ガンダムブレイカー Re:build   作:柊羽(復帰中)

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3 タッグ……!?

「お兄ちゃん、エネルギーチャージ完了だよ!」

 

『オッケー!』

 

 少年の目の前に広がるのは現実と一線を画す光景。全面を覆う暗がりに浮かぶ青いモニター群。胸元より少し低い位置に浮かぶのものは、デスクトップパソコンのキーボードとモニターのよう。そのモニターに、現在ガンプラバトルで使用しているガンプラの状態が前面と背面にわかれて表示されている。

 

 機体前面図、右腕あたりに示されたライフルに追加ウィンドが開かれ、<ENERGY:100%>とポップアウトが出た。

 

 少年の兄は威勢のいい返答と共に、操縦桿を操る。彼の目の前にあるのは少年とは少し違う光景。手元にY字状のメーターモニター、そして自身のガンプラを動かす操縦桿である光球が浮かんでいる。これを手でつかみ、ひねり、前後左右に動かすことでガンプラの動きを制御する。

 

 彼は左手の操縦桿の、親指あたりにある部分を押しながらひねる。すると球体に沿うようにしていくつかパネルが出現。スロットと呼び、それらひとつひとつにアイコンと文字が記されている。ガンプラの特殊装備や動きなどを、ここから選択するのだ。そこから彼は見ることもせずに前から三番目を選択。いくつもの戦いを経ているからゆえに、こういった配置は覚えている。

 

 二人が使う機体名は、ν(ニュー)エクシアと登録されていた。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』『機動戦士ガンダム00』にそれぞれ登場する主役機から構成されていた。頭部はνガンダムだが、胴体はエクシアとなっている。他にバックパックにはνガンダムの代名詞であるフィン・ファンネルが六基懸架されている。エクシアのメイン武装であるGNソードは一部改造が施され、左腕に装備。

 

 νガンダムを基調としたカラーリングに仕上がっているが、胸部や足関節外側に組み込まれたクリアグリーンのパーツはエクシアの存在を忘れさせない。νエクシアは文字通り、νガンダムとガンダムエクシアのニコイチで作られたガンプラだが……。

 

 νガンダムから流用してきたライフルの銃身が変化していく。一部分がスライドして縮むと、機体のまわりを生き物のように不規則に動くフィン・ファンネルが二基、クロスしながら重なって銃身の先に合体した。

 

『これが俺の考えた……ファンネル・エンハンサーモードだ!』

 

 少年の兄の瞳が、ギラリと輝く。十字に組まれたフィン・ファンネルの先端、その狭間でエネルギーの力場が発生した。並のビーム武器では到底圧縮できないエネルギーを容易く球体状に抑え込み、なおかつそれの大きさが増していく。

 

 相手のシナンジュをカスタムした機体が撃たせまいとライフルを素早く構える。だが残りのフィン・ファンネルが動きまわり、逆にシナンジュの動きが妨害されてしまう。相手に墜とされ二基しかないが、時間稼ぎには十分だ。少年と兄、双方が見つめるメインモニターには、相手機体をロックオンしたマークが表示。ライブ映像で窺える二人の顔には、同じ笑みが映る。

 

 相手が残りのフィン・ファンネル二基をビーム・ナギナタで切り、こちらに再び意識を向けるが時既に遅し。

 

「「いっけぇぇぇぇぇ!」」

 

 力のこもった声が重なる。トリガーを引き、圧倒的なエネルギーを解放。宇宙空間を轟かせる雷光のごとく一直線に飛び、それは見事に複数のデブリ帯ごと相手を巻き込んで遙か彼方まで突き進んだ。

 

 <BATTLE END>

 

 システム音声がバトルの終わりを告げる。そして今まで彼らを覆っていたモニターたちは全てホログラムであるため、空気に溶けていくように崩壊していく。対戦相手同士に挟まれたガンプラバトルの媒体には、バラバラになった相手の機体と少年と兄の機体が残される。

 

 瞬間、まわりの歓声が響く。バトル中はファイターの集中を妨げる恐れがあるため、外部の音が自動的にシャットダウンされる仕組みになっている。高く天上に設置された大画面のモニターに、勝者の顔とユーザーネームが映し出されている。もちろん、二人のことだ。

