「力ってのは、求めても手に入れることが出来ない、特別な者に与えられるギフトだ」
「求めても手に入れられない……?なら、どうしてジャックは力があるの?」
「いろいろ、やってきたからな。けどな、まだ足りねえんだよ……この世界で生き抜くには、力はどれだけあっても良いんだ」
ジャックは、刃に魅せられるような熱を帯びた口調で言った。その姿に、少年が面白くなさそうに頬を膨らませる。
「ジャックって、僕よりナイフのほうが好きなんだね」
「面倒臭ぇこと言うなクソガキ、テメエもさっきまで同じだったろうが」
吐息と共に、ナイフを箱に戻す。
僅か三日間、それだけの時間にも関わらず、少年が抱くジャックへの信頼と憧れは日々、強まっていく。それこそ、少年が探し求める本当の両親がいる心の奥に届くほどの、崇拝にまで至りそうだ。
少年は立ちあがり、ベッドに腰を下ろして天井を仰ぐ。
「ねえジャック、僕も力を手に入れることができるかな?そうすれば、お母さんにもお父さんにも会えるかな?」
「俺に聞いても分かんねえよ。だが、近くなるのは確かだろうな」
緘黙した二人の空気を裂いたのは、階段を降りる足音と扉を叩くノックだった。パタパタと子供らしい軽い足取りで近付いた少年がノブを回して開けば、チャーリーがジャックに一礼を挟んで言った。
「ボス、近隣で阿片を撒いていた女を捕まえました」
「そっか。で、ルートは?」
チャーリーは首を振る。
「それが、まだ。口を割ろうとせず、ただ黙っているだけでして……どうします?拷問でもしてみますか?」
ジャックは、扉の脇で頭を傾げる少年を一瞥し、ソファーに凭れた。
「チャーリー、覚えてないか?お前は散々、拷問で情報を引き出す前に殺してきてんだろ。そんな下手くそ野郎が拷問?よく言えたもんだな?」
明らかに穏やかでない雰囲気を纏わせるジャックに、チャーリーが喉を鳴らす。
また、あの目だ。少年は逃げるように顔を逸らした。
冷たい鏡のような双眸は、瞳に映る人間の背中に汗を流させる。それが、例え、どんな人物であろうとも変わることはないだろう。そう思わせる。まるで、全身を貫く氷柱だ。
「も、申し訳ありません……決して、しかし、軽はずみな発言ではなく、それほど、手を焼いているという意味でして……」
「ああ、そうなんだろうな。けどよ、お前は自覚をするべきだとは思わねえか?」
ジャックは、手入れを終えたばかりのナイフを箱から一本取り出すと同時に、座ったまま振りかぶると、一息でチャーリーへと投擲した。