鬼滅の忍   作:黒い野良猫

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第二十七話 下弦の鬼、集結

 真菰達と合流するため、山の中を走る佐助。辺りは暗くなっており、視界も悪い。頼りになるのは、月明かりくらいだ。

 そんな時、佐助の足が止まる。

 

「誰だ、そこにいるのは」

 

 佐助は背後から気配を感じ、話しかける。すると木の後ろから三つの影が現れた。

 

「流石ですねぇ。私達の気配を感じ取るなんて」

「柱という名は、伊達ではない」

「食べがいがある、という事だね」

 

 そこに現れたのは、眼に「下参」「下肆」「下陸」と書かれていた。つまり、下弦の鬼だ。

 

「下弦の鬼が勢揃いとはな……下弦の壱が居ないみたいだが?」

「あぁ。下弦の壱は今欠番なんだ。いたんだけど、あの方の逆鱗に触れたみたいでね。降ろされたんだ」

 

 下弦の陸が答える。

 佐助は刀を手にかけ、戦闘態勢に入る。

 

 ──アイツ等の所にこいつ等が待ち伏せしてなくて良かった。だが、三人か……今影分身を展開しているから、もう使えない。一対三……これは厳しいぞ。

 

 佐助は冷静に分析し、三体を見る。

 

「最初から、全力で行く!」

 

 そう言って佐助は写輪眼を発動し、鬼達に向かって行った。

 

「まぁそう慌てないで下さい」

「──っ!」

 

 佐助は鬼に向かって行った筈が、いつの間にか足を止めていた。いや、動けなくなったと言った方が正しい。

 

 ──動けない……これは……

 

「私の血鬼術・時定(ときさだめ)です」

 

 下弦の参が答える。

 

「私は対象の時を止める事が出来るのです。これであなたの動きを止めました」

 

 そう言って手に持っている懐中時計を見せた。

 

「申し遅れました。私は下弦の参、時女(ときめ)と申します。以後、お見知りおきを。そして──」

 

 そう言って時女は佐助の刀を取り、言った。

 

「さようなら」

 

 ──天照! 

 

 時女が心臓を刺そうとした瞬間、佐助は天照で時女の懐中時計を燃やす。すると懐中時計は割れ、佐助は身動きが取れるようになった。

 佐助はすぐさま時女から刀を取り返し、時女の頸を斬る。

 

「これで残り二体──」

「と、思ってません?」

 

 佐助の背後には先程斬った筈の時女がいた。

 

「私を斬ろうとしても無駄ですよ」

 

 すると時女の背後から残りの下弦の鬼が出てきた。佐助は二体の攻撃を躱し、距離をとる。

 

「やはりその眼……あなたが欲しい……」

「時女。早く始末しよう。こいつの眼をあいつに渡さなければならない」

 

 ──あいつ? 鬼舞辻のことか……? 

 

「それは僕も同意見。こいつの眼、ちょっと厄介だからね。天照、だっけ?」

「──っ!? なぜ術の名を──っ!」

「彼が教えれくれたんだ。君の眼には注意ってね」

(ふう)。お喋りはそこまでだ」

 

 下弦の陸こと風が口を閉じる。

 

「一つ答えろ。お前達のいうあいつとは、鬼舞辻無惨の事か?」

「冥土の土産に教えてやる。確かにあの方も眼を欲しているが、もう一人、お前の眼を欲している奴がいる」

「それは鬼か? 人間か?」

「もう答えないぜ。これから死んでいく人にはな!」

 

 そう言って下弦の肆は砂の針を佐助に向けて放つ。

 

 ──これは、下弦の伍の──っ! 

