あれから二年が経った。俺は十歳になり、真菰は九歳となった。
この二年で真菰は全集中・常中を覚え、また水の呼吸も覚えた。全集中・常中を覚えた事により、組手のレベルがどんどん上がっていた。今は木刀を使って剣術を交えた組手をやっている。
横から来る俺の剣を、真菰はしゃがんで躱し、その隙に俺の足元に払い蹴りをする。だが俺も負けてない。その払い蹴りを飛んで躱し、真菰の背後に前宙で回り、振り向くと同時に剣を振る。真菰もそれを読んでいたのか、木刀を盾にして防ぐ。だが、力負けしてしまい、吹き飛ばされてしまった。
「よし。今日はここまでだな」
「いててて……お兄ちゃん、もっと手加減してよ!」
「バカ野郎。手加減したら俺の為にならねぇし、お前の為にもならないだろうが」
「そうだけどさ!」
「帰ったぞ」
すると出かけていたじいちゃんが帰って来た。子供を二人連れて。
「お帰りじいちゃん。この二人は?」
「孤児だ。帰る時に見つけて、拾ってきた」
「なんかじいちゃんって、孤児拾うこと多いな……」
俺含めて四人の孤児を拾ったじいちゃん。孤児を引き寄せる何かがあるのだろうか。
俺は二人の前に立ち、自己紹介をする。
「俺は早島佐助。十歳だ。宜しくな」
「私は真菰。九歳だよ。宜しくね」
真菰が手を出して握手を求めるも、二人はしようとしない。そっぽを向き、こちらを見ようともしない。
──相当闇を抱えているな。まぁ理由は、鬼に家族を喰われたのが妥当だろう。
「鱗滝さん。俺達を鍛えてくれ」
すると、口元に大きな傷がある少年が言った。
「俺は鬼が許せない。家族を喰った鬼が。だから強くなる。強くなって、俺の家族を喰った鬼をこの手で殺す……!」
少年は拳を強く握る。そこからかなりの怒りの感情が読み取れる。
「……お前は?」
じいちゃんは先程の少年の隣の少年に聞く。
「俺も鬼が憎い。姉を喰った鬼が。だから、この手で殺す」
「分かった。お前達に修行を付けよう。だがその前に、この二人に自己紹介しろ。二人はお前達の兄弟子、姉弟子となるのだぞ」
じいちゃんがそう言うと、目をこちらに向けないが、自己紹介をしてきた。
「錆兎。九歳」
「冨岡義勇。九歳」
「宜しくな。錆兎、義勇」
「私と同い年なんだね! 宜しく!」
こうして新たな弟弟子、錆兎と義勇がやって来た。
それからは大変だった。錆兎は話しかけても返事もしないし、義勇は話しかければ返事はしてくれるが、義勇から話しかけることは無かった。
だが、錆兎と義勇が二人で話している姿は何度か見ている。二人は心を許し合っているのだろう。
そんなある日の事だった。
「いい天気だねぇ」
「全くだ。所で真菰?」
「ん? どうしたの?」
「君は何で俺の上に座ってるの?」
俺は巻物を読んでいる所に、真菰が胡坐をかいている俺の上に座ってきた。そのせいで巻物が読めない。
「なんかこうしたくて。お兄ちゃんポカポカするね。あったかい」
そう言って俺に寄り掛かってくる。別に良いが、中身は二十歳を超えてるわけで色々とやばい。それに良い匂いがする。
「おい、お前」
そんな時、珍しく錆兎が声を掛けてきた。
「俺と闘え」
そう言って俺に木刀を投げてきた。
「ちょっと錆兎! 歳は近くても、仮にも兄弟子なんだよ! 口の利き方があるでしょ!」
「仮にもって何だよ真菰……」
「俺はお前が気に食わない。だから、俺と闘え」
錆兎の目は本気だった。俺はじいちゃんを見る。じいちゃんは頷くだけだった。
──恐らく、じいちゃんが焚きつけたな。
「良いだろう。ただし、俺は
真菰をどかし、立ち上がる。
「馬鹿にしてんのか……?」
「するものか。俺はいたって本気だぜ」
俺達は外に出て、互いに向き合う。じいちゃんと真菰、義勇は俺達を見ていた。
「さて錆兎。やる前に一つ問う」
「なんだ」
「お前、何故そんなに焦っている」
その言葉を聞くと、錆兎は目を見開いた。
「俺が気付かないとでも思ったか? お前は焦っている。義勇が少しずつ力を付けていくなか、自分は果たして成長しているのだろうか、と。そしてそれは次第に焦りから苛立ちへと変わって行った」
「──さい……」
「苛立ちの矛先は俺。じいちゃんの弟子のくせに、のほほんと暮らしている俺が憎くてしょうがない。そうだろ?」
「うるさい!!」
そう言って錆兎は俺に向かって走って来た。そして木刀を振り下ろしてくる。
「遅ぇよ」
俺は背後に回り、背中を蹴飛ばす。錆兎は走って来た勢いと、俺に蹴られた衝撃で前に吹き飛ぶ。
錆兎はすぐに立ちあがり、俺に向かってくる。
──攻撃が単調すぎる。こんなの避ける必要もない。
俺は避けずに、そのまま回し蹴りをして錆兎を吹き飛ばす。
「俺がじいちゃんに拾われたのは五歳の時だ。そこから五年間、汗水垂らしてやってきてんだよこっちは。来て数ヶ月のお前とは、比べ物にならないくらいな」
俺は錆兎に近付き、立ち上がろうとする錆兎の肩に手を乗せる。
「良いか錆兎。焦っていたって、得られるものは何もない。逆に自分の首を絞めるだけだ」
俺は立ち上がり、見下ろして言った。
「もっと周りを見ろ。鬼に家族を殺されて辛いのは、お前と義勇だけじゃない。俺と真菰もそうだ。だから俺達は力をつけるんだ。鬼に勝つために」
錆兎は俺を見上げる。
「焦って鬼殺隊になろうとしても、最終選別で死ぬだけだ。なら時間をかけてでも、確実に鬼を倒せる力を付けていくしかないだろ」
すると再び錆兎は俯く。すると、地面が濡れていた。
「俺達も力を貸してやる。だから、お前も強くなれ、錆兎!」
「うっ……ぐっ……。ありがとう。そしてごめん。
俺はフッと笑い、錆兎の頭を撫でる。
すると義勇が俺の下にやって来た。
「俺にも……力を貸してくれるか……?」
その言葉に俺は笑い、言った。
「当たり前だろ? 俺はお前らの兄弟子なんだぜ?」
「……ありがとう、
「良かったね、錆兎。義勇」
「あぁ。姉さんもよろしく頼む」
「私達は同い年だから、普通に名前で良いよ~」
「……ありがとう、真菰」
「うん! どういたしまして!」
こうして鱗滝ファミリーの絆は深まった。
その様子を、遠くから見ている人影が一つある事を知らずに。
「──そろそろだな。はじめるか」
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大正こそこそ噂話……
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やってほしい
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やらなくてもよい