鬼滅の忍   作:黒い野良猫

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第十九話 前に進む者

 狭霧山に帰ってきた佐助達。その手には錆兎の遺品があった。

 

「ただいま」

 

 玄関に立つ三人。鱗滝はその様子を見て、察した。

 

「……おかえり」

「おかえりなさい……あれ? 錆兎君は?」

「その事について、話がある」

 

 そう言って全員座る。静まる空気に、佐助は重々しく口を開いた。

 

「……錆兎が死んだ」

 

 そういうとカナエとしのぶは目を見開き驚く。

 

「正しくいうと、俺が殺した」

「な、何で……」

「錆兎が鬼になったからだ」

「錆兎さんが、鬼に……?」

 

 佐助はその時の状況を詳しく話した。敵の血鬼術により鬼の血を流された事。錆兎が佐助に頸を斬るようお願いした事。錆兎の遺言。全て話した。話している最中、真菰は耐えきれず涙を流し、それにつられカナエとしのぶも涙を流す。

 

「錆兎は最期に、なんて言ってた?」

「……ありがとうって、そう言ってた」

「そうか……」

「じいちゃん。俺、もっと強くなる。もうこんな思いはしたくない。錆兎の死は、無駄にしない……!」

 

 そう言って佐助は小屋を出る。残った者はまだ涙を流している。

 そんな中、義勇が口を開いた。

 

「俺は目の前で二度、大切な人を失った。目の前で錆兎が死んだ時、心が折れかけた。だが、兄さんは違った。一番辛いのは兄さんのはずなのに、その兄さんが前を向いて、次に進もうとしている。なら俺達も前に進まないといけない。錆兎の親友として、錆兎の意思は俺が受け継ぐ。そして俺も強くなって、いずれは兄さんと肩を並べる」

 

 そう言って義勇は立ち上がり、小屋を後にした。

 

「強いね、二人は」

 

 真菰が口を開く。

 

「私は二人みたいに強くないからさ。今も泣きたくなる。でも、お兄ちゃんに置いていかれるのはやだなぁ……」

 

 そう言って真菰も立ち上がる。

 

「鱗滝さん。私達は止まらないよ。辛い事があっても、突き進む。それが錆兎の死から学んだ事だから」

 

 真菰も鍛錬に行くのか、小屋を出て行った。

 残されたのはカナエとしのぶと鱗滝。

 

「みんな凄いですね」

「これ以上失いたくない。そういった思いがあるから鍛える。だから強くなる。それは心が強くないとできない」

「心が強くないと……」

「三人はもっと強くなるさ。儂はそう思う」

 

 そう言って鱗滝は立ち上がり、食事の準備をする。

 カナエは一人考えていた。自分はこのままで良いのか。何もしないまま、過ごしていて良いのか。そう思った。

 

「姉さん」

「しのぶ?」

「私、鬼殺隊に入る」

 

 しのぶの口からそう言ってきた。

 

「もうこれ以上、他の人に私達と同じ思いをして欲しくない。その人達を守るために、私は鬼殺隊に入る」

「しのぶ……」

「私も進まないといけない。そう思ったの」

 

 ──しのぶは強い。家族の死を受け止め、前に進もうとしている。でも、私はどうだろう。私もしのぶと気持ちは同じ。ならどうすれば良い。答えは一つしかない。

 

「……私も鬼殺隊に入るわ」

「姉さん?」

「お父さんとお母さんを失って、錆兎君も失った。これ以上失いたくない。だから、私も鬼殺隊に入る」

「別に姉さんがやらなくても、私が──」

「いい? しのぶ。私がやりたいって思ったの。これは私の気持ち」

 

 カナエはしのぶの目を見据える。真剣な表情にしのぶは感じたのか、これ以上何もいうことはなかった。

 

「鱗滝さん」

「……儂の鍛錬は厳しいぞ」

「承知の上です。私達を鍛えてください」

「……わかった。お前達に鍛錬をつけよう」

 

 こうしてカナエとしのぶは剣士になるため、鱗滝の下、修行を始めた。

 その頃──。

 

「兄さん」

「どうした義勇」

「俺を鍛えてくれ」

 

 義勇が佐助に言う。いきなりの出来事で佐助は固まってしまった。

 

「ま、待て。何でいきなり……」

「私も良いかな?」

「真菰!?」

「兄さんが強くなるなら、俺も強くなる。今回の任務、俺達は兄さんに守られすぎた。だから俺は強くなる。兄さんに守ってもらうのではなく、兄さんと肩を並べて戦えるために」

「義勇……」

「私も義勇と同じ気持ちだよ。これ以上、家族を失いたくない。だから強くなる」

「真菰……」

「兄さんだけに、重荷は背負わせない」

「私達も一緒に背負うよ」

「お前ら……」

 

 二人の言葉に、佐助は涙を流した。

 

「ごめんな、こんなだらしない兄で……」

「お兄ちゃんはだらしなくないよ。お兄ちゃんは、私達の憧れなんだ。あの時から──」

 

 それは佐助がまだ鬼殺隊に入る前。真菰、錆兎、義勇の三人で修行を見てもらった時。佐助は三人を相手にしても、負けるどころか傷一つ付いていなかった。佐助みたいに強くなりたい。佐助は三人の憧れの存在になった。

 

「そして私の好きな人でもあるの。だからかっこいいお兄ちゃんを、間近で見させてよ」

「……え?」

 

 真菰の発言に、佐助は固まってしまった。いきなりの事で、脳が処理に追いついていない様だ。義勇も驚いている。

 

「今、何て……」

「だから、かっこいいお兄ちゃんを──」

「違う、その前」

「お兄ちゃんが好きな人ってところ?」

「そ、それそれ! あれだよな、お兄ちゃんとして──」

「もちろん、異性としてだよ///」

 

 顔を赤くして言う真菰。その表情に、俺も顔が熱くなるのがわかる。

 

 ──な、何ちゅうタイミングで言うんだよ///こっちまで顔が赤くなるわ! 

 

「さっ! 早く稽古しよ!」

 

 そう言って先を歩く真菰。義勇も佐助を通り過ぎ、佐助の前を歩いて行った。

 

 ──錆兎。俺達は強くなる。だから、見ててくれ。

 

『見てるよ、兄さん』

 

 ふと、その様な声が聞こえた気がした。

 鱗滝ファミリーはそれぞれの目標に向かって、前に進んで行った。




次回
「忍の里」
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