最近流行りの「男だと思ってた幼馴染みが」系が樹里ちゃんだった。   作:バナハロ

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元陽キャラの陰キャラはやれば出来るから。
グループL○NEって作って誘えば良いってもんじゃないよね。


 ある日、俺は夕方に出掛けていた。俺が唯一、やっているスマホゲーム、ポ○モンGOのためだ。こういうのすごい好きなのよ。特に、わざわざ歩かないとポケモンも自分自身も成長しないあたりが。

 それに、これも基本的にソロプレイ推奨だし、レイド戦だけ他人と協力もするが、連携とか無いので他人を信用する必要もない。20人も集まれば負けないしね。

 さて、まだレイドまで時間がある。なので、遠回りして行くことにした。ヘアワックス減ってきたし、また買っとかないと。

 

「ふぅ……」

 

 最近はなんかやたらと女の子の知り合いが増えたからなぁ。

 ヒーローが好きで、たまに漫画やアメコミのDVDを貸す間柄になった小宮果穂。

 逆に少女漫画が好きで、俺が読んでるジャンプのラブコメを教えてあげることもある杜野凛世。

 ボウリングのライバルで、他にもゲーセンにあるフリーシュートゲームなどで互いに勝ったり負けたりを繰り返している有栖川夏葉。

 偶々、ファミレスで隣の席で同じものを注文して以来、甘い物について語り合うようになった園田智代子。

 特に会うのはこの四人だ。正直、この関係は割と気が楽だ。何せ、友達ってわけじゃなく、連絡先も交換するような仲ではない。偶々、会ったときに会話する程度の間柄で、お互いの共通した趣味のことしか話さないから長時間一緒にいたりもしない。会ったら挨拶するご近所さん、と言った感じだ。

 そうそう、そんなもんで良いのよ。人間関係なんて。友達になろう、仲良くなろう、親友になろう、そんな風に思うから、関係が崩れた時に虚無しか残らなくなるんだ。

 

「……お」

 

 あった、いつも使ってる奴。勿論、学校では使わないし、表歩く時しかつけないよ。ワックスなんて。

 ただ、まぁこういうのもさ、経験でしょ? 女の子の化粧は高校じゃ禁止されるくせに社会に出たら、出来なきゃ非常識になっちゃうからね。

 もしかしたら、この先にワックスくらいつけられないと恥をかくことだってあるかも……と、思えば、少しくらいオシャレに気を使おうと思うものさ。

 それをコンビニで購入し、再びポ○モンGO。

 

「……あー、腹減った」

 

 まぁ無駄遣いはしないが。ボウリングとか学割効いても高いんだから。

 欠伸をしながら出て来るモンスターを捕まえて性能まで博士に送りながら、駅前に到着した。

 さて、とりあえず立ちっぱなしは怠いしどっか座るか。ちょうど良い場所に手摺りが見えたので、そこに腰を下ろそうとした時だ。ポヨンとお尻に何か当たった。

 

「うわ……!」

「あ、すんません」

 

 やべっ、誰か押し倒しちゃった。振り返って手を差し出そうとすると、そこにいたのは金髪のJKだった。ヤンキーか? と思ってしまったが、何処か見覚えのある顔に、思わず眉間にシワを寄せる。

 けど……スカート履いてるし、俺の知り合いに女の人はこの前知り合った四人以外いないし、気の所為だな。

 ……そんなことより、そこの女性。何でそんな幽霊を見たみたいな顔で俺を見ているわけ? 

 

「……葉介……?」

「はい?」

 

 え、何で俺の名前知って……マジで知り合い? 女の子の知り合いっつーと、男子に踊らされて俺を冤罪で部活から追い出した中学の時のクソどもしか思い出せないんだけど。

 

「……え、誰?」

「なっ……わ、忘れたのかよ!」

「忘れたって……何を?」

「あ、アタシだよ! 分かるだろ⁉︎」

「アタシアタシ詐欺か? それ電話じゃないと通用しないよ。真似するだけじゃなくカラクリを理解して出直して来なさい」

「違うわ! どのスタンスでアドバイスかましてんだお前は!」

 

