二枚を読み上げたハリーは、二人の顔を見る。
「それで、なにか分かりましたか?判断するには十分な内容だと思いますけど」
たったあれだけの情報でなにを判断すれば、という言葉を呑み込んだジョージは、ハリーが最初に読んだ一枚を手に取り、もう一度、今度は自身で細かく文面をなぞって見るが、やはり、分からず、御手上げとばかりに溜め息をついた。
「俺にはサッパリだ。だが、さっきも言っただろ?お前だけが納得しても意味がない」
「まあ、確かにそうですね。僕も怒鳴られたくはないし言いますが、この手紙を書いたのは、恐らく、ユダヤ人の方です」
ハリーの大胆な発想に、コナーとジョージが互いに顔を見合わせる。そもそも、何故、そのような結論に至るのかすら検討もつかない。
そんな二人を置いて、ハリーは続ける。
「まず、この封筒ですが、この枚数からしてそれなりの年月が経過しているにも関わらず、乱暴な開封をされているもの以外、とても綺麗なものばかりを選んでいます」
几帳面な印象を受けたジョージは、確かにと首肯く。
「次に、文面です。あくまでラブレターの体をしていますが、さきほどの封筒と同じく、几帳面な文であるにも関わらず、違和感があります。それは、奪う、失う、隠す、そういった負のワードに加え、恐れ、不安、悪意、マイナスの面が全面に押し出されていますよね。これ、どうにも不思議ではありませんか?」
今度はコナーが尋ねる。
「確かに、ラブレターにしては前向きではないな。だが、それがどうしてユダヤに繋がるんだ?」
「彼らの歴史は、迫害と強奪、そして血にまみれています。彼らは、人を殺す事は悪いこと、なんて論法が通用しない世界に浸っている。紀元前の旧約聖書にすら差別が記されていますしね。捕囚という話しが残っていますが、実際には、多数の同族が殺害されています、これは、国、個人、ではなく、民族として差別を受けていたということでしょう?」
ハリーは自身の机に戻り、湯気が薄くなった紅茶を一口呑む。
「そして、差別化を定づける最大の事件がキリストの処刑、その後、大きく広がったキリスト教は、ミラノ勅命で認められますが、ユダヤへの迫害は、より大きくなりました。例えば、十字軍は、エルサレムの奪還に向かい、イスラム教の人々を虐殺していますが、同時に、ユダヤ人も敵と見なし殺戮した。同じ聖典を根本を持つ人類同士にも関わらずにです。そこに、加えるのならば、彼らは差別だけではなく、財産の没収、奴隷、反逆者は全身の皮を剥かれて壁に吊るされるなど、例を挙げればキリがない」