最近流行りの「男だと思ってた幼馴染みが」系が樹里ちゃんだった。   作:バナハロ

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放クラ会議(タコパ編)

 パーティとは、何か祝いたい事があった時だけではなく、とにかく何か騒ぎたい時にやるものでもある。「なんかテンション上がっちゃったし、居酒屋行こうぜ?」とか「今日は寝る前にパジャマパーティやろうよ」とか、全部パーティである。

 そんな中で、放課後クライマックスガールズが今日、開くパーティは「たこ焼きパーティ」であった。

 これの楽しむポイントは、みんなで料理を作れるという事。そしてその作る料理がとても楽しいという事だ。

 たこ焼きはタネさえ出来てしまえば、あとは専用の焼く機器に流し込んで焼き上がるのを待つだけ。その間、具を入れたり引っくり返したりするが、それが醍醐味であるため、面倒という感じはしない。

 場所は、夏葉の自宅。高級過ぎるマンションに全員集合し、智代子と凛世はタネを作っていた。

 食材は、みんなで買い出しに行って既に揃えられているのだが、飲み物を買い忘れたので樹里と果穂が買い出しに向かっている。

 で、夏葉はたこ焼き機を用意していた。

 

「うーっす」

「ただいま戻りました!」

 

 玄関が開く音がした。二人が帰って来たようだ。それとほぼ同時に、智代子と凛世もタネを仕上げた。

 

「おかえりー!」

「……こちらも、タネ作り……完了、いたしました……」

「おお、お疲れさん」

「夏葉さん、準備の方はどうですか?」

「私を誰だと思っているの? いつでもいけるわよ」

 

 準備はちょうど、整ったようだ。机の上にタネと飲み物と氷入りのコップを運び、全員が席に座ると、夏葉が号令を掛けた。

 

「よーし……じゃあ、放課後クライマックスガールズ、たこ焼きパーティを始めるわよ!」

「「「「おー!」」」」

 

 全員で拳を突き上げると共に、たこ焼きパーティが始まった。

 そうと決まれば、まずは焼くところが。誰かが「誰が焼く?」なんて聞くまでもなかった。最年少の果穂が元気よく手をあげた。

 

「私が焼きたいです!」

「良いわね。じゃ、一緒にやりましょうか」

 

 想定していた夏葉が、微笑みながらおたまを渡す。それを受け取った果穂は、智代子の近くにあるタネを掬い、たこ焼き器に流し込んだ。

 

「跳ねないように、ゆっくりとね」

「は、はい……!」

「おお……上手いじゃん、果穂」

 

 慎重にタネを流す果穂を見ながら、樹里は机に肘をついて微笑んだ。

 

「そ、そうですか?」

「次は具を入れましょう」

「色々とご用意しておりますが……何に致しますか?」

 

 凛世の言う通り、机の上にはチーズやチョコレート、明太子が置いてある。誰が用意したのかは知らないが、ぶどうまで置いてあった。

 

「……てか、誰が用意したんだよ。これ」

「い、入れるの……?」

「私は食べないからね」

「わ、私もぶどうは……」

「何事も……試してみないと分からないと思いました故……」

「「「「お前か!」」」」

 

 意外な奴が犯人だったが、悪気ゼロだったようで、みんなに否定されて微妙に涙目になっている。見た目だけ見れば一番年下の凛世にそんな顔をされれば、誰だって気まずくなる。

 だからと言って、ぶどうを焼いて美味しいと言える勇気はなかった。

 

「と、とりあえず今は普通にタコにしておきましょうか」

「そ、そうだな。序盤はやっぱりジャブでいかねーと」

 

 夏葉と樹里が上手いこと問題を先延ばしにし、今はとりあえずタコを入れることにした。

 全てのたこ焼きにタコを入れると、表面がこんがりするまで待機。その後はたこ焼きならではの作業、棒で突っついて裏返すアレである。

 

