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現場に到着したジョージは、あまりの凄惨さに絶句した。ベッドとテーブル、そして、開いたままのクローゼット、質素な一室の中は酷い悪臭に包まれている。
ジョージは、連れてきた若手の男、ハリーに窓の一つを開けるように指示を出したが、現場の保存を優先するべきだとする専門化チームのリーダー、トーマスに止められてしまった。
溜め息をついたハリーは、短く揃えた金髪を右手で乱すと、腰を落としてベッドに横たわる二人の遺体に目を向ける。
「市民に望まれていない組織でやるには、随分、重たい事件になりそうですね」
若者の冗談染みた口調に、ジョージは不愉快そうに返す。
「いつの話しをしている。我々がいるからこそ、犯罪は大いに減ったんだぞ。仕事をしたくないのは勝手だが、その口実に事件を利用するな」
ハリーは、右手を頭上で振ると、すくと立ち上がると、ジョージが手帳を懐から抜き出す。
事件が発覚したのは三時間前、街に降る朝霧も晴れない早朝のことだった。訪ね人は被害者の女性と同じ売春婦で、産業革命の結果、貧困街へと果てたホワイトチャペル地区における流れに逸った生立ちをしていた。同じ境遇の友人が昨夜から連絡を寄越さないので心配になって様子を見にきたところ、今回の現場と遭遇してしまったようだ。
ジョージの説明を受け、お気の毒に、とハリーは胸の奥で呟いて言った。
「それで、その発見者の女性はどちらに?」
「別働隊が保護している。なんでも、唯一、気のおけない友人だったようでな」
「それは、尚更、気の毒に。ところでなんですけど、被害者に子供っていたんですかね?」
手帳を戻し、ジョージは首を振る。
「いや、いなかったらしい。発見者も見掛けたこともない、とのことだ。まあ、悪い言い方ではあるが、こういった仕事をしている女性だからな……」
あとは分かるだろ、とばかりに口を濁す相棒を一瞥し、ハリーは神妙な表情で顔を伏せ、しばらく、うーーん、と唸る。
その様子にジョージが怪訝そうな目をして尋ねた。
「なんだ?なにか、気になることでもあるのか?」
「いやね、なんだか、子供がいないにしては気になる点がありまして……」
そう口にしたハリーが指差したのは、部屋の中央に設置されたテーブルだった。しかし、どうにもピンとこないジョージが更に首を傾ける。
「テーブルが……なんだ?」
「テーブルというより、椅子ですね。三脚もありますよ、それに、来客用にしては一脚だけが少しだけ低いように思える」