最近流行りの「男だと思ってた幼馴染みが」系が樹里ちゃんだった。   作:バナハロ

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久々に母校に訪れるとテンションが上がるのは、楽しい思い出が多かった証拠(最終)

 8月31日は、土曜日。つまり、今年は夏休みが一日多いことに気がつくその頃。

 そこで、まだ実家に顔を出していないことを思い出した樹里は、久々に神奈川へ帰ることにした。夏休みと正月休みくらい顔を出さないと、いらない心配をかけさせることになってしまう。

 せっかくなので、小学生時代の友達にも顔を出すことになったわけだが、それをするには一人、足りない。

 

「そんなわけで、葉介。今からアタシん家行くぞ」

「なんでだよ……」

「一泊するからな。お前も着替え持てよ」

「聞いてる? なんでって聞いてるんだけど……」

「お前、この前の同窓会ボイコットしただろ」

 

 言われて、葉介は「うっ……」とバツの悪そうな表情を浮かべる。確かにそんな事もあった。

 

「なら、あいつらに謝れよ。みんな心配してたからな」

「ごめん」

「アタシに謝ってどうすんだ!」

「ごめええええええええん!」

「ここから叫んで届くか!」

「上っ面だけの言葉よりも、気持ちが大事なんだよ、謝罪は!」

「その気持ち届いてねーよ!」

 

 なんてやってる時だ。葉介の家から、ボストンバッグが飛んできて葉介の後頭部にヒットした。

 それにより、バカ男は前方に倒れ込み、それと同時に葉介の母親が出てくる。

 

「家の前で叫ぶなバカ息子。よりにもよって謝罪の言葉はほんとやめて」

「すんません……」

「その中に着替えとスマホの充電器と財布とSui○a叩き込んだから、行ってきなさい」

 

 余計な真似を、と思った時にはもう遅い。樹里は「決まりだな」と言わんばかりに葉介の身体を起こした。

 

「よっしゃ。行くぞ!」

「へいへい……」

 

 仕方なく出発した。

 

 ×××

 

 東京から神奈川は然程、遠くない。ロマンスカーなら、一時間あればすぐに着く。

 それに乗って、二人で神奈川に到着した。まずは、樹里の家に向かう。荷物を置き、樹里の母親への挨拶を終えて、改めて出掛けることにした。

 

「さて、どうする?」

「どこか行きたいとこあるか? アタシはこの前も来たけど、お前はマジでひさしぶりだろ?」

「東京」

「ブッ殺すぞ! どんだけ帰りてーんだよ!」

 

 身から出た錆とはいえ、ボイコットしただけに同級生と会うのは気が引けた。あれから彼らがどのように成長したかはわからないが、少なくとも自分よりはマシなはずだ。ならば、多分ノリもあの頃と変わっていないし、従って顔を合わせればかなり面倒臭い。

 

「なら、アタシが勝手に連れ回すからな」

「良いよ」

「うしっ、じゃあまずは……」

「箱根? 鎌倉? あ、分かった。江ノ島だろう?」

「なんで全部、遠出させんだよ! 神奈川なら良いってわけじゃねーからな⁉︎」

 

 本当に面倒臭い男である。ただでさえ夏なのにヒートアップさせて欲しくないものだ。

 これ以上、ボケさせないために、樹里は葉介と腕を絡めた。薄くも柔らかい胸が、ふにっと肘に当たり、思わず背筋が伸びてしまう。

 

「っ……」

「おら、行くぞ」

「わ、わかったから、ちょっ……離れて」

「今更、照れんなよ! こっちまで恥ずかしくなんだろうが!」

 

 そんな話をしながら、樹里は強引に葉介の腕を引いた。

 さて、そのまま二人が移動したのは、まず早川の辺りである。近くに海があり、その海の幸を直売していたり、或いは飲食店も設置されているその場所は、地元民がよく遊ぶ場所となっている。