 

「お兄ちゃん……、やったんだね!」

 

「ああ、やったんだよ。俺たちで!」

 

 互いに頷くと、どちらかが合図したわけでもなく、右手をあげてハイタッチ。ビリッとした手のひらの痛みで、余計に現実感を増す。止まることを知らない歓声と拍手。比例するように高まる心臓の鼓動と、高揚感。

 

 今ここに、ガンプラバトル全国大会ジュニア部門の新たなチャンピオンが決まったのだ。

 

 アキラとケン。新たなチャンピオンたちの名である。しかしこの二人がこれ以降の大会で上位に出てくることは、二度となかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝、まだ朝日がほんの少しばかり顔を出した頃合い。部屋はまだ薄暗い。ぼんやりする視界の中を注視するわけでもなく、けれどケンはベッドから起き上がったまま壁のどこか一点を見つめていた。

 

「……いつぶりだ、この夢」

 

 目頭を指でつまみ、少ししてほどく。布団をどかして立ち上がると、部屋の向かいにある窓へ近寄る。冷えたガラス戸の縁を触りながら、広がる夜明けの街の風景をぼうっと眺める。

 

「あいつが昨日、声かけてきたからか」

 

 脳裏をよぎるのは、昨日の出来事。ケンが通う高校の同級生――ケン自身は知らなかったが――との出会い。ガンプラバトルをやらないの?という問いが、結果的に過去の記憶を引っ張り出してきたのだろう。

 

「大会……なんて」

 

 吐き捨てるように呟く。思い出すサナとの会話。明日、つまり今日行なわれる大会に来ないかということ。きっとガンプラバトルが楽しくなるから、と。

 

「飽きるほどやったんだよ」

 

 自嘲気味の表情でケンは手ぐしをする。ちらりと壁沿いに置かれた机に目をやる。それの上に古びた木製の写真立てが伏せた状態になっている。ふと手を伸ばす。しばらくこれに触っていなかったというのに。

 

 二人の少年が写っていた。どちらもこれ以上ない笑顔をしている。二人が一緒に持っているのはひとつのトロフィー。この写真を撮った年に行なわれた全国大会で優勝して貰ったものだ。黄金に輝き、トロフィーの頂点にはガンダム像になっており、正面のプレートに二人の名前が刻まれている。写真からはよく見えないけれど。

 

 現在、ケンはこのトロフィーを持っていない。おそらく持っているのは……。

 

「あれ?」

 

 左上の通知ランプが淡く光っている。スマートフォンに一件のメッセージが入っていた。

 

 『明日の大会、見に来るべし。無視すれば、今月の給与は没収』

 

「はぁぁあ!?」

 

 まどろむ朝に似合わない声を上げると、すぐさま電話帳からメッセージを送った人物に電話をかける。五コール目で相手は出てきた。

 

『んん~。早いなぁ、ケン。おはようさん』

 

「このメッセージ、どういうことだよ!」

 

『なんのこっちゃねん』

 

「テメェが!送ったんだろ!俺が何かしたのかよ。なんで大会に行かなきゃならないだ」

 

『お前さん、昨日サナと話してたろ』

 

 ケンの口元がひくつく。あのやり取りを、完全に聞かれていたということだ。

 

『なに、今日こっち来ればええねん。そんで、大会参観してればええ』

 

「だけど……」

 

『なぁ、ケン』

 

 どうにかこの状況をどうにかしなければ、と考えようとしたところでオノが改まった口調になる。その声音に、ケンの意識がそちらに集中してしまう。通話越しではあるけれど、オノがこう真面目な雰囲気になるのは滅多にない。

 

『お前さんに何があったかは深く詮索しない。けどなぁ、頑なに目ェ逸らして遠ざけるのは、なんかもったいない思うねん、俺は』

 

「……」

 

『とりあえず、見るだけや。大会は十三時からやで。忘れんなよ』

 

 オノから電話が切られる。画面を見つめたまま、ケンはため息をつく。

 

