「お前がどこでどうやってアヘンを入手していたか、教えてやろうか?なあ、アイル・エバンズ?」
女性は苦痛に歪んだ表情のまま、目を見開いた。
「な……なんで……」
「なんで?そんなに名前を口にされたことが意外なのか?お前が所属しているという組織はそんなことも調べないのか?」
ジャックはわざとらしく首を傾げ、掴んだ髪を乱暴に放す。
「なら、ついでにいろいろと教えてやる。まず、お前のアヘンの入手先についてだ。組織が後ろに着いてる、そう言ってフランスかインドに太いルートがあると想像させようとしたんだろう。だが、お前は近場の店に忍び込んで倉庫から盗んでいただけのセコイ女だ」
そこまで言い終えたジャックが左手を揺らすと、控えていたチャーリーが懐から一枚の写真を取り出し、女性の眼前へと突きつければ、顔色が更に悪くなる。
「馴れたもんだ。真っ昼間ってことを踏まえてもカメラの音にすら意識を向けていない。その上、店の裏口から入ってやがる。これだけ堂々としていたら、本当に後ろ盾がいるんじゃねえかと思えてくるな」
クックッと笑いを堪えるような息を漏らすジャックに、女性が細い声で言った。
「あ、ち、違……う……これは、その……」
「違う、そうじゃないだろ?お前が口にできるのは、投獄されたモンテクリフト伯爵のように地下に棲む奴等の寝床の場所だけだ」
「か……勘弁しておくれ……もう、その店には近づかないから……」
「おいおい、耳は聞こえているか?近づく近づかないの話しはしちゃいねぇよ。穴ぐらに籠ったモグラの位置を尋ねているんだ」
「それを言ったら、アタシはもう生きていけなくなるんだ!お願いだから見逃しておくれよ!」
「まだ自分の立場を理解してないみたいだな。もう既に、お前のせいで二人死んでるってのによ」
懇願する女性が涙ながらに声を張るが、ジャックは静かに首を振り、チャーリーが二枚目の写真を取り出した。それに何が写っているのかなど、少年にすら理解てきた。
「最初は店を任せていた男を疑った。けどな、どれほど拷問を与えても知らぬ存ぜぬだ。もう一人はよく顔を出していた男で、珍しくもないアヘン中毒者だった。良い客だったよ」
言葉を区切ったジャックがニコリと微笑み、女性の頤唇溝に指を当てる。
「まあ、俺にとってアヘンはそれほど重要じゃない。今となっては、まだ出回って日は浅いがヘロインのほうが儲けになる。だがな……舐めらちまっていることに変わりはない」