「スクールアイドルやりませんかー!」
「どうですか⁉」
「え?いや私忙しいから‼」
「あ・・・」
四月、函館聖泉女子高等学院前。私は共にスクールアイドルをしてくれる仲間を求め、勧誘活動に勤しんでいた。しかし中々上手くいかない。それでも諦めずに声を張り続ける。
「スクールアイドルやりませんかー!」
「あの!・・・」
少し遠めの距離から声をかけてきた少女。
「もしかして⁉」
「はい・・・そのぉ・・・スクールアイドルいいな・・・なんて・・・思って・・・」
もじもじしながら言う少女。だんだん声が小さくなっていって最後の方は何を言っているか聞き取れなかった
「入部希望者ですね‼では・・・」
「や、やっぱりなかった事にー‼」
少女はそう言って校舎の方へと走り去ってしまった。
「え・・・」
状況が飲み込めず呆然と立ち尽くす私。
キーン!コーン!カーン!コーン!
予鈴のチャイムが鳴り響く。今日の勧誘活動はここまでだ。何だかスッキリしない気分で教室に向かう。
「えー、だからここにこの公式を当てはめて・・・」
今朝の少女が気になって先生の言っていることが頭に入らない。
「ではこの問題を鹿角さん解いてもらえる?」
「・・・」
「鹿角さん!鹿角さん‼」
「は、はい‼」
「ちゃんと聞いてた?」
「いえ・・・」
「もう!ダメよ!ぼーっとしてちゃ!」
「はい・・・スミマセン・・・」
ダメだ!ちゃんと集中しないと!
だけど結局、授業には一向に集中できないまま放課後を迎えた。
胸にモヤモヤした気持ちを抱えて下校。
あの子に会ってもう一度話してみたい!なぜだか分からないけどただの他人とは思えない少女。
そう思っていた矢先。
「あ・・・」
「え・・・」
校門の所で今朝の少女とバッタリ出くわした。
「し、失礼しましたー‼」
私の顔を見るなり全力で走り出す少女。
「ま、待って‼」
急いで少女の跡を追う。スタートは出遅れたものの、彼女はあまり足が速くないようで追いつくのは容易だった。
パシッ‼
彼女の腕を掴む。
「は、離してください‼」
「どうして逃げるの⁉」
「それは・・・」
「立ち話もなんだからとりあえず私の家来る?近くだし」
「え・・・えぇぇぇ‼そんな‼恐れ多い‼」
突然道端で地面にひれ伏す少女。
「ちょっとやめてよ‼こんな所で恥ずかしい‼」
少女を立ち上がらせて強引に腕を引っ張っていく。
「え、え、ちょっとぉぉぉ‼」
ぎゃあぎゃあ騒いでいるけど気にしない。そのまま家まで連れて行った。ちなみに私の家は甘味処、つまり和菓子屋を営んでいる。将来は姉様と一緒に店を継ぐつもりだ。
「ただいまー」
扉を開けて一声。
「お帰りー!・・・・あら?その方は?」
「‼」
姉様を見て硬直する少女。
「そんな緊張しなくても大丈夫!私の姉様だよ!」
「初めまして!鹿角聖良と申します!」
姉様が少女に優しく微笑みかける。
「せ、せ、せ、せ、聖良さ、さ、さ、様がわ、わ、わ、私にほ、ほ、ほ、微笑んで下さった・・・」
バタン‼
少女は気持ちの悪い笑顔を浮かべて倒れた。
「えぇぇぇ‼ちょっと大丈夫⁉」
・・・
・・・・
・・・・・
「うーん・・・ここは・・・?」
部屋のベッドに寝かせて数分後、少女は目を覚ました。
「ようやく気が付いたみたいね」
「私は一体・・・」
「姉様の顔見た途端、急に倒れちゃって。一体どうしたの?」
「すみません・・・実は私、Saint Snowの大ファンで、特に聖良様は私にとって神にも等しき存在なんです。さっきの不意打ちは刺激が強すぎて・・・」
「ホント、びっくりしたんだから!」
「面目ないです・・・私、本当にSaint Snowが大好きで‼二人ならラブライブ優勝は間違いないと思っていました。だから、地区大会の結果は信じられなくて・・・本当にへこみました。辛くてずっと落ち込んでいて。そんな中、鹿角さんが新しい活動を始めると言う事を知りました!私、嬉しくて嬉しくて‼そして思いました‼私がメンバーになって鹿角さんと共に、果たせなかった夢を今度こそ叶えるんだと‼」
キラキラと輝いた目で話す少女。しかしすぐにその輝きは失われる。
「でも、私には無理です」
「どうして?」
「私、運動神経悪いから。歌も上手くない、ダンスなんてやった事もないですし」
「大丈夫!私がちゃんと教えるから!」
「ダメです!そんな事をしたら鹿角さんの練習時間が減ってしまいます!だから、もっと優秀な人材をスカウトした方がいいのです!」
コンコン!
