最近流行りの「男だと思ってた幼馴染みが」系が樹里ちゃんだった。   作:バナハロ

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早くも四年後というね。

 高校生になり、早一年が経過した。学校は暇で暇で仕方なく、毎日することが無い。都会人って本当にクソだと思う。こっちに引っ越して来てから、都会人を信じる事をやめたわ。あー……神奈川に帰りたい。

 部活にも入らず、勉強も苦手でどうしようもない学生生活を送っていた。あーあ、なんでこんなことになっちまったのかなぁ……。いや、そんなの考えるまでもないことか。

 まぁそんなダメダメ男子高校生に成り下がった俺だが、そんな俺でも趣味を見つけた。それは……。

 

「あ、新刊出てる」

 

 漫画だ。特に、ジャンプコミックスとキララ。この双極にあるとも言える二つが最高よ。漫画の世界ってのは良い。悪い奴は必ず懲らしめられるし、不正は必ず公に出るし、それ以上にあり得ないくらいの信頼関係が主人公達にはある。

 そんな信頼できる友達が欲しいが、まぁ無理だ。現実は甘くない……というより狂気だからもはや。ズボンのお尻のポケットに財布を入れてたら「それ盗んでくれって言ってるようなもんだからね?」って言われる世界よ? 

 絶対にバカでしょ。盗んでくれなんて言う奴いないし、普通に考えて盗む奴が悪い。なのになんかもう言い分が盗む奴を擁護しているようなんだよね。

 そんな狂った世界なら、漫画の世界の方が良いわ。ハンターハンターとかワンピースとか、中々にえげつない事してるけど、アレだけの悪党がいるなら一周回って分かりやすくて良いじゃない。

 こっちの世界は平和と見せかけて平和じゃない世界だからね。だからクソなの。

 まぁそんなどうでも良い話は良くて、今は漫画の新刊である。とりあえず適当に選んだ漫画を手にとり、レジへ運ぶ。

 

「どうなってっかな、ワンパンマン……」

 

 ウェブ版はなるべく見ないようにしてる。というか、漫画とか本は紙が良い。なんでって言われても困るけど……俺という人間性が古いからかな、紙が好き。

 さて、帰るか。さっさと帰って漫画を読みたい。あ、いや……その前に体動かしていくか。ボウリング行こう。一人で遊びに行けるから最高だよね。

 そう思ってのんびり歩いていた時だ。後ろから賑やかな声が聞こえてくる。

 

「果穂さん……此度は、凛世の買い物に付き合っていただき……誠に、ありがとうございます……」

「いえ、私も凛世さんが読んでいる少女漫画が気になったので!」

「ふふ……では、早めに事務所に戻って、ご一緒に読みましょう……」

「はい!」

 

 ……元気な奴らだなー。てかなんで着物? 

 俺と同い年くらいかだろうか。いや、俺より少し下くらいか。友達同士ってのは本当に羨ましいもんだ。信頼できる奴なら。

 いや、何もゴンとキルアほどの関係は望んでない。あいつらはだってほら、修羅場をいくつも乗り越えてこその友人関係だから。俺はあんな命のやりとりをしなきゃいけないほどの修羅場を経験するのはごめんだし。

 けどほら、最低限、裏切らない人が良いじゃない? 

 

「……ん、あれ?」

 

 ま、俺には縁のない話だし、別に気にしねえけど。少なくとも、三次元の世界で本当に信用できる人間なんか出来やしない。精々、家族くらいだろう。

 そんな事を考えながら歩いていると、後ろから肩を叩かれた。ふと振り返ると、さっきの特に騒がしかった方の女の子が肩を叩いて来ていた。

 

「あの、落としましたよ!」

「え?」

 

 その子の手元にあるのは、ワンパンマンの最新刊。え、袋から脱出したの? と思ったのも束の間、袋には綺麗に穴が空いている。

 ……これだぜ。袋に穴が空いてたら、別の袋に変えない? 袋の裂け目が微妙に薄くなってる。元々、空いてた穴の所に漫画の角が食い込み、そこから広がったのだろう。

 

「すみません」

 

 それだけ挨拶し、漫画を受け取る。……改て見ると可愛い子だな。隣の着物の子もだ。元気溌剌天真爛漫アンパンマンといった感じの子と、お淑やかクールビューティー清廉潔白と言った大人しい美人さを誇る二人。まさに双極だ。

 こんな可愛い子が、しかもわざわざ落とした漫画を届けてくれるんだから、本当完璧超人っているんだね、と感心してしまう。

 

「では、俺はこれで……」

「あの!」

 

 帰ろうとしたが、元気な女の子が食い下がる。なんだよ、いきなり。

 

「なんですか?」

「それ、ヒーローの漫画ですよね⁉︎ どんなお話なんですか?」

「……」

 