 ……そんな事、言われてもな……。中学の時の連中はみんな俺に声なんてかけてこないだろうし、クラスでは自分の世界に篭ってるからだれも俺に興味なんか持たない……となると、その前? でも小学校は転校したし、転校した先じゃそれなりに友達できたけど、仲良かった人に限って中学受験して離れていったし……。

 

「……あ、佃島さん? 久しぶりだね。いい加減、波一つ立たない海のジグソーパズル完成させた?」

「違うわ! 誰だ、その長い名前の女!」

「じゃあ、もしかして鯨鳥さん? あのプールのゴーグルでヌンチャクごっこして壁に手をぶつけて骨折した? いい加減、周り見ないくせ直った?」

「だから違う! なんでそんな濃い奴ばっかなんだ、あんたの周りは!」

「それも違うとなると……ああ、セルゲイ=グラハム・コーラサワーさんか」

「お前にはアタシがどんな風に見えてんだ⁉︎ てかそれ男の名前だろ!」

 

 ……ダメだ、これも違うとなると出てこない。俺の知り合いに女の子……女の子……。

 悩んでいる間に、目の前の少女が答えをバラしてしまった。

 

「樹里だよ! 西城樹里!」

「樹里? バカだなオメー、樹里は女みたいな名前の男で……え、本気で言ってんの?」

「そうだよ‼︎」

 

 ……え、じ、樹里……? あの、前の小学校で最後の夏を一番、一緒に遊んだ? なんだかんだで一番、気が合って、最後に名前呼びを許してくれた、あの……? 

 

「じ、樹里⁉︎」

「そうだっつーの! 何回言うんだよ!」

「……」

 

 ……う、嘘……なんでここに……いや、待て。騙されるな。落ち着け。こんな事で簡単に騙されては、中学の時の二の舞だ。ここは、証拠を出してもらわないと。

 

「じゃあクイズ」

「あん?」

「俺と樹里が出会った時、何で遊んだでしょうか」

 

 ふふ、これはトラップだ。もし、こいつが偽物なら、ゲームをしに来ている現状を見て「ゲーム」と答えるだろう。そう答えさせるために「何のスポーツをしたか」ではなく「何で遊んだか」と聞いたわけだ。抽象的だから引っかかりにくい問い掛けに敗者のツラを滲ませるが良い……! 

 

「バスケだろ」

 

 あれ普通に答えてる……? いや、まだ早い。たまたま勘が的中した可能性もある。

 

「だ、第二問! バスケはバスケでもどのルールでやった?」

 

 これならどうだ。バスケにはさまざまなルールでの遊びがあるし、そもそもそのバスケもゴールがある場所でやるか、ない場所でやるかで大きく別れる。

 今度こそ空振りに終わり、悔しさと自身の軽率さを悔いるが良い……! 

 

「1on1」

「……」

 

 ……あれ、こいつもしかして本物……? なんて思っていると、樹里が目の前で指をコキコキと鳴らし始めた。何で急にキレ始めてんだ? 情緒不安定か? 

 

「そういやお前……あの時、アタシのズボン脱がしたよな……? 大勢の男子の前で……」

 

 う、うおおお! やべぇ、そういやそんなことしたわ! いやでもあれは男子だと思ってたからで……てか、今思えばあのパンツ、普通にブリーフとかじゃなくて女の子のパンツだったなぁ……。

 って、しみじみと思い出している場合じゃねえってばよ! こうなったら第三問で誤魔化すしかない! 

 

「第三問! その時の樹里のパンツの柄は何……」

「くまさんパンツまで見ておきながら男だと思ってたのかお前はああああ‼︎」

 

 顔面に蹴りが飛んでくると共にレイドバトルは開始され、俺も樹里も参加することは出来なかった。

 

 ×××

 

 ズルズルと引き摺られ、近くのファミレスに入った。注文した樹里のコーヒーと、俺のジャンボパフェが前に置かれる。

 

「……何で普通にパフェ頼んだんだお前は」

「お腹、空いたから……!」

「はぁ……アホなとこは変わってねえな……」

 

 うるせーよ。つーか、改めて女の子だったんだな……。全然、気付かなかった。

 ……しかも、その……なんだ。とても可愛くなっちゃって……。相変わらず口調は荒いし、髪もショートでラフにしているが、顔立ちや体型は女の子そのもの……いや、胸は少し寂しいかな。