「早くひっくり返したいです……!」

「や、流石にまだ早ぇーだろ。少し待てよ」

 

 目を輝かせている果穂を樹里が制する横で、智代子がウンウンと頷いた。

 

「でも、その気持ちわかるなー。たこ焼きって食べることよりそっちの方が楽しいよね」

「そう、なのですか……?」

「え? 凛世ちゃん、たこ焼き焼いた事ないの?」

「はい……初たこ焼きです」

 

 意外だ、と思いつつも、それなら尚更、楽しまなければ損だ。

 

「じゃ、凛世さん。一緒にたこ焼きをひっくり返しましょう!」

「……はい。よろしくお願いします、果穂さん……」

 

 仲良くクシを構える二人。凛世はペンを持つように握り、果穂は逆手持ちをしていた。この人達はたこ焼きを見たことがあるのだろうか? まぁ楽しそうで何よりなので、特に口を挟む人はいなかったが。

 のんびりとたこ焼きを眺めながら、智代子がふと思い出したように言った。

 

「そういえばみんな、こんな心理テスト知ってる?」

「どんなの?」

 

 夏葉が聞くと、智代子はスマホを取り出し、しばらくいじった後、説明口調になって言った。

 

「えーっと……『公園に屋台が出ています。以下の何を買う?』aたこやき、bヨーヨー、cわたあめ、d金魚掬い」

「え、うーん……」

 

 全員、腕を組んで顎に手を当てる。しばらく考え込んだ後、果穂、樹里、凛世、夏葉の順で答えた。

 

「私はヨーヨーです!」

「アタシもそれだなー」

「凛世は……金魚掬いでしょうか……」

「私はー……その中ならたこ焼きかしら?」

「ふふっ……」

 

 全員の答えを聞いて、思わず吹き出す智代子。あまり心理テストは信じていないが、こういう事があるから嫌いではなかったりした。

 

「これは、あなたが勝てない誘惑を指しています。まず、ヨーヨーを選んだ樹里ちゃんと果穂は遊びの誘いに弱い」

「あー……確かにそうかもしれないですね。楽しいことが大好きなので」

「まぁ、そうかもな」

「で、凛世ちゃんの金魚掬いはデートの誘い」

「……で、でえとですか……? ……しかし、プロデューサー様が、誘って下さるのなら……」

「私は?」

 

 一人、頬を赤らめる凛世を無視して夏葉が聞くと、智代子はニヤニヤしながら言った。

 

「た、たこ焼きは……えっちの誘いだって」

「「「ぷふっ……!」」」

「なぁっ……⁉︎」

 

 一斉に噴き出す凛世、果穂、樹里と、一気に顔を赤らめる夏葉。

 

「で、デタラメよ!」

「……夏葉さんは、やはり年長者なだけあって大人なのですね……」

「凛世!」

「えっちの誘いってことは……夏葉さん、えっちな本とか持ってるんですか⁉︎」

「持ってないわよ! ていうか、誰よ果穂にエロ本の存在教えたの!」

「プロデューサーさんがこの前、買っていました!」

「あの男、しばき倒す!」

 

 元気になってしまった歳下二人に言い返す中、一番からかってきそうなライバルは黙り込んでいる。そっちに顔を向けると、頬を赤らめたまま俯いていた。

 

「な、夏葉……そういえば、お前最年長だもんな……。で、でも……なんだ。一応、女の子なんだし……そういう……何? 例えば……プロデューサーから誘われても……」

「行かないわよ! ていうか、果穂がいる前でそういう話はやめなさい!」

 

 それを言われると、全員黙るしかない。教育に良くないから。

 チームメイト全員、果穂を娘に対する父親の愛情並みに溺愛しているため、年齢に応じた教育をしなければならない。

 そのため、果穂の興味を他に移すことにした。

 

「って、そろそろ返した方が良いんじゃない?」

「あ、そうだね。果穂、凛世ちゃん。もう良いと思うよ」

「あ、そうです! かえしましょう」

「……これは、どのようにすれば……?」

 

