鬼滅の忍   作:黒い野良猫

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最後の内容を少し変えました。
そのため、本日投稿した十九話を消させて頂きました。
ご了承ください。


第十八話 鬼になった錆兎

「さび……と……?」

 

 吐血する錆兎。俺と真菰、義勇は目を見開いた。

 

「私がただでやられるわけないだろぉ。頸を斬られる前に仕掛けたあの針。あそこに一本だけ追尾出来る針を仕掛けた。本当は赤眼のお前をやるつもりだったが、まぁ良いだろう」

 

 俺は錆兎の首元を見た。そこには針が一本刺さっていた。俺はすぐさま抜き取る。

 

「無駄さぁ。もう彼には鬼の……あの方の血が入っている。鬼になるのも時間の問題……」

 

 そう言って針鬼は灰となって消滅した。

 

「錆兎……おい錆兎! しっかりしろ!」

「グハッ……兄、さん……」

「喋るな! 今藤の家に──!」

「もう、いい……早く……俺の、頸を……」

「斬れる訳ないだろ! お前は大事な弟だ! 一緒に帰るって約束しただろ!」

 

 倒れる錆兎を抱える俺。すると錆兎の身体が少しずつ鬼化していく。角が生え、目が赤くなり、牙が生える。

 

「早く……俺が完全に鬼に、なる、前に……」

 

 その言葉で錆兎の意識がなくなった。次の瞬間、充血させた目を見開き、俺を攻撃してきた。俺は瞬時に躱し、錆兎と距離を取る。

 

「グゥウウウウウ」

 

 唸り声をあげる錆兎。いや、これはもう錆兎ではない。鬼だ。

 

「そんな……錆兎……」

 

 目に涙を浮かべる真菰。

 

「目を覚ませ! 錆兎!」

 

 声を掛ける義勇。だが、錆兎は返事をしない。

 伸びた爪で俺達を攻撃する錆兎。俺はそれを躱す。

 

 ──ダメだ。完全に鬼になってしまってる。斬るしかないのか? 俺は錆兎を……

 

「グァアアアア!」

 

 すると錆兎は俺の肩を掴み、頸を噛もうとしてくる。俺は頭を押さえそれを阻止する。

 その時、錆兎の声が聞こえた。

 

「兄、さん……俺を殺せ……」

「な、何を言って……」

 

 まだ錆兎は自我を失ってなかった。錆兎も必死に鬼の血に抵抗していた。片目だけ普通の錆兎に戻っている。

 

「俺はもう、ダメだ……このままだと、完全に鬼になる……その前に──」

「錆兎……」

「最初は色々突っかかったよな……けど、兄さんにボコボコにされて……」

 

 すると錆兎が昔の話を始める。

 

「それから兄さんに稽古をつけて貰って、俺は隊士になれた……」

「やめろよ錆兎……」

「漸く、兄さんと肩を並べる事が出来る……そう思ったのになぁ……」

 

 俺の目から涙が溢れて止まらない。

 

「けどな、兄さん……これだけは言える」

 

 錆兎の目からも涙が溢れていた。

 

「俺は兄さんの弟になれて、本当に良かった……」

 

 俺は今まで錆兎と過ごしてきた事を思いだす。

 最初は確かに印象は悪かった。話しかけても無視するし、話しかけてきたと思ったら、いきなり闘えと言ってくるし。

 俺に負けても、何度でも挑んで来た。諦めない心。それが錆兎の強みだった。

 俺が久々に狭霧山に帰ったら、錆兎は隊士になって帰って来た。その時の姿はとても立派だと思った。

 そして今回、俺達が一緒に任務を受けた。最初は燿哉にああ言ったが、本心では嬉しかった。

 針鬼との闘いでも頑張ってくれた。俺が場を離れていた時でも、必死に食らいつこうとしていた。

 そんな錆兎が、鬼になった。悔しい。守れなかった事が凄く悔しい。

 

「兄さん、最期のお願い……いいか?」

「……何だ?」

「兄さんの手で、俺を、斬ってくれ。それが俺の……最期のお願いだ……」

 

 俺はこいつ等の兄だ。弟がそう言ってるんだ。俺は、腹を決めるしかない。

 

「……分かった」

「お兄ちゃん!」

「真菰。これが錆兎の……弟の最期の願いなんだ……叶えてやろう……」

 

 俺は錆兎と離れ、俺は刀を握る。

 錆兎は未だ抗っている中、その場で正座した。

 

「義勇……俺の手足を縛ってくれ」

「……やらなきゃ、ダメなのか……?」

「頼む」

 

 義勇の目からも涙が出ている。涙を流しながら、義勇は縄で錆兎の手足を縛った。

 

「……錆兎。二人に何か言うことはあるか?」

 

 頸を斬る前、俺は錆兎に聞く。

 

「そうだな……真菰」

「グスッ……何?」

「あまり兄さんを困らせるなよ。愛想つかされても知らないからな……」

「うん……気を付けるね」

「義勇」

「何だ……」

「あの時、お前と会えて、本当に良かった。お前は俺の親友だ」

「ああ……! お前は俺の友だ!」

「兄さん。鱗滝さんに伝えてくれ。俺を拾ってくれて、育ててくれてありがとう、と」

「わかった。伝えよう」

「胡蝶姉妹には、鱗滝さんをよろしく、と」

「……ああ!」

「じゃあ、頼む」

 

 俺は剣を振り上げ、錆兎の頸を狙う。

 

「兄さん、ありがとう……」

 

 その瞬間、錆兎の頸は宙を舞い地面に落ちた。そして灰となった錆兎は、隊服だけを残し、この世を去った。

 

 ☆☆★☆☆

 

「う、うわぁあああああああ!!」

 

 佐助はその場に崩れる。そして泣き叫ぶ。真菰、義勇も涙を流す。

 大切な家族を失った。自分の手で殺した。守れなかった。

 

 ──すまん錆兎……! 俺が弱いばかりに……

 

 錆兎を斬る時の錆兎の表情が脳裏に焼き付く。笑顔だった。自分が今から死ぬにも関わらず、笑顔だった。

 

 ──無駄にはしない……! 錆兎の死を……! 

 

「真菰、義勇」

 

 佐助は立ち上がり、二人の方を向く。

 

「強くなろう。錆兎の死を無駄にしない為にも……」

「兄さん……」

「ここで立ち止まってられない。俺達は前に進むんだ」

 

 そう言う佐助のその眼は、六芒星となっていた。




次回
「前に進む者」
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