 

「……どこ見てんだ」

「世界は平等じゃねえんだなって」

「ホットコーヒーぶっ掛けるぞ!」

 

 怒られたので、目を逸らしながらパフェを口にした。さて、久々に再会出来たのは正直、嬉しいことだ。普通に何度も樹里に会いたいと思った事もあったし、樹里じゃなくとも神奈川にいたクラスメートの顔も見たかった。同窓会は行こうか迷ったくらいだ。

 

「久しぶりだな、葉介」

「……だな」

 

 改めて挨拶され、目を逸らしてしまう。……さて、まずは確認しなければならない。

 

「……で、いつお前ち○こ取ったの?」

「取ってねえよ! てか、最初からねえよ!」

「本当に最初から女だったの⁉︎」

「女だったわ!」

 

 ま、マジかよ……。全然、気がつかなかった……。

 向こうに真っ直ぐ睨まれ、思わず目を逸らしてしまう。いや、怖いんじゃなくて、可愛くて直視出来ない。なんか恥ずかしくて……。こんな可愛い子のズボンを脱がしたのか、と思うと過去の自分を殴りたくなる反面、少し興奮する。

 

「こっちは色々と話してーことがあんだが……ひとつだけ聞かせろ」

「何?」

「お前、なんで同窓会来なかったんだ?」

「え?」

 

 ああ、この前のか。別に良いだろ。

 

「てか、何でお前知ってんの?」

「あ?」

「同窓会」

「ああ。アタシも呼ばれたんだよ。……ったく、あいつら……余計な気を回しやがって」

 

 顔はそう言ってねーよ。すごく嬉しそうじゃない。俺がいなくなった後も、クラスの連中とさらに仲良くなれたってとこだろう。

 

「まぁ……転校した俺まで招待してくれたのは嬉しかったよ」

「なら、なんで……」

「社交辞令かどうかは弁えてるだけだっつの」

「はぁ?」

 

 いや、分かってるから。俺は途中で退部した身なのに、中学の時の「××中学バスケ部OB会」からグループに招待が来て参加したら「こいつ誘ったの誰?」「てか誘われても来る?」「こいつメンタル強」とか本人の目の前でトークが始まって1分経たずに退会して以来、過去のその手の催しには参加しないようにしてんだ。

 実際、もしかしたら小学校の時の友達連中だって、俺が気付かなかっただけでホントは嫌われてたかもしんないしね。

 

「なんだよ、社交辞令って」

「いや、何でもない。……で、お前はそんなことわざわざ言うためにこっち来てんのか? それとも東京に転校したのか?」

「最初の段階で予想はしてたけど……お前、あんまテレビとか見ないのか?」

「見ない」

 

 見てもあんま意味ないからな。精々、ニュースをチラッと見るくらい。そんな暇あったら身体動かしたいわ。

 

「……アイドルやってんだよ。283事務所で、放課後クライマックスガールズってグループに所属してる」

「は……? 樹里が、アイドル……?」

「わ、悪ぃかよ! てか、そんなん良いからなんで同窓会に……!」

「夏休みの間、ずっと一緒にいたのに、俺に女の子だと気付かせなかったお前が、アイドル……?」

「う、うるせーな! 別に良いだろ!」

「スイカ食べ終えた縁側で、眠くなっちゃったのかそのまま歯磨きもしないで、ズボンの隙間からパンツをはみ出させ、剥き出しになったお腹をポリポリかきながらいびきをかいて寝ていた女がアイドル……」

「変な所から借用すんな! てか、え……嘘だろ? 小学生の頃のアタシの寝相、そんな感じ? まさか、今もじゃないよな?」

 

 いやまぁ……実際、こうして向き合ってみるとアイドルって雰囲気は確かにあるし、それくらい可愛いとも思う。

 ……しかし、あれだな。こいつも今を全力で楽しんだんだな。なら、過去の俺が関わるべきじゃない。人間関係なんて所詮、断捨離が重要なんだし。

 

「てか、アタシのことは良いんだよ! お前は今、何してるんだ? あれだけ楽しみにしてた部活は何にしたんだよ」

「部活は入ってない」

「え……なんでだ? ……あ、家庭の事情だったか?」

「いや、うちは今、全然平気だよ。そうじゃなくて、部員と反りが合わなかっただけ」

「え……よ、葉介と部員が、か?」

「……」

 

