誰からも忘れ去られた海域にその世界はあった。
第九十七管理外世界。現在の管理局を統制するあの三人のうち二人を輩出した世界。
そして、そんな世界の近くをある輸送船が航行していた。
「・・・地球。ひいおばあちゃんの故郷」
リューリク・ストラトスはそう呟いた。
聖王と覇王の血が流れる彼は、本来なら高い地位に就けるはずであった。
だが、彼はそれを拒み、今ではただの探検家になっている。
彼の祖母の母親は目の前の次元世界で生まれた英雄だ。
もっとも、彼女は今では地球に関して話すことはなくなったが。
彼の祖母も地球に訪れたことはあるらしいが、今は亡くなっている。
他にも地球から来た者たちはいるのだが、彼は会ったことすらない。
「どんな世界なんだろうな・・・」
彼の中で地球は自分の原点ともいえる世界だった。
彼は地球を一目見て見たかったからこそ、探検家という職業についたのだ。
しかし、管理外世界に対する干渉の禁止は今でも続いている。
だからこそ、余計に地球の土を踏んでみたくなる欲求が強くなる。
だが、祖母と曾祖母から受け継いだ遵法精神がそれを妨げるのだ。
(・・・なんだ?地球から航行船?)
彼はレーダーを見て異常に気がついた。
第九十七管理外世界から船が出現したのだ。
(よりにもよって地球に足を踏み入れる人たちがいるなんて)
地球に対する干渉は他の管理外世界に比べ、厳重に禁止されている。
それは現在の最高評議会に対する忖度の結果だった。
(どんな人たちか見てみたいな。犯罪者だったら、その時は覚悟しておこう)
輸送船はレーダーに表示されている座標に向かって加速した。
数分後に、リューリクは第九十七管理外世界から出てきた船を目視で確認できた。
それは、見たことも無いような船の姿だった。
どこか原始的で、それでいて高テクノロジーが詰め込まれたような、そんな姿だった。
その船には彼らの所属する国家の国旗も描かれていた。
赤地に、五つの黄色い星。リューリクはそれを知っていた。
かつて、曾祖母が与えてくれた地球に関する本。
それには地球を構成する国家群の情報も書かれていた。
その中に、一風変わった国の記述があった。
「・・・中華人民共和国」
リューリクは感嘆した。よりにもよって、あの国が偉業を成し遂げたのだ。
そして、読者の何割かは白目になっただろう。よりにもよって、あの国がリリカルマジカルな次元世界に足を踏み入れたのだ。
輸送船のコンピューターは目の前の船から送信されたメッセージを翻訳して、画面に表示した。
始めまして!我々は地球を代表する進歩的国家により派遣された探検隊です!
我々は別次元文明との平和的な交流を望んでいます!
彼はメッセージを受け取ると、すぐに返信した。
始めまして!私は平和と自由を愛する管理世界の探検家です!
この偉大なファーストコンタクトに立ち会えて、私は幸運です!
後世では、この瞬間に地球は管理外世界ではなくなったとされている。
そして数日後、最高評議会は一連の知らせを受け取った。
「・・・よりにもよって、あの国かい」
八神はやて議長は溜息をついた。
「中国って、何か問題あったかな?」
フェイト評議員はミッドチルダ出身なので、中国については知らないのだ。
地球に滞在していたとはいえ、そこまで現地のニュースは見なかったのだ。
「問題しかないわ、フェイトちゃん。アメリカは何をしとったんや」
「滅んだんじゃない?」
「縁起悪い事言わんどいてや。・・・ところで、なのはちゃんは?」
「曾孫のところに向かっていったよ」
「そういや、なのはちゃんの曾孫がファーストコンタクトを果たしたんやな」
「血はつながってないけど、やっぱりなのはの子孫だよね」
さて、読者の皆様も知っている通り、以前の最高評議会は脳髄だけという有様だった。
だが、この二人は違った。二人の姿は二十代のときと変わりがなかった。
そして、曾孫のところに向かったなのはもかつての美貌を保ったままだった。
「・・・リューリク、久しぶりだね」
「あっ、ひいおば・・・なのは評議員、お久しぶりです」
「今、ひいおばあちゃんって言おうとしなかった?」
「気のせいですよ」