 何度か経験があるのか、果穂は早速、器用に返し始めるが、凛世は頭上に「?」を浮かべている。

 それに気付いた樹里が、隣から自分もクシを持って実演で教授する。

 

「まずは、こう……縁をなぞるんだよ。それで微妙にずらしつつ、たこ焼きの表面が見えたら、こう……一気に返す」

 

 器用に返してみせる樹里の手元を見て、凛世は「おお〜……」と感動したようなため息を漏らす。

 

「お上手ですね……樹里さん……」

「まぁな。小6の頃からやってるからな」

 

 その時点で誰の影響なのか何となく察してしまったが、とりあえず触れる事なく話を進めた。

 早速、チャレンジする凛世。慎重にクシをたこ焼きの縁に差し込み、ヒュッと回してうまいことひっくり返した。

 

「おお、上手いじゃん」

「ふふ……先生の、教えが上手だからです」

「お、おい……先生とかやめろよ」

 

 すぐに照れたように頬をポリポリと掻く樹里。そんな様子が可愛くて、果穂も元気よく手をあげた。

 

「先生、私にも教えてください!」

「だから先生じゃねーって! 大体、果穂は出来てるだろ!」

「いえ、樹里ちゃ……先生ほど綺麗に返せていませんので!」

「なんで言い直した⁉︎」

 

 そう言いつつも、満更でもないようで頬を赤らめている辺りがまたからかわれる所以であって。

 しかし、そんな部分が微笑ましいので、他の四人は決してそれを口にしないが。

 とりあえず、焼けているたこ焼きを全てひっくり返し、再び待機。その間、凛世が智代子に声を掛けた。

 

「智代子さん……他に、何か面白い心理テストはございませんか?」

「え? あー……探せばあると思うよ」

「やってみたいです。……特に、その……恋愛系のものを……」

「え、なんで? もしかして、凛世ちゃんって……」

「気になるのです……二藤尚哉さんと、桜城光さんがこの先、どうなるのか……」

「漫画の続きを心理テストで測るって斬新だね……」

 

 しかし、凛世の瞳に迷いはない。というか「探して下さい」と直で訴えて来ている。

 凛世にそんな子犬ののような目で見られれば、智代子も調べないわけにはいかない。スマホをいじってとりあえずテキトーなものを言った。

 

「じゃあ……これは? 『あなたは子供で遊園地にいます。途中で迷子になってしまいましたが、しばらくして母親が見つけてくれました。それは次のうちのどのアトラクションの近くだったでしょう?』a、観覧車。b、ジェットコースター。c、お化け屋敷。d、メリーゴーランド」

 

 それを聞いて、四人は再び考え始めた。それがどういう話に繋がるのか分からないが、一先ず考え込み、果穂、凛世、夏葉、樹里の順で答えた。

 

「cです! お母さんはヒーローなので、お化けから守ってくれます!」

「……dでしょうか?」

「観覧車……あ、aね。ま、私はそれ以前に迷子にならないけど」

「bかな。ジェットコースター付近って人いっぱいいそうだし」

「お、割れたね〜。この神秘テストでは『あなたの好きな性格のタイプ』が分かります」

 

 まぁ、心理テストといっても所詮は遊びだ。全員、軽いノリで耳を傾けていた。

 

「まず、じゃあ果穂のcを選んだ人は『さっぱりしていて干渉してこない人』」

「さっぱり……?」

「うーん……イメージと違うね。一応、解説は『おおらかで、知的で物腰が柔らかくて、そして自立心が強い、お互いの価値観を認められるタイプ』だって」

「なるほど……つまり、ヒーローの相棒ですね!」

「……あ、確かに。それを聞くとむしろそれっぽいな」

 

 樹里が感心したように呟いた。続いて、凛世。

 

