ガンダムブレイカー Re:build   作:柊羽(復帰中)

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「ねぇねぇ、お兄ちゃん」

 

「どうした?」

 

「ガンプラバトルって、二人で操縦したりもできるの?」

 

 テレビに向けて少年は指を指す。優しい夕日が窓からリビングに差し込む、そんな時間帯。二人は『ガンダムビルドファイターズ』を視聴していた。主人公のイオリ・セイが、もう一人の主人公であるレイジと共に大会初戦に挑もうとしていた時だった。

 

「ああ、セコンド役な」

 

「せこんど……?」

 

 少年は聞き慣れない言葉に首をかしげると、少年の兄はテレビのリモコンを取る。一時停止のボタンを押してから意気揚々と語り始める。

 

「セコンド。ガンプラバトルってのは基本1対1でやるのは知ってるだろ?でも地区大会とか全国、世界大会になるとセコンド役って言って、戦況を分析したりその時その時の機体状況のチェック、それをふまえて操縦しているファイターの戦術支援をする人と一緒に戦うことも珍しくないんだ。この、イオリ・セイとレイジみたいに」

 

「へぇー」

 

 一時停止が解かれる。セイとレイジの機体であるビルドストライクフルパッケージがゲートから飛び立った。しかし少年は首をかしげる。

 

「でもさ、セコンド役って楽しいのかな。自分で作ったガンプラを動かせないんだよ?」

 

「いや、違うよ」

 

「……?」

 

 そう語る兄の顔から笑みがこぼれる。イオリ・セイとレイジのコンビネーション。単純にアニメーションが面白いからなのか。それなら少年も同様に面白いと感じるし、既に魅了されているが、兄の笑みは違うようだった。

 

「確かに、自分で作って自分で戦って……。それが一番だと思うかもしれない。けど、セコンド役を嫌々やるヤツはいないよ。自分ともう一人、相棒と言ってもいいヤツと一緒に戦う。自分はサポートに徹して、相棒が最大限の力を出せるようにする。これって、自分がガンプラを動かしてなくても、戦ってんだよ」

 

 再び語り始める兄の言葉に、少しずつではあるが少年の心に響く。誰かと一緒に。相棒と一緒に、戦う。

 

 けれど、まだ完全に理解はできていない。自分で動かす方が楽しい。だから……。

 

「お兄ちゃん。おれ、やってみたい」

 

「やるって、セコンドをか?」

 

「うん。まだうまくわかんないけど、やってみたいって思った。やってみたら、それが楽しいのかってわかるから」

 

 少年のガンプラバトルに対する飽くなき好奇心。急に肥大化してきているそれに、兄は驚きながらも、嬉しく思った。

 

「じゃあ今度……いや明日だな。ホビーショップ行って、俺のセコンド役でやろうぜ。ガンプラバトル!」

 

「うん!」

 

 少年は強く頷いた。両者から感じ取れるものは、テレビの向こう側で初戦突破を決めたセイとレイジと同じものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 透き通る空の下、静かに佇む雲とは正反対に、結ばれた明るい髪色が忙しなく揺れ踊る。

 

 商店街のすぐ横、そこに構える店の看板には堂々とした筆文字で『オノ模型店』とある。店内に入るとすぐ正面に今イチ押しの商品コーナーが目にとまる。その奥には各グレードごと、かつシリーズに分けて商品が陳列してある。

 

 店内右手には全商品とはいかないものの、数多くのガンプラ完成例が置いてある。その全ての作品にもれなくスタンドを設けてあるため、関節がヘタって倒れてしまうなどというトラブルを未然に防ぐ徹底ぶりである。

 

 レジカウンターを横切って左手奥に進むと、買った商品をそのまま組み立てることができる制作スペースがある。ニッパーといった道具も貸し出しており、スタッフも常時数人いるため、わからないことだらけの初心者も安心して利用できるのだ。

 

 そして今の時代の模型店で欠かせなくなってきているのが、バトルルームだ。六角形の台を挟んでファイターが向かい合い、手元にある凹みにスマートフォンをセットする。大きさはおよそ1.5メートルほどのものが三台設けられている。春休みという時期もあって、常にフル稼働だ。

