「では、これから修行を始める」
次の日。俺は早朝に起こされ、外に出る。
「佐助、お前は今幾つだ?」
「僕は五歳だよ」
「五歳か。ちと厳しいかもしれんが、それでもいいか?」
俺は頷く。
するとじいちゃんは付いて来いと言い、俺は後を付いていく。急な斜面を登り、登っていくにつれ霧が濃くなってきた。
そして暫く歩き続けると、最も霧が濃い所で足を止めた。
「じいちゃん、ここは?」
「ここは狭霧山の頂上だ。今からお前には、この山を下ってもらう」
「下る? それだけで良いの?」
「あぁ。ただし、下る途中に様々な罠がある。その罠を潜り抜け、夕暮れまでに麓の小屋まで帰って来い。それが修行だ」
「わかった」
「厳しいと思ったら、この鴉に言え。儂が迎えにいく」
そう言って頭の上に鴉が飛ぶ。
「検討を祈る」
そう言ってじいちゃんは姿を消した。
俺は屈伸や伸脚など準備体操をして身体を解した。
「……よし、行くか」
俺は大きく深呼吸して走り出した。すると早速罠に引っかかる。
「いてて……落とし穴かよ。じいちゃん、容赦ないな……」
俺は落とし穴から上がり、再び走り出す。するとまた罠に引っ掛かった。
「今度は何だよっ!?」
突然後頭部に衝撃がきて、前に倒れてしまった。
──丸太!? 俺を殺すきか!?
『ちと厳しいかもしれんが、それでも良いか?』
「全然ちとじゃねぇ!!」
俺は文句を言いながらも走り、罠に引っ掛かっては走りを繰り返した。
気付けば俺の身体はボロボロ。服も破け、所々血も出ている。
でも、それでも諦めなかった。未来を救う為。ここで折れてはいけないと奮起した。
そして日も暮れてきて、夕焼けが眩しい時だった。
「やっぱり、厳しかったかのう」
「帰ってきたよ、じいちゃん……」
「佐助!?」
フラフラの状態で帰ってきた俺を抱きしめてくれたじいちゃん。
「よくやった……よく頑張った……」
「へへっ……凄いだろ、僕……」
「あぁ。凄い……凄いぞ!」
抱きしめられたまま、俺は気を失った。じいちゃんの元に辿り着いて、安心したんだろう。俺は二日間眠っていた。
俺は一ヶ月、山の頂上から麓まで降りてくる修行を続けた。日に日にタイムは縮まり、早く帰ってきては筋トレをして体力と筋力をつけていった。
さらに一ヶ月。今度は剣術を教えてもらった。素振りから始まり、対人戦や藁を切ったりした。
「今日は呼吸法を教える」
ある日、じいちゃんがそう言ってきた。
「じいちゃん、僕今呼吸してるけど」
「確かにそうだが、違う。今儂達がしている呼吸は、生きる為に一定の酸素を取り入れ、二酸化炭素を吐き出す呼吸だ。けど、今から教える呼吸法は違う。この呼吸法は鬼を倒す為に使うものだ。剣術を使えるようになった今のお前なら、出来るだろう」
俺は座禅を組まされ、じいちゃんから呼吸について教わる。そこから俺は呼吸法の修行に入った。
──おかしい。おかしいぞ……
呼吸法の修行に入って半年。俺は疑問に思っていた。
──何で、呼吸が身につかない?
俺はじいちゃんに言われた通りに呼吸法を身につけようとした。最初は始めたばかりだから、すぐに身につかないだろうと思っていた。だが、半年経っても全く身につかない。身につく気配が感じられないのだ。
「じいちゃん。これって……」
「……佐助。お前は恐らく、呼吸を身につけられない体質みたいだ」
「才能がないって事?」
「厳しく言えばそうだな。呼吸法を身につけられなければ、鬼の頸は切れない」
「そんな……じゃあ僕は……」
じいちゃんは俺の肩に手を置く。
「佐助、ここまでよく頑張った。でも、剣士になるのは諦めなさい。呼吸が使えないお前が行けば、死ぬだけだ」
──嘘だろ……? 剣士になるのを諦めろ? 俺は何のために修行してきたんだよ……俺には隠された力があるんじゃないのかよ……!
「……僕、もう寝るよ」
そう言って俺は寝室に行く。布団に入っては、頭まで被り泣いた。
深夜。俺は何故か目を覚まし、居間に行く。すると玄関に人影のような物が立っていた。
「じいちゃん……?」
「……付いて来い」
声からするに男だろう。そう言われ、俺は何故か付いて行った。本能がそうしているようだ。
暫く歩き、少し開けた場所に出た。すると先ほどの男は立ち止まり、俺の方を向いた。
「今から修行するぞ」
「……は?」
大正こそこそ噂話……
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やってほしい
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やらなくてもよい