「どいつもこいつも」

 

 写真立てを乱雑に倒した。もう見なくてよかったものを、また見なくてはいけないのか。苛立ちが心の内側から這い上がってくる。だが、この写真がなぜ未だにここにあるのか。そう考えると余計に苛立ちが湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

「寝坊だーーー!遅刻しちゃう!」

 

 雲が薄く伸び、わたあめのようになめらかに漂う昼頃の空。今日もまた、結った髪がせわしなく踊る。

 

「調整を最低限なんて無理だった!色々手を付けまくったつけが回ってきた!起きたら余裕で十二時過ぎているって!私のバカ!」

 

 誰に話しかけているわけでもなく、サナはあわあわと住宅街を駆ける。時々すれ違う人から向けられる目など気にしている暇も無い。ポケットから取り出したスマートフォンの画面を表示。時刻は十二時四十八分。大会は十三時からだが、受付は五分前で締め切られる予定になっている。

 

「あと七分!?もー最悪だよ!」

 

 彼女の嘆きと共に三月の冷えた風が流れる。詰めに詰めた二日間を無駄にさせまいと、追い風となって背中を押しているように。

 

 

 

「ま゛に゛あ゛っ゛た゛」

 

 肩を上下させながらサナはオノ模型店へ辿り着く。疲労を叫ぶ足にムチを入れた甲斐があった。五十二分。受付といっても、GBBFの個人QRコードをかざせば完了なので手間いらず。呼吸をある程度落ち着かせて、いざ入ろうとしたときだった。

 

「げっ」

 

「ん……?あっ」

 

 顔を右に向ければ、見たくないものを見てしまったと言わんばかりの顔をしたケンがいた。家からここまで完走し、朝食と昼食もまともに食べていないサナだったが、大きな瞳がきらりと輝く。

 

「カザマ君!来てくれたんだね」

 

「いや、そういうわけじゃ」

 

 すかさず近寄り、ばっとケンの手をつかむ。

 

「ささ、入ろう。受付までもう時間ないから。はい、来て来て」

 

「は、ちょ、お前どういう……」

 

 ケンの同意云々をすっ飛ばし、サナは強引に店内へ引っぱっていく。ちょうど受付にいたオノが最終アナウンスをしていたところだった。

 

「ゲリラバトル、受付お願いします」

 

「おお、サナ!やっと来たか。寝坊してんじゃないかとヒヤヒヤしてたところや」

 

「えへへ……。まぁ、その通りなんですけど」

 

 オノの言った通りだったため、苦笑いがこぼれるサナ。スマートフォンを取り出してスキャンさせてもらおうとしたところで、

 

「あっ」

 

「えっ?」

 

「カザマ君、私のセコンド役やってよ」

 

「……は?」

 

 サナの発言にケンは驚きを通り越して呆れていた。顎が外れたかと手で触ってみたが、問題は無かった。目の前に問題があるだけだった。

 

「おお、そらええな。そんじゃ、ほれ。ケンもスマホ出せ」

 

「いやいやいや。おかしいでしょ。なんでそうなる?」

 

「大丈夫。バトルに関してはぜんぶ私がやるし、それに間近のほうが迫力あるよ」

 

「そうじゃなくて」

 

「はよせぇな。もう時間やし、ここでモタモタすると大会開始が遅れんねん」

 

 オノが指をテーブルに打ち付けてこちらをせかすように睨みをきかせる。どこのヤンキーだよとケンは目の前の金髪中年男性にツッコミを心の中で入れるが、しかしまわりにも目がいってしまう。バトル参加者であろう人たちがバトルルーム前に待機していた。そして隣にいるサナもその一人だ。聞くまでもなく、「一緒に出よう」という顔をしている。

 

 ケンは一際大きいため息をついた。

 

「最悪だよ、本当に」

 

 渋々ポケットからスマートフォンを取り出す。読み込みが完了すると、両者の画面にファイター、セコンドの確認のポップが現れる。OKボタンを押して無事完了。

 

「そういえば、ガンプラバトルやってないのにアプリ入れてたんだね……。あれ、このアカウントって」

 

