狭霧山に帰ってきた佐助達。その手には錆兎の遺品があった。
「ただいま」
玄関に立つ三人。鱗滝はその様子を見て、察した。
「……おかえり」
「おかえりなさい……あれ? 錆兎君は?」
「その事について、話がある」
そう言って全員座る。静まる空気に、佐助は重々しく口を開いた。
「……錆兎が死んだ」
そういうとカナエとしのぶは目を見開き驚く。
「正しくいうと、俺が殺した」
「な、何で……」
「錆兎が鬼になったからだ」
「錆兎さんが、鬼に……?」
佐助はその時の状況を詳しく話した。敵の血鬼術により鬼の血を流された事。錆兎が佐助に頸を斬るようお願いした事。錆兎の遺言。全て話した。話している最中、真菰は耐えきれず涙を流し、それにつられカナエとしのぶも涙を流す。
「錆兎は最期に、なんて言ってた?」
「……ありがとうって、そう言ってた」
「そうか……」
「じいちゃん。俺、もっと強くなる。もうこんな思いはしたくない。錆兎の死は、無駄にしない……!」
そう言って佐助は小屋を出る。残った者はまだ涙を流している。
そんな中、義勇が口を開いた。
「俺は目の前で二度、大切な人を失った。目の前で錆兎が死んだ時、心が折れかけた。だが、兄さんは違った。一番辛いのは兄さんのはずなのに、その兄さんが前を向いて、次に進もうとしている。なら俺達も前に進まないといけない。錆兎の親友として、錆兎の意思は俺が受け継ぐ。そして俺も強くなって、いずれは兄さんと肩を並べる」
そう言って義勇は立ち上がり、小屋を後にした。
「強いね、二人は」
真菰が口を開く。
「私は二人みたいに強くないからさ。今も泣きたくなる。でも、お兄ちゃんに置いていかれるのはやだなぁ……」
そう言って真菰も立ち上がる。
「鱗滝さん。私達は止まらないよ。辛い事があっても、突き進む。それが錆兎の死から学んだ事だから」
真菰も鍛錬に行くのか、小屋を出て行った。
残されたのはカナエとしのぶと鱗滝。
「みんな凄いですね」
「これ以上失いたくない。そういった思いがあるから鍛える。だから強くなる。それは心が強くないとできない」
「心が強くないと……」
「三人はもっと強くなるさ。儂はそう思う」
そう言って鱗滝は立ち上がり、食事の準備をする。
カナエは一人考えていた。自分はこのままで良いのか。何もしないまま、過ごしていて良いのか。そう思った。
「姉さん」
「しのぶ?」
「私、鬼殺隊に入る」
しのぶの口からそう言ってきた。
「もうこれ以上、他の人に私達と同じ思いをして欲しくない。その人達を守るために、私は鬼殺隊に入る」
「しのぶ……」
「私も進まないといけない。そう思ったの」
──しのぶは強い。家族の死を受け止め、前に進もうとしている。でも、私はどうだろう。私もしのぶと気持ちは同じ。ならどうすれば良い。答えは一つしかない。
「……私も鬼殺隊に入るわ」
「姉さん?」
「お父さんとお母さんを失って、錆兎君も失った。これ以上失いたくない。だから、私も鬼殺隊に入る」
「別に姉さんがやらなくても、私が──」
「いい? しのぶ。私がやりたいって思ったの。これは私の気持ち」
カナエはしのぶの目を見据える。真剣な表情にしのぶは感じたのか、これ以上何もいうことはなかった。
「鱗滝さん」
「……儂の鍛錬は厳しいぞ」
「承知の上です。私達を鍛えてください」
「……わかった。お前達に鍛錬をつけよう」
こうしてカナエとしのぶは剣士になるため、鱗滝の下、修行を始めた。
その頃──。
「兄さん」
「どうした義勇」
「俺を鍛えてくれ」
義勇が佐助に言う。いきなりの出来事で佐助は固まってしまった。
「ま、待て。何でいきなり……」
「私も良いかな?」
「真菰!?」
「兄さんが強くなるなら、俺も強くなる。今回の任務、俺達は兄さんに守られすぎた。だから俺は強くなる。兄さんに守ってもらうのではなく、兄さんと肩を並べて戦えるために」
「義勇……」
「私も義勇と同じ気持ちだよ。これ以上、家族を失いたくない。だから強くなる」
「真菰……」
「兄さんだけに、重荷は背負わせない」
「私達も一緒に背負うよ」
「お前ら……」
二人の言葉に、佐助は涙を流した。
「ごめんな、こんなだらしない兄で……」
「お兄ちゃんはだらしなくないよ。お兄ちゃんは、私達の憧れなんだ。あの時から──」
それは佐助がまだ鬼殺隊に入る前。真菰、錆兎、義勇の三人で修行を見てもらった時。佐助は三人を相手にしても、負けるどころか傷一つ付いていなかった。佐助みたいに強くなりたい。佐助は三人の憧れの存在になった。
「そして私の好きな人でもあるの。だからかっこいいお兄ちゃんを、間近で見させてよ」
「……え?」
真菰の発言に、佐助は固まってしまった。いきなりの事で、脳が処理に追いついていない様だ。義勇も驚いている。
「今、何て……」
「だから、かっこいいお兄ちゃんを──」
「違う、その前」
「お兄ちゃんが好きな人ってところ?」
「そ、それそれ! あれだよな、お兄ちゃんとして──」
「もちろん、異性としてだよ///」
顔を赤くして言う真菰。その表情に、俺も顔が熱くなるのがわかる。
──な、何ちゅうタイミングで言うんだよ///こっちまで顔が赤くなるわ!
「さっ! 早く稽古しよ!」
そう言って先を歩く真菰。義勇も佐助を通り過ぎ、佐助の前を歩いて行った。
──錆兎。俺達は強くなる。だから、見ててくれ。
『見てるよ、兄さん』
ふと、その様な声が聞こえた気がした。
鱗滝ファミリーはそれぞれの目標に向かって、前に進んで行った。
次回
「忍の里」