 ……なんとグイグイ来る子なんだ……。というか、ワンパンマンをヒーロー漫画と言って良いのか? ……いや、まぁ良いのか。

 

「えーっと……最強のヒーローがワンパンで怪人を倒す話、ですけど?」

「面白いんですか⁉︎」

「え? あ、うん。まぁ」

「タイトルを教えてもらえますか?」

「ワンパンマン」

「ありがとうございます! では!」

 

 あ、それだけなの? てか、それくらい調べろよ。あなた高校生で……いや、なんか背が高い小学生って感じするな。何でも良いけど。

 元気よく走り去っていく女の子と、その背中を追いつつ、俺にペコっとお辞儀をする着物の子。……礼儀正しいな。こんな子がたくさんいれば良いんだけどね……。

 

「……ボウリング行こう」

 

 今日こそパーフェクトを狙わせてもらうとしよう。毎回、気が抜けるとしくじるからな。

 

 ×××

 

 ボウリング場に到着し、手続きを終えてボールを構える。一人ボウリングの何が楽しいって、そんなの答えるまでもない。ハイスコアを目指せる所だ。何事も上を目指すのは楽しいものだ。出る杭は打たれる世界でなければな。

 さて、とりあえずボールを持って的を見据える。使うのは、7ポンド。何事もスピードが最強である。関節のパニックではないが、何事も早さがモノを言うのだ。なんて言ってるけど、まぁ遊びだよね。

 アキレス腱を伸ばしながら両腕をクロスして肩を伸ばすストレッチをしていると、全く同じポーズで肩と足を伸ばす人が隣に見えた。

 

「「ん?」」

 

 オレンジ色の髪をなびかせた、これまた綺麗な人だ。あまりにも同じことをしていたので、目が合ってしまった。

 

「あ、どうも……」

「いえ、すみません」

 

 お互いに会釈して距離を離す。……良い体してんな。いや、おっぱい的な意味じゃなくて、筋肉的な意味で。腕も足も体格も、かなり鍛えられている。それでいて、ガチムチじゃない程度だから女性らしさは失われていない。

 

「よく来るのかしら?」

「え? ……あ、まぁまぁすね」

 

 声を掛けてくるとは……いや、別にコミュ障じゃないし、良いけど。

 

「そちらは?」

「たまーにね。一人で来ることもあるけど、今日は連れと来てるのよ」

「なるほど……」

 

 連れ、ねぇ。素直に友達と言えば良いものを。こいつ、高二病か? ……いや、俺よりは遥かに年上だな。大学生くらいだろう。

 

「夏葉ちゃーん、お待たせ!」

「あ、来た。では、失礼」

「あ、はい」

 

 後ろから頭にお団子二つつけた俺と同い年くらいの女の子に声をかけられ、オレンジ色の髪の人は俺に手を振って元に戻る。

 

「智代子……その両手のワッフルは何?」

「夏葉ちゃんの分、食べるかなーと思って……」

「これから運動をするのにそれ食べるの?」

「食べないの?」

「……食べる。でも先に投げてからね」

 

 ……楽しそうですね、友達とのボウリング。競える相手がいた方が楽しいのかな……いや、やめろって。考えるな、考えるな……。他人は他人、俺は俺。

 とりあえず、見てて食べたくなっちゃったので俺もワッフルを買いに行った。チョコレート味を一つ購入し、もっさもっさと咀嚼していると、隣のレーンのオレンジ色の髪の人がちょうど、投球しているのが見えた。

 鮮やかな曲線を描いて、見事にストライクを獲得する。

 

「おお〜! すごい、夏葉ちゃん!」

「ふふん、当然よ……ねぇ、智代子? どうして、手に持ってるワッフル二つとも歯形がついてるの?」

「えへへ」

「えへへ、じゃないから!」

 

 ……やるな、あの人。やっぱり鍛えてるだけあって、運動神経は抜群のようだ。

 さて、そろそろ俺もやるか。7ポンドのボールを掴むと、全力全開でボールはストレートにピンを弾き飛ばした。

 

「むっ……」

 

 隣で智代子と呼ばれた人が投げてる間、夏葉と呼ばれた人が俺の投球を見てむすっとしていた。

 

「あーダメだー。2本しか倒れなかったよー」

「あ、あら、そう。コツはレーンに書いてある三角形ね。その上を通すように……」

「あれショートケーキじゃないの?」

「レーンにショートケーキを描く意味よ……」

 

 うん、それはツッコミポイントだわ。描いてどうすんだそれ。俺も次の二投目なので、とりあえず飲み物を口を含んで集中する。

 

「っし」

 

 二投目を放った。またも、ストライク。ふっ、今日の俺は絶好調だぜ。

 ちょうど隣も、智代子さんの一投目を終え、夏葉さんの二投目に入った。ボールを胸前で持ち、一気に転がす。今度はシュートの曲線でストライクを獲った。

 