 何が良いって、ここの直売所は、小さな魚の干物を七輪で焼いて食べることも可能なのだ。

 

「まずはここだ! 夏にはうってつけだろ?」

「懐かしいな。小学生の時、干物全部食い尽くそうとして怒られたっけ」

「最後は笑って許してくれたけどな」

「ははっ、都会人のゴミカスどもとは何もかもが違うよな……」

「果穂も東京生まれだけどな」

「あれは都会人じゃないから。都会天使だから」

「お前仮にも彼女を前にそれか!」

 

 言いながら葉介の脇腹を突く樹里だが、それをあっさり回避される。

 

「よし、早速食おうか」

「バカ、その前に遊ぶに決まってんだろ」

「あそう……まぁどっちでも良いが」

 

 そんなわけで、先に海の方へ向かった。割と海で遊んでいる人も多いが、残念ながら二人とも水着を持ってきていない。波打ち際で足だけ浸かるのが限界だ。まぁ、夏だしそれでも悪くないわけだが。

 

「で、何すんの? まさか水かけっこなんて……」

「オラァッ! 隙ありだ!」

「は? ブッ!」

 

 顔面に水を浴び、思わず黙りこむ。この女はいきなり何をするのだろうか。そんな考えが顔に出ていたのか、聞いてもいないのに答えてくれた。

 

「ここに来たら、まずこいつに決まってんだろ!」

「いやいや、お前良い年した高校生がな……ましてやアイドルが」

「ビビってんのか?」

「上等だコラ」

 

 一斉に水の掛け合いが始まった。周りの水着の人達よりも激しく。

 そのまましばらく無限のスタミナで水の掛け合いが行われる事しばらく、ようやく周りの視線に気づき、二人はさらに人気のない方に逃げた。

 普段、釣りをする人が多い灯台も、海で遊ぶ人が多い昼間は誰もいない。その上で、二人で

 

「……何やってたんだろうな、俺達……」

「まったくだっつの……」

 

 二人して、げんなりしたまま肩で息をしていた。我ながらアホなことをした、と後悔している。まぁ、暴れ回ったおかげで樹里がアイドルであることがバレなかったわけだが。

 肩で息をしながら、ふと葉介は身体を横に向けた。ちょうど、視界に映ったのは、同じようにこちらを向いている樹里の姿だった。

 

「ムキになってやり返すなんて、ガキだなお前」

「っ……るせーよ」

 

 その水に濡れた樹里に日光が当たり、優しく微笑むその姿がやたらと色っぽくて、思わず目を逸らしてしまう。やはり、こんなんでもアイドルなんだ、と改めて実感すると共に、自分には過ぎた彼女だ、という事も思い知らされてしまう。

 

「……樹里、なんつーかお前……ホント綺麗になったな」

「っ、き、急になんだよ……⁉︎」

「いや、なんかふと思ったから」

 

 顔を赤くしながらも、樹里は顔は背けなかった。照れながらも、言い返したいことがあったからだ。

 

「それを言うなら……お前だってそうだろ」

「え?」

「出会った当時の中身は正直、ダサかったけどよ。外見は、前とは比較にならねーくらい良くなってたっつーか……年相応に、ワックスとかつけるようになってたし……」

「気付いてたのか?」

「おう。だから、なんだ……お互い様だ」

 

 そんな風に言われると思っていなかった葉介は、少し嬉しそうに頬を赤らめる。

 

「それに、中身だって根の部分は変わってねえだろ。お前は、やっぱりあの頃のままだよ」

「……るせーよ」

「帰りたがる所以外はな」

「上げて落とすなよ!」

「ははっ」

 

 そんな話をしながら、樹里は軽く微笑むと、すくっと立ち上がった。

 

「さ、そろそろ行こうぜ。アタシん家でシャワー浴びて、また出掛けるぞ」

「何処に?」

「小学校だよ。あそこで、バスケやっていこうぜ」

 

 ×××

 

