第二十三話 束の間のひととき
下弦の鬼を二体倒した佐助達。無事に狭霧山に帰ってきた三人は久々の休息を得ていた。
「こうやってゆっくりするの、久しぶりだね」
「今まで任務尽くしだったからな」
「たまには休むことも必要だ」
三人は川の字になって横になっていた。真菰は佐助を抱き枕の様にしている事を除いて。
──まさか佐助達が下弦の鬼を倒すとは……成長したな。
そんな三人の姿を見て、鱗滝は感慨に浸っていた。
──それにあの十二鬼月を倒したんだ。佐助が柱になるのもそう遠くないかもしれん。
「そういえばじいちゃん。カナエとしのぶは?」
「二人なら外で剣を振っている。二人は見所がある。剣士になるのも時間の問題だ」
「そうか。なら、少し手伝ってやろうかな」
佐助は真菰を退かし、立ち上がる。真菰は膨れっ面で佐助を見ている。義勇はいつの間にか眠ってしまった。
佐助が外に出るとカナエとしのぶが素振りをしていた。
「頑張ってるな」
「佐助君」
カナエは佐助に気付くと素振りをやめ、手で汗を拭う。佐助は手拭いをカナエに渡し、汗を拭かせる。
「しのぶも凄いな。どれくらい振ってるんだ?」
「ざっと千回くらいです」
「せ、千回……」
まさかの回数に、佐助はたじろいでしまった。
「二人とも、対人戦はやったか?」
「何回かやってるわ。でも、なんかしっくりこなくて……」
カナエが困った表情で言う。
「因みに、誰と対人戦を?」
「もちろん、しのぶとよ。相手がしのぶしかいないもの。鱗滝さんには呼吸を教えてもらってるから……」
──なるほど。今二人に必要なのは十分な指導者か……
「そうだ佐助君。私達に剣術を教えてよ!」
「姉さん! 佐助さんは疲れてるんだからあまり迷惑を──」
「別に良いぞ」
「本当に!?」
「でも、良いんですか? 佐助さん。疲れているのに……」
「大丈夫だよ。折角ゆっくりできるんだ。お前達にも構ってやらないとな」
「べ、別に構って欲しいわけじゃ! ///」
しのぶは顔を赤くしてそっぽを向く。佐助はそんなしのぶの頭を撫でる。
「だけど、俺の剣術は少し独特だ。だから剣術をやる前に、体術を覚えてもらう」
「体術?」
「何で体術なんて。鬼を斬るのは日輪刀なのに……」
──真菰も同じ質問してたな……
デジャブを感じた佐助は苦笑いをする。
「それはね、戦略の幅を広げる為だよ!」
そう言って出てきたのは真菰だ。
「戦略の幅……?」
「もし鬼と接近戦になったとき、刀が手元から離れたらどうする?」
「それは急いで取りに行って──」
「取りに行く前に攻撃されたら?」
しのぶの答えを遮る真菰。気付いたら、真菰が説明を始めていた。
「無防備になるよね? そこでお兄ちゃん!」
「説明するなら最後までしろよ……そこで使うのは体術だ。殴りや蹴りを入れるだけで、相手の牽制になる。そこで刀を拾いに行けば良い」
佐助は真菰に目を配る。真菰は意図を理解したのか、木刀を持って佐助に詰め寄る。佐助はその木刀を弾き、真菰に攻撃を仕掛ける。真菰はガラ空きの懐に押し蹴りを入れると、その反動でバク宙して木刀の所に着地し、取る。
「こんな感じかな」
「真菰や義勇、死んだ錆兎にも体術を教えた。だからお前達にも教える。その次に剣術だな」
「私も教えるから、頑張ろうね!」
こうして、カナエとしのぶは佐助と真菰に修行をつけてもらった。
次の日の朝。俺は鴉に起こされた。
「佐助。オ館様ガオ呼ビダ」
「耀哉が?」
──またお茶でも飲むのか?
そう思った佐助は新しい隊服を来て、産屋敷邸に向かう。
「おはよう、佐助」
「早朝から呼び出してどうしたんだよ」
「君に話があってね。急遽来てもらった。まぁ座りたまえ」
耀哉に言われ、座る佐助。
「で、どうした」
「まず、この間の任務お疲れ様。全焼した里を視察するどころか、下弦の鬼と戦うことになるとはね」
「俺でもびっくりだよ。しかも二体」
「それを倒す。君はだいぶ強くなったね」
「これからも強くなる。で、本題は何だ?」
佐助が言うと、耀哉がフッと笑う。
「単刀直入に言おう。佐助、柱にならないか?」
「俺が柱に?」
「あぁ。君は柱になる権利を得たんだ」
「柱になる権利? いつ」
「下弦の鬼を倒した時さ。柱になる条件は知っているかい?」
「確か、鬼を五十体以上倒す。かつ階級が甲、だろ?」
「そうだね。その他に十二鬼月を倒す事。これが条件だ」
「つまり下弦の鬼を二体倒したから俺に柱になれ、と?」
佐助の言葉に頷く。
「俺はまだ十三だぞ。いくら何でも──」
「柱になるのに、年齢は関係ない。実力があれば良いんだ。それに柱になれば継子をつける事ができる」
「継子?」
「柱が直々に育てる隊士のことだよ。柱と共に行動する為、任務に同行することもある」
「任務に同行か……」
「それに柱には屋敷が与えられる。鍛錬場や寝室、食事をする所だってある」
「それは俺の今いる小屋が小さいと言いたいのか?」
「そうは言ってないよ。でも、正直言って窮屈だろう? 男三人に女三人は」
そう言われて、佐助は何も言い返せなかった。
「お金も問題はない。柱は給料がたくさん出る」
「別に俺は金に困ってないぞ……」
「真面目な話、今後も十二鬼月と戦う。佐助、君の力が必要だ。私の友人として、隊士として、力を貸して欲しい。未来の
真剣な表情に、佐助は断る事が出来なかった。
「……そこまで言われたら断れないな……分かった。柱になる」
「ありがとう佐助。今日から君は、
こうして新たな柱、忍柱が誕生した。
「カアァアアア! 新タナ柱誕生! 新タナ柱誕生! 忍柱ァ! 名前ワ早島佐助ェ!」
そして鬼殺隊に、早島佐助の名が広まった。
「一週間は休暇を与える。ゆっくり休んでね」
「ありがとう」
柱になった佐助に、どのような物語が待ち受けているのか。それは、神のみぞ知る。
明治こそこそ噂話
佐助の新しい隊服は、うちはサスケが暁に入った時から忍界大戦に使っていた忍服だって!
次回
「忍柱・早島佐助」