「夏葉ちゃん、すごーい! またストライ……どこ見てるの?」

「……どこも?」

 

 そう言いつつ、俺を睨みつけ、ニヤリとほくそ笑んだ。ほう……よろしい、ならば戦争だ。

 智代子さんの手番と共に、俺が投球し、再び夏葉さんの投球……と、交互に投げて、それと共にストライクを取り続けた。

 それから、約1時間が経過した。お互いのスコアはストライクやスペアを繰り返しつつもイーブンである。お互いに一進一退を繰り広げ、ラチが開かないまま最終回である。

 先に投げるのは夏葉さん。ボールを持って、深呼吸しながらレーンに立った。

 

「すぅ……ふぁ……」

「……」

 

 黙って俺はその投球を見届ける。

 直後、目を見開いた夏葉さんはボールを振り被り、一気に放り投げた。同じように鮮やかな曲線を描く……かに思えたが、俺には分かった。今までと、微妙に軌道が違う。

 パッカァーンっという清々しい音とは裏腹に、三本も残ってしまった。

 

「なっ……!」

 

 流石に疲れたか。いや、疲れが出ても見事な投球だ。それに、次はスペアで済ませられる場所である。

 額に汗を浮かべながら、二投目を始めた。が、汗が手に滲んだのだろうか? ボールはまたも軌道を外れ、ピンは二本しか倒せなかった。

 

「しまった……!」

「よし……!」

 

 勝機……! ここで終わらせてやろう。今日は本当は遊びでやるつもりだったから7ポンドだったが、俺のガチモードは真逆の15ポンドだ。

 そのボールを手に持つと、レーンの前に立ち、ボールを一気に放……あ、あれ? なんか思ったより重……つーか、肘が痛っ……! 

 

「オゴっ……!」

「バカね……7を投げてたのをいきなり15にしたら普通、そうなるわよ……」

 

 や、ヤバい……肘が、もう取れそう……。しかも、ガーターかよ……。

 ……いや、諦めるのはまだ早い。7ポンドでもう一度、投げれば何とかなる……! 

 ボールを持つと、改めて的を見据える。

 

「……」

 

 肘、痛いなぁ……や、ホント馬鹿な真似したわ。もう二度としない。

 とりあえず、痛みを堪えながらボールを振るった。過去通りの速度で、ピンを全部倒……してないわ。1本残った。

 膝と両手をついて項垂れる俺と、隣のレーンで両手を掲げる夏葉さん。

 ……なんつーか、惨めだ……こんなことなら最初から15で……いや、結果は結果だ。負けたもんは仕方ない。

 とりあえず、帰って腕冷やそうかな……なんて考えていると、スッと手を差し伸べられた。

 

「……?」

「良い勝負だったわ。またやりましょう」

「……」

 

 な、なんて美しいスポーツマンシップ……都会にも、こんな人がいたなんて……! 

 思わず、涙ぐみそうになったのを堪えながら、その手を取った。

 

「次はボロカスにしちゃうかもしれませんよ?」

「上等よ。返り討ちにしてあげる」

 

 強く握手を組み交わし、とりあえず今日は帰ることにした。

 去り際、後ろから「ふぅ……見た? 智代子。私、勝ったわよ?」「もう二度と夏葉ちゃんとボウリングに来ない」「あ……放って置かれて怒ってる? ごめんなさい、パフェ奢るから」と、勝者とは思えない会話が聞こえたが、無視してお金だけ払って帰宅した。

 

 ×××

 

「……ふぅ」

 

 なんか、本買って帰るだけの工程がすごく長く感じたな……。変な子達と何度も出会っちまった。こんな日もあるんだなぁ。

 ま、でも久々に楽しかった。特に、ボウリング。連絡先を交換するの忘れたし、多分、二度と会うことはないだろうけど、とりあえず良い思い出として頭の中に残しておこう。

 そんなことを思いながら、家の前に到着した。親父がアレから出世に出世を重ね、いよいよ一軒家を東京に立てちゃった。もちろん、ローンを組んでるけど、この人本当すごい。その息子は衰退の一途を辿っているが。

 とりあえず家の中に入ると、母親が珍しく家にいた。あんたパートは? うちの家計に余裕が出来ても「あなただけに家計を支えさせたくない!」という一心で新たなパート先を見つけたお袋さん。

 

「あら、おかえり」

「ただいま」

「何か良いことでもあったの? 随分、良い表情してるじゃない」

「ん、まぁね」

 

 親に気付かれる程か。まぁ俺は反抗期でも難しいお年頃でもないので、変に否定したりしないが。

 

「じゃ、これ行く?」

「どれ」

「はい」

 

 言われて手渡されたのは、ハガキだった。それも俺宛の。

 何かと思って裏面を見ると「○○小学校六年一組同窓会」のお誘いだった。

 

 

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