 シャワーを浴び終えて、すぐに学校に向かった。樹里の部屋に置いてあったバスケットボールを持って、二人でグラウンドにくる。

 ここに来るのは、樹里にとっても久しぶりだ。卒業して数年しか経っていないとはいえ、まるで変わり映えしない。あの頃のままだ。

 ここで、葉介と樹里は出会った事を思い出す。夏の間だけだったが、二人は一番の親友になった。

 思わず、感慨深くなった葉介がのんびりしていると、隣にいたはずの樹里がトコトコと先に走ってバスケのゴールの方へ向かってしまう。

 

「おい、樹里? ……え」

「よう、久しぶり」

「うーっす、連れて来たか」

「本当に久しぶりだな、あいつは」

 

 その歩いて行く先にいるのは、見覚えがあるようである連中だ。小学生の頃の同級生で、樹里と一緒に遊んでいた奴ら。

 要するに、クラスメートの二人だった。

 

「……え、なんで?」

「よう。バカ」

「この前早くもシカトしてくれたなコラ」

 

 そう言われ、葉介は冷や汗を流しながら樹里の方を見る。その樹里もニヤニヤしながらこっちを見ていた。

 

「悪く思うなよ、葉介。元はと言えば、来なかったお前が悪ぃんだからな」

「テメェ、まさか……」

「おら、早くコートに入れ」

「そうだぞ、葉介。あくしろ」

 

 二人に促され、仕方なさそうにコートに入った。四人で身構え、ゲームを開始した。

 

 ×××

 

 チーム決めでは、当然のように樹里と葉介は別チームで、大人げなく四人は本気のツーオンツーに臨んだ。

 真夏のクソ暑い時間にそんなことをすれば、当然、ズタボロになるわけで。ボロカスになるまでバスケを続けた。

 さて、なんやかんやで、現在はバスケを終えて四人で食事に来ている。一通り会話を楽しんだあと、友達二人がトイレに行き、樹里と葉介が残った。

 二人でドリンクバーから入れてきた飲み物を口に含みながらのんびりしていると、葉介がふと樹里に声を掛けた。

 

「樹里」

「? なんだ?」

「ありがとな」

「な、何がだ?」

「いや、色々と企んでくれたから。なんだかんだ、楽しかったし」

「……別に、気にすんなよ。それに、何度も言うけど、感謝してんのはアタシの方だ」

「え?」

 

 樹里は当時のことを思い返しながら、しみじみと続ける。

 

「お前と会った時、ヤンキーだなんだと怖がられてたアタシを、一人ぼっちから助けてくれたのはお前だ。あの時から、アタシはお前の事が好きだったんだよ」

「……やめろ。いつになく素直になるの。可愛くて困る」

「うるせ。とにかく、アタシがこれくらいお前にしてやんのは、当たり前だ。だから、今更お礼なんてすんな」

 

 笑みを浮かべて、頬杖をつきながら、自分の鼻を人差し指でついて来る隣の彼女を見て、思わず葉介はドキッと胸を高鳴らせてしまう。

 それと同時に、とある欲求が湧いてきてしまった。思わず、流れで樹里の頬に手を当ててしまったが、それにより「な、なんだよ……」と樹里が頬を赤く染めてしまい、ふと正気に戻る。

 それでも、手を当てたままで聞いた。

 

「……キスして良いか?」

「は⁉︎ ……そ、それ聞くのかよ……」

 

 頬を真っ赤にしたまま、樹里はツッコミを入れつつ、目を閉じた。そして、控えめに唇を尖らせる。つまり、返事なんてするまでもないということだ。

 それにより、葉介も目を閉じ、唇を重ねた。

 

 ×××

 

 トイレから出てきた二人。

 

「……え、あいつらそういう関係?」

「東京で何が……」

「いつ戻る?」

「……先帰る?」

「だな。俺達も今日、急に呼び出されてるし」

「ここは奢りってことで」

 

 ごゆっくり、と二人にL○NEだけして、二人は帰宅した。

 

 

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