「いよっしゃ!これにて受付終了。ほな、トーナメント表作られるから、そこの画面にちゅーもーく!」

 

 パン、と手を強く叩く。強い違和感にとらわれたサナを残して、皆の視線が集まる。見た目は悪そうだが本人は一切そういう感情を含めない笑顔を見せ、バトルルーム出入り口上に設置された画面を指さす。今回参加するファイターは十二人。ちょうどよく割り振りができる。

 

 誰もが知るピラミッド型のトーナメント表がまもなく表示され、底辺にある人数分割り振られた長方形がくるくると回転を始める。それが止まると、なにも表示されてなかった四角の中に、全ファイターの名前が入っていた。

 

 店内に設置された媒体は三つ。よって三組同時スタートして終わり次第、入れ替わりで次の組がバトルをやることになっている。サナとケンのペアはその三組同時スタートのうちの一組だった。

 

「ね、ねえ、カザマ君」

 

「お前が言いたそうなことはおおよそわかっている。あとで話すよ」

 

「こ、ここここれ、このアカウントって、ええ?」

 

「だからあとで話すって!人の話をとことん聞かねぇな、おい」

 

 ぞろぞろとスタート組がそれぞれ媒体の前に歩み寄る。二人の相手をするのは、見た感じ男子大学生といったところだ。背丈はそこそこ、ぼさぼさの髪の毛に細い目つき。サナは未だケンの顔とスマートフォンの画面を行ったり来たりだが、ケンの言葉とバトル開始直前ということもあって、なんとか意識を目の前に向ける。

 

「よろしくね。相手が女の子でも、手加減はしないぜ?」

 

「こちらこそよろしく。手加減なんてもちろんいらない。全力で行くよ!」

 

「おっしゃ、用意はいいな?なら、一斉にスタートや」

 

 オノのかけ声を聞き、近くにいたニシがコンピュータのキーボードを手際よく打つ。すると媒体三台から青白い光の欠片が天井に向かって溢れ出す。プラフスキー粒子だ。ガンプラバトルが始まる光景。誰もがおそらく胸躍る瞬間だ。おそらく。

 

 <Please set your smart phone>

 

 システム音声に従って皆が媒体のくぼみにスマートフォンを置く。現在売られている機種全て設置可能にするため、ホルダーアームが自在に動く。そして置いた途端、自動的にGBBFが起動する。

 

 <Beginning Plavsky Particle dispersal>

 

 徐々にプラフスキー粒子がバトルフィールド、そしてファイターたちのコックピットを形成していく。

 

 <Field 3"Forest">

 

 全面木々に覆われたフィールドが形成し終わる。うねるように川も流れていて、これを利用した戦法や適した機体もある。

 

 <Please set your gumpla>

 

 スマートフォンを置いたすぐ先、スキャニング・プラフスキー粒子付与するスペースに各自のガンプラを置く。足先から頭部にかけてプラフスキー粒子がまんべんなく行き届き、彼女の愛機のツインアイが生命が宿ったように光る。

 

 <Battle start>

 

 サナはコックピットが形成されるとすぐに操縦桿の光球に手を置く。これもすべてホログラフィーであるはずなのに、しっかりとそこに存在する。操縦桿を握る力が幾分強まっているのが、サナ自身わかった。偶然出会った同級生。相手自身は覚えがなくてもサナの方は顔を知っていて。そんな人物がまさか……!

 

 一旦、深く呼吸する。目を強く閉じて、開く。大丈夫、いつもの光景だ。集中、集中。そう、自分に言い聞かせる。

 

 メインモニターが既にメインカメラからの映像に切り替わっている。射出カタパルトの先は光が容赦なく入り込んでくる。今一度操縦桿に力を込めて、発進時なら誰でも言う台詞と共にぐいっと前に押し出す。

 

「ミヤマ・サナ。ガンダムディアンサス、行くぞ-!」




バトルシーン書けるとか言っといて、句切りが良い感じにできたな、とバトル開始で次回に回してしまいました(木板にそう書いて首からぶら下げる)
ま、彼の過去話でガンプラバトルしてますし、そこでご勘弁を
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