり魔物は狂暴化しているらしく、ここに来るまでに遭遇したどんな奴よりも手ごわい。なにせ、ブロントさんの斬撃を受けて切り傷が刻まれ、血を滴らせながらもこちらに向かってくる。

 

「ブロントさん!下がって!」

 

「バックステッポ!」

 

 ブロントさんが飛びのいた直後、霊夢が放った弾幕が魔物を直撃して炸裂する。敵はアワレにもズタズタになって倒れていた。

 

「なんとかやっつけたな。それにしても、こんな奴らが相手じゃ、私一人じゃどう考えても無理があるな」

 

「ブロントさんと合流出来て良かったわ。前衛がいないと強い魔物に出くわしたらオシマイだったかもね」

 

「その通りでしたね、霊夢さん。さあ、早いところ目的地に向かいましょ」 

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