 

 自動ドアが開かれる。

 

「おう、いらっしゃい……って、サナやないか。どないした、そんな慌てて」

 

「慌てさせることをつくった本人が言わないでください、オノさん!」

 

 金髪を逆立てるようにセットされた髪型に、いやに鋭い目つき。だが見た目とは裏腹に誰にでもフレンドリーに接してくれる。そんな彼がこの模型店で店長を務めるオノ・マサヨシ。サナは常連であることからオノとは顔見知りだ。

 

「なはは、つまりゲリラバトル用のための新しい機体の制作、っつーことか」

 

「そういうこと、です!」

 

 サナはそう言い残して陳列棚へ突き進む。もうイメージの全貌をつかんだ。買う物は、当然もう決まっている。売り切れてない限り。

 

 買い物かごにてきぱきと入れ込み、会計を済ませる。そのままサナは制作スペースへと向かった。

 

「こんにちは、ニシさん」

 

「やあ。なんだか今日は気合い入ってるね」

 

「はい。明後日のゲリラバトルのために準備しておかなくちゃいけないので」

 

「なるほど。それは頑張らないとだね。サナちゃんの活躍、期待してるよ」

 

 長い前髪が左目を隠し、少々無精ひげである男性はニシ・カツノリ。オノ模型店の副店長であり、こちらも顔見知りである。サナは挨拶をすると、スマートフォンを取り出して制作スペース利用の事前予約を示すQRコードを提示する。ニシがそれをスキャンをして予約を確認。作業スペースへ通す。

 

 制作スペースは主にガンプラを組み立てる専用卓と塗装ブースとで分れている。サナはデスティニーの改修が第一であるため組み立て卓に荷物を下ろす。やはりこちらも子どもから大人まで賑わっている。当日の予約だったが、場所を確保できたのはラッキーだった。

 

 サナは鞄からデスティニーガンダムと模型道具一式を広げる。先ほど買ったものも取り出して、いざ作業開始だ。

 

「まずは……っと」

 

 サナはデスティニーガンダムを部位ごとに分解していく。そして残すパーツの改修を始める。道具箱からパテを取り出して傷の穴埋め。一通りこなすと、今度は組み込む新規パーツの製作に移る。買ったばかりの箱を開ける、なんとも言えないワクワク感はいつも通りだが、今回はそれよりも頑張らなくちゃ!という意識が勝っていた。必要なランナーを取り出し、愛用のニッパーをつかむ。

 

 時計の針が進んでいくにつれて、彼女は作業に没頭していく。購入したプラ板にマスキングテープを貼り、そこに切りたい形をシャープペンシルで書いていく。大まかにデザインナイフでカット、そこからより細かく切っていく。複数枚を接着剤で貼り合わせる。

 

 ノンストップで行なわれる作業。真剣な眼差しからは、普段のサナの様子は窺えない。勝ちたい。勝つために、もっともっと良い機体にしたい。そういう想いが込められた瞳は、いちファイターのそれだ。

 

「ふぅ……。なんとかできた。明日は、塗装だ」

 

 作業を始めて長針が三周しようとしていた。伸びをしてからサナは荷物をまとめて席を立ち、店を出る。その際に明日の予約も済ませておく。

 

 次の日は塗装を行ない、完成に持っていく予定だ。機能と同じく予約確認、今度は塗装ブースへ足を運ぶ。

 

 一見してデザイン性だけにしか思えないが、この工程もバトルのうえで重要な作業だ。ガンプラ表面のコーティングがしっかりしていると、ある程度ビーム兵器のダメージ軽減などに繋がる。逆にこれを怠ると、シールドがあっても容易く破壊されてしまう場合もある。

 

 ここでの作業は通い詰めて、もう慣れっこだ。最初のマスキング張りは既に終わらせてある。マスクと手袋を身につける。持ってきた塗料の調合、希釈。エアブラシのカップに注ぎ、塗装開始。

 

 長針はぐるぐるまわり、最後の塗装が終わる。乾燥させている間にサナはバトルルームの側にある自動販売機でジュースを買い、休憩をしていた。

 

