「今から修行するぞ」
「……は?」
突然そんな事を言ってきた。
男は左目を前髪で隠し、黒いマントをしている。
「修行って一体何すんの? そもそも、あなたは誰?」
「子供の喋り方をしなくてもいい。俺はお前を知っている。そうだな、俺の名前はサスケとだけ名乗っておこう」
「俺を知ってるって……まさかアンタも令和から? それに名前も俺と一緒……」
「そんな事より、早く始めるぞ」
男──サスケさんが言うと、俺は俯く。昼間の事を思いだした。
「やったって無駄だよ。俺は呼吸法が使えない。剣士になれない。俺には特別な力があるって言ってたのにだ……!」
俺が言うと、サスケさんはため息をついた。
「お前が呼吸法を身に付けられないのは当たり前だ。何故なら、お前の身体には血液とは別に、他の物が流れているからな」
「血液とは他の物……?」
俺の言葉に、サスケさんが頷く。
「お前の体内に流れている物。それはチャクラだ」
「チャクラ?」
「チャクラは人間の身体を構成する膨大な数の細胞一つ一つから取り出す身体エネルギーと、修行や経験によって蓄積する精神エネルギーの事だ。お前の言う特別な力は、そのチャクラの事だ」
「そのチャクラって、どんなことに使えるの?」
そう言うとサスケさんは外れにある大きな岩の前に立った。
そしてサスケさんの右手から雷みたいなものが流れる。そして岩に向かってその雷をぶつけると、岩は粉々になった。
「す、すげぇ……」
「今のは【千鳥】という術だ」
「術?」
「あぁ。チャクラを上手くコントロールすれば、このように忍術を発動することが出来る。忍術だけではない」
すると今度は滝壺の方まで歩いていく。このままいくと濡れてしまうと思ったが、サスケさんは水の上を歩いていた。
「このようにチャクラを足に纏えば、水の上だって歩ける。これを見てみろ」
サスケさんは一つの木を指さす。その木には足跡があり、ひびも入っていた。
「この跡はお前が頂上から麓に下りる時に付いた跡だ。お前は気付かない間にチャクラを使っていた」
──そう言えば、気が付いたら木の上走ってたりとかしてたな。その時もチャクラを使ってたのか。
「この二ヶ月でお前の精神エネルギーはかなり蓄積された。これから暫くの間、チャクラをコントロールする修行をするぞ」
「はい……!」
こうして俺とサスケさんによるチャクラの修行が始まった。
昼はじいちゃんの下で剣術と筋トレ、夜はサスケさんとチャクラのコントロールをした。
「じいちゃんお代わり!」
「お、おう……」
中々のハードスケジュールのせいか、とてもお腹が空く。俺の箸は止まる気配がなかった。
「佐助。お前さんは──」
「じいちゃん。俺、剣士になる事諦めてないよ。確かに呼吸は使えない。でも、呼吸が使えなくても戦えるって事を証明したい。だから、俺はやる……!」
「……そうか。頑張れよ」
「あぁ!」
そして夜になり、俺はまたサスケさんの下に行く。
☆☆★☆☆
佐助が呼吸を使えないと分かってから一ヶ月。鱗滝は困惑していた。呼吸が使えないと分かり、無駄死にさせたくないと佐助に剣士の道を諦めさせた。けど、次の日になったら顔が別人のようになっていた。一人称も、いつの間にか僕から俺へと変わっていた。朝になると、何故か濡れている着物が干してあった。佐助の心に何か変化があったのだろうか。
夜。佐助がこっそりと抜け出すことを知っていた鱗滝は、そっと後を追って行った。
鱗滝が追った先には、木を登っている佐助の姿と、佐助に指導しているサスケの姿が広がっていた。
──どういうことだ? 何故佐助は木を
「割と見つかるのが早かったな」
「なにっ!?」
すると鱗滝の背後にいつの間にか移動したサスケの姿があった。
「貴様っ! 何者だ!」
「安心しろ。敵ではない」
「それをどう信じろと……!」
「早島佐助。アイツが何故呼吸法が身につかないか、教えてやろう。それはアイツの中に別の力が宿っているからだ」
「別の力だと?」
「俺はその力を引き出す手助けをしている。いわば、修行だな」
「それは、今佐助が木を歩いている事に関係があるのか?」
「あぁ。佐助!」
するとサスケは佐助を呼び出す。
「あれ、じいちゃん!? どうしてここに!?」
「どうもこうも、お前が夜勝手に抜け出すからだろう! 心配して見に来てみれば、木を歩きよって!」
「ごめんごめん。でも、これで俺は強くなれるんだ。だから、見ててくれよ」
「佐助。この一ヶ月の成果をじいさんに見せてやれ」
「おう!」
すると佐助は滝壺の方に行き、足を踏み出す。
「危ないぞ佐助!」
「よく見てろ」
鱗滝は、佐助が沈むと思っていた。だが、佐助は水の上に
「まさか、毎回濡れてある着物が干してある理由は──」
「これを習得する為さ。最初は上手くいかなくて何回も溺れたけど、今はこうして立てる」
「呼吸が使えなくても、何れは忍術が使える様になる。そうすれば、鬼の頸を切る事なんて容易いだろう」
「忍術……もしかして貴様は忍者か?」
「あぁ。俺は忍だ。そして佐助にも、忍の血が流れている。それが、アイツの力だ」
「そうか……」
鱗滝は悩んだ。このまま自分の下にいても、佐助は強くならないんじゃないかと。それなら、この男に任せても良いのではないかと
「……お前さんに頼みがある」
「何だ?」
「……佐助を、宜しく頼む」
「……どういうことだ?」
「このまま儂の下にいても、佐助は強くならん。お前さんの下にいさせた方が、佐助は強くなる。だから、佐助を頼む」
鱗滝はサスケに頭を下げる。するとサスケはゆっくりと口を開いた。
「……三年だ」
「何……?」
「三年こいつを預かる。それ以降はあんたの下で修行させる。それでいいな」
「何故儂の下で──」
「だって俺、じいちゃんの弟子だから!」
佐助は笑顔でそう言った。
「じいちゃんに拾ってもらわなかったら、今頃俺は死んでた。じいちゃんには感謝してんだ。そんなじいちゃんの下を離れるなんて、出来ないよ」
「佐助……」
鱗滝は佐助を抱き締める。
「強くなって……帰って来い……!」
その声は震えていた。恐らく、泣いているのだろう。
佐助も強く抱きしめる。
こうして佐助は三年間、サスケの下で修行することになった。
大正こそこそ噂話……
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やってほしい
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やらなくてもよい