「凛世ちゃんのd……メリーゴーランドは、思いやりにあふれてる家庭的な人、だって」

「いえ……思いやりは欲しいですが……家庭的なのは凛世がいるので……」

「凛世ちゃん、メリーゴーランドから白馬の騎士的なの想像したでしょ」

「は、はい……」

 

 分かりやすい子である。とはいえ、まぁ凛世が好みでないと言う以上は、やはり所詮は遊びと言えるだろう。

 

「で、夏葉ちゃんの観覧車は……穏やかで誠実な人」

「そうね。穏やかかどうかは置いといて、誠実な人が良いわね」

「ああ、そんな感じするもんな」

「当然よ」

 

 そして最後の樹里。

 

「樹里ちゃんは……なんだっけ?」

「忘れんなよ! ジェットコースター!」

「ああ、うん。えーっと、ノリがよくて根が明るい人だって」

「あー……そうだな。せめて週一でフットサルなり何なりと付き合ってくれる人が良いな」

 

 うんうんと頷く樹里を全員眺めながら、脳裏に浮かんだのは何処かの甘党運動バカ少年漫画好きアメコミ好きの阿呆だ。樹里の話だと、彼も根は明るく、ノリも良い人のはずだ。

 

「……これ、東田さんのことではないですか?」

 

 平然と果穂が爆撃した。当然、分かりやすくて分かりやすくて分かりやすい樹里は、一髪で顔を真っ赤に染め上げる。

 

「な、なんでそうなんだよ! あいつ今、かなり暗いからな⁉︎」

「いやいや、樹里の話を聞く限りだと、彼、昔は明るい子だったんでしょ?」

「そ、それはっ……そうだけどよ……」

 

 夏葉にまで言われ、樹里はさらに頬を赤らめる。実際、彼の根が明るいことはその場にいる全員が分かっていた。と、いうより、本当は友達が欲しい癖に人を遠ざけて面倒臭い奴、というのが本音でもあったり。

 

「も、もうその話は良いだろ!」

 

 いつの間にか、からかわれる側になっていた樹里は、頬を赤らめたまま視線を逸らす。その先では、そろそろたこ焼きが完成しそうになっていた。

 良い逃げ場を見つけた樹里が、クシでツイツイと突いて転がし、こんがり焼き上がったたこ焼きの表面を眺める。

 

「お、そろそろ良いんじゃないか?」

「……逃げたわね」

「逃げたね」

「るせーな! 焦げんぞ!」

 

 そう言われれば、全員、つままない理由はない。凛世と果穂が嬉々としてクシを伸ばすのを見て、他のメンバーもたこ焼きを皿にもらいにいった。

 一先ず話を逸らせたことにホッと胸を撫で下ろしつつ、樹里もたこ焼きをもらった。実際、樹里もよく分からないのだ。自分の感情が。

 ただ、とにかく彼と会えたのだから一緒に遊びたい。それだけではダメなのだろうか? 

 

「ったく……」

 

 自分でもよく分からないまま、一先ずたこ焼きに手を伸ばした。

 

 ×××

 

 この手の催しは、序盤は美味しく感じるものだ。実際に料理評論家が食べたらどんな評価が下されるか聞きたくもないし、実際、銀○こに比べたら拙いものなのかもしれない。

 そんなものは関係なく、自分達で焼いたものを自分たちで食べるからこそ美味しく感じるものである。

 しかし、それが美味しく感じるのも途中までだ。何故なら、確実に悪ふざけが入るから。

 

「……ない、ぶどうはない……」

「ていうか……誰? スイカバーとか入れた人……」

「それを言うなら、ナス入れた奴もいただろ……」

「だ、誰ですか……『もう冷蔵庫に入ってるものテキトーに入れよう!』って言ったの……」

「……(気絶)」

 

 序盤の楽しい雰囲気から一転、死屍累々としていた。数日後には、おそらく今日の記憶は全て消えている事だろう。

 

 

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