「昨日と今日でさすがに疲れたー。調整とかは最小限にして……?」

 

 飲み干したジュースの缶をゴミ箱に入れ、そろそろ戻ろうかとしていた時だった。

 

「それじゃあ、これ。よろしくお願いします」

 

「はい、確かに受け取りました」

 

 視界に映ったのはニシともう一人。グレーのジャケットにジーパンという服装。いや、それよりも、彼は……。

 

「それで、一旦締め切った分は明日にでも届くと思うから」

 

「わかりました。では」

 

 会話を終えて、そのままスタスタと出入り口へ。サナは、咄嗟に後を追っていた。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「?」

 

 彼は声が自分にかけられているとわかると、止まって振り返る。癖のある髪型に物事を見据えるような、しっかりとした瞳。やっぱりそうだと、サナは確信をもって頷く。

 

「カザマ・ケン、君だよね?」

 

「……誰?」

 

 ほんの少しだけ思考した後、彼――ケンは首をかしげる。予想外な返答にサナは口をあんぐりと広げる。

 

「え、ええ。私だよ?ミヤマ・サナ!先月まで同じクラスだったじゃん!ほら、壁側の三番目にいたでしょ私!カザマ君の斜め前!」

 

「ごめん、わからん」

 

 無表情のまま首を横に振られ、サナの口ははさらに広がり、目が点になっていく。

 

 今にもヤスったプラ粉になって散っていきそうなサナの姿をただただ見ながら、今度はケンが問う。

 

「それで、俺になんか用か?」

 

「……え?いや、用があるわけじゃないんだけど。たまたま同級生見かけたから、つい。っていうか、カザマ君もガンプラ好きなんだね!」

 

 なんとか人型を保ったサナは生き返るように声を弾ませた。

 

「ま、まあ一応。でも別に変じゃないだろ。みんな興味あるだろうし」

 

「でもでも!カザマ君がガンプラに興味あるのは意外かも。それでさ、ガンプラバトルはやってないの?」

 

 ガンプラバトル。それを口にした瞬間に、ケンの表情が揺らぐ。他人にはわからないほどの、けれど確実で小さな動揺。

 

「いや、あー、俺はやらない」

 

「あれ、そうなんだ。でも楽しいのになぁ」

 

「どこが、楽しいんだよ」

 

「もちろん、それは自分が作ったガンプラを動かせるところでしょ!それにさ……」

 

 サナはガンプラバトルの面白さを語り始める。夢中になれることについてだから、気づかない。その姿は、ケンの記憶を何度もかすめるように刺激し、頭痛を起こしそうになる。

 

「だからさ、ガンプラバトル始めてみない?」

 

 ケンの瞳が大きく見開かれる。

 

 

 

 ――どうだ、俺と一緒に始めてみないか。ガンプラバトル。

 

「いや、いいよ」

 

「よくない!」

 

 一番強い刺激が脳内を駆け巡った。苦い顔になるケンは話を打ち切って帰ろうとしたが、サナが肩をつかむ。

 

「私、ガンプラ部に入ってるんだけどね、部員が私含めて二人しかいないの。だから一人でも多く部員が欲しいの」

 

「いや、話が意味不明なんだが」

 

「つ・ま・り!カザマ君にガンプラ部に入ってほしいの」

 

「ゴリ押しが過ぎるだろ……」

 

 サナの強引な部活動勧誘にケンはドン引きしていた。サナの手を振りほどき、今度こそと店を出ようとする。

 

「ねぇ!じゃあ明日!明日ここで大会があるから、見に来てよ。私も出るから。見たらきっと、面白いって思えるから」

 

 ケンは振り向かずに歩き続ける。それでもサナは負けじと声をかけ続けた。その背中に、その胸中にあるものを知らずに。

 

「ガンプラバトルが面白い……か」

 

 同時にこの出会いが、大きな転機であることも知らずに。




次回からようやくバトルシーンをかけるかな、と
さりげなくプロローグでちょろっとかいたエクシアVSダブルオーのバトルで矛盾等あったので、なおしてみました
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