 

 佐助は何とか躱し、体勢を整える。

 

「お前が倒した下弦の伍、砂魄。あれは俺の弟だ」

「兄弟で十二鬼月かよ……」

「俺の名は砂鉄丸。弟とは違い、砂鉄を扱う鬼だ」

 

 下弦の肆、砂鉄丸がそう言う。

 

「俺から放たれる砂の弾は、弾丸よりも痛いぜ」

 

 そう言って指鉄砲の形を作り、佐助に向けた。

 

「血鬼術・砂鉄弾」

 

 指から放たれた砂鉄の弾は、佐助に向かって一直線。あまりの速さに佐助は躱しきれず、弾が掠ってしまう。

 

「ぐ──っ!」

「まだだよ」

 

 すると背後から風の声が聞こえ、振り返ると手に螺旋状に回転している球のようなものを佐助にぶつける。佐助はそれを喰らうと回転しながら飛ばされる。そして木に衝突すると、砂が佐助と木を縛る。佐助は身動きが取れなくなった。

 

 ──強い……それにあの下弦の陸が使ったやつ、あれは恐らく螺旋丸だ。何でチャクラも持っていない鬼が螺旋丸なんて……

 

「凄いでしょ? 僕の術。あの人に教わったんだ。僕は風を使う鬼。手の平に風を乱回転させ、球体を作る。螺旋丸って言ってたかな?」

 

 ──今ので全部分かった。こいつ等には背後にもう一人いる。そいつは恐らく……忍。

 

「身動きも取れなくなった所で、眼を奪うか。天照を使っても無駄だぜ。俺の砂が全部盾になる」

 

 ──くそっ! このままだと本当にまずい! 何か手は……

 

 砂鉄丸の手が佐助の眼に掛かろうとした、その時だった。

 

「花の呼吸、壱の型・乱れ桜」

「水の呼吸、漆の型・雫波紋突き」

 

 佐助の背後からカナエと義勇の声が聞え、花と水が鬼に襲い掛かる。

 

「お兄ちゃん!」

「佐助兄さん!」

 

 遅れて真菰としのぶも来て、佐助を縛る砂を断ち切った。

 

「お前ら……」

「何とか間に合った。大丈夫か、兄さん」

「佐助君、あまり無理しないでください。影分身が急に消えたので、ビックリしました」

 

 真菰達が佐助と合流しようとした時、影分身がいきなり消えた。そしてその事を不思議に思った四人は急いで鴉に佐助の居場所を捜索させ、ここに来たと言う。

 

「この鬼達は……」

「下弦の鬼だ。全員な」

「下弦が三体も……」

 

 真菰の質問に佐助が答えると、しのぶが冷や汗を流して刀を構える。

 

「安心しろ。俺がいる」

「さっきまで絶体絶命だった人が何言っているんですか!」

「別に抜け出す方法はあった。それに俺は柱だ。そう簡単に負けない」

 

 そう言って万華鏡写輪眼を発動する佐助。

 

「すぐ終わらせる」

 

 そう言った瞬間、佐助は砂鉄丸の後ろを取り、頸を斬ろうとする。だが砂鉄丸は咄嗟に首元に砂の壁を作り、刃を止めた。

 

 ──千鳥刀! 

 

 佐助は剣に千鳥を流し、砂の壁を斬ろうとする。だが硬くて刃を通せない。すると風が螺旋丸を作り、佐助の所に向かってきた。

 

 ──天照! 

 

 佐助は眼だけを風に向け、天照を発動。避け切れなかった風は天照を喰らい、その場で燃える。

 

「風!」

 

 佐助は砂鉄丸の背中を押し蹴り、体勢を崩させた後、佐助はその勢いで跳躍し、豪火球の術を砂鉄丸に喰らわす。そして怯んだ隙をつき、頸を斬った。

 

「残るはお前だけだ」

「何で……さっきと強さが全然違う……」

 

 時女はあまりの恐怖に震え、動けなくなる。

 

「質問に答えろ。お前達に俺の情報を教えたのは誰だ」

「そ、それは……」

 

 その瞬間、時女の頸が跳ねた。佐助がやった訳ではない。勿論、真菰達も。

 

「ダメじゃないか。喋ろうとしちゃ」

 

 跳ねられた頸の背後に、一人の男がいた。

 

「お前は……」

「やぁ佐助。元気そうだね」

 

 そいつは、佐助の最終選別にいた、最後の一人だった。




次回
「兄」

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