そうハリーがぼやくと同時に、二人が書類仕事に勤しむ部屋の扉が開かれ、箱を脇に抱えたコナーが入ってくる。
「ジョージ、いるか?少し見てもらいたいものがあるんだが……」
コナーが言葉を切った理由は、ハリーと目が合ってしまったからだろう。隠す気はないとばかりの凶悪な三拍眼がハリーに注がれている。それでも、当の本人は、まるで気にもしていない。
「見せたいものというのは、その箱の中身ってことで良いのか?」
肩に見えない重石が乗る前に、ジョージが尋ねる。
「ああ、そうだ。昨夜の現場にクローゼットがあっただろ?その奥の壁が二重になっていて、偶然これを見付けたんだ」
言いながらジョージの机に箱を乗せる。その際、そんな些細なことはどうでも良い、と数枚の書類を下敷きにしてしまう。
苦笑するジョージは、口を開いた箱の中身を探り、中から封筒を引き出す。破られてはいるが丁寧な封緘を見るに、便箋を出した人物に几帳面な印象を受ける。だが、ジョージの関心は、別の方向へと流された。
「……一体、何枚あるんだ?」
「百三十枚、お前らにも見せて良いかと上には確認している。お前らも一応は担当だしな」
掴んで引き出してみれば、片手一杯の封筒が現れる。殺人が起きた部屋に残されていた手紙、それも枚数を考えてみれば、気味が悪いのも頷ける。ちょっとした都市伝説にでもなりそうだ。
「面白そうですね、僕にも何枚か見せて下さいよ」
この状況を楽しそうに受け入れられるのは、お前ぐらいだ、との声を呑みこみ、いつもより弾んだ声で手を伸ばすハリーに、ジョージが束にして渡す。
「なあ、クローゼットの二重壁って言っていたよな?なら、これらは被害者が隠していたものってことになるのか?」
「それ以外にあるか?」
「いや、まあ……ないな……それで、中身はどういった内容なんだ?」
「簡単に言うと、ラブレターみたいですよ」
不意に二人の会話に割り込んだハリーは、手紙を一枚抜いた状態で投げる。枚数には瞠目させられたが、文面から伝わる愛情には偽りがないように思えた。
「ただし、一方的なようですけどね。それに、被害者の名前……エミリーさんという方みたいです。名前が至るところに書かれてますよ」
意地の悪い顔でコナーが腕を組む。
「それが本当に被害者の名前であるかは、まだハッキリとしていない」
「そんなに冷たくしないで下さいよコナーさん、これは被害者の名前で間違いないでしょうに……そもそも他人の物を隠しておきたいなら、クローゼットの中に細工、なんて子供騙しを施す筈がないでしょう?それに……」