 まぁ、言っても良いかな。てか、言ったほうが良い気がする。なんか分かんないけど、今はどうだか知らんけど、昔はこいつ俺の事をかなり信用してくれてたからなぁ。俺がどこに行くにしても、何をするにしても、必ず後ろからヒョコヒョコついて来ていた。

 俺なんてそんな誰かについて来られるような人間じゃないんだけどなぁ……。

 

「早い話が、合宿中の女湯の覗きで追い出されたんだよ」

「はぁ⁉︎」

 

 ガタッと席を立つ樹里だが、他のお客さんの視線を感じて頬を赤らめたまま座り直した。

 

「な、何だよそれ、デタラメだ!」

「なんでデタラメだって思うんだよ」

「お前がそんなことするわけねえだろ!」

「思春期真っ只中だぜ。ちょうど、女の子の身体に興味が出て来る頃だ。今も興味津々だが」

「聞いてねえよ」

「とにかく、それでも俺が覗いてないって言えるか?」

 

 気がつけば、試すような口調になっていた。ダメだな、最近の悪い癖だ。これが人間不信、という奴だろうか。まぁ、樹里だって会えたのは四年か五年ぶりくらいだ。退部までさせられてるわけだし、普通に考えりゃ情状酌量の余地もなく切り捨て……。

 

「言える」

 

 即答かよ……てか、なんかキレてね? 

 

「ていうか、なんだよその部員! お前が何したってんだよ⁉︎ 冤罪に決まってんだろ!」

「いやいや、だから何で信じられ……」

「お前がそんな真似するかよ! 例え遊びでも不正とか一番、嫌いな奴だっただろうが!」

 

 ……まぁ、そうだが。そんな事まで覚えてくれてるのか。少し嬉しいのが何故か悔しい。

 

「てか、お前は悔しくねえのかよ⁉︎ あれだけ楽しみにしてた部活をそんな事で捨てちまうなんて……!」

「いやいや、むしろ良い教訓になったよ。例え都大会出場を決めた仲間でも、信用しちゃいけないって事だろ」

 

 一年でユニフォームもらえて、試合もちょいちょい出てたのが運の尽きだったな。要するに、上級生にメチャクチャ嫌われた結果だ。しっかりと罪をなすり付けられました。

 当然、部に居られなくなって、親にも電話が行って、ブチギレた母親が顧問に怒鳴り散らして「テメェのとこに子供預けるなんてこっちから願い下げだボケ!」ってキレ散らかしてたのは、もう俺までスッキリしちゃったよ。

 アレから、なんかもう嫌になって友達も何処かの組織にも所属しなくなりました。一人の方がよほど、気楽で良いや。

 

「……それで、お前は同窓会にもこなかったってのか?」

「うん。あと、ちょうどその日、ラーメン大盛り券の期限日だったから」

 

 ……あれ、なんか怒ってる? 徐々に眉間にシワが寄せられて……怒った顔も可愛いなぁ……。ホント、なんでこの子を男だと思ってたんだ俺。ホントに直視できない。

 が、しばらく黙り込んだ後、樹里は深く息を吐く。何を考えているのか知らないが、この子は優しい子だからな。昔と何も変わってないし……いや、昔と比べてかなり肝が据わったか。

 すると、何か思いついたのか、樹里は俺を正面から見据えて言った。

 

「……なぁ、葉介」

「何?」

「これからお前ん家、泊まりに行って良いか?」

「……は?」

 

 今、なんて? 

 

「てか、行くからな! 決定!」

「え、いや……だってお前、寮は?」

「平気だ」

「いやうちにも色々と事情が……」

「久々におばさんに挨拶する良い機会だしな」

 

 だめだ、うちの母親なら100パーOKする。しかも、明日は学校無いと言うね。なんだこれ、運命かよ。

 

「おら、行くぞ!」

「待てよ! まだパフェ残ってんだから!」

「じゃあさっさと食え!」

「だーもうっ、わーったよ!」

「あ、いやせっかくファミレスにいるんだし、飯は食っていくか」

 

 クソ、なんだよこいつ急に……。

 

 

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