部屋の扉が叩かれる。
「理亞!入っていいかしら?」
「いいよ!」
ガチャリ!
扉が開いて姉様が入って来た。
「これ、うちの店の和菓子です。お口に合うかどうか分かりませんが」
そう言って姉様が、手に持っていた二人分の和菓子とお茶をテーブルの上に置く。
「そ、そんな!気を使わせてしまって申し訳ありません」
「いえ、大切なお客様ですから!」
「あの、さっきはすみませんでした!お手数おかけしてしまって・・・」
「大丈夫ですよ。ご無事で何より!さぁ、お茶が冷めないうちにうち特製の和菓子、お召し上がりください!」
「それではお言葉に甘えて・・・いただきます」
はむっ!
「美味しい・・・な、なんて美味しさ‼」
はむっ!はむっ!
少女は和菓子をあっという間に平らげた。
「ご、ごちそうさまでした‼その、お、美味しすぎて遠慮もせずに・・・すみません・・・」
「お口に合って良かったです!」
「ではお代を・・・」
「いえ、お代はいりませんよ」
「そ、そんな!ダメです‼ちゃんとお支払いします‼」
「お気持ちだけ頂いておきますね」
「いえ‼そこまで甘えるわけにはいきません‼」
「うーん・・・それは困りましたね・・・」
「ですから‼」
「ではこうしましょう!お代は結構です。その代わり、理亞と一緒に新しいスクールアイドルを始めると言う事で!」
「え・・・?」
きょとんとした顔をする少女。
「立ち聞きするのは失礼だと思ったのですが、扉の前で話をお伺いしてました。Saint Snowを心から愛して頂いてありがとうございます!」
姉様がぺこりとお辞儀する。それに私も続く。
「そ、そ、そんな‼やめて下さい‼」
「・・・あれ?そう言えばあなた・・・」
「え、私ですか⁉」
「見覚えのある顔だと思ったら‼いつも私たちのライブ、最前列から応援して下さってますよね‼」
「・・・あっ‼」
そうだ。初めて見た時、なんとなく親近感を抱いたのはそのせいだったんだ!なぜもっと早く気付かなかったのだろう。
「まさか覚えていて下さったとは・・・」
「すぐに気づかなくてすみません」
「いえそんな!」
「誰よりも一生懸命な応援。私たちはあなたからたくさんのパワーを貰っていました。そのパワーを今度はステージ上で活かしてみませんか⁉」
「さっきも言いましたけど私には無理です‼絶対‼」
ブンブンと手を振りながら言う少女。
「理亞、あなたはどうですか?この方の他に適任がいると思いますか?」
私は首を横に振った。
「どうしてですか⁉どうしてそこまで私なんか‼」
「大事なのは熱意だよ。出来る出来ないじゃない。最初から完璧に出来る人なんていないんだから!」
「でも‼・・・」
「ねぇ‼」
少女の言葉を遮るように言う。
「あなた、スクールアイドルは好き?」
「も、もちろん‼私にとってスクールアイドルは生きがいそのものです‼特にSaint Snowは神です‼いや、もうそれ以上です‼」
「その想いがあれば十分だよ。やりたいんでしょ?スクールアイドル!」
「やりたいですもちろん‼でも・・・」
「でも?」
「さっきも言った通りです!私、鹿角さんの足を引っ張ってしまいます。そんなのは嫌です・・・」
「じゃあ諦める?諦めて一生後悔する道を選ぶ?」
「足を引っ張るぐらいならそっちの方が・・・」
「どうしてもって言うなら仕方ないけど。でもあなたの心は本当にそう言ってるの?良く聞いてみて!これが最後。それでもあなたがやらないと言うなら私、諦めるから」
「・・・」
それからしばらくの沈黙。少女の悩む時間が続く。そして!
「答え・・・出ました・・・私、私‼鹿角さんと一緒にスクールアイドルやりたいです‼やっぱり自分の心に嘘はつけません‼いっぱい足引っ張るかもしれないですけど、それでもやりたいです‼」
少女の心から出た言葉。嘘偽りのない言葉。
「うん‼じゃあこれから宜しくね!・・・ってまだ名前聞いてなかったわね」
「あ・・・」
本来なら最初に聞くべきだろう。だけど、色々あってこのタイミングになるまで聞きそびれてしまった。
「私、泉冬羽 (いずみとわ) と申します!宜しくお願いします鹿角さん‼」
「理亞でいいわよ!後、敬語は禁止ね!」
「は、はい!・・・じゃなくて!よろしくね理亞ちゃん‼」
「宜しく!冬羽‼」
二人でがっちりと握手を交わす。姉様が嬉しそうに私たちを見つめている。こうして私たちの新しいスクールアイドル活動がスタートしたのだった。
・・・
・・・・
・・・・・
1 2 3 4 5 6!1 2 3 4 5 6!
ドタン‼
ダンスのリズム練習中、冬羽が盛大に転ぶ。
「大丈夫⁉」
「あははー、ごめんね。でも大丈夫!もう一回お願いできる?」
「ちょっと休憩にしない?」
「いや、もうちょっとで何か掴めそうだから‼」
「・・・分かった」
1 2 3 4 5 6!・・・
冬羽は自分で言っていた通り、かなり運動が苦手なタイプだった。練習中は束ねているが、髪は長い黒髪。そしてメガネをかけている。見た目的にも完全なる文学少女だった。
「はっ!・・・はっ!・・・」
しかし、彼女はとてつもない努力家だった。今も、息を切らしながら必死にステップを踏んでいる。どんなに難しくても決して諦めないし、一度スイッチが入ると止められない。スクールアイドルへの熱意は私が見込んだ通り本物だった。
4 5 6‼ オッケー‼
「はぁ・・・はぁ・・・」
「やったよ冬羽‼たった一週間でここまで出来るようになるなんて凄いよ‼」
「そうかな?」
「そうだよ‼」
決してお世辞で言ったわけではない。今までダンス経験のある人ならいざ知らず、全くない素人が短期間でここまで出来るようになるとは驚きだ。特に冬羽は運動が苦手で、最初は何をしていいのかさえ分からないレベルだった。まさに努力の賜物である。
「じゃあ今日はここまで!」
「いや!もう少し!」
「だーめ!今日はおしまい!」
そう言って強引に片づけに入る私。
「分かった・・・」
肩を落とし、残念そうにしている冬羽。でもこうでもしないと彼女はずっと練習を続けてしまう。
「ねぇ冬羽!」
「どうしたの?」
「冬羽はさぁ、何の為に踊ってるの?」
「それは早く上手くなりたいからだよ!」
「それって楽しい?」
「え?どうしてそんなこと聞くの⁉」
「だって無理してるでしょいつも」
「・・・まぁ無理はしてるかな・・・でもさぁ私、理亞ちゃんと一緒に踊れるのが楽しいんだよ!心の底から!だから辛くたって頑張れるんだよ‼」
眩しいぐらいの笑顔を向ける冬羽。その笑顔を見て思った。私は勘違いをしていたのだと。彼女のスクールアイドルに対する想いは私の想像を遥かに超えていたのだ。辛い気持ちさえも凌駕するほどの熱き想い。彼女は、スクールアイドルになれた喜びを今、全身で感じているんだ。
「ねぇ冬羽!」
「なーに?」
「あなたを誘って本当に良かった‼」
「え?そ、そんな‼私、物覚え悪いしどんくさいし・・・」
「そんな事ないよ‼でも、あんまり無理はしないでね!」
「うん、分かった!」
そう言ったものの、冬羽はまだまだ踊り足りないといった表情をしている。この調子だと、きっと家に帰っても練習を続けるだろう。だからせめて私の目が届く範囲の、この部活内ではしっかり気を配ってあげないと。冬羽が無茶をしないように、そして精一杯楽しめるように‼
「じゃあ今日は解散!」
「理亞ちゃん!」
「なに?」
「そろそろ私たちのグループ名が欲しいなって!」
いつも一歩引いてしまう冬羽にしては珍しい、自分からの提案だった。
「そうね!うーん、でも何がいいかなぁ・・・」
「Pray Solid‼なんてどうかな⁉」
興奮気味に、ホワイトボードへペンを走らせる冬羽。
「Pray Solid・・・どういう意味?」
「Prayは祈り。Solidは塊。今までの色々な経験や想いが詰まった塊! そこに私たち二人の新たな願いを込めて‼これまでの想い、そしてこれからの想いがいっぱい詰まった私たちの名前‼」
「すごくいいよ‼」
「良かった!実は理亞ちゃんとスクールアイドルをやりたいと思った時からずっと考えていた名前なの。でも中々勇気が出なくて・・・。私を誘ってくれて本当にありがとう‼」
「こちらこそ‼」
幾多の想いを乗せ、私たちの新たな物語が始まる。
私たちはPray Solid‼さあ伝説の幕開けだ‼
第一章 完
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
今回は二次創作でありながら新たなキャラを入れ、全く新しい物語を作っていく事となります。
今後の二人の活躍に是非ご期待ください‼
ちなみにこのPray Solid‼というグループ名なのですが、とあるセイントスノー大好きな方にアイデアを頂きまして当人、大変気に入っております。素敵なアイデア本当にありがとうございます。
この場を借りて改めて御礼申し上げます!
で、本当に気に入り過ぎて歌まで作ってしまったのでまたその内出てくると思います。それも合わせてお楽しみに‼
と言う事で今